※本記事は、オンコセラピー・サイエンス株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
オンコセラピー・サイエンスは、医薬品の研究開発、がん遺伝子の大規模解析検査、がん免疫療法の研究開発を主たる事業とする研究開発型ベンチャー企業です。同社グループは、東京大学医科学研究所の中村祐輔教授の研究成果を事業化するため2001年4月に設立されました。
オンコセラピー・サイエンスの単体従業員数は18名、連結従業員数は46名です。同社グループの事業セグメントは、「医薬品の研究及び開発」並びにこれらに関連する事業、およびがんプレシジョン医療関連事業の2つです。
主な国内グループ会社は、Cancer Precision Medicine(がんプレシジョン医療・関連事業)などです。
2017年7月には、オンコセラピー・サイエンスの事業部門であった腫瘍免疫解析部が会社分割により連結子会社の株式会社Cancer Precision Medicineに承継され、がんプレシジョン医療関連事業を担っています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
オンコセラピー・サイエンスは、医薬品の研究開発とがんプレシジョン医療関連事業を展開する研究開発型企業です。高い専門性を持つ人材を重視し、国籍や性別にとらわれない公平な採用と登用を推進しています。社員のスキルアップを支援する研修制度も整備されており、専門性を活かして長期的に活躍できる環境が整っています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、従業員の平均勤続年数が比較的長く、平均年齢も一定の水準にあることから、人材の定着傾向が見られます。専門性の高い分野でキャリアを築きながら、安定して働き続けられる環境があると言えるでしょう。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 5,981,000円 |
| 平均勤続年数 | 11.94年 |
| 平均年齢 | 46.3歳 |
| 単体従業員数 | 18人 |
| 連結従業員数 | 46人 |
| 単体のグループ内比率 | 39.1% |
退職給付制度に関する記載はありません。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、市場や業界の変化に迅速に対応するため、年度単位の計画にとらわれず、必要に応じて適切な人材の確保や配置転換を機動的に行っています。研究開発型企業として高い専門性を持つ人材を重視し、国籍や性別を問わず採用・登用を進めています。
社員の勤労意欲向上と経営能率の向上を目的とした人事評価制度を運用しており、定期および随時、業務成績と能力を評価しています。給与やその他の給付は、固定給与とストックオプションで構成され、社員が中長期的な業績向上への意欲を高め、企業価値増大に貢献できるよう、経営環境や他社の動向を考慮して決定されています。人事評価規程等に基づき、会社業績や個人業績、職責と成果を踏まえた公平かつ公正な処遇が図られています。また、研究開発の各段階に合わせた研修を設け、円滑な技術習得を支援する計画も運用しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社及び連結子会社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、法定開示データは開示されていません。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
オンコセラピー・サイエンスは、医薬品の研究開発とがんプレシジョン医療関連事業を主軸とする企業グループです。ゲノム研究の進展や抗がん剤分野のニーズの高まりを背景に、新しいがん治療法の開発に取り組んでいます。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、元東京大学医科学研究所の中村祐輔教授の研究成果を事業化することを目的に設立された研究開発型ベンチャー企業です。医薬品の研究開発とがんプレシジョン医療関連事業の二つの報告セグメントで事業を展開しています。
「医薬品の研究及び開発」並びにこれらに関連する事業
このセグメントでは、がん治療薬開発のための標的分子の同定から、低分子医薬、がんペプチドワクチン、抗体医薬といった各領域での創薬研究、さらには臨床試験の実施までを行っています。収益は、製薬企業等とのライセンス契約に基づく契約一時金、研究開発の進捗に応じたマイルストーン、および医薬品上市後の売上に応じたロイヤリティ等から得ています。医薬品開発は長期間にわたり、収益の発生時期は提携先の研究開発進捗や医薬品販売状況に依存する傾向があります。
がんプレシジョン医療関連事業
このセグメントでは、がん遺伝子の大規模解析検査およびがん免疫療法の研究開発を実施しています。具体的には、がん細胞の詳細な遺伝子解析サービス(全ゲノムシーケンス解析、ネオアンチゲン解析、ネオアンチゲン樹状細胞療法等)、血中のがん細胞を早期検出するためのリキッドバイオプシー、TCR/BCRレパトア解析、免疫反応解析等のサービスを提供しています。収益は、医療機関、研究機関、製薬企業等からの解析サービス受託によるものです。運営は、連結子会社であるCancer Precision Medicineが行っています。この事業は同社グループの事業収益の大部分を占めており、前期から収益が増加しています。主要な顧客として、公益財団法人がん研究会や医療法人慈生会福岡がん総合クリニックがあります。
同社グループの売上高は、本邦の外部顧客への売上高が連結損益計算書の売上高の90%を超えており、国内市場が中心となっています。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| がんプレシジョン医療関連事業 | 7.5億円 | 8.1億円 |
| 「医薬品の研究及び開発」並びにこれらに関連する事業 | 3百万円 | 2百万円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの直近5期間の業績を見ると、事業収益は増加傾向にあります。一方で、経常損失および親会社株主に帰属する当期純損失が継続して計上されています。これは、医薬品候補物質の基礎研究や創薬研究、臨床開発の進展に伴う研究開発費用の計上が主な要因となっています。
