KDDI 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KDDI 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の大手電気通信事業者です。パーソナル事業とビジネス事業を柱に、通信を基盤としたDXや金融、エネルギーなどの周辺領域へ事業を拡大しています。2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比2.8%増、営業利益が16.3%増、親会社の所有者に帰属する当期利益が7.5%増の増収増益となりました。


※本記事は、KDDI株式会社 の有価証券報告書(第41期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月13日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. KDDIってどんな会社?


「au」ブランド等の通信サービスを基盤に、DX、金融、エネルギーなど非通信領域へも事業を拡大する総合通信事業者です。

(1) 会社概要


1984年に第二電電企画として設立され、2000年にKDD、日本移動通信と合併し株式会社ディーディーアイが発足、翌年KDDIへ商号変更しました。2001年にはau事業を統合し、携帯電話事業を強化しています。その後、2014年にジュピターテレコム(J:COM)を連結子会社化し、2024年にはローソンを共同経営体制へ移行するなど、通信以外の領域へも事業を拡大しています。

連結従業員数は64,636人、単体では9,483人です。大株主構成は、筆頭株主が創業者である稲盛和夫氏ゆかりの京セラ、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は設立時からの主要株主であるトヨタ自動車となっています。

氏名 持株比率
京セラ 16.83%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 16.55%
トヨタ自動車 10.21%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性3名の計17名で構成され、女性役員比率は17.6%です。代表取締役社長 CEOは松田浩路氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
髙橋 誠 代表取締役会長 2003年同社執行役員、2010年代表取締役執行役員専務、2016年副社長を経て、2018年代表取締役社長に就任。2023年CEO、2025年4月より現職。
松田 浩路 代表取締役社長 CEO 渉外・コミュニケーション統括本部長 2020年同社執行役員、2023年取締役執行役員、2024年取締役執行役員常務 CDOを経て、2025年4月より現職。
桑原 康明 代表取締役執行役員副社長 ビジネス事業本部長 2018年同社執行役員、2022年執行役員常務、2023年取締役執行役員専務を経て、2024年6月より現職。
田中 孝司 取締役相談役 2010年同社代表取締役社長、2018年代表取締役会長、2024年取締役会長を経て、2025年4月より現職。
最勝寺 奈苗 取締役執行役員常務 CFO コーポレート統括本部長 2020年同社執行役員、2023年執行役員常務 CFO コーポレート統括本部長を経て、2024年6月より現職。
竹澤 浩 取締役執行役員常務 パーソナル事業本部長 2018年同社執行役員、2022年執行役員常務、2024年4月パーソナル事業本部長を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、山口悟郎(京セラ会長)、山本圭司(トヨタ自動車シニアフェロー)、淡輪敏(三井化学会長)、大川順子(元日本航空副会長)、奥宮京子(弁護士)、安藤真(東京工業大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「パーソナル事業」「ビジネス事業」および「その他」事業を展開しています。

パーソナル事業


日本国内では「au」「UQ mobile」「povo」のマルチブランドで5G通信サービスを提供し、金融、エネルギー、LX等のサービスと連携して新たな体験価値を創出しています。海外ではモンゴルやミャンマーなどで通信、金融、エンターテインメントサービスを提供しています。

収益は主に、個人客からの通信料収入、端末販売収入、各種サービス利用料等から得ています。運営は、KDDI、沖縄セルラー電話、JCOM、UQコミュニケーションズ、ビッグローブなどが担っています。海外事業はKDDI Summit Global MyanmarやMobiCom Corporation等が運営しています。

ビジネス事業


国内外の法人顧客に対し、スマートフォン等のデバイス、ネットワーク、クラウド等のソリューションや、「Telehouse」ブランドでのデータセンターサービスを提供しています。また、AI時代のビジネスプラットフォーム「WAKONX」を通じ、業界特有の課題解決や事業成長に貢献しています。

収益は主に、法人顧客からのソリューション利用料、通信料、データセンター利用料等から得ています。運営は、KDDI、沖縄セルラー電話、中部テレコミュニケーション、KDDIまとめてオフィス、アルティウスリンク、KDDI America、KDDI Europe等が担っています。

その他


通信設備の建設および保守、情報通信技術の研究開発などを手掛けています。グループ全体の技術基盤を支える役割を担うとともに、将来の成長に向けた先端技術の研究開発を推進しています。

