※本記事は、オンコセラピー・サイエンスの有価証券報告書(第25期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オンコセラピー・サイエンスってどんな会社?
大学の研究成果を基盤とし、がん領域に特化した医薬品開発と遺伝子解析事業を展開しています。
■(1) 会社概要
2001年に東京大学の研究成果の事業化を目的として設立された研究開発型ベンチャー企業です。2003年に東京証券取引所マザーズ(現グロース)に上場しました。その後、2017年には次世代シーケンス解析サービスを行う企業との提携により、子会社Cancer Precision Medicineを設立し、がん遺伝子の大規模解析等のプレシジョン医療関連事業を本格化させています。
現在の従業員数は連結で46名、単体で18名です。筆頭株主は創業者の、中村祐輔氏で、第2位は楽天証券共有口、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中村祐輔 | 3.26% |
| 楽天証券共有口 | 2.39% |
| 特定有価証券信託受託者SMBC信託銀行 | 1.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は嶋田順一氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 嶋田順一 | 代表取締役社長 | 1981年UBSJ入社。同社代表取締役等を経て、2019年Cancer Precision Medicine代表取締役に就任。2022年オンコセラピー・サイエンス取締役を経て、同年7月より現職。 |
| 加藤肇夫 | 取締役会長 | 1966年福井銀行入行。1974年ウィルビーを創業し、1977年に代表取締役に就任。2020年6月にオンコセラピー・サイエンス取締役会長に就任。 |
| 朴在賢 | 取締役Chief Scientific Officer兼管理本部統括取締役 | 2008年理化学研究所研究員等を経て、2017年入社。2019年にオンコセラピー・サイエンス代表取締役社長を経て、2023年12月より現職。 |
社外取締役は、三木義男(元東京医科歯科大学教授)、小峰雄一(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医薬品の研究及び開発並びにこれらに関連する事業」および「がんプレシジョン医療関連事業」を展開しています。
■医薬品の研究及び開発並びにこれらに関連する事業
低分子医薬、がんペプチドワクチン、抗体医薬などの領域において、がん細胞を特異的に標的とする医薬品の創薬研究および臨床試験を実施しています。製薬企業と共同、または同社独自で開発を進め、副作用の少ない効果的ながん治療薬の創出を目指しています。
主な収益源は、製薬企業とのライセンス契約等に基づく契約一時金、マイルストーン収入、およびロイヤリティです。これらの事業は、主にオンコセラピー・サイエンスが主体となって研究開発活動を推進しています。
■がんプレシジョン医療関連事業
全ゲノムシーケンス解析やネオアンチゲン解析、リキッドバイオプシーといった、がん遺伝子の大規模解析検査および免疫反応解析などのサービスを医療機関や研究機関に向けて提供しています。一人ひとりの遺伝子情報に基づいた効果的な治療薬・治療法の選択を支援しています。
顧客である医療機関や研究機関から受け取る解析サービスの受託費用が主な収益源となっています。この事業は、同社の子会社であるCancer Precision Medicineが運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高のデータが一部欠損しているものの、経常損失および当期純損失は過去5期間にわたり赤字が継続しています。しかし、研究開発への先行投資を続けながらも赤字幅は縮小傾向にあり、将来の事業基盤確立に向けた取り組みが続いています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | -21億円 | -11億円 | -11億円 | -8億円 | -8億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -26億円 | -11億円 | -13億円 | -8億円 | -9億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間において売上高等のデータが欠損していますが、営業損失は連続して約8億円を計上しています。これは、創薬ビジネス特有の長期間にわたる研究開発費の負担が反映された結果となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | -8億円 | -8億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
■(3) セグメント収益
がんプレシジョン医療関連事業が全社の売上の大部分を占めており、当期は前期から順調な増収を達成しています。一方、医薬品の研究開発事業の収益規模は限定的であり、製薬企業等とのライセンス契約の進捗状況に大きく依存する構造となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 「医薬品の研究及び開発」並びにこれらに関連する事業 | - | - |
| がんプレシジョン医療関連事業 | 7.5億円 | 8.1億円 |
| 連結(合計) | 7.5億円 | 8.1億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業は赤字ですが、将来成長のため資金調達(借入・増資等)を実施し、必要な投資を継続している「勝負型」の局面です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -8億円 | -9億円 |
| 投資CF | - | -0.6億円 |
| 財務CF | 11億円 | 22億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)のデータはありませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「有効性が高く、より副作用の少ないがん治療薬・治療法を一日も早くがんに苦しむ患者さんに届けること、がんとの闘いに勝つこと」を企業使命として掲げています。この使命を実現するために、基礎研究から臨床開発、プレシジョン医療への取り組みまでを一貫して推進し、社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
バイオテクノロジー業界における激しい技術革新や新薬開発競争に対応するため、「事業推進のスピード」を重視する文化があります。また、膨大な研究開発費を要するビジネスモデルのもと、「リスクとリターンのバランス」に配慮し、製薬企業との積極的な提携等を通じて最善の経営判断を行う合理的な組織風土を持っています。
■(3) 経営計画・目標
独自の網羅的遺伝子発現解析によって同定された多数の標的分子に対し、ファースト・イン・クラスの創薬を目指しています。将来において自社または提携先ががん治療薬を上市することによる販売収入・ロイヤリティ収入の獲得や、がん遺伝子の大規模解析検査等の受託による収益と利益の飛躍的な拡大、そして安定した収益基盤の構築を目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
自社での基礎研究の継続と臨床開発の確実かつ迅速な推進を重点施策としています。また、新規提携先の積極的な開拓や既存提携先が実施する臨床開発の側面支援を強化することで事業戦略を加速させています。さらに、保険診療を含む新しい個別化がん免疫療法の研究等、がんプレシジョン医療関連事業の領域拡大にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
市場および業界の変化するスピードに機動的に対応すべく、高い専門性を持つ人材を確保し、国籍や性別にとらわれない採用と登用を行う方針です。社員の勤労意欲を促進し経営能率の向上を図るため、業務成績や能力に基づく適切な人事評価と配置転換、教育訓練を通じた適性化を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.3歳 | 11.9年 | 5,981,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新技術の台頭と市場環境の急変リスク
バイオテクノロジー分野は技術革新のスピードが著しく速く、急激な研究の進歩により既存の解析手法や医薬品の優位性が低下する恐れがあります。また、市場拡大に伴う競合企業や異業種からの新規参入が増加しており、事業推進スピードの競争に敗れた場合、事業戦略や業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 臨床検査事業における精度管理と規制リスク
がん遺伝子の大規模解析検査等の臨床検査事業では、極めて高い精度管理と「臨床検査技師法」などの法的規制の遵守が求められます。万一の検査過誤等によって信用が失墜し損害賠償が発生した場合や、法令違反による営業停止、法的規制の強化に伴う対応費用の増加などが生じた場合、経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 製薬企業等との提携に依存する収益リスク
研究開発に関する収益の多くは、提携先製薬企業とのライセンス契約に基づくマイルストーン収入やロイヤリティに依存しています。医薬品の開発期間は非常に長期間に及びますが、提携先での開発の遅延・中止、新規契約の締結が進まない場合、または既存契約が解消された場合には、資金繰りや業績に深刻な打撃を与える可能性があります。



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