日本ケアサプライ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ケアサプライ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場し、福祉用具のレンタル卸を主力とする福祉用具サービスや、高齢者生活支援サービスを展開しています。直近の業績は、売上高が320億円(前期比11.9%増)、経常利益が25億円(同13.0%増)となり、主力事業の堅調な推移や販売卸の拡大により増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社日本ケアサプライ の有価証券報告書(第27期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本ケアサプライってどんな会社?


福祉用具レンタル卸のリーディングカンパニーとして、全国の介護事業者向けに福祉用具のレンタル・販売を行っています。三菱商事グループおよびALSOKグループの関連会社としての強固な基盤を持ちます。

(1) 会社概要


1998年3月に設立され、福祉用具レンタル卸サービスを開始しました。2004年2月に東証マザーズへ上場し、その後市場変更を経て現在に至ります。2008年には現在の連結子会社であるライフタイムメディの株式を取得し、高齢者生活支援サービスを強化しました。2020年には三菱商事、綜合警備保障との資本業務提携を締結し、関係を強化しています。

同社グループの従業員数は連結で1,454名、単体で1,420名です。大株主には、総合商社である三菱商事と、セキュリティ事業を展開する綜合警備保障が名を連ねており、両社はその他の関係会社として同社に役員を派遣しています。

氏名 持株比率
三菱商事 38.51%
綜合警備保障 30.57%
日本マスタートラスト信託銀行(株式付与ESOP信託口) 4.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は平松雅之氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
平松 雅之 代表取締役社長 三菱商事に入社後、ユニクロロシアCFO等を経て、2020年に同社常務執行役員に就任。営業本部長等を歴任し、2024年6月より現職。
宮入 卓也 取締役 三菱商事に入社後、ライフタイム・パートナーズ取締役副社長等を経て、同社開発本部長として事業推進に従事。2024年6月より現職。
篤田 崇広 取締役 三菱商事に入社後、三菱商事ライフサイエンス取締役専務執行役員等を経て、三菱商事ヘルスケア本部長を務める。2024年6月より現職。
熊谷 敬 取締役 通商産業省入省後、復興庁統括官等を経て、綜合警備保障常務執行役員として介護事業を担当。ALSOK介護社長も務め、2021年6月より現職。


社外取締役は、吉池由美子(三菱総合研究所執行役員人事部長)、小林信昭(東京海上日動ベターライフサービス代表取締役社長)、秦純子(eichi代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「福祉用具サービス」および「高齢者生活支援サービス」事業を展開しています。

(1) 福祉用具サービス


介護保険制度下における指定居宅サービス事業者向けに、車いすや介護用ベッドなどの福祉用具のレンタル卸および販売卸を行っています。また、クラウドサービスの提供も行っています。

収益は、事業者に対する福祉用具のレンタル料および販売代金から得ています。運営は主に日本ケアサプライが行い、クラウドサービスについては子会社のケアビジネスサポートシステムも関与しています。

(2) 高齢者生活支援サービス


高齢者が地域で安心して暮らせるよう、介護事業者向けに食事サービス(配食)の提供や生活支援物販を行うほか、訪問看護・リハビリテーション、通所介護等のサービスを提供しています。

収益は、介護施設や利用者からのサービス利用料や商品販売代金から得ています。運営は日本ケアサプライおよび子会社のライフタイムメディが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は210億円から320億円へと右肩上がりで成長を続けています。経常利益は20億円台前半から中盤で推移しており、直近の2025年3月期には25億円まで拡大しました。利益率は一時的な低下も見られましたが、直近では改善傾向にあります。当期利益も安定的に推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 210億円 233億円 259億円 286億円 320億円
経常利益 26億円 24億円 21億円 22億円 25億円
利益率(%) 12.5% 10.1% 8.3% 7.7% 7.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円 17億円 15億円 16億円 18億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。営業利益についても増加しており、増収効果が利益の押し上げに寄与していることが分かります。営業利益率は7%台後半で推移しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 286億円 320億円
売上総利益 103億円 113億円
売上総利益率(%) 35.9% 35.3%
営業利益 22億円 25億円
営業利益率(%) 7.6% 7.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料が36億円(構成比41%)、賞与引当金繰入額が3億円(同4%)を占めています。売上原価においては、レンタル資産の減価償却費を含む経費や労務費、商品仕入高が主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


