KDDI 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KDDI 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KDDIは東京証券取引所(プライム市場)に上場し、「au」などの通信サービスを軸としたパーソナル事業と、データセンター等を展開するビジネス事業を主力としています。直近の業績は、売上高が6兆719億円、営業利益が1兆991億円と、通信ARPUの増加や注力領域の成長により増収増益を達成しています。


※本記事は、KDDI株式会社 の有価証券報告書(第42期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. KDDIってどんな会社?


同社は「au」等の通信サービスを中心に、金融やエネルギー等の事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社は1984年に第二電電企画として設立されました。2000年にKDDおよび日本移動通信と合併し、ディーディーアイに商号変更した後、2001年に現在のKDDIへと社名を変更し、同年エーユーを合併しました。近年では、2024年にローソンを持分法適用会社とするなど、異業種との連携を強化しています。

同社グループの従業員数は連結で73,198名、単体で9,891名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は事業会社の京セラ、第3位も同じく事業会社のトヨタ自動車となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.77%
京セラ 14.75%
トヨタ自動車 9.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性3名の計17名で構成され、女性役員比率は17.6%です。代表取締役会長は髙橋誠氏、代表取締役社長 CEOは松田浩路氏が務めています。取締役12名のうち、社外取締役は5名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
松田浩路 代表取締役社長 CEO 渉外・コミュニケーション統括本部長 2020年同社執行役員、2023年パーソナル事業本部副事業本部長、取締役などを経て、2025年より現職。
髙橋誠 代表取締役会長 2003年同社執行役員、2010年代表取締役執行役員専務、2018年代表取締役社長を経て、2025年より現職。
最勝寺奈苗 取締役執行役員専務 CFO コーポレート統括本部長 2020年同社執行役員、2023年CFO、2024年取締役執行役員常務を経て、2025年より現職。
勝木朋彦 取締役執行役員常務 CSO、CDO 経営戦略本部長 オープンイノベーション推進本部長 2019年auフィナンシャルホールディングス代表取締役社長、2024年同社CSOを経て、2025年より現職。
細井浩昭 取締役執行役員常務 ビジネス事業統括 ビジネスコア事業本部長 事業企画本部長 1989年第二電電入社、2010年グローバルICT本部出向、2024年ビジネス事業本部副事業本部長を経て、2026年より現職。
佐々木正見 取締役執行役員 パーソナル事業統括 パーソナルコア事業本部長 コア事業推進本部長 1995年北海道セルラー電話入社、2024年UQコミュニケーションズ代表取締役社長を経て、2026年より現職。
伊奈憲彦 取締役 1987年三田工業入社、2017年京セラドキュメントソリューションズ代表取締役社長などを経て、2026年より現職。


社外取締役は、淡輪敏(元三井化学代表取締役会長)、大川順子(元日本航空副会長)、奥宮京子(田辺総合法律事務所パートナー)、安藤真(元国立高等専門学校機構理事)、池田潤一郎(元商船三井代表取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「パーソナル」「ビジネス」および「その他」事業を展開しています。

(1) パーソナル


日本国内で「au」「UQ mobile」「povo」等の通信サービスを中心に、金融、エネルギー、LX等のサービスを提供しています。海外ではモンゴル等で通信・金融・エンタメサービスを展開しています。

収益源はモバイル通信サービスの月額基本使用料、通信料収入、携帯端末販売収入などです。運営は同社や、沖縄セルラー電話、JCOM、UQコミュニケーションズ等の子会社が行っています。

(2) ビジネス


法人顧客向けに、スマートフォン等のデバイス、ネットワーク、クラウド等の多様なソリューションや、「Telehouse」ブランドでのデータセンターサービスを提供しています。

収益源はソリューションサービス収入やデータセンターのスペース、電力等の使用料などです。運営は同社や、KDDIまとめてオフィス、アイレット等の子会社が行っています。

(3) その他


通信設備の建設及び保守、情報通信技術の研究及び開発等の事業を提供しています。

収益源は主にグループ内や外部企業向けの設備建設・保守の対価等です。運営は主にKDDIエンジニアリング等の子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が順調に拡大傾向にあります。利益面でも高水準を維持しており、一時的な落ち込みがあったものの当期は売上・利益ともに高い水準の数値を記録しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 54,467億円 56,300億円 56,997億円 58,355億円 60,719億円
税引前利益 10,645億円 10,491億円 9,432億円 10,734億円 11,179億円
利益率(%) 19.5% 18.6% 16.5% 18.4% 18.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 6,725億円 6,514億円 6,003億円 6,554億円 7,071億円

