芙蓉総合リース 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

芙蓉総合リース 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。リース及び割賦、ファイナンス事業を柱とし、BPOやモビリティ等の成長領域も展開しています。直近決算では、売上高は減少しましたが、営業利益および経常利益は過去最高を更新して増益となりましたが、当期純利益は減益となりました。


※本記事は、芙蓉総合リース株式会社の有価証券報告書(第56期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 芙蓉総合リースってどんな会社?

総合リース大手として、情報通信機器や航空機、不動産など幅広い領域でリース・ファイナンス事業を展開する企業です。

(1) 会社概要

1969年に芙蓉グループ6社を株主として設立され、総合リース会社として発足しました。2004年に東証一部へ上場し、2017年にアクリーティブ、2021年にWorkVisionを連結子会社化するなど事業を拡大。2025年にはワコーパレットやCBホールディングスを連結子会社化し、領域を広げています。

同社グループの従業員数は連結4,095名、単体856名です。筆頭株主は不動産事業等で提携関係にあるヒューリックで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は芙蓉グループの明治安田生命保険相互会社となっています。

氏名 持株比率
ヒューリック 13.95%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.46%
明治安田生命保険相互会社 8.45%

(2) 経営陣

同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は織田寛明氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
辻田 泰徳 取締役会長 1981年富士銀行入行。みずほフィナンシャルグループ取締役などを経て、2015年同社入社。2016年代表取締役社長に就任し、2022年4月より現職。
織田 寛明 取締役社長(代表取締役) 1986年富士銀行入行。みずほ銀行執行役員などを経て、2016年同社入社。常務執行役員、副社長執行役員を経て、2022年4月より現職。
髙田 桂治 取締役副社長(代表取締役) 1984年富士銀行入行。みずほコーポレート銀行営業第十三部長などを経て、2012年同社入社。常務執行役員、専務執行役員を経て、2022年4月より現職。
岸田 勇輔 取締役副社長(代表取締役) 1986年富士銀行入行。みずほフィナンシャルグループ監査業務部長などを経て、2016年同社入社。執行役員財務企画部長などを経て、2024年4月より現職。
高橋  博 常務取締役 1987年同社入社。経営企画部長、執行役員経営企画部長、常務執行役員を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、一色誠一(元ENEOS社長)、市川秀夫(元昭和電工社長)、山村雅之(元東日本電信電話社長)、松本博子(女子美術大学副学長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「リース及び割賦」「ファイナンス」および「その他」事業を展開しています。

(1) リース及び割賦

情報関連機器・事務用機器、産業工作機械、輸送用機器(航空機等)などのリース業務を行っています。また、不動産リースや商業設備、生産設備、病院設備等の割賦販売も手掛けています。
収益は、顧客からのリース料や割賦販売代金などが主な源泉です。運営は、同社のほか、芙蓉オートリース、ヤマトリース、ワコーパレット、シャープファイナンス、Fuyo General Lease (USA) Inc.などの国内外の子会社が行っています。

(2) ファイナンス

事業資金の貸付や、営業目的の金融収益を得るための有価証券運用、匿名組合組成業務などを行っています。航空機リースに関連するファイナンスなども含まれます。
収益は、貸付金の利息や有価証券の運用益、匿名組合からの配当などが主な源泉です。運営は、同社のほか、シャープファイナンス、アクリーティブ、Fuyo General Lease (USA) Inc.などの子会社が行っています。

(3) その他

環境エネルギー関連、手数料ビジネス、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービス、モビリティビジネス業務などを展開しています。
収益は、売電収入、業務受託手数料、サービスの利用料などが源泉となります。運営は、同社のほか、インボイス、芙蓉アウトソーシング&コンサルティング、WorkVision、ヒューマンセントリックス、CBホールディングスなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は第55期まで増加傾向にありましたが、第56期には減少しています。一方、経常利益は一貫して増加を続けており、収益性が向上しています。当期利益については増減が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 7,403億円 6,578億円 6,887億円 7,085億円 6,784億円
経常利益 480億円 527億円 597億円 684億円 690億円
利益率(%) 6.5% 8.0% 8.7% 9.6% 10.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 219億円 257億円 254億円 325億円 306億円

