※本記事は、株式会社博報堂DYホールディングス の有価証券報告書(第22期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 博報堂DYホールディングスってどんな会社?
広告業界国内2位の規模を誇り、博報堂、大広、読売広告社などを傘下に持つマーケティングサービス企業グループです。
■(1) 会社概要
2003年10月に博報堂、大広、読売広告社の3社が経営統合し、共同持株会社として設立されました。同年12月には3社のメディア・コンテンツ機能を統合した博報堂DYメディアパートナーズを設立。2005年2月に東証一部へ上場し、2022年4月にプライム市場へ移行しました。2018年10月にはデジタル領域強化のためDACホールディングス(現 Hakuhodo DY ONE)を完全子会社化しています。2025年4月にはグループ内組織再編を実施し、機能強化を図っています。
同グループの連結従業員数は29,386名、単体では174名です。筆頭株主は教育事業への助成等を行う公益財団法人博報堂教育財団で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)です。安定した株主構成のもと、長期的な視野での経営を推進しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 公益財団法人博報堂教育財団 | 19.32% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 8.86% |
| 一般社団法人博政会 | 4.98% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.0%です。代表取締役社長は水島正幸氏です。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 戸田 裕一 | 取締役会長 | 1972年博報堂入社。同社社長、博報堂DYホールディングス社長を経て2022年6月より現職。 |
| 水島 正幸 | 取締役社長(代表取締役) | 1982年博報堂入社。同社社長を経て2019年6月より博報堂DYホールディングス代表取締役社長。2025年4月より現職。 |
| 西岡 正紀 | 取締役(代表取締役) | 1980年博報堂入社。同社取締役専務執行役員などを経て、2025年4月より現職。 |
| 矢嶋 弘毅 | 取締役副社長 | 1984年博報堂入社。DAC社長、会長等を歴任。2024年4月より現職。メディア・コンテンツ領域を担当。 |
| 江花 昭彦 | 取締役副社長 | 1983年博報堂入社。博報堂プロダクツ社長、博報堂取締役専務執行役員などを経て2025年4月より現職。 |
社外取締役は、服部暢達(元ゴールドマン・サックス証券マネージング・ディレクター)、山下徹(元NTTデータ社長)、有松育子(元国立教育政策研究所長)、上田廣一(元東京高等検察庁検事長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「広告業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 広告業
同グループは、新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット・屋外広告等の広告媒体取扱や広告制作、マーケティング戦略の立案、コンサルティング、リサーチ、セールスプロモーション、PR、イベント実施等の統合マーケティングソリューションを提供しています。顧客企業に対し、多様な専門性を活かしたサービスをワンストップで展開しています。
主な収益源は、広告主からの媒体取扱手数料や制作費、コンサルティングフィー等です。運営は、株式会社博報堂、株式会社大広、株式会社読売広告社、株式会社Hakuhodo DY ONE、株式会社アイレップ、ソウルドアウト株式会社などの広告事業会社と、総合メディア会社である株式会社博報堂DYメディアパートナーズ等が担っています。
■(2) その他事業
報告セグメントに含まれない事業として、その他の関連サービスを展開しています。これには、特定のマーケティング領域に特化した専門サービスや、グループ全体の機能支援などが含まれます。
収益は、各事業におけるサービス提供対価として顧客から受領します。運営は、グループ内の専門機能会社や新規事業開発を担う子会社等がそれぞれの領域で行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益(収益)は2021年3月期から2023年3月期にかけて増加傾向にありましたが、2024年3月期に一時減少し、当期は再び増加に転じています。経常利益は2022年3月期をピークに変動しており、当期は前期比で回復しています。当期利益は変動が大きく、当期は減少しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 7,146億円 | 8,951億円 | 9,911億円 | 9,468億円 | 9,533億円 |
| 税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 | 496億円 | 757億円 | 604億円 | 378億円 | 427億円 |
| 利益率(%) | 6.9% | 8.5% | 6.1% | 4.0% | 4.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 251億円 | 333億円 | 226億円 | 414億円 | 125億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。営業利益および営業利益率は、前期と比較して若干改善しています。コストコントロールと売上の増加が寄与していると考えられます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 9,468億円 | 9,533億円 |
| 売上総利益 | 3,942億円 | 3,996億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.6% | 41.9% |
| 営業利益 | 343億円 | 376億円 |
