クロップス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クロップス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クロップスは東証スタンダードおよび名証プレミア市場に上場し、移動体通信事業を中核として人材派遣、店舗転貸借、ビルメンテナンスなど多角的な事業を展開しています。直近の連結業績では、店舗転貸借事業や移動体通信事業の好調により増収および大幅な営業増益・経常増益を達成しました。


※本記事は、株式会社クロップスの有価証券報告書(第49期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クロップスってどんな会社?


同社グループは移動体通信事業を中心に、多彩な事業を展開する多角化企業です。

(1) 会社概要


1977年に設立され自動車販売を開始し、1989年より携帯電話販売に参入しました。2005年に名証セントレックスへ上場し、その後東証一部・名証一部を経て現在は東証スタンダードおよび名証プレミア市場に上場しています。また、ビルメンテナンス事業、店舗転貸借事業、卸事業などの企業を次々と子会社化し、2022年にはKDDIと資本業務提携を締結して事業領域を拡大しています。

従業員数は連結で1,364名、単体で740名です。筆頭株主はアイ・エー・エイチで、第2位は事業会社であり資本業務提携先であるKDDIです。第3位は創業家あるいは役員である前田有幾氏です。

氏名 持株比率
アイ・エー・エイチ 34.14%
KDDI 20.32%
前田 有幾 9.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員は前田有幾氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
前田 有幾 代表取締役社長執行役員 2011年いすゞ自動車入社。2015年同社入社。取締役、常務取締役営業本部長などを経て、2021年代表取締役社長に就任。2022年より代表取締役社長執行役員となり、現在に至る。
岡山 浩二 取締役常務執行役員 1993年九州産業交通(現九州産業交通ホールディングス)入社。1997年同社入社。2002年取締役などを経て、2025年より取締役常務執行役員社長付特命担当となり現在に至る。
犬飼 智之 取締役執行役員 2000年リゾートトラスト入社。2018年三菱自動車工業入社。2023年同社に入社し、2024年執行役員などを経て、2026年より取締役執行役員企画本部長兼経営管理部ゼネラルマネージャー。
志波 恵 取締役執行役員 1997年同社入社。営業各グループのマネージャーや営業戦略部ゼネラルマネージャーなどを歴任。2021年取締役営業本部長を経て、2025年より取締役執行役員営業管理部ゼネラルマネージャー。
松本 俊亮 取締役執行役員 1989年芙蓉総合リース入社。1993年DDI(現KDDI)入社。同社支社長等を歴任後、2023年同社に入社。2025年より取締役執行役員社長付特命担当となり現在に至る。
飯田 長 取締役執行役員 2000年同社入社。いすゞビルメンテナンスへの出向や経営企画室長などを経て、2010年取締役に就任。各種部門担当を歴任し、2026年より取締役執行役員店舗開発部ゼネラルマネージャー。


社外取締役は、杉山光宏(元愛知銀行東京支店長等)、青木哲(KDDIコア事業推進本部営業推進統括2部長)、杉浦恵祐(OSP代表取締役社長)、寺澤和哉(寺澤会計事務所代表・公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、移動体通信、人材派遣、ビルメンテナンス、店舗転貸借、不動産売買、卸、海外の7つの報告セグメントを展開しています。

移動体通信事業

auやUQモバイルの専売ショップ等を運営し、携帯端末や法人向けオフィス関連商材の販売等を行っています。一般顧客や法人を対象に、通信インフラと接点を持つ価値を提供しています。

収益は、携帯端末の販売代金やKDDIからの各種手数料(販売手数料、作業系手数料、回線系手数料等)から得ており、運営は同社が行っています。

人材派遣事業

名古屋鉄道グループやトヨタ自動車グループを主要取引先とし、一般労働者派遣、技術者派遣、業務請負および有料職業紹介等を東海地区や首都圏で展開しています。

契約に基づき継続的に人材派遣や業務請負のサービスを提供することで対価を受け取るモデルであり、運営はクロップス・クルーが行っています。

ビルメンテナンス事業

いすゞ自動車グループを主要顧客とし、首都圏において商業施設やオフィスビル等の清掃、設備管理および施設警備等のメンテナンスサービスを提供しています。

建物の保守や清掃等の業務を継続的に提供することで対価を得るモデルであり、運営はいすゞビルメンテナンスが行っています。

店舗転貸借事業

東京を中心とした飲食店舗等の物件に特化し、小規模な居抜き物件などを活用した開店・閉店支援サービスおよび店舗家賃保証サービスを展開しています。

転貸借契約に基づく賃料収入や支援サービス手数料、保証料などを収益源とし、運営はイノベーションホールディングス傘下のテンポイノベーションおよびセーフティーイノベーションが行っています。

