日水コン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日水コン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日水コンはスタンダード市場に上場し、上下水道を中心とした水インフラに特化した建設コンサルティング事業を展開する企業です。直近の業績は、防災・老朽化対策の需要増や官民連携案件の拡大により、売上高244億円、経常利益25億円と増収増益を達成しており、堅調な成長トレンドを維持しています。


※本記事は、株式会社日水コンの有価証券報告書(第68期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日水コンってどんな会社?


上下水道など水環境に特化した建設コンサルティング事業を展開し、社会インフラの整備を支える企業です。

(1) 会社概要


1959年に水道専門のコンサルタントとして日本水道コンサルタントを設立し、営業を開始しました。1983年に現在の日水コンへ社名を変更し、全国へ事業拠点を拡大してきました。2021年には日本初の大型水インフラコンセッション事業へ参画し、2024年に東京証券取引所スタンダード市場への上場を果たしました。

同社グループは連結で737名、単体で668名の従業員を擁する体制で事業を運営しています。筆頭株主は事業会社のクボタで、第2位は公益財団法人の水・地域イノベーション財団、第3位は事業会社の伊藤忠商事となっており、事業シナジーを期待できる企業や関連財団が上位株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
クボタ 19.97%
水・地域イノベーション財団 15.34%
伊藤忠商事 8.43%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は中西新二氏が務めており、社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
野村喜一 代表取締役会長 1971年同社入社。下水道本部長、取締役副社長、代表取締役社長などを経て2019年3月より現職。
中西新二 代表取締役社長 1985年同社入社。水道事業部長、地域統括本部長などを経て2025年3月より現職。
小石川信昭 取締役専務執行役員 1974年同社入社。下水道西部本部長、代表取締役副社長執行役員管理本部長などを経て2026年1月より現職。
種市尚仁 取締役常務執行役員 1986年同社入社。下水道事業部長、コンサルティング本部長などを経て2025年3月より現職。
春公一郎 取締役(監査等委員) 1994年同社入社。下水道本部長、取締役常務執行役員管理本部長などを経て2023年3月より現職。


社外取締役は、小川健一(元東京都下水道局長)、髙田裕久(公認会計士・税理士)、柗田由貴(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設コンサルティング事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 水道分野


上水道・工業用水道インフラにおける調査、計画、設計等の技術的コンサルティングサービスを提供しています。主に官公庁や地方公共団体等の公的機関を顧客とし、老朽化した施設の更新や耐震化対策、広域化計画の策定、ウォーターPPP(官民連携)事業に関連する高度な技術支援を行っています。

収益源は、公的機関等から発注される調査・設計・工事監理等の業務委託料です。官公庁案件が大半を占めており、長年培ってきた信頼関係に基づき安定的な受注を獲得しています。事業の運営は主に日水コンが担い、一部の分析事業や施設維持管理事業をイオやRifレックスなどの子会社が担当しています。

(2) 下水道分野


下水道施設や管路網の整備に関する調査・計画・設計等のコンサルティングサービスを提供しています。近年激甚化する自然災害に対応するための浸水対策やインフラ施設の老朽化対策、国土強靭化に関連した業務を中心に、高度な専門知識を持った技術者チームが総合的なソリューションを提供しています。

収益は、主に官公庁や地方共同法人日本下水道事業団などからの業務委託料として受領しています。近年は官から民への流れに対応し、宮城県の上工下水一体官民連携運営事業などへの参画も進めています。事業の運営は主に日水コンが担当し、分析や海外案件についてはイオや海外子会社が補完しています。

(3) 河川その他分野


河川・砂防等の治水・防災関連や、水環境、水利用に関わる流域水管理部門のコンサルティングサービスを提供しています。また、建築部門や機電部門、情報システムやDX部門も内包しており、近年は小水力発電などの水を起点とした新規事業や農業水利分野(アグリ領域)への展開にも取り組んでいます。

収益源は、治水・利水に関する計画策定や施設設計に対する業務委託料です。防災関連の公共事業費を背景に安定した収益基盤を持ちます。運営は日水コンを中心に、砂防分野の専門技術を提供する砂防エンジニアリングなどの子会社が連携して、幅広い社会インフラの課題解決にあたっています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は211億円から244億円へと堅調に拡大を続けています。経常利益も16億円から25億円の水準で安定して推移しており、直近の2025年12月期には利益率10.3%を記録するなど、高付加価値なコンサルティング業務により安定した収益力を維持しながら成長を遂げています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 211億円 208億円 219億円 235億円 244億円
経常利益 17億円 19億円 16億円 22億円 25億円
利益率(%) 8.0% 9.2% 7.5% 9.2% 10.3%
当期利益 9億円 11億円 11億円 15億円 17億円