福祉用具サービス、高齢者生活支援サービスともに増収となりました。特に主力の福祉用具サービスはレンタル卸・販売卸が堅調に推移し、売上が拡大しました。高齢者生活支援サービスも食事サービス等の取引拡大により伸長しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
福祉用具サービス 249億円 276億円
高齢者生活支援サービス 36億円 44億円
連結(合計) 286億円 320億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスであり、本業で稼いだ資金を投資と借入返済・配当に充てている「健全型」のキャッシュ・フローです。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3億円 14億円
投資CF -8億円 -12億円
財務CF -3億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「健康長寿社会への貢献」を社是として掲げています。創業以来の理念である「品質第一」「誠実第一」のもと、福祉用具サービスを中心に事業を拡大し、高齢者やその家族への生活支援につながるサービスを展開することで、社会課題を解決し、貢献できる企業となることを目指しています。

(2) 企業文化


「品質第一」「誠実第一」を理念として受け継いでいます。ステークホルダーと共に成長し、高齢者を含むすべての人が健康で豊かな生活を送れる社会に向けて、より良い暮らしに必要なサービスや「自分らしく」生きられる選択肢を提供し続ける姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2040年度を目標とした長期ビジョン「けあさぷVision2040」を策定しています。2025年3月期は中期経営計画の最終年度として、福祉用具サービスの強化や高齢者生活支援サービスの拡大に取り組みました。収益性の指標としてROA、ROE、EBITDAを重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


福祉用具サービスでは、ブロック再編による地域対応力の強化や、都市部を中心とした拠点の大型化・移転を推進しています。高齢者生活支援サービスでは、食事サービスの新たな仕入先開拓や、おむつ配送サービス「おむピタ」の拡販に注力しています。また、人材獲得競争に対応するため、人的資本投資やDXによる業務効率化を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


全ての社員に合った柔軟な働き方や働きやすい環境を整備し、教育機会の継続的提供によりスキルと意欲を高めることで生産性向上を目指しています。多様性確保のため女性活躍推進プロジェクトを開始し、キャリア支援や意識改革を実施しています。また、経営人材の育成と権限移譲により自律分散経営を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.0歳 7.1年 4,193,025円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.6%
男性育児休業取得率 62.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.2%
男女賃金差異(正規) 77.6%
男女賃金差異(非正規) 85.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(71.9%)、育休取得率(72.3%)、育休復帰率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 介護保険制度に伴うリスク


主力事業である福祉用具レンタル卸等は介護保険制度の影響を強く受けます。制度改正により、要介護認定の範囲、給付対象となる福祉用具の範囲、利用者の自己負担率などが変更された場合、需要動向が悪化し、グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 貸与福祉用具の衛生管理・品質リスク


レンタル後の福祉用具は洗浄・消毒等の保守を経て再利用されます。万一、貸与品から感染症が発生した場合や、保守・メンテナンスの不備により重大事故が生じた場合、多額の損害賠償や社会的信用の失墜により、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 大手企業参入によるリスク


高齢化に伴い市場参入を目指す企業が増加しています。経営体力のある大手企業の参入により競争が激化し、同社グループが十分な差別化を図れない場合、価格競争等により収益性が低下する可能性があります。

(4) 人材の確保についてのリスク


事業継続には必要な人材の安定的な採用と定着が不可欠です。労働環境の整備や教育体制の充実等が十分でなく、必要な人材を確保できない場合、事業計画の遂行に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。