※本記事は、KDDI株式会社の有価証券報告書(第41期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月13日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. KDDIってどんな会社?
通信サービスを中心に、金融やエネルギーなど幅広い事業を展開する同社の特徴を紹介します。
■(1) 会社概要
1984年に第二電電企画として設立され、1985年に第二電電へ商号を変更しました。1993年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1995年に市場第一部銘柄に指定されています。2000年にKDDおよび日本移動通信と合併してディーディーアイとなり、2001年に現在のKDDIに商号を変更しました。近年では、2024年にローソンを持分法適用会社とするなど、異業種との連携を強化しています。
従業員数は連結で64,636名、単体で9,483名です。筆頭株主は京セラで、第2位は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位はトヨタ自動車となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 京セラ | 16.83% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.55% |
| トヨタ自動車 | 10.21% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性3名の計17名で構成され、女性役員比率は17.6%です。代表取締役社長 CEOは松田浩路氏です。社外取締役は6名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松田浩路 | 代表取締役社長 CEO渉外・コミュニケーション統括本部長 | 2020年に同社執行役員に就任。2024年に取締役執行役員常務 CDOを経て、2025年より現職。 |
| 髙橋誠 | 代表取締役会長 | 2003年に同社執行役員に就任。2018年に代表取締役社長を経て、2025年より現職。 |
| 桑原康明 | 代表取締役執行役員副社長ビジネス事業本部長 | 2018年に同社執行役員に就任。2023年に取締役執行役員専務を経て、2024年より現職。 |
| 最勝寺奈苗 | 取締役執行役員常務 CFOコーポレート統括本部長 | 2020年に同社執行役員に就任。2023年より執行役員常務、CFO等を務め、2024年より現職。 |
| 竹澤浩 | 取締役執行役員常務パーソナル事業本部長 | 2018年に同社執行役員に就任。2022年に執行役員常務を経て、2024年より現職。 |
| 田中孝司 | 取締役相談役 | 2003年に同社執行役員に就任。2010年に社長、2018年に会長を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、山口悟郎(京セラ代表取締役会長)、山本圭司(トヨタ自動車デジタル情報通信本部長)、淡輪敏(三井化学取締役会長)、大川順子(元日本航空副会長)、奥宮京子(田辺総合法律事務所パートナー)、安藤真(元国立大学法人東京工業大学名誉教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「パーソナル事業」「ビジネス事業」および「その他」の事業を展開しています。
■パーソナル事業
日本国内で個人向けに「au」「UQ mobile」「povo」のマルチブランドで5G通信サービスを提供するほか、海外ではモンゴルとミャンマーの顧客向けに通信やエンターテインメントサービスを提供しています。
主に通信料収入や端末販売収入から収益を得ています。運営は主にKDDI、沖縄セルラー電話、JCOMなどが担当し、金融サービスやエネルギーサービスなどと連携した付加価値の提供に取り組んでいます。
■ビジネス事業
国内外の幅広い法人顧客向けに、スマートフォン等のデバイス、ネットワーク、クラウドなどの多様なソリューションや、「Telehouse」ブランドでのデータセンターサービス等を提供しています。
通信デバイスの販売やIoT、生成AIなどを活用したソリューション提供から収益を得ています。運営はKDDIを中心に、KDDIまとめてオフィス、アルティウスリンクなどが担い、顧客の事業成長を支援しています。
■その他
通信設備の建設および保守、情報通信技術の研究および開発等のサービスを提供しています。
通信インフラの構築や保守に関する業務受託から収益を得ています。運営はKDDIエンジニアリングやKDDI総合研究所などが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上収益は継続的に増加傾向にあります。税引前利益および当期利益は一時的に落ち込みが見られたものの、直近では大きく回復し、利益率も改善して安定した高収益基盤を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 53,126億円 | 54,467億円 | 56,300億円 | 56,997億円 | 58,355億円 |
| 税引前利益 | 10,381億円 | 10,645億円 | 10,491億円 | 9,432億円 | 10,734億円 |
| 利益率(%) | 19.5% | 19.5% | 18.6% | 16.5% | 18.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6,515億円 | 6,725億円 | 6,514億円 | 6,003億円 | 6,554億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期から増加し、売上総利益および営業利益も順調に伸びています。営業利益率は前期から2.6ポイント改善し、収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 56,997億円 | 58,355億円 |
| 売上総利益 | 24,253億円 | 24,919億円 |
| 売上総利益率(%) | 42.6% | 42.7% |
| 営業利益 | 9,120億円 | 10,875億円 |
