※本記事は、株式会社アドバンスト・メディアの有価証券報告書(第29期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. アドバンスト・メディアってどんな会社?
AI音声認識ソリューション分野のパイオニアとして、業界特化型の事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1997年12月に設立され、日本語音声認識システム「AmiVoice」の開発と市場構築に着手しました。2005年6月にマザーズ(現グロース)へ上場を果たしています。その後、2013年にクラウド型文字起こしサービス「VoXT」をリリースしたほか、タイ現地法人の設立や速記センターつくば等の子会社化を進めました。直近ではソフトウェアテストを手がけるfeatを完全子会社化するなど、事業領域を拡大しています。
現在の同社グループは、連結従業員数286名、単体従業員数253名の体制で事業を運営しています。大株主の状況を見ると、筆頭株主はLIM JAPAN EVENT MASTER FUNDで、第2位は光1号配当特化投資事業有限責任組合、第3位はアイビー投資事業有限責任組合と、主に投資ファンドが上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| LIM JAPAN EVENT MASTER FUND | 3.52% |
| 光1号配当特化投資事業有限責任組合 | 3.43% |
| アイビー投資事業有限責任組合 | 3.37% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役会長兼社長の鈴木清幸氏が経営のトップを務めており、監査等委員である取締役4名全員が社外取締役(比率44.4%)となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鈴木 清幸 | 代表取締役会長兼社長 | 1997年12月当社設立 代表取締役社長。2010年6月代表取締役会長兼社長より現職。 |
| 立松 克己 | 専務取締役経営推進本部長兼BDC本部長 | 2005年12月入社。2024年6月専務取締役経営推進本部長兼BDC本部長より現職。 |
| 大柳 伸也 | 取締役事業本部長兼SDX事業部長兼海外事業部長 | 2008年9月入社。2023年6月取締役事業本部長兼SDX事業部長兼海外事業部長より現職。 |
| 近藤 裕 | 取締役基礎技術開発本部長 | 1998年11月入社。2026年4月取締役基礎技術開発本部長より現職。 |
| 枝連 俊弘 | 取締役応用技術開発本部長 | 1999年6月入社。2026年4月取締役応用技術開発本部長より現職。 |
社外取締役は、岸田至康(元三井住友信託銀行証券代行部部長)、松室哲生(元ダイヤモンド代表取締役専務)、佐藤香代(法律事務所たいとう設立)、張﨑悦子(弁護士法人直法律事務所入所)です。
2. 事業内容
同社グループは、AI音声認識を核とした「音声事業」の単一セグメントにおいて、既存事業のBSR1と新規・海外等を担うBSR2を展開しています。
■(1) BSR1(第一の成長エンジン)
コールセンター、議事録・書き起こし、医療、SDX(営業・製造・物流)の4つの領域に向け、AI音声認識「AmiVoice」を組み込んだアプリケーションやクラウドサービスを提供しています。大手企業や自治体、医療機関など幅広い顧客が利用しています。
収益源は、プロダクトのライセンス販売、クラウド型サービスのサブスクリプション利用料、およびソリューションの企画・開発費などです。事業の運営は主にアドバンスト・メディア本体が担っています。
■(2) BSR2(第二の成長エンジン)
海外市場に向けたソリューション展開や、建設・不動産業界向けのビジネスプラットフォーム提供、およびAIを活用した人材サービスなど、新たな成長ドライバーとなる領域を開拓しています。
タイにおけるソリューション開発・提供のほか、国内での文字起こし代行や建設特化型の人材紹介などで収益を得ています。運営はアドバンスト・メディアのほか、子会社のAMIVOICE THAI CO., LTD.、速記センターつくば、アミサポが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間において、売上高は一貫して拡大を続けています。経常利益も順調に成長しており、20%台の高い利益率を安定して維持するなど、非常に堅調な増収増益トレンドを見せています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 45億円 | 52億円 | 60億円 | 67億円 | 71億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 11億円 | 14億円 | 15億円 | 16億円 |
| 利益率(%) | 20.8% | 21.7% | 23.6% | 23.1% | 22.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 9億円 | 10億円 | 14億円 | 17億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高の成長に伴い売上総利益も順調に増加しており、高い総利益率を確保しています。一方で、成長投資の影響から営業利益は前期と同水準を維持する形となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 67億円 | 71億円 |
