セック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するセックは、リアルタイムソフトウェアの提供を主体とするリアルタイム技術専門会社です。社会基盤や宇宙先端分野などで高度な技術力を発揮しています。直近の業績は、売上高112億円(前期比9.0%増)、営業利益19億円(同4.8%増)と堅調な増収増益を達成しました。


記事タイトル:セック転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、セックの有価証券報告書(第56期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. セックってどんな会社?


リアルタイムソフトウェアを軸に社会インフラや宇宙先端分野へ技術を提供する専門会社です。

(1) 会社概要


同社は1970年に設立され、翌年には高速道路管制システムやロケットエンジン高空性能試験システムを受注するなど、創業期から高度な技術力を有していました。その後も事業領域を拡大し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場、2017年には東京証券取引所市場第一部へ指定されました。

従業員数は単体で365名です。筆頭株主は資産管理等を行う有限会社矢野商会で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は従業員の資産形成を支援するセック従業員持株会となっています。

氏名 持株比率
有限会社矢野商会 27.20%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.93%
セック従業員持株会 4.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は櫻井伸太郎氏が務めています。社外取締役は3名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
秋山 逸志 代表取締役会長 1976年同社入社。開発第一部長、執行役員、経理部長、取締役、代表取締役社長を経て、2019年4月より現職。
櫻井 伸太郎 代表取締役社長 1983年同社入社。開発副本部長、開発本部長、取締役などを経て、2019年4月より現職。AMSEC,INC. PRESIDENTを兼務。
杉山 寿顕 取締役管理本部長 2008年同社入社。管理本部経理部長、執行役員を経て、2019年6月より現職。
酒井 俊司 取締役(監査等委員) 1976年同社入社。技術研究部長、執行役員、開発本部長、取締役副社長、管理本部長などを経て、2019年6月より現職。


社外取締役は、西村邦裕(テンクー代表取締役社長)、酒井田努(静岡ひがし法律事務所代表弁護士)、上岡玲子(zeroinon取締役)です。

2. 事業内容


同社は情報サービス事業の単一セグメントですが、事業分野を「ビジネスフィールド」に分類して事業を展開しています。

(1) 社会基盤システム・宇宙先端システム


社会公共性の高いシステム(高度交通、防衛、医療、環境エネルギー)や官公庁向け情報システムを開発しています。宇宙先端分野では、科学衛星、天体望遠鏡、車両自動走行、次世代ロボットなどの先端システムを開発しています。

収益源は、顧客からの受託開発やシステム関連の役務提供による対価です。事業の運営はセックが行っています。

(2) モバイルネットワーク・インターネット


キャッシュレス決済端末などのモバイルデバイスを使ったサービスシステムや、XRなど次世代技術を使ったエッジデバイスのソフトウェアを開発しています。インターネット分野ではIoT関連システムやクラウドシステムなどを提供しています。

収益源は、通信事業者や民間企業向けなどの受託開発を中心に、システムの提供完了または期間経過に応じた対価を受け取っています。事業運営はセックが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、一貫して増収増益のトレンドを維持しています。リアルタイム技術への底堅い需要や社会基盤システムなどの好調により、売上高は66億円から112億円へと順調に拡大し、経常利益率も18%前後の高い水準で推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 66億円 75億円 85億円 103億円 112億円
経常利益 11億円 13億円 15億円 19億円 21億円
利益率(%) 16.9% 17.1% 18.1% 18.4% 18.4%
当期純利益 8億円 9億円 11億円 13億円 15億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の拡大に伴い売上総利益・営業利益ともに増加しています。継続的な研究開発や人材への投資を実施しつつも、生産性の向上により16%台の高い営業利益率を確保しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 103億円 112億円
売上総利益 31億円 33億円
売上総利益率(%) 29.8% 29.6%
営業利益 18億円 19億円
営業利益率(%) 17.4% 16.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が3億円(構成比19%)、研究開発費が2億円(同15%)を占めています。売上原価では、外注費が41億円(同52%)、労務費が27億円(同35%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は情報サービス事業の単一セグメントですが、ビジネスフィールド別の売上高を比較します。社会基盤システムやインターネット分野が官公庁・民間向けの需要増により大きく伸びた一方、モバイルネットワーク分野は減少傾向にあります。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
モバイルネットワーク 9億円 7億円
インターネット 13億円 18億円
社会基盤システム 50億円 55億円
宇宙先端システム 31億円 32億円
連結(合計) 103億円 112億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済等を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -3億円 17億円
投資CF -0.4億円 -0.5億円
財務CF -4億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も82.9%といずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「社会の安全と発展のために」を会社理念とし、最良のリアルタイムソフトウェアを提供して社会に貢献することを目標として掲げています。情報社会のキーコンセプトはリアルタイムにあるとし、創業以来、リアルタイム技術を中核に据えたビジネスを展開しています。

(2) 企業文化


「QCD&I」―QCD(品質・価格・納期)を窮め、I(イノベーション)で飛躍する―をビジネスコンセプトとして主体的なビジネスに取り組んでいます。また、「基礎なくして高度な専門性なし」の基本理念のもと、社員が自ら学び成長する「学ぶ組織」の構築を重視しています。

(3) 経営計画・目標


安定的な成長に加えて高い成長性を確保するとともに、会社理念の方針のひとつである「質重視経営」の成果として、売上高営業利益率2桁を維持することを客観的な指標として努力しています。次期の目標として以下の数値を掲げています。

* 売上高:118億円
* 営業利益:19.8億円
* 経常利益:23億円
* 当期純利益:15.8億円

(4) 成長戦略と重点施策


「先端技術を窮め、オープン・イノベーションで事業成長を目指す」を重点テーマとしています。当社の強みである先端技術を窮めるための高度技術教育の充実や、大学・国・企業の研究機関との共同研究を推進します。官公庁を主体とした社会基盤系の開発で業績のベースを確保し、成長分野を戦略的に受注する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ソフトウェアビジネスは人への依存度が極めて高く、社員の質が会社の成長に繋がると認識しています。そのため、新卒採用を人材基盤の中核と位置づけ、基礎能力の高い人材を計画的に確保しています。「学ぶ組織」を構築し、仕事を通して専門性を高める教育制度の充実や働きやすい環境整備への投資を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.0歳 13.2年 7,253,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 58.5%


また、同社は「指標及び目標」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(72.7%)、情報処理技術者試験資格保有率(93.0%)、採用応募者に占める女性の割合(18.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 問題プロジェクトの発生


納期遅延、お客様クレーム、過大勤務を発生させたプロジェクトが不採算となるケースが多く、大型プロジェクトにおいて問題が発生した場合は、顧客の信用失墜や取引減少に繋がり、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 大型プロジェクトの採算と組み替え


開発要員などの経営資源の多くを投入する大型プロジェクトの採算は業績に直結します。また、プロジェクト完了後に多くの技術者が一斉に手空きとなるため、案件の切り替えが不調な場合には技術者の稼働率が低下し、業績に影響する恐れがあります。

(3) 受注価格水準の変動


同社の売上原価の大部分は人件費と外注費で構成されており、IT人材争奪戦等を背景にコストは増加傾向にあります。高付加価値化や生産性向上に努めていますが、増加したコスト分を受注価格に反映できない場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。