収益は主に、通信設備の建設・保守業務の受託料や研究開発成果に基づく収益等から構成されています。運営は、KDDIエンジニアリング、KDDI総合研究所、KDDIケーブルシップ、日本通信エンジニアリングサービスなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は緩やかながら着実な右肩上がりを続けており、第41期には約5兆9180億円に達しています。利益面でも、第40期に一時的な減益が見られたものの、第41期には税引前利益が1兆1046億円となり、高い利益水準を回復・維持しています。親会社の所有者に帰属する当期利益も安定的に推移しており、堅実な成長トレンドを示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 5兆3126億円 5兆4467億円 5兆6718億円 5兆7540億円 5兆9180億円
税引前利益 1兆0381億円 1兆0645億円 1兆0795億円 9927億円 1兆1046億円
利益率(%) 19.5% 19.5% 19.0% 17.3% 18.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 6515億円 6725億円 6791億円 6379億円 6857億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に伸長しています。第41期の営業利益率は18.9%と、前期から改善が見られます。売上原価や販管費のコントロールも効いており、収益性が向上している様子がうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5兆7540億円 5兆9180億円
売上総利益 2兆4305億円 2兆5084億円
売上総利益率(%) 42.2% 42.4%
営業利益 9616億円 1兆1187億円
営業利益率(%) 16.7% 18.9%

(3) セグメント収益


パーソナル事業は、エネルギー事業の商流変更による減収影響があったものの、端末販売や金融事業の拡大により微増収となり、利益面では通信ARPU収入の増加やローソン持分法投資利益の寄与などで大幅な増益となりました。ビジネス事業も、IoTやデータセンター等のグロース領域が成長し、増収増益を達成しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
パーソナル事業 4兆7470億円 4兆7956億円 7373億円 8771億円 18.3%
ビジネス事業 1兆2896億円 1兆3998億円 2170億円 2330億円 16.6%
その他 249億円 238億円 86億円 100億円 42.1%
調整額 - - -12億円 -15億円 -
連結(合計) 5兆7540億円 5兆9180億円 9616億円 1兆1187億円 18.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動から得た豊富なキャッシュを、ローソンへの出資などの投資活動に充当しつつ、財務活動では借入や社債発行による調達も行っています。本業で稼ぎながら将来への投資を積極的に進める健全な財務状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1兆7065億円 1兆2490億円
投資CF -8324億円 -1兆1801億円
財務CF -4765億円 -336億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


KDDIグループは、全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、顧客の期待を超える感動を届けることで、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献することを企業理念としています。また、2030年に向けて「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる」というビジョンを掲げています。

(2) 企業文化


同社は、企業理念に謳われた使命を果たし、持続的な成長を遂げるために、社員一人ひとりが持つべき考え方、価値観、行動規範として「KDDIフィロソフィ」を定めています。心をひとつにしてこれらを共有し実践していくことに努めており、経営の根幹に位置付けています。

(3) 経営計画・目標


中期経営戦略(2022-25年度)において、持続的な成長に向けた成長投資と株主還元の強化を掲げています。財務目標として、EPS(1株当たり当期利益)については2018年度対比で1.5倍を目指し、株主還元については配当性向40%超を目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


「サテライトグロース戦略」に基づき、5G通信、データドリブン、生成AIをコア事業とし、DX、金融、エネルギーなどの成長領域(Orbit1)や、モビリティ、宇宙などの挑戦領域(Orbit2)の拡大を推進しています。また、ローソンとの共同経営体制を通じて、リアルとデジタルの融合による「未来のコンビニ」の実現を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財ファースト企業」への変革を掲げ、新人事制度の浸透、ジョブ型人事制度によるプロ人財の育成、社員エンゲージメントの向上に取り組んでいます。多様な専門性を持つ人財の獲得と育成を進め、社員が自律的にキャリアを形成できる環境整備や、健康経営の推進による活力ある組織づくりを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.0歳 16.4年 10,183,458円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.5%
男性育児休業取得率 75.4%
男女賃金差異(全労働者) 81.1%
男女賃金差異(正規雇用) 80.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 92.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、各専門領域のプロ人財比率(40%)、社員エンゲージメントスコア(74)、女性取締役の構成比率(25.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競争激化と市場環境の変化


通信市場では、他事業者や新技術との競争、人口減少、異業種参入などにより、競争環境が激化しています。料金値下げ競争や端末価格の高騰、新たな高速データ無線技術の登場などが収益に悪影響を及ぼす可能性があります。また、期待通りの需要を獲得できない場合や、契約数を維持拡大できない場合、経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 通信障害およびシステムリスク


通信サービスは国内外のネットワークシステムに依存しており、自然災害、事故、サイバー攻撃、設備障害などによりサービスが停止した場合、ブランドイメージの低下や顧客満足度の低下を招き、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。大規模な誤課金や顧客情報の流出なども同様のリスク要因となります。

(3) 法的規制と政策変更


電気通信事業法や電波法、NTT法などの法規制や政策決定が事業運営に影響を与える可能性があります。競争政策の見直しや、NTTグループの再編などが公正な競争環境に影響を及ぼす懸念があります。また、国内外の様々な法規制(通信の秘密、個人情報保護、独占禁止法等)への対応が求められ、規制強化や遵守不備がコスト増加や活動制限につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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