| 売上総利益 | 49億円 | 52億円 |
| 売上総利益率(%) | 74.0% | 73.6% |
| 営業利益 | 14億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 21.6% | 20.4% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が11億円(構成比29%)、研究開発費が7億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
既存のコアビジネスであるBSR1が安定した基盤として機能する一方、海外事業や新規ビジネスを含むBSR2が前年同期比で大幅な増収を達成し、全体の成長を後押ししています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| BSR1(第一の成長エンジン) | 59億円 | 62億円 |
| BSR2(第二の成長エンジン) | 8億円 | 9億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益と投資有価証券の売却等で得た資金を用いて、借入金の返済等を着実に進める改善型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 14億円 | 19億円 |
| 投資CF | -11億円 | 11億円 |
| 財務CF | -12億円 | -16億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.2%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も84.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「HCI(Human Communication Integration)の実現」をビジョンに掲げています。人がコンピュータやAIに自然に意思を伝えられる「ソフトコミュニケーションの時代」を拓くべく、有用な最先端技術を社会へ普及させ、新しい価値観と文化の創造を目指しています。
■(2) 企業文化
最先端技術の実用化を通じて既成概念を創造的に破壊し、新たな価値観を構築する革新的な文化が特徴です。「ETICA」(Earning、Task、Information、Colleague、Asset)を重視した人的資本の強化に取り組み、社員一人ひとりの成長を事業の成長につなげる姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
2024年3月期から2027年3月期を「BSR拡大期」と位置づけ、事業を推進しています。最終年度に向けて以下の具体的な数値目標を掲げています。
* 2027年3月期 売上収益:100億円
* 2027年3月期 営業利益:15億円
■(4) 成長戦略と重点施策
次の「AISH(AI Super Humanization)導入展開期」に向けた3つの挑戦を掲げています。他社連携による市場開発(M-Dev)、先進的な動画メディアを通じた顧客接点獲得(アドバンストメディア)、そしてAIの集合化利用による基盤提供(音声AIイネイブラー)を軸に事業規模を拡大します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業の成長は組織を構成する「人の成長の足し算」であると捉え、各人の役割を果たす意欲と行動を最大限に引き出すため、「ETICA」を重視した環境整備に取り組んでいます。特に、AI分野における高度な技術力を支える人材への積極投資を経営の最重要テーマとしています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 37.5歳 | 7.5年 | 6,379,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) フロービジネス偏重による業績変動リスク
同社の事業は、フロービジネスの出荷および検収が特定の時期(9月および3月)に集中する傾向があります。ストックビジネスの比率向上を図っているものの、想定できない外部要因の影響等で売上が偏重し、業績が変動するリスクがあります。
■(2) 音声認識市場の拡大遅延
「仕事における新たな日常を創る」という新規ビジネスにより、既存ビジネスの展開から拡大フェーズへの移行を加速させていますが、この市場への導入やフェーズ移行が想定通りに進まず、収益化に長い時間を要するリスクがあります。
■(3) 新技術の台頭と競合激化
AI音声認識に代わる新しいインターフェース等の誕生や普及により、同社の技術的優位性が失われるリスクがあります。また、国内外の高い技術力を持つ競合企業の出現や、アライアンス戦略での優位性喪失が業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 情報セキュリティと知的財産権
同社の技術が第三者の知的財産権を侵害していると主張される可能性が皆無ではありません。また、プライバシーマーク等を取得して情報管理を徹底しているものの、関係者の故意や過失により重要情報が流出し、ブランドイメージの低下を招くリスクが存在します。



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