アドバンスト・メディア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アドバンスト・メディア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場の音声認識ソリューション大手です。AI音声認識「AmiVoice」を核に、コンタクトセンターや医療、議事録作成支援などの分野で事業を展開しています。2025年3月期は、主力事業のライセンス販売やクラウドサービスが堅調に推移し、売上高は前期比11.1%増、営業利益は5.5%増の増収増益となりました。


※本記事は、株式会社アドバンスト・メディア の有価証券報告書(第28期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アドバンスト・メディアってどんな会社?


AI音声認識技術「AmiVoice」を開発・提供するリーディングカンパニーです。医療やコンタクトセンター等の特定領域で高いシェアを誇ります。

(1) 会社概要


1997年に設立され、翌年には日本語音声認識システムの共同開発を開始しました。2005年にマザーズ(現グロース)へ上場を果たし、2009年にはコールセンター向けソリューション、2013年にはクラウド型文字起こしサービスを開始するなど事業を拡大しました。2015年にはディープラーニング技術を実装し、近年はAI音声対話アバターや建設業界向け新会社アミサポの設立(2023年)など、技術革新と事業領域の拡張を続けています。

連結従業員数は265名、単体では239名です。筆頭株主は創業者で代表取締役会長兼社長の鈴木清幸氏であり、第2位はBSR、第3位には事業会社である住友不動産が名を連ねています。

氏名 持株比率
鈴木清幸 3.59%
BSR 3.27%
住友不動産 3.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名、計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役会長兼社長は鈴木清幸氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
鈴木 清幸 代表取締役会長兼社長 1997年12月同社設立とともに代表取締役社長に就任。2008年より会長、2010年より社長を兼務し、創業以来トップとして経営を牽引。現在に至る。
立松 克己 専務取締役 2005年入社。総務・人事部長を経て、経営管理本部長、ビジネス開発センター長などを歴任。アミサポ代表取締役も務め、2024年より現職。
大柳 伸也 取取締役 2008年入社。CTI事業部長としてコールセンター向け事業を牽引し、2018年取締役就任。現在は事業本部長に加え、SDX事業や海外事業も管掌。2023年より現職。
近藤 裕 取締役 1998年入社。基礎技術開発部長などを経て、2019年執行役員技術本部長に就任。技術部門のトップとして同社の開発体制を統括。2022年より現職。
枝連 俊弘 取締役 1999年入社。クラウド事業部長や応用技術開発部長などの要職を歴任し、製品開発・技術応用に貢献。2024年より現職。


社外取締役は、岸田至康(元日本株主データサービス執行役員)、松室哲生(元ダイヤモンド社代表取締役専務)、佐藤香代(弁護士)、張﨑悦子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「音声事業」の単一セグメントで事業を展開していますが、社内管理上は既存コアビジネスの「BSR1」と新規・海外ビジネスの「BSR2」に区分しています。

(1) 音声事業(BSR1:コアビジネス)

コンタクトセンター、議事録作成、医療、製造・物流等の幅広い業界に対し、AI音声認識「AmiVoice」を活用した製品やサービスを提供しています。主な製品には、コールセンター向け「Communication Suite」、自治体・企業向け議事録作成支援「VoXT One」、医療向け音声入力システム「AmiVoice Ex7」などがあります。

収益は、ライセンス販売による一時収益や、クラウドサービスの利用料(サブスクリプション等)から得ています。運営は主にアドバンスト・メディアが行っており、販売パートナーとの連携も進めています。特にストックビジネスの拡大に注力しており、安定的な収益基盤を構築しています。

(2) 音声事業(BSR2:新規・海外)

建設・不動産業界向けのプラットフォームサービスや、海外市場への展開、新規ビジネスの創出を担う領域です。建設現場向けの工程管理サービス「スーパーインスペクションプラットフォーム」や、AI音声対話アバターなどの新規サービスが含まれます。また、タイなどの海外拠点でのソリューション提供も行っています。

