セック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のリアルタイム技術専門のソフトウェア開発会社です。社会基盤、宇宙先端、モバイルネットワークなどの分野で、リアルタイムソフトウェアを提供しています。第55期の連結業績は、官公庁や医療・防衛分野の開発が増加し、売上高103億円、経常利益19億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社セック の有価証券報告書(第55期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. セックってどんな会社?


社会インフラや宇宙開発など、高度な信頼性が求められるリアルタイムソフトウェア技術に特化した企業です。

(1) 会社概要


1970年5月に設立され、翌年には社会基盤システムや宇宙先端システムの案件を受注しています。1984年にはモバイルネットワーク分野へ進出し、2004年12月にジャスダックへ上場しました。その後、2017年9月に東証一部へ市場変更し、2022年4月の市場区分見直しに伴い、現在はプライム市場に上場しています。

同社(単体)の従業員数は351名です。筆頭株主は創業者一族の資産管理会社と思われる有限会社矢野商会で、第2位、第3位には信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
有限会社矢野商会 27.23%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 9.19%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は櫻井 伸太郎氏、代表取締役会長は秋山 逸志氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
櫻井 伸太郎 代表取締役社長 1983年入社。開発副本部長、SI本部担当マネジャーなどを経て、2016年開発本部長、取締役就任。2019年4月より現職。AMSEC,INC.社長を兼務。
秋山 逸志 代表取締役会長 1976年入社。開発第一部長、経理部長などを経て、2006年代表取締役社長に就任。2019年4月より現職。
杉山 寿顕 取締役管理本部長 2008年入社。管理本部経理部長、執行役員を経て、2019年6月より現職。
酒井 俊司 取締役(監査等委員) 1976年入社。開発本部長、取締役副社長、管理本部長などを歴任。2019年6月より現職(常勤)。


社外取締役は、西村 邦裕(テンクー代表取締役社長)、酒井田 努(静岡ひがし法律事務所代表弁護士)、上岡 玲子(東京工科大学片柳研究所教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報サービス事業」の単一セグメントですが、事業分野を以下の4つのビジネスフィールド(BF)に分類して展開しています。

(1) 社会基盤システムBF


高度交通システム、防衛関連、医療、環境エネルギーなど、社会公共性の高い分野の技術アプリケーションを開発しています。また、国や地方自治体などで利用される情報システムも手掛けています。

収益は、主に官公庁や独立行政法人、電機メーカーなどからのシステム受託開発費として得ています。運営は主にセックが行っています。

(2) 宇宙先端システムBF


科学衛星や惑星探査機の組込みソフトウェア、天体望遠鏡制御などの宇宙関連システムに加え、車両自動走行、次世代ロボットの研究開発などの先端システムを開発しています。

収益は、研究機関や重工業メーカー、自動車メーカーなどからの開発費や研究開発受託費として得ています。運営は主にセックが行っています。

(3) モバイルネットワークBF


キャッシュレス決済端末や車載端末などのモバイルデバイスを使ったサービスシステム、スマートコンストラクション関連、XR(クロスリアリティ)技術を用いたソフトウェアを開発しています。

収益は、移動体通信事業者や電機メーカーなどからのシステム開発費として得ています。運営は主にセックが行っています。

(4) インターネットBF


非接触ICに搭載される組込みソフトウェアやIoT関連システム、民間企業向けの技術アプリケーション、クラウドシステムなどを開発しています。

収益は、民間企業や電機メーカーなどからのシステム開発費として得ています。運営は主にセックが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第51期から第55期までの推移を見ると、売上高は65億円から103億円へと順調に拡大しています。経常利益も11億円から19億円へと増加傾向にあり、利益率も16%〜18%台と高い水準を維持しています。当期純利益も毎期増加しており、安定した成長を続けています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 65億円 66億円 75億円 85億円 103億円
経常利益 11億円 11億円 13億円 15億円 19億円
利益率(%) 16.2% 16.9% 17.1% 18.1% 18.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 8億円 9億円 11億円 13億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しています。売上原価の増加はありましたが、増収効果により営業利益も拡大しました。売上総利益率は約30%と高い収益性を維持しており、営業利益率も17%台を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 85億円 103億円
売上総利益 26億円 31億円
売上総利益率(%) 29.9% 29.8%
営業利益 15億円 18億円
営業利益率(%) 17.2% 17.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が2億円(構成比19%)、役員報酬が1億円(同10%)、研究開発費が2億円(同12%)を占めています。売上原価では、外注費が38億円(構成比51%)、労務費が26億円(同36%)となっています。