当連結会計年度においては、解析サービス等による収入の増加により事業収益は前期から増加しました。しかし、研究開発費の計上により、営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失はいずれも前期から損失額が拡大しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | - | - | 7.5億円 | 8.1億円 |
| 経常利益 | △20.7億円 | △11.3億円 | △11.4億円 | △8.2億円 | △8.5億円 |
| 経常利益率 | - | - | - | △108.7% | △104.6% |
| 親会社株主に帰属する当期純損失 | △25.7億円 | △11.2億円 | △12.9億円 | △8.2億円 | △9.1億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | △13.72 | △5.81 | △6.05 | △3.12 | △2.77 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの事業収益は、当期に前期から増加しました。これは、事業収益の増加に対して連結従業員数が減少したことが影響しています。一方で、従業員1人あたりの営業利益は、当期に前期から損失額が拡大しています。研究開発型企業として、医薬品開発に向けた継続的な投資が行われている状況がうかがえます。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 16.0百万円 | 17.6百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | △17.0百万円 | △17.6百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
オンコセラピー・サイエンスグループは、研究開発型企業として多額の研究開発費を先行投資しており、現在は事業拡大に向けた成長投資フェーズにあります。財務基盤と資金の流れを理解することは、同社グループの安定性を把握する上で重要です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、自己資本比率が前期から大きく上昇しています。現預金も増加しており、手元資金の厚みが増している状況です。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 7.3億円 | 21.4億円 |
| 自己資本比率 | 57.0% | 87.8% |
| ROE(自己資本利益率) | - | △63.4% |
| 現金及び預金 | 8.3億円 | 20.9億円 |
同社グループの自己資本比率は当期87.8%となっており、前期の57.0%から大幅に増加しました。これはプライム市場の製造業平均46.8%や非製造業平均24.2%と比較しても高い水準を示しています。一方で、ROE(自己資本利益率)は当期△63.4%とマイナスとなっています。現金及び預金は当期20.9億円と、前期の8.3億円から増加しており、手元資金は厚くなっています。
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループの営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失を計上したことにより、当期もマイナスとなっています。投資活動によるキャッシュ・フローも、有形固定資産の取得による支出が主な要因でマイナスです。財務活動によるキャッシュ・フローは、株式の発行による収入が主な要因で大幅なプラスとなっており、資金調達によって事業活動を支えている状況が示されています。
これらの資金の流れは、同社グループが研究開発型企業として多額の先行投資を継続していることを示しています。当面は資金調達によって事業活動を継続していく方針であり、今後の研究開発の進展と収益化が、雇用や給与の安定性、そして成長性に影響を与えると考えられます。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | △8.2億円 | △9.2億円 |
| 投資CF | △0百万円 | △63百万円 |
| 財務CF | 11.2億円 | 22.4億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △8.2億円 | △9.9億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
同社グループは、当連結会計期間末において、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しています。しかし、当連結会計期間末現在で現金及び預金を20.9億円有しており、当面は事業活動の継続性に懸念はなく、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しています。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループの販売先は製薬企業、医療機関、研究機関等に限定されており、取引先あたりの事業収益に占める依存度が高い傾向にあります。また、製薬企業等との契約締結の可否や時期、収益の発生時期によって業績が大きく変動する傾向があるため、決算期ごとの業績変動要因となる可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループの研究開発活動は、元東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長である中村祐輔氏の研究成果が基盤となっています。何らかの理由により同氏の協力が得られなくなった場合、同社グループの研究開発活動に影響を与える可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