(2) 損益計算書


売上高および売上総利益は順調に拡大しており、売上総利益率は42.7%と安定した水準を維持しています。営業利益も前年を上回り、安定した利益構造を構築しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 58,355億円 60,719億円
売上総利益 24,919億円 25,906億円
売上総利益率(%) 42.7% 42.7%
営業利益 10,875億円 10,991億円
営業利益率(%) 18.6% 18.1%


売上原価および販売費及び一般管理費のうち、端末販売原価・修理原価が8,229億円(構成比16%)、減価償却費及び償却費が6,863億円(同14%)、人件費が5,870億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


パーソナル事業は通信品質の向上によるモバイルARPUの増加や金融事業の成長により増収となりましたが、契約コストの減損等により減益となりました。ビジネス事業はIoT関連サービスやデータセンターの旺盛な需要が牽引し、増収増益を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
パーソナル 47,093億円 48,127億円 8,463億円 8,283億円 17.2%
ビジネス 14,058億円 15,279億円 2,353億円 2,639億円 17.3%
その他 1,216億円 1,214億円 74億円 95億円 7.8%
調整額 -4,011億円 -3,902億円 -15億円 -26億円 -
連結(合計) 58,355億円 60,719億円 10,875億円 10,991億円 18.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 12,490億円 17,889億円
投資CF -11,801億円 -10,805億円
財務CF -336億円 -5,531億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.0%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も26.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、お客さまの期待を超える感動をお届けすることにより、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献します。」という企業理念を掲げています。また、2030年に向けたビジョンとして「KDDI VISION 2030:『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」を制定しています。

(2) 企業文化


同社グループは、「サステナビリティ経営」を経営の柱に位置づけています。マテリアリティの解決を通じた事業成長と社会価値創出を両立させ、その好循環により持続的な企業価値向上を目指しています。また、社員一人ひとりが持つべき考え方や価値観、行動規範として「KDDIフィロソフィ」を定め、グループ全体での共有・実践を推進しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営戦略(2026年度-2028年度)において、事業の持続的成長とクオリティ向上に注力し、リターンに基づくキャピタルアロケーションを実行する目標を掲げています。

* 調整後営業利益の年平均成長率(CAGR)5%
* 調整後当期利益に対する配当性向40%超
* ROE及びROICスプレッドを重要な経営指標に設定

(4) 成長戦略と重点施策


AIが社会インフラとして広く浸透する「AI前提社会」を見据え、異分野融合による価値創造手法「Fusion」を推進します。リアルなアセットとテクノロジーを掛け合わせた「Real-Tech Fusion」、通信基盤とAI基盤を一体提供する「Infrastructure Fusion」、多様なスキル・経験を持つ人財を育成・活用する「HR Fusion」の3つを軸に事業を強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「プロ人財を創り、育てる」をコンセプトとしたジョブ型人事制度を導入し、専門性の高いプロ人財の育成・獲得を進めています。自律的な専門性の追求を促す「ジョブ型の進化」、多様な知を融合させる「DE&Iの深化」、組織横断のコラボレーションを促す「働き方アップデート」を連動させ、個と組織の戦力最大化を実現します。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.3歳 16.4年 10,510,939円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.8%
男性育児休業取得率 85.9%
男女賃金差異(全労働者) 83.3%
男女賃金差異(正規雇用) 81.7%
男女賃金差異(パート・有期) 90.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性取締役の構成比率(25.0%)、女性経営基幹職の構成比率(18.4%)、各専門領域のプロ人財比率(42%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 内部統制に関するリスク


連結子会社において不適切な取引(架空循環取引)が発覚したように、内部統制システムが十分に機能しない場合、不適切な会計処理や信頼性の低下を招くリスクがあります。同社は再発防止策の徹底とグループ全体のガバナンス強化に継続して取り組んでいます。

(2) 通信の秘密および顧客情報の不適切な取り扱いや流出


サイバー攻撃の高度化やフィッシング詐欺などの不正行為により、サービス停止や機密情報の漏えいが発生するリスクがあります。同社は情報セキュリティガバナンスを強化し、24時間365日の監視体制や従業員教育などを徹底して対策に努めています。

(3) 通信障害・自然災害・事故等


国内外の通信ネットワークシステムや機器に依存しているため、障害や災害によりサービスが停止した場合、ブランドイメージや信頼性が低下する恐れがあります。同社は事業継続計画(BCP)の策定や定期的な訓練を実施し、迅速な復旧体制を整えています。

(4) 電気通信事業等に関する法規制・政策決定等


電気通信事業法やNTT法、経済安全保障推進法などの関連法規制の改廃や新たな政策が導入された場合、追加の対策コストが発生し、事業や競争優位性に影響を与えるリスクがあります。同社は動向を注視し、必要な措置や適切な対応を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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