(2) 損益計算書

直近2期間を比較すると、売上高は減少しましたが、売上総利益および営業利益は増加しています。売上総利益率、営業利益率ともに改善しており、本業の収益力が高まっていることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 7,085億円 6,784億円
売上総利益 1,096億円 1,196億円
売上総利益率(%) 15.5% 17.6%
営業利益 600億円 648億円
営業利益率(%) 8.5% 9.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当賞与が206億円(構成比38%)、福利厚生費が46億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益

「ファイナンス」セグメントが増収となった一方、「リース及び割賦」および「その他」セグメントは減収となりました。特に主力の「リース及び割賦」の売上減少が全体の減収に影響していますが、利益率の高い事業へのシフト等により全社の利益は確保されています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
リース及び割賦 6,198億円 5,837億円
ファイナンス 327億円 390億円
その他 560億円 557億円
連結(合計) 7,085億円 6,784億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、本業の営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスである一方、財務活動によるキャッシュ・フローがプラスとなっており、将来の成長のために借入等で資金を調達し、投資を継続している「勝負型」の状態と言えます。
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に賃貸資産の取得による支出の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -1,121億円 -1,364億円
投資CF -31億円 -357億円
財務CF 1,318億円 980億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は13.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「事業の領域拡大と更なる進化による新たな価値創造に果敢に挑戦し、豊かな社会の実現と持続的な成長に貢献する。」をミッションとして掲げています。その実現に向け、「社会課題の解決」「相互信頼と共創」「社員の挑戦と成長」をキーワードとしたビジョンを定めています。

(2) 企業文化

役職員が共有し実践すべきバリュー(行動指針)として、コーポレートスローガン「前例のない場所へ。」を掲げています。社会と企業の共有価値を創造するCSV(Creating Shared Value)の実践を通じて、社会課題の解決と企業価値の向上を同時に実現することを目指しています。

(3) 経営計画・目標

中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」において、2026年度(2027年3月期)の財務目標を設定しています。
* 経常利益:750億円
* ROA(総資産経常利益率):2.5%
* ROE(自己資本利益率):10%以上
* 自己資本比率:13~15%

(4) 成長戦略と重点施策

中期経営計画に基づき、経営資源を「モビリティ/ロジスティクス」「エネルギー環境」「BPO/ICT」「ヘルスケア」などの成長領域へ集中的に投下します。例えば、EV関連ビジネスの拡充、再生可能エネルギー事業の拡大、AIスタートアップとの連携、医療・介護事業者へのコンサルティング機能の強化などを推進しています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人」を最大の財産と位置づけ、戦略的人材育成、ダイバーシティ&インクルージョン、健康経営・ワークライフバランスの3本柱で人材投資を行っています。専門性と自律性を備えた人材の育成を目指し、研修施設の活用やキャリア支援を強化するとともに、多様な人材が能力を発揮できる環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.2歳 13.9年 9,365,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 33.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.7%
男女賃金差異(正規) 65.6%
男女賃金差異(非正規) 69.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用女性比率(45.5%)、有給休暇取得率(92.8%)、35歳以上人間ドック受診率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスク

取引先に対する与信期間が中長期にわたるため、取引先の倒産等によりリース料等の回収が困難となる可能性があります。同社は個別の信用審査やポートフォリオ管理を行っていますが、景気動向によっては不良債権が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 市場リスク及び資金調達リスク

事業資金を主に金融機関借入や市場調達で賄っているため、金利・為替・株価の変動や資金調達環境の変化が業績に影響を与える可能性があります。ALM委員会等でリスク管理を行っていますが、格付の低下等により調達条件が悪化するリスクがあります。

(3) 諸制度の変更リスク

現行の法律・税務・会計制度をもとに事業展開していますが、将来これらが大幅に変更された場合、業績に影響を与える可能性があります。特に、新しいリース会計基準の適用などが影響する可能性があります。

(4) 戦略的提携・企業買収等に伴うリスク

事業拡大のために提携や買収を行っていますが、事後的な問題の発覚や外部環境の変化により当初期待した成果が得られない場合、のれんの減損等により業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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