(3) セグメント収益


各ビジネスフィールドの販売実績を見ると、社会基盤システムBFが官公庁や医療・防衛分野の好調により大幅に伸長しました。インターネットBFや宇宙先端システムBFも増加しましたが、モバイルネットワークBFはXR関連の減少により減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
モバイルネットワーク 12億円 9億円
インターネット 12億円 13億円
社会基盤システム 33億円 50億円
宇宙先端システム 28億円 31億円
連結(合計) 85億円 103億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CF、投資CF、財務CFがいずれもマイナスとなりました。形式上は「末期型」に分類されますが、営業CFのマイナスは売上急増に伴う売上債権の増加(約19億円)、財務CFのマイナスは配当金の支払(約4億円)によるものであり、現預金残高は22億円あるため資金繰りに懸念はありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4億円 -3億円
投資CF -1億円 -0.4億円
財務CF -4億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「社会の安全と発展のために」を会社理念とし、リアルタイム技術を中核に据えたビジネスを展開しています。「最良のリアルタイムソフトウェアを提供して、社会に貢献する」ことを会社目標とし、トップブランドのリアルタイム技術専門会社を目指しています。

(2) 企業文化


「QCD&I」(品質・価格・納期を窮め、イノベーションで飛躍する)をビジネスコンセプトとしています。「基礎なくして高度な専門性なし」という理念のもと、高度な技術に対応できる基礎能力を重視し、新技術を習得して優秀な技術者を育成する風土があります。

(3) 経営計画・目標


「質重視経営」の成果として、売上高営業利益率2桁の維持を目標としています。

* 売上高営業利益率:2桁維持

(4) 成長戦略と重点施策


「先端技術を窮め、オープン・イノベーションで事業成長を目指す」を重点テーマとしています。官公庁などの社会基盤系開発で安定収益を確保しつつ、研究開発や製品開発を強化し、新技術の提案力で成長分野を受注する戦略です。具体的には、DX関連、医療・防衛分野、宇宙ロボットや自動走行の研究開発などに注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「基礎なくして高度な専門性なし」の方針のもと、基礎能力の高い人材を採用し、6か月間の新入社員教育でリアルタイム技術や最新技術を習得させています。社員の知的好奇心を起点とした研究開発を推奨し、仕事を通じて専門性を高める「学ぶ組織」の構築を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.0歳 13.3年 6,779,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.8%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.5%
男女賃金差異(正規雇用) 81.2%
男女賃金差異(非正規) 67.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用応募者に占める女性の割合(22.5%)、有給休暇取得率(70.0%)、情報処理技術者試験資格保有率(96.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 問題プロジェクトの発生


納期遅延や顧客クレーム、過大勤務などが発生する問題プロジェクトは、多額の原価発生により不採算となる傾向があります。特に大型案件で発生した場合や、信用失墜により取引停止となった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 大型プロジェクトの採算


原則としてプロジェクト全体を一括受注する契約形態をとっており、多くの経営資源を投入する大型プロジェクトの採算が悪化した場合、全社の業績に影響を与える可能性があります。また、プロジェクト完了後の技術者の再配置が不調の場合、稼働率低下のリスクがあります。

(3) 人材の確保


IT人材争奪戦が激化する中、信用力や処遇向上により優秀な人材獲得を目指していますが、計画通りに進まない場合、成長機会を逸する可能性があります。また、人材が定着しない場合、技術伝承やプロジェクト編成に支障をきたす恐れがあります。

(4) セキュリティ事故


サイバーセキュリティ経営ガイドラインに則り対策を行っていますが、万一セキュリティ事故が発生し、信用失墜による取引停止や賠償金支払いが生じた場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。また、高セキュリティ設備の投資負担が生じる場合もあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。