テクノマセマティカル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テクノマセマティカル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テクノマセマティカルは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、独自アルゴリズムを用いた画像・音声処理のソフトウェアIP、ハードウェアIP、ソリューション製品の開発・ライセンス提供を展開しています。直近の業績は、大型案件の獲得により大幅な増収を達成し、各段階で黒字化を果たすなど好調に推移しています。


※本記事は、株式会社テクノマセマティカルの有価証券報告書(第26期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. テクノマセマティカルってどんな会社?


独自の数学的アルゴリズムによる高度な画像・音声処理技術を様々な電子機器向けに展開する研究開発型企業です。

(1) 会社概要


同社は独自開発のアルゴリズムを用いた製品の開発販売を目的に2000年に設立されました。翌2001年には基幹技術であるDMNAのライセンス販売を開始して事業を拡大し、2005年に東京証券取引所マザーズへ上場を果たしました。2006年には単機能LSI製品の出荷を開始するなど事業領域を広げています。

同社の単体従業員数は55名です。筆頭株主は創業者であり代表取締役社長を務める田中正文氏で、第2位は個人の秋元利規氏、第3位は同社取締役副社長の出口眞規子氏となっています。

氏名 持株比率
田中正文 41.26%
秋元利規 9.64%
出口眞規子 7.79%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長の田中正文氏が経営を牽引しており、社外取締役比率は33.3%となっています。

氏名 役職 主な経歴
田中正文 代表取締役社長 1971年シャープ入社。リコー、鐘紡、ローム等を経て、1998年日本システムLSIセンター取締役。2000年より現職。
出口眞規子 取締役副社長 1967年日本レミントン・ユニバック入社。エスユーエルシー取締役業務部長等を経て、2004年より現職。


社外取締役は、根木勝彦(元日本電気)です。

2. 事業内容


同社グループは、大きく3つのドメインに分かれた事業を展開しています。

(1) ソフトウェアライセンス事業


携帯端末などの組込みシステム向けに、各種国際標準規格による映像・音声の高度な圧縮・伸張処理を実現するソフトウェアIPを提供しています。電子機器メーカーは、高価なプロセッサ等を搭載することなく、動画や音声などの各種マルチメディア機能を高画質・高音質・低消費電力で実現することができます。

主な収益源は、IPを使用するためのイニシャルライセンス収入や、顧客の製品が量産された際に複製数に応じて支払われるロイヤルティ収入です。技術の研究開発およびライセンスの供与などの運営は同社が行っています。

(2) ハードウェアライセンス事業


電子機器に使われる大規模半導体向けに、独自のアルゴリズムを用いたハードウェアIP(設計データ)を提供しています。低消費電力、高画質、小回路規模などの特長があり、デジタルカメラや据置き型のAV機器等向けを中心にライセンス供与を行っています。

収益モデルは、半導体メーカーが設計にIPを使用する際のイニシャルライセンス収入と、半導体製品が量産された際の複製数量に応じたロイヤルティ収入から構成されています。事業の運営は同社が担っています。

(3) ソリューション事業


開発済みのソフトウェアIPやハードウェアIPを活用し、単機能LSIやソリューション製品の開発、製造、販売を行っています。各種伝送装置や画像・音声の認識率向上技術などのシステム製品を通じて、試作・評価段階の顧客ニーズや高性能が求められるニッチな市場に対応しています。

無形物であるIPではなく、有形物の製品やシステムの販売を通じて顧客から代金を受け取る収益モデルです。同社がファブレスメーカーとして開発と販売の運営を担い、既存の流通ルートも活用して多岐にわたる顧客に製品を提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は4億円から6億円台で推移しており、前事業年度までは減収と損失の計上が続いていました。しかし当事業年度は、ソフトウェアライセンス事業およびソリューション事業での大型案件の獲得により大幅な増収を達成し、各段階の利益において黒字転換を果たしています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5.7億円 6.0億円 5.3億円 4.2億円 6.9億円
経常利益 -0.7億円 -0.4億円 -1.4億円 -2.8億円 1.1億円
利益率(%) -11.9% -7.2% -26.8% -67.7% 15.5%
当期利益 -0.7億円 -0.5億円 -1.4億円 -2.9億円 0.9億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い売上総利益も拡大し、売上総利益率は90%を超える高い水準を維持しています。増収効果によって販売費および一般管理費などのコストを吸収したことで、営業利益は黒字に転換しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 4.2億円 6.9億円
売上総利益 3.8億円 6.3億円
売上総利益率(%) 90.5% 92.5%
営業利益 -2.9億円 0.4億円
営業利益率(%) -68.8% 6.5%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が3.2億円(構成比54%)、給与手当が0.8億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


