ヒューマンホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヒューマンホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヒューマンホールディングスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、教育、人材、介護事業を展開する企業グループです。2025年3月期は、主力の人材関連事業や介護事業が堅調に推移し、全事業で増収を達成しました。売上高1003億円、経常利益36億円といずれも前期比で増収増益となっています。


※本記事は、ヒューマンホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第23期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヒューマンホールディングスってどんな会社?


教育事業を祖業とし、そこから派生した人材関連事業や介護事業などを多角的に展開する企業グループです。

(1) 会社概要


1985年に株式会社教育未来社として設立され、教育事業を開始しました。その後、1988年に人材派遣事業を行う子会社を設立し、2002年に持株会社体制へ移行して現在の商号となりました。2004年に株式を店頭登録(現スタンダード市場)し、現在に至ります。教育で人を育て、人材事業で社会へ送り出す循環型ビジネスモデルを構築しています。

同グループの連結従業員数は4,681名(単体135名)です。大株主構成を見ると、筆頭株主は有限会社ペアレンツ、第2位は佐藤新悟氏、第3位は佐藤朋也氏となっており、創業者一族およびその資産管理会社が上位を占めています。

氏名 持株比率
有限会社ペアレンツ 22.27%
佐藤新悟 9.64%
佐藤朋也 8.31%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は佐藤朋也氏が務めています。社外取締役比率は9.1%です。

氏名 役職 主な経歴
佐藤朋也 代表取締役社長 1991年ザ・ヒューマン入社。2002年同社代表取締役社長に就任。ヒューマンアカデミー等のグループ会社役員を経て現職。
佐藤耕一 取締役ファウンダー 1985年教育未来社(現ヒューマンアカデミー)代表取締役社長。グループ各社の社長を経て、2002年同社会長、2021年より現職。
黒﨑耕輔 取締役管理本部担当 1995年ザ・ヒューマン入社。ヒューマンビジネスサービス代表取締役などを経て、2009年より管理本部担当として現職。
佐藤安博 取締役経営企画担当 2014年同社入社。執行役員、総合企画担当を経て、2019年より経営企画担当として現職。
高橋哲雄 取締役人材関連事業担当 1997年ヒューマン・タッチ入社。ヒューマンリソシア代表取締役などを経て、2024年より現職。
今堀健治 取締役教育事業担当 2002年ザ・ヒューマン入社。ヒューマンアカデミー代表取締役などを経て、2024年より現職。
瀬戸口信也 取締役介護事業担当 2016年ヒューマンライフケア取締役。同社代表取締役などを経て、2019年より介護事業担当として現職。


社外取締役は、南靖郎(弁護士法人淀屋橋・山上合同弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「人材関連事業」「教育事業」「介護事業」および「その他」事業を展開しています。

人材関連事業


人材派遣、人材紹介、業務受託、DXソリューションなどを提供しており、労働人口減少やDX推進のニーズに対応しています。主な顧客は人材不足や生産性向上を課題とする企業であり、海外ITエンジニアの活用やRPA等のデジタルツール導入支援も行っています。

収益は、派遣先企業からの派遣料金、紹介手数料、業務受託費などが柱です。運営は主にヒューマンリソシア、ヒューマングローバルタレントが行っています。

教育事業


社会人向けのリカレント教育、全日制専門教育、児童教育、日本語教育、保育事業などを幅広く展開しています。リスキリング需要の高まりを受けた資格取得講座や、外国人材向けの日本語教育、待機児童対策としての保育所運営などを行っています。

収益は、受講生からの入学金・受講料、教材費、および保育事業における運営委託費や補助金などが主な源泉です。運営は主にヒューマンアカデミー、ヒューマンスターチャイルド、Human Academy Europe SASが行っています。

介護事業


デイサービス、訪問介護、グループホーム、有料老人ホームなどの介護サービスを提供しています。高齢化の進行に伴う介護需要に対応し、都市部を中心としたドミナント展開や、外国人材の活用によるスタッフ確保を進めています。

収益は、介護保険制度に基づく介護給付費(国保連への請求)および利用者からの自己負担分、入居一時金などから構成されています。運営はヒューマンライフケアが行っています。

その他


プロバスケットボールチームの運営や、ネイルサロンの運営を行っています。スポーツ事業ではファンエンゲージメント強化による収益向上、ネイル事業では店舗運営と自社ブランド商品の販売を行っています。