| 営業利益率(%) | 16.0% | 18.6% |
■(3) セグメント収益
パーソナル事業は、端末販売収入や金融事業の成長により売上高が増加し、利益も大きく伸長しました。ビジネス事業もIoT関連サービスやデータセンター領域の成長に牽引され、増収増益を達成しています。全体として各セグメントがバランスよく成長しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| パーソナル | 46,927億円 | 47,132億円 | 6,877億円 | 8,459億円 | 17.9% |
| ビジネス | 12,896億円 | 13,998億円 | 2,170億円 | 2,330億円 | 16.6% |
| その他 | 1,183億円 | 1,234億円 | 86億円 | 100億円 | 8.1% |
| 調整額 | -4,008億円 | -4,008億円 | -12億円 | -15億円 | - |
| 連結(合計) | 56,997億円 | 58,355億円 | 9,120億円 | 10,875億円 | 18.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型といえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17,065億円 | 12,490億円 |
| 投資CF | -8,324億円 | -11,801億円 |
| 財務CF | -4,765億円 | -336億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.1%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、お客さまの期待を超える感動をお届けすることにより、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献します」という企業理念を掲げています。通信があらゆるものに溶け込む時代において、「命」「暮らし」「心」をつなぐことを使命とし、社会の持続的成長と企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、企業理念に謳われた使命を果たし持続的な成長を遂げるために、社員一人ひとりが持つべき考え方、価値観、行動規範として「KDDIフィロソフィ」を定めています。全従業員が心をひとつにしてこれを共有し実践することで、社会と企業の持続的な成長に貢献する体制を構築しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中期経営戦略において「サステナビリティ経営」を根幹に据えています。財務目標として、持続的な成長に向けて成長投資と株主還元を強化し、以下の指標を掲げています。
* EPS(1株当たり当期利益):2018年度対比1.5倍を引き続き目指す
* 株主還元:安定的な配当を継続し、配当性向40%超
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「サテライトグロース戦略」を推進し、5G通信、データドリブン、生成AIをコア領域として社会実装を進めています。さらに、成長を牽引する領域(Orbit1)としてDX、金融、エネルギーに注力し、新たな成長領域(Orbit2)としてモビリティや宇宙、ヘルスケアなどに挑戦することで、ライフスタイルの変革と事業拡大を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人財ファースト企業への変革」を推進しており、「新人事制度の浸透」「KDDI版ジョブ型人事制度によるプロ人財育成」「社員エンゲージメント向上」の三位一体改革に取り組んでいます。社員一人ひとりが専門性を持ち、自律したプロ人財として挑戦・成長し続けることを促し、イノベーションの創出とサステナブルな人財ポートフォリオの充実を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.0歳 | 16.4年 | 10,183,458円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.5% |
| 男性育児休業取得率 | 75.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 80.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 92.3% |
また、同社は「サステナビリティ中期目標」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性経営基幹職の構成比率(18.4%)、社員エンゲージメントスコア(74)、全社員におけるDX基礎スキル研修修了者(12,869人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 通信・異業種との競争激化
無料通話アプリの拡大や異業種からの新規参入、料金値下げによる競争激化がリスクとして挙げられています。また、人口減少に伴う通信料収入の低下や、新たな高速データ無線技術の登場により、同社グループの競争優位性が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 情報漏洩やサイバー攻撃の脅威
第三者によるサイバー攻撃や従業員の過失により、重要な顧客情報や通信の秘密が外部に流出するリスクがあります。これにより、同社グループのブランドイメージや信頼性の失墜、多額の補償・課徴金の発生を招き、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 大規模な通信障害やシステムの停止
自然災害や事故、サイバー攻撃などにより、国内外の通信ネットワークシステムが停止した場合、顧客サービスの提供に重大な支障をきたすリスクがあります。通信の停止は社会的影響が大きく、顧客満足度の低下や風評被害を通じて、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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