収益は、サービスの利用料やソリューション開発費などが中心です。運営は、アドバンスト・メディアのBDC本部や海外事業部のほか、タイの連結子会社AMIVOICE THAI、建設人材サービスを行うアミサポ、文字起こしサービスを提供する速記センターつくばなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は44億円から67億円へと右肩上がりで成長しています。経常利益も7.5億円から15億円へと倍増しており、利益率も20%を超える高い水準を維持しています。当期純利益も順調に拡大しており、AI音声認識技術への需要拡大を背景に、安定した成長軌道にあることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 44.3億円 44.6億円 51.8億円 60.0億円 66.7億円
経常利益 7.5億円 9.3億円 11.2億円 14.1億円 15.4億円
利益率(%) 16.8% 20.8% 21.7% 23.6% 23.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 6.2億円 4.5億円 8.7億円 10.1億円 14.1億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は74%台と非常に高い水準を維持しており、ソフトウェア・サービスビジネス特有の高収益体質が伺えます。営業利益率も20%を超えており、販管費の増加を吸収して利益を確保する効率的な経営が行われています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 60.0億円 66.7億円
売上総利益 44.7億円 49.3億円
売上総利益率(%) 74.6% 74.0%
営業利益 13.7億円 14.4億円
営業利益率(%) 22.8% 21.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が10億円(構成比30%)、研究開発費が5億円(同14%)を占めています。技術力維持のための研究開発や人材への投資が主要なコスト要因となっています。

(3) セグメント収益


既存コアビジネスであるBSR1は、コンタクトセンターや医療向けなどが好調で増収増益となり、全社利益を牽引しています。一方、新規・海外ビジネスのBSR2は、売上高は増加したものの、人材サービスの先行投資や海外子会社の構造改革コストなどにより営業赤字となっていますが、赤字幅は縮小傾向にあります。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
BSR1(第一の成長エンジン) 53.4億円 59.5億円 14.7億円 15.2億円 25.6%
BSR2(第二の成長エンジン) 6.7億円 7.6億円 -1.1億円 -1.0億円 -12.9%
連結(合計) 60.0億円 66.7億円 13.7億円 14.4億円 21.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.1%で市場平均を上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 14.9億円 14.3億円
投資CF -12.7億円 -10.7億円
財務CF -9.8億円 -12.1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「HCI(Human Communication Integration)の実現」をビジョンに掲げています。これは、人がコンピュータやAIに対して自然に意思を伝えられる「ソフトコミュニケーションの時代」を切り拓くことを意味しています。有用な最先端技術を社会へ普及させ、その実用化を通じて新しい価値観や文化を創造することを目指しています。

(2) 企業文化


AIを利用して仕事の効率を高め、AIを相棒にすることで仕事を楽しくする「AISH(AI Super Humanization)」の実現を目指しています。これにより、働き方改革から「働き甲斐改革」へと進化させ、社会をウェルビーイングに導き、サステナブルな社会の実現に貢献するという価値観を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、売上高および営業利益を重要な経営指標として設定しています。具体的には、2027年3月期において以下の数値目標の達成を目指しています。

* 売上高:100億円
* 営業利益:25億円

(4) 成長戦略と重点施策


「BSR(Beyond Speech Recognition)」拡大期の最終年度に向け、新規サービスの市場投入やプラットフォームビジネスの拡大に注力しています。特に、パーソナライズAIエージェント等の新サービスや、新たな利用料モデルの実装によるユーザー数の増大を図っています。また、他社連携やM&Aを通じた市場開発の深化により、事業規模とスピードの向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は事業の成長を「人の成長の足し算」と捉えています。個々の能力を最大限に引き出すため、「ETICA」(Earning:良い報酬、Task:良い仕事、Information:有用な情報、Colleague:尊敬しあえる仲間、Asset:資産形成)を重視した人的資本強化に取り組んでいます。特に報酬を重視し、平均年間給与の向上を目標に掲げています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.4歳 7.2年 6,258,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、平均年間給与(6,258千円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業績の変動要因

製品出荷や検収が9月と3月に集中する傾向があり、四半期ごとの業績に偏りが生じる可能性があります。また、2027年3月期に向けた「BSR拡大期」の計画において、新規ビジネスへの挑戦や市場環境の変化により計画通りの進捗とならない場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) AI音声認識技術の競争激化

AI音声認識分野では技術革新が必須であり、対話機能の高度化や耐雑音性の強化などが求められます。これらの開発に想定以上の資金や時間を要するリスクがあります。また、技術力を持つ競合企業の出現や、アライアンス戦略での劣後により競争優位性が失われた場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 人材の確保と育成

事業運営において特定の人材への依存があり、社外流出や長期欠勤が生じた場合に事業への支障が出る可能性があります。また、優秀な人材を必要な時期に確保できない場合、経営に影響を及ぼすリスクがあります。これに対し、従業員間のノウハウ共有や成長を促す仕組みの活性化に取り組んでいます。

(4) 知的財産権と法的リスク

音声認識技術は広範囲な技術を利用しており、第三者の知的財産権を侵害しているとの主張を受けるリスクや、必要なライセンスを取得できないリスクがあります。また、個人情報を含む重要情報の漏洩や悪用が発生した場合、社会的信用の低下や損害賠償請求などにより、業績やブランドイメージに悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。