不動産売買事業

飲食店向けの店舗物件等を中心に、不動産業者との関係を活かした物件の仕入れ販売を首都圏で展開しています。

店舗不動産等の物件を顧客に引き渡すことで販売対価を得る収益モデルであり、運営はアセットイノベーションが行っています。

卸事業

通信販売、100円ショップ、OEMメーカー、卸問屋向けに文具や生活用品の企画卸売を行うほか、自然派化粧品の販売等も展開しています。

商品の出荷や検収によって顧客から販売代金を得るモデルであり、運営はハピラおよび七つの海が行っています。

海外事業

アジア地域を中心に、労働ビザの申請、給与計算、税金や社会保険料計算等の労務管理受託業務を展開しています。

契約に基づき継続的に労務管理サービスを提供することで対価を得るモデルであり、運営はINNOVARE HOLDINGS PTE.LTD.やJOB LINKS CORPORATIONなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の連結業績を見ると、売上高は一貫して拡大を続けており、成長基調を維持しています。経常利益も当期に大幅な増益を達成し、収益性が改善しました。一方で当期利益については、海外子会社に関連するのれんの減損損失等を計上した影響により、一時的に落ち込んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 453億円 484億円 545億円 616億円 675億円
経常利益 27億円 24億円 23億円 26億円 37億円
利益率(%) 5.9% 5.0% 4.3% 4.3% 5.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 16億円 8億円 7億円 0.3億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率は前期から改善しています。これに加えて営業利益も大きく伸び、営業利益率も向上していることから、本業の収益力が着実に強化されていることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 616億円 675億円
売上総利益 152億円 177億円
売上総利益率(%) 24.7% 26.2%
営業利益 24億円 36億円
営業利益率(%) 3.9% 5.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が52億円(構成比37%)、販売促進費が14億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力事業である移動体通信事業と店舗転貸借事業が全体を牽引し、全社の増収に寄与しています。特に店舗転貸借事業は順調な需要を取り込み、前年から大きく売上を伸ばしました。また、ビルメンテナンス事業や不動産売買事業も堅調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
移動体通信事業 277億円 296億円
人材派遣事業 29億円 31億円
ビルメンテナンス事業 62億円 68億円
店舗転貸借事業 152億円 178億円
不動産売買事業 15億円 22億円
卸事業 75億円 74億円
海外事業 6億円 7億円
連結(合計) 616億円 675億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは「積極型」です。営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 14億円 38億円
投資CF -2億円 -18億円
財務CF -5億円 3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、各事業の業界環境に適応し、顧客ニーズに合った商品やサービスを提供することを徹底しています。「つなげる力で、ワクワクする未来を。」というコーポレート・ステートメントのもと、通信を仲立ちにお客様、スタッフ、取引先、地域社会を「つなげる」ことで、業界をリードする存在となることを目指しています。

(2) 企業文化


「私たちの約束」を10の行動規範として制定し、業績評価だけでなく実践度により行動を評価する制度を導入しています。「お客様」「社員」「株主」「地域社会」等、全てのステークホルダーに対する責務を認識し、「自分自身と組織の理想を想い描き、それを実現するプロフェッショナル集団」となることを掲げています。

(3) 経営計画・目標


既存企業の永続的な構造改革による業績向上と、M&Aやアライアンスによる新規事業取得により、収益力向上と業容拡大を図っています。

・連結売上高経常利益率 6.0%

(4) 成長戦略と重点施策


移動体通信事業では、新たな通信関連商材の紹介や社員教育の充実を通じて働きがいのある環境づくりを推進します。店舗転貸借事業は、小規模な居抜き物件の仕入れや家賃保証事業の支店展開に注力し、人材派遣事業では社内育成による高付加価値分野への拡大を図るなど、各事業での専門性向上と差別化を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材こそが最大の財産であるとの基本認識のもと、育成・評価・処遇の仕組みを構築・運用しています。自発的かつ持続的な発展を目指し、新たな人事評価・処遇制度や人材育成制度を導入しています。適正な評価と処遇により、従業員一人一人が成長を実感できる環境の整備と、多様な働き方に対応する制度構築を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 31.4歳 3.5年 4,569,923円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.3%
男性育児休業取得率 77.8%
男女賃金差異(全労働者) 80.5%
男女賃金差異(正規雇用) 80.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 109.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員定着に関する改善率の目標(12.0%)、年間退職率の上昇(0.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) KDDIへの高い依存と契約の行方

同社の基幹事業である移動体通信事業は、KDDIとの代理店契約に基づいており、携帯端末の仕入れから販売手数料の受取まで強く依存しています。KDDIの事業戦略の変更や契約解除が生じた場合、同社の業績に大きな影響を与える可能性があります。

(2) 人材確保の難航と定着率の悪化

同社グループが安定的に成長していくためには、優秀な人材の確保と労働環境の変化に対応できる人材の育成が不可欠です。しかし、人材不足や定着率の悪化、新規採用の不調などが生じた場合、事業運営に支障をきたし、業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。

(3) M&A戦略に伴うのれんの減損

同社は新規事業分野へのM&Aや事業提携を積極的に進め、多額ののれんを計上しています。しかし、想定していたシナジー効果が得られない場合や、事業環境の悪化により対象事業の収益力が低下した場合には、減損損失が発生し業績に影響する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。