※本記事は、株式会社日本ケアサプライの有価証券報告書(第28期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本ケアサプライってどんな会社?
同社は、福祉用具のレンタル卸を通じて介護事業者を支え、高齢者の生活支援サービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1998年に設立され、福祉用具レンタル卸サービス事業を開始しました。2000年の介護保険制度開始と同時にレンタル事業を本格稼働させ、2004年に東証マザーズへ上場しています。2008年に現ライフタイムメディを子会社化し、2020年には三菱商事およびALSOKとの資本業務提携を締結しました。
現在の従業員数は連結で1,062名、単体で1,026名です。大株主については、筆頭株主が事業会社の三菱商事で、第2位は資本業務提携先のALSOK、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱商事 | 38.52% |
| ALSOK | 30.57% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(株式付与ESOP信託口) | 4.29% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は平松雅之氏が務め、社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 平松雅之 | 代表取締役社長 | 三菱商事入社後、同社経営企画室長、ユニクロロシアCFO等を経て2025年より現職。 |
| 宮入卓也 | 取締役常務執行役員 | 三菱商事入社後、ライフタイム・パートナーズ取締役副社長等を経て2025年より現職。 |
| 篤田崇広 | 取締役 | 三菱商事入社後、同社ヘルスケア本部長などを経て2024年より現職。 |
社外取締役は、吉池由美子(三菱総合研究所執行役員人事部長)、小林信昭(東京海上日動ベターライフサービス代表取締役社長)、秦純子(eichi代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「高齢者生活支援事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 福祉用具サービス
介護保険給付の対象となる福祉用具の貸与や販売を行う事業者向けに、商品のレンタル卸および販売卸を提供しています。全国の事業者を通じ、要介護認定等を受けた利用者に福祉用具が貸与されます。
収益源は事業者からのレンタル料金および販売代金です。運営は主に日本ケアサプライが担っています。
■(2) 高齢者生活支援サービス
高齢者が住み慣れた地域で暮らせるよう、介護事業者向けの食事提供や生活支援物販のほか、訪問看護や通所介護などの複合的なサービスを提供しています。
収益源は事業者からの食事代金や利用者からの介護サービス料です。運営は日本ケアサプライおよび子会社のライフタイムメディなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は毎年着実な成長を遂げており、市場拡大を背景に需要を取り込んでいます。利益面では一時的な踊り場があったものの、直近では大きく利益水準を切り上げ、利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 233億円 | 259億円 | 286億円 | 320億円 | 349億円 |
| 経常利益 | 24億円 | 21億円 | 22億円 | 25億円 | 31億円 |
| 利益率(%) | 10.1% | 8.3% | 7.7% | 7.8% | 8.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 15億円 | 16億円 | 18億円 | 23億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い売上総利益も増加し、利益率も向上しています。レンタル資産への先行投資や人件費の増加といったコスト増を増収効果で吸収し、営業利益ベースでも高い成長率を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 320億円 | 349億円 |
| 売上総利益 | 113億円 | 128億円 |
| 売上総利益率(%) | 35.3% | 36.6% |
| 営業利益 | 25億円 | 31億円 |
| 営業利益率(%) | 7.7% | 8.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が39億円(構成比40.6%)と最も大きく、次いで賞与引当金繰入額が4億円(同4.0%)を占めています。売上原価については、レンタル売上原価の経費が123億円(売上原価合計の56.0%)、商品売上原価が64億円(同29.4%)、レンタル売上原価の労務費が32億円(同14.6%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントであるため、事業サービス別の売上高を示します。主力である福祉用具サービスが拠点人員の強化やレンタル資産の積極投入により堅調に推移し、高齢者生活支援サービスも順調に売上を伸ばしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 福祉用具サービス | 276億円 | 301億円 |
| 高齢者生活支援サービス | 44億円 | 48億円 |
| 連結(合計) | 320億円 | 349億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で十分なキャッシュを獲得し、本業の成長に向けた設備投資を行いつつ、借入金の返済や株主還元を実施する健全型の財務状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 14億円 | 32億円 |
| 投資CF | -12億円 | -9億円 |
| 財務CF | -2億円 | -23億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.5%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も67.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「健康長寿社会への貢献」を社是とし、「品質第一」「誠実第一」の理念を創立以来受け継いでいます。介護保険制度の対象となる福祉用具のレンタルや販売を中心に事業を拡大し、高齢者や家族の生活支援につながるサービスを展開することで、社会に貢献できる企業を目指しています。
■(2) 企業文化
ステークホルダーとの協働により社会課題の解決に挑み、新しい価値を創造することを存在意義としています。「SINCERITY(誠実であること)」「CHALLENGING SPIRIT(チャレンジ精神)」「TEAMWORK(チームワーク)」を求める人材像に掲げ、介護福祉業界の課題に対して前向きに取り組むベンチャー気質を根底に持つ組織文化です。
■(3) 経営計画・目標
2040年度を目標とした長期ビジョン「けあさぷVision2040」を策定し、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。収益力の向上を重視し、安定的な売上・利益の成長を目標としています。
- コアビジネスでの効率性指標としてROA、ROE、EBITDAを重視
- 累進配当制度の導入およびDOE(株主資本配当率)6%を下限とする目標
■(4) 成長戦略と重点施策
福祉用具レンタル事業での売上拡大と利益確保、高齢者生活支援サービスの成長、女性活躍と人材育成の推進を重点施策としています。地域の特性に応じた自律分散経営の深化や、介護施設に向けた取引拡大を図ります。
- 都市部を中心とした新規拠点の開設や倉庫の大型化
- AIなどデジタル技術を活用した業務効率化
- バランス弁当のプロモーションとECサイト等インフラの整備
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
全ての社員に合った柔軟な働き方や環境を整備し、教育機会の提供により知識・スキルと意欲を高めることで生産性向上を目指しています。少子高齢化に伴う人手不足への対策として、働き方や意識の改革、各階層における能力開発など多角的なアプローチで人材の採用と定着を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.6歳 | 9.5年 | 4,907,242円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.8% |
| 男性育休取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 84.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(75.0%)、育休取得率(71.4%)、育休復帰率(96.3%)、人材開発投資額(19千円)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 介護保険制度の変更による需要変動
同社の主力事業は介護保険制度の影響を強く受けます。要介護認定の範囲や福祉用具の対象品目、利用者の自己負担割合が制度改定によって変更された場合、需要動向が悪化し、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 貸与福祉用具の衛生管理・製品事故
返却された福祉用具の洗浄・消毒等の保守サービスを自社で行っていますが、万一感染症が発生したり、保守の瑕疵による重大事故が起きたりした場合、損害賠償や社会的信用の失墜を招く恐れがあります。また、オリジナル商品での不具合によるリコール対応などもリスクとなります。
■(3) 大手企業の参入による競争激化
超高齢化社会を背景とした成長産業であるため、異業種や大手企業の市場参入が活発化しています。同社は全国展開やノウハウにより優位性を築いていますが、新規参入企業との差別化が不十分な場合、価格競争に巻き込まれ収益性が悪化する可能性があります。
■(4) 専門人材の確保と定着の課題
高齢者生活支援事業の拡大において人材確保は不可欠です。労働力不足が深刻化する中で、事業計画の遂行に必要な人材を安定的に採用し、労働環境の整備や教育体制の充実により定着を図れなかった場合、持続的な成長に支障をきたす恐れがあります。



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