| 営業利益率(%) | 3.6% | 3.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1,566億円(構成比43%)、その他経費が1,537億円(同42%)を占めています。人件費が主要なコスト要因となっています。
■(3) セグメント収益
同社グループは単一セグメントであるため、セグメント別の詳細な記載は省略しますが、地域別では日本国内が売上の約7割強を占めています。海外事業は北米や中国での市場環境の厳しさがありつつも、ASEAN地域等での展開を進めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
健全型(営業CF+、投資CF-、財務CF-):本業で生み出したキャッシュで投資を行い、かつ借入金の返済や配当支払い等の財務活動も行っている、財務的に健全な状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 99億円 | 824億円 |
| 投資CF | 63億円 | -135億円 |
| 財務CF | 11億円 | -458億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、グローバルパーパスとして「生活者、企業、社会。それぞれの内なる想いを解き放ち、時代をひらく力にする。Aspirations Unleashed」を策定しています。これを起点に、生活者、企業、社会をつなぎ、新たな関係価値を生み出すことで、広告会社グループから「クリエイティビティ・プラットフォーム」となることを目指しています。
■(2) 企業文化
生活者があらゆるものの中心となる「生活者主導社会」の到来を見据え、広告会社をオリジンとしつつもその枠を超えた価値提供を目指しています。不確実な環境下で変革を進めるため、グループ共通の価値観として上記のグローバルパーパスを掲げ、クリエイティビティをエッジとした事業展開を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年3月期から2027年3月期を「収益性の改善と成長オプションを創造する期間」と位置づけ、2032年3月期をターゲットに利益構造の変革を目指しています。2027年3月期の具体的な数値目標は以下の通りです。
* 調整後のれん償却前営業利益年平均成長率:+10%以上
* 調整後売上総利益年平均成長率:+5%以上
* 調整後のれん償却前オペレーティング・マージン:13%以上
* のれん償却前ROE:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
新たな関係価値を生み出す事業領域として「マーケティング」「コンサルティング」「テクノロジー」「コンテンツ」「インキュベーション」「グローバル」の6つを設定しています。これらが連携し収益拡大と事業安定性の向上を図ります。具体的には以下の3つの取り組みを進めます。
1. マーケティングビジネスの構造変革:グループリソースを集約した新会社「Hakuhodo DY ONE」や、博報堂と博報堂DYメディアパートナーズの統合により、統合マーケティングおよびフルファネルマーケティング機能を強化します。
2. 新たな成長オプションの創造:コンサルティング、テクノロジー等の領域へ積極投資を行い、ITコンサルティング領域への本格参入などを進めます。
3. グローバルビジネスのリモデル:海外拠点の連携強化や、戦略事業組織kyuの専門性と博報堂の生活者発想を掛け合わせたネットワーク形成により、デジタルマーケティング領域を中心に収益力を強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人を中心としたサステナブルな経営」を掲げ、クリエイティビティを発揮する人材への投資と育成を重視しています。社員一人ひとりが自ら成長する意志を持ち、キャリアオーナーシップを持って挑戦できる環境整備や風土醸成に取り組んでいます。また、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を推進し、多様な個の成長と尊重によるクリエイティビティの発揮を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.4歳 | 12.8年 | 10,915,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.4% |
| 男性育児休業取得率 | 87.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 78.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、リサイクル率(83.5%)、人権研修受講率(91.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況・市場環境の変動
国内企業の広告費支出は景気動向の影響を強く受けます。同社グループの売上高に占める国内比率は高いため、国内景況の悪化は業績に悪影響を与える可能性があります。これに対し、顧客基盤の拡大やサービスの多様化、海外展開を進めていますが、経済回復の遅れや対応が不十分な場合、影響を受ける可能性があります。
■(2) 当社グループの事業活動に関するリスク
マスメディア広告の売上構成比は減少傾向にあるものの、依然として重要なシェアを占めています。一方でインターネット広告は成長しており、テクノロジーの進展によるビジネス環境の変革期にあります。広告領域を超えた価値提供への事業構造変革を進めていますが、この取り組みが迅速かつ十分に行われない場合、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 競合に関するリスク
日本の広告業界では上位企業への集中傾向が強く、インターネット広告専業会社や外資系企業、プラットフォーマー、コンサルティング会社などの異業種との競争が激化しています。サービスの多様化や創造的提案力で優位性確保を目指しますが、競争激化による報酬減額や優位性の喪失が生じた場合、業績に悪影響を与える可能性があります。



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