ソフトウェアライセンス事業は量産ライセンスの獲得などにより大幅な増収となりました。ハードウェアライセンス事業やソリューション事業も、既存技術を活用したシステムの販売や新規開発案件の獲得により、すべての分野で売上が伸長しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ソフトウェアライセンス 1.1億円 2.9億円
ハードウェアライセンス 1.5億円 1.9億円
ソリューション 1.6億円 2.0億円
連結(合計) 4.2億円 6.9億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動によって資金を生み出すとともに、投資活動においても手元資金の回収(有価証券の売却等)を行ってキャッシュを確保しています。財務活動による資金の増減はありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -2.0億円 1.1億円
投資CF 0.0億円 0.0億円
財務CF 0.0億円 0.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は93.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「Algorithm Specialist」をコンセプトに掲げ、数学的手法を駆使して独自に開発したアルゴリズム「DMNA」を基幹技術とした製品開発を進めています。これらの技術を用いて、様々な電子機器や通信機器向けに高品位な技術とソリューションを提供し、快適で豊かな社会の実現に寄与することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「技術者が報われる」「基幹技術に挑戦する」という基本方針を掲げており、技術者の挑戦や育成を重視しています。また、経営戦略の基礎的遂行基準として「行動憲章」を定めており、お客様の満足向上や環境への取り組み、情報セキュリティの厳格な管理など、公正かつ透明な企業活動を実践しています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的な経営目標として、ソフトウェアライセンス事業、ハードウェアライセンス事業、ソリューション事業の3事業をバランスよく拡大させることを掲げています。また、特定の期間に集中する傾向のある売上の平準化や売上の増加を図り、利益の確実な確保ならびに黒字化の定着を目指して経営を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、携帯型機器や車載情報システム機器などの特定市場に対する戦略的なアプローチを強化し、デジタル放送規格に対応した製品を通じて海外市場への参入を図ります。また、既存の保有技術やノウハウを総合的に活用してソリューション事業への領域拡大を進めるとともに、パートナー企業との協業や販売体制の拡充を通じて新たな顧客層の開拓を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、独自のアルゴリズムを活用してIT課題を解決し、豊かな社会の実現に貢献するという戦略のもと、世にないものを創り出すことに喜びを見出すエンジニアを積極的に採用しています。また、従業員が比較的短期間で一流のエンジニアに成長できるよう教育や研修に力を入れており、人材の多様化と育成を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 52.0歳 13.8年 5,688,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客市場の動向や製品サイクルによる影響


同社の製品は、ライフサイクルが短く技術革新が早い携帯端末やデジタルカメラ等の電子機器メーカーに提供されています。そのため、顧客企業の製品出荷台数や開発サイクルの遅延、販売戦略の変更などによって、同社のロイヤルティ収入や売上高が大きく変動するリスクがあります。

(2) 特定の代表者への依存


同社の基幹技術である独自アルゴリズムを研究開発し事業化した代表取締役社長の田中正文氏に、経営方針の決定や技術開発において大きく依存しています。技術者の育成や権限委譲を進めているものの、不測の事態により同氏の業務執行が困難となった場合、事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 技術の急速な進展や競合他社の台頭


画像・音声処理技術の進展は非常に早く、市場では常に新たな規格や技術が求められています。同社が想定していない新技術の普及に迅速に対応できない場合や、競合他社が同社を上回る技術を開発して同社の技術が陳腐化した場合、多額の研究開発費が発生し、経営成績に影響を与えるリスクがあります。

(4) 下期に偏重する収益構造


主要顧客の多くが3月決算であり、特に国内メーカーの予算執行が下期に偏る傾向があります。同社のライセンス収入や売上計上も顧客の開発サイクルや予算執行のタイミングに大きく左右されるため、業績が下期に偏重し、期ズレが発生した場合には期間の業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。