収益は、スポンサー料、チケット・グッズ販売収入、ネイル施術料および商品販売収入などです。運営はヒューマンプランニング、ダッシングディバインターナショナルが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は858億円から1003億円へと着実に右肩上がりで成長しています。経常利益も25億円から36億円へと推移しており、特に直近2期は増益傾向にあります。利益率も改善傾向が見られ、安定した収益基盤を維持しながら規模を拡大させています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 858億円 863億円 916億円 959億円 1003億円
経常利益 33億円 27億円 25億円 33億円 36億円
利益率(%) 3.8% 3.1% 2.7% 3.4% 3.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 16億円 15億円 22億円 26億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、1000億円の大台を超えました。売上総利益率も25.6%から25.7%へと微増し、営業利益率は3.3%から3.4%へと改善しています。増収効果に加え、利益率の向上により、営業利益も前期比で増加しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 959億円 1003億円
売上総利益 246億円 258億円
売上総利益率(%) 25.6% 25.7%
営業利益 31億円 34億円
営業利益率(%) 3.3% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与賞与が109億円(構成比49%)、広告宣伝費が22億円(同10%)を占めています。人件費が主なコスト要因であり、適切な人員配置と生産性向上が重要となっています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となりました。主力の人材関連事業は派遣需要の増加や単価改定により増収増益を達成しました。教育事業は増収ながらも、一部事業の生徒数減少などで減益となりました。介護事業も増収でしたが、処遇改善による人件費増で減益となりました。その他事業はスポーツ事業への投資がかさみ営業赤字となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
人材関連事業 565億円 595億円 17億円 24億円 4.1%
教育事業 256億円 263億円 10億円 8億円 3.1%
介護事業 117億円 123億円 2億円 2億円 1.6%
その他 20億円 22億円 1億円 -2億円 -8.5%
調整額 -億円 -億円 1億円 2億円 -
連結(合計) 959億円 1003億円 31億円 34億円 3.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)を使って、借入金の返済(財務CFマイナス)や設備投資(投資CFマイナス)を行っている「健全型」のパターンを示しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 46億円 15億円
投資CF -12億円 -14億円
財務CF -14億円 -15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、綱領として「為世為人(世のため人のため)」を掲げています。仕事を通じて社会と人々に貢献することを使命とし、「人を育てる」事業と「人を社会に送り出す」事業を融合させたビジネスモデルを展開しています。

(2) 企業文化


バリュープロミスとして「SELFing」を掲げています。これは、「なりたい自分」を思い描き、自己発見と開発を行うことで社会貢献へつなげる循環を指します。すべてのステークホルダーへ提供する価値として、自分らしさを形にする生き方を支援する姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


経営効率の改善と利益率の向上を重要課題として位置づけ、当面の目標として以下の数値を掲げています。

* 連結売上高経常利益率:5%

(4) 成長戦略と重点施策


日本の労働人口減少という課題に対し、グループのリソースを活用して「海外人材の活用」「生産性の向上」「国内労働力の確保」「専門教育・リスキリング」の4つの視点から解決を図る方針です。事業の高付加価値化と利益率向上を目指し、DX推進やM&Aも積極的に活用していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長のために、多様な視点や価値観を尊重し、ジェンダー、国籍、年齢、障がい者など多様な人材の採用・育成に取り組んでいます。従業員の基本給・初任給の引き上げ(3年連続実施)や、柔軟な働き方の実現、教育研修体制の整備を通じて、人材の定着と育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.1歳 12.4年 6,056,506円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.3%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 74.3%
男女賃金差異(正規雇用) 73.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 94.1%


※育児休業取得事由に該当する男性労働者はおりません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制等について


人材派遣・紹介事業や介護事業などは、労働者派遣法、職業安定法、介護保険法などの許認可や法的規制を強く受けています。重大な法令違反による事業許可の取り消しや業務停止命令、あるいは法改正や介護報酬改定などが行われた場合、事業活動が制限され業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人員の確保について


各事業において、派遣スタッフ、専門講師、保育士、介護スタッフなどの人材確保が不可欠です。労働需給の逼迫や採用環境の変化により、計画通りに人材を確保できない場合、サービスの提供能力が低下し、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 少子化について


教育事業の主要顧客層は若年層であるため、国内の少子化進行はリスク要因です。同社は社会人や高齢者向け教育、海外展開などで対応を進めていますが、予想以上に少子化が加速し市場全体が縮小した場合、業績に影響が出る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。