オンコセラピー・サイエンスは、がん治療薬の研究開発を通じて社会貢献を目指す企業です。患者さんのために、より良い治療法を一日も早く届けることを追求する価値観が、同社グループの経営の根幹にあります。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、「有効性が高く、より副作用の少ないがん治療薬・治療法を一日も早くがんに苦しむ患者さんに届けること、がんとの闘いに勝つこと」を企業使命としています。この使命の実現のため、基礎研究、創薬研究、医薬開発、そしてがんプレシジョン医療への取り組みを推進しています。
安定経営に留意しながら、がん治療薬・治療法の研究及び開発を着実に推進し、がん治療の分野で社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、研究開発型企業として高い専門性を持つ人材を重視しており、国籍や性別といったあらゆる枠組みにとらわれず、事業運営に必要な人材の採用と登用を実施しています。企業経営においては、サステナビリティに配慮しつつ、社内規程に基づき取締役会等での決議をもって意思決定を行っています。
事業展開における重要な要素として、「事業推進のスピード」「事業領域の拡大」「リスクとリターンのバランス」の3点を挙げています。特に、世界的な新薬開発競争に勝ち抜き、質の高い研究成果を一日も早く臨床開発へ進展させることを重視しています。
また、自社独自の化合物ライブラリと数多くのがんゲノム創薬ターゲットを強みとし、製薬企業等との積極的な提携契約や研究開発の提携を通じて、製品化の可能性を極大化しつつ、リスクを合理的なレベルにとどめる方針を採用しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、事業の将来にかかる重要課題として、基礎研究の継続的な実施を認識しており、独自の研究や共同研究による研究体制の充実と円滑な推進を図っていく方針です。また、基礎研究の成果をもとに、低分子医薬、がんペプチドワクチン、抗体医薬等の創薬研究を確実かつ迅速に推進し、ファースト・イン・クラスの創薬を目指しています。
経営環境においては、事業推進のスピード、事業領域の拡大、リスクとリターンのバランスを重要な要素と捉えています。本社や研究開発拠点の移転、人員配置の見直しによる業務効率化等にも積極的に取り組み、あらゆるコストの見直しと削減を継続して強化していく方針です。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
オンコセラピー・サイエンスは監査役制度を採用しており、取締役会と監査役会が経営の監視と意思決定を担っています。両機関は定期的に会合を開き、迅速かつ効率的な経営体制を構築しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
オンコセラピー・サイエンスは、個人の株主が上位に名を連ねる資本構成となっています。筆頭株主は中村祐輔氏であり、その他にも複数の個人株主が上位に位置しています。また、信託銀行も大株主の一角を占めています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中村 祐輔 | 3.26% |
| 楽天証券共有口 | 2.39% |
| 特定有価証券信託受託者 株式会社SMBC信託銀行 | 1.90% |
| 中鶴 修一 | 1.52% |
| 野村證券 | 0.99% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は8名(男性6名・女性2名)で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は嶋田順一氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 嶋田 順一 | 代表取締役社長 | 1981年4月株式会社UBSJ入社、1991年9月同社代表取締役。2007年4月株式会社ラボリサイクル取締役、2009年4月Science Hub Services PTE Ltd. Singapore取締役。2019年12月株式会社Cancer Precision Medicine代表取締役、2021年12月株式会社UBSJ取締役会長。2022年7月同社代表取締役社長より現職。 |
| 加藤 肇夫 | 取締役会長 | 1966年4月株式会社福井銀行入社。1974年10月ウィルビー株式会社創業、1977年4月同社代表取締役。2020年6月同社取締役会長より現職。 |
| 朴 在賢 | 取締役 Chief Scientific Officer 兼 管理本部統括取締役 | 2008年4月国立研究開発法人理化学研究所研究員。2010年11月コールド・スプリング・ハーバー研究所博士研究員。2013年4月シカゴ大学医学部助教授。2017年7月同社入社Chief Scientific Officer、2018年6月同社取締役。2023年12月同社管理本部統括取締役より現職。 |
社外取締役は、三木義男氏(東京医科歯科大学名誉教授)、小峰雄一氏(税理士法人綜合税務会計代表社員)です。
同社は監査役制度を採用しています。社外取締役は、医学的見地や会計の専門知識から取締役会の機能を強化しています。社外監査役は、企業活動や事業分野に関する見識、公認会計士としての経験を監査体制に活かしています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
オンコセラピー・サイエンスの役員報酬は、固定の金銭報酬とストックオプションで構成されています。これは、役員が中長期的な業績向上への意欲を高め、同社グループの企業価値増大に貢献することを目的としています。固定報酬は各役員の地位や職責に応じて決定され、ストックオプションは業績向上へのインセンティブとして支給されます。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 3名 | 43百万円 | 14.4百万円 |
| 監査役(社外除く) | 1名 | 8百万円 | 8.4百万円 |
| 社外役員 | 4名 | 10百万円 | 2.5百万円 |
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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