(2) 損益計算書


直近2年間の損益状況を見ると、売上高の伸長に伴い売上総利益が増加し、売上総利益率は28%台から29%台へと向上しています。販売費及び一般管理費の増加を吸収して営業利益も22億円から24億円へと順調に拡大しており、営業利益率は約10%弱と良好な水準を確保して本業の稼ぐ力を高めています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 235億円 244億円
売上総利益 67億円 71億円
売上総利益率(%) 28.3% 29.1%
営業利益 22億円 24億円
営業利益率(%) 9.3% 9.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が15億円(構成比32%)、賞与引当金繰入額が6億円(同13%)を占めています。また、単体の売上原価(164億円)のうち、労務費が80億円(構成比49%)、外注費が53億円(同32%)を占めており、専門的なコンサルティングサービスを提供する事業特性から人件費関連がコストの多くを占めています。

(3) セグメント収益


同社は建設コンサルティング事業の単一セグメントですが、分野別の売上実績を見ると、下水道分野が全体の約半数を占めています。水道分野・下水道分野ともにインフラ老朽化対策や官民連携(ウォーターPPP)関連業務の受注が好調に推移して増収を牽引した一方、河川その他分野は一部業務の受注減により微減となりました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
水道 82億円 87億円
下水道 116億円 122億円
河川その他 37億円 35億円
連結(合計) 235億円 244億円


営業活動で安定的に生み出した資金を設備投資や預入、株主還元へと充当しており、健全な財務サイクルを構築している優良な状態といえます。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.9%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も59.8%で市場平均を上回っており、収益性と安全性の双方において優れた財務基盤を有しています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「水のインパクトカンパニー」をパーパス(存在意義)として掲げ、「水の統合インフラマネジメントの担い手」となることをミッション(使命)としています。長年培ってきた専門性を生かして水に関する様々な社会課題を解決し、「潤いのある持続可能な社会の実現」に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、社員一人ひとりに根付いている「技術への自負」「風通しが良く自由闊達」「仕事への責任」「個を尊重」という価値観を大切にしています。これらの価値軸や企業文化を踏まえ、社員が「実行能力」を最大限に発揮して行動することで、社会価値と経済価値の双方を創出するサステナビリティ経営を実践しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2030年度を目標とする「日水コングループビジョン2030」を策定し、持続的な企業価値の向上と効率的な経営を目指しています。具体的な数値目標として以下を掲げています。

・連結売上高300億円
・連結営業利益30億円(営業利益率10%)
・ROE10%
・従業員数(連結)900名

(4) 成長戦略と重点施策


既存の上下水道・流域水インフラ領域で着実な成長を追求しつつ、官民連携(PPP/PFI)や農業水利分野(アグリ領域)等の成長領域へ事業を拡大します。また、社内外のデジタル化推進や新規事業開発の体制を強化するとともに、地域会社や特別目的会社(SPC)の設立、戦略的なM&Aを推進してグループ全体の体制を強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人的資本が価値創造の源泉であるとの認識のもと、経営戦略に連動した人材戦略を推進しています。採用強化と離職防止による「量的確保」を基盤に、OJTや充実した研修機会を通じて各人の能力開発と適正配置を行い、組織マネジメントを高度化することで「質的向上」を図り、自律的に成長できる環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 41.7歳 13.5年 8,773,415円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.4%
男性育児休業取得率 95.2%
男女賃金差異(全労働者) 64.7%
男女賃金差異(正規雇用) 74.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 61.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 成果品に対する瑕疵責任


コンサルティング業務における成果品に瑕疵があった場合、人命に関わる事故に発展する恐れや、広範囲での指名停止処分、改修による多額の追加費用の発生を招く可能性があります。同社は品質マネジメントシステムに基づく厳格な設計検証・審査体制を構築し、瑕疵の未然防止に努めています。

(2) 官公庁予算等の市場環境変化


国土強靭化の推進により事業環境は堅調ですが、官公庁の予算削減や補助金の減少、ODA(政府開発援助)投資の縮小が起きた場合、受注高の減少に直結する可能性があります。同社は環境問題への対応や新技術への投資を進め、社会ニーズの変化に柔軟に適応する体制を整えています。

(3) 競合他社との競争激化


建設コンサルティング市場における競合他社との競争が激化し、受注価格の大幅な低下や相対的な競争優位性の喪失が発生した場合、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。同社は官民連携(PPP/PFI)関連業務の拡大や戦略的な人材育成を通じて、独自性の高いサービス提供と競争力維持を図っています。

(4) 法的規制や建設コンサルタント登録


事業活動の前提となる国土交通省の建設コンサルタント登録や、独占禁止法などの各種法的規制に抵触し、重要な許認可が取り消された場合、社会的信用を失い事業継続が困難になる恐れがあります。内部監査や各種研修等を通じてコンプライアンス意識を徹底し、法令違反を未然に防ぐ管理体制を整備しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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