クロップス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クロップス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クロップスは東証スタンダード・名証プレミアに上場し、東海・首都圏でauショップ運営等の移動体通信事業を主力に展開する企業です。直近の業績は、移動体通信事業や店舗転貸借事業が好調に推移し、売上高616億円、経常利益26億円と増収増益を達成しました。一方、税負担の増加により最終利益は減益となっています。


※本記事は、株式会社クロップス の有価証券報告書(第48期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クロップスってどんな会社?


移動体通信事業を中核に、人材派遣、ビルメンテナンス、店舗サブリースなど多角的に事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1977年にいすゞオート半田として設立され、自動車販売を開始しました。1994年に携帯端末販売へ特化し、1999年に現社名へ変更するとともに労働者派遣事業を開始しました。2005年に名証セントレックスへ上場し、2013年には東証二部へ上場を果たしました(現在は東証スタンダード、名証プレミア)。近年はM&Aを活用し、店舗転貸借事業や海外事業などへ領域を拡大しています。

同社グループの連結従業員数は1,259名、単体では698名です。筆頭株主は株式会社アイ・エー・エイチで、第2位は主要取引先であるKDDI、第3位は同社社長の前田有幾氏です。

氏名 持株比率
アイ・エー・エイチ 34.14%
KDDI 20.32%
前田 有幾 9.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員は前田有幾氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
前田 有幾 代表取締役社長執行役員営業本部本部長 いすゞ自動車を経て入社。取締役営業第1グループマネージャー、常務取締役営業本部長などを経て2021年より現職。
岡山 浩二 取締役常務執行役員 九州産業交通を経て入社。常務取締役経営企画本部長、企画本部長などを経て2025年より社長付特命担当。
犬飼 智之 取締役執行役員企画本部本部長 リゾートトラスト、三菱自動車工業を経て入社。執行役員企画本部副本部長などを経て2025年より現職。
志波 恵 取締役執行役員 同社入社後、営業本部長、執行役員営業本部長などを歴任。2025年より営業管理部ゼネラルマネージャー。
松本 俊亮 取締役執行役員 KDDIにてコンシューマ北海道支社長などを歴任。同社入社後、執行役員業務改革本部長を経て2025年より社長付特命担当。
飯田 長 取締役執行役員 同社入社後、経営企画室長、取締役事業開発部担当などを歴任。2025年より総務部ゼネラルマネージャー。


社外取締役は、杉山光宏(元愛知銀行証券外国部副部長)、青木哲(KDDIパーソナル第1営業本部営業推進統括2部長)、杉浦恵祐(OSP代表取締役社長)、寺澤和哉(公認会計士・寺澤会計事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「移動体通信事業」「人材派遣事業」「ビルメンテナンス事業」「店舗転貸借事業」「不動産売買事業」「卸事業」「海外事業」の7つの報告セグメントを展開しています。

(1) 移動体通信事業


au商品を専売とする「auショップ/au Style」や、UQモバイル商品を専売とする「UQスポット」を東海・関東地区を中心に展開しています。携帯端末の販売や通信サービスの契約取次を行っています。

収益は、携帯端末の販売代金や、通信契約の取次およびアフターサービス等に伴い通信事業者(KDDI)から支払われる手数料収入からなります。運営は主にクロップスが行っています。

(2) 人材派遣事業


名古屋鉄道グループやトヨタ自動車グループを主要取引先とし、一般労働者派遣、技術者派遣、業務請負および有料職業紹介を行っています。東海地区と首都圏を中心にサービスを展開しています。

収益は、派遣先企業や請負先企業から受け取る派遣料金や業務委託料、紹介手数料からなります。運営は株式会社クロップス・クルーが行っています。

(3) ビルメンテナンス事業


いすゞ自動車グループを主要顧客とし、商業施設やオフィスビル等の清掃、設備管理および施設警備などを提供しています。首都圏を主要エリアとして展開しています。

収益は、ビルオーナーや管理会社等の顧客から受け取る清掃料、設備管理料、警備料などの業務委託料からなります。運営はいすゞビルメンテナンス株式会社が行っています。

(4) 店舗転貸借事業


飲食店舗等の店舗物件に特化した開店・閉店支援サービスを提供しています。また、店舗家賃保証事業も展開しており、東京を中心としたエリアで事業を行っています。

収益は、店舗出店者(テナント)から受け取る転貸借賃料や、家賃保証サービスにおける保証料、事務手数料からなります。運営は株式会社テンポイノベーションおよび株式会社セーフティーイノベーションが行っています。

(5) 不動産売買事業


飲食店向けの店舗物件等の仕入れ販売を行っています。取引先における不動産売買ニーズに応えつつ、不動産業者との関係強化を図り、首都圏にて事業を展開しています。

収益は、仕入れた店舗物件等を不動産業者や投資家等へ売却することで得られる売買代金からなります。運営は株式会社アセットイノベーションが行っています。

(6) 卸事業


通信販売、100円ショップ、OEMメーカー、卸問屋向けに、文具・生活用品等の企画・卸売販売を行っています。また、自然派化粧品の販売やナチュラルケア売場の企画・販売サポートも手掛けています。

収益は、小売店や卸売業者等の顧客に対する商品販売代金からなります。運営は株式会社ハピラおよび株式会社七つの海が行っています。

(7) 海外事業


アジア地域を中心に、労働ビザの申請、給与計算、税金・社会保険料計算等の受託業務(HRアドミンサービス)を展開しています。

収益は、顧客企業から受け取る労務管理等の業務受託手数料からなります。運営はINNOVARE HOLDINGS PTE.LTD.やJOB LINKS CORPORATIONなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は410億円から616億円へと右肩上がりで成長を続けています。経常利益は20億円台前半から中盤で安定的に推移しており、当期は26億円となりました。当期利益については、法人税等の負担増加などにより、前期の12億円から10億円へ減少しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 410億円 453億円 484億円 545億円 616億円
経常利益 23億円 27億円 24億円 23億円 26億円
利益率(%) 5.6% 5.9% 5.0% 4.3% 4.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 15億円 12億円 12億円 10億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の545億円から616億円へ増加し、売上総利益も137億円から152億円へ拡大しました。営業利益は21億円から24億円へ増加しており、増収効果により本業の利益もしっかりと確保されています。営業利益率は約4%の水準を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 545億円 616億円
売上総利益 137億円 152億円
売上総利益率(%) 25.1% 24.7%
営業利益 21億円 24億円
営業利益率(%) 3.9% 3.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が49億円(構成比38%)、賞与引当金繰入額が5億円(同4%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の移動体通信事業は増収となったものの、店舗運営費用の増加により利益は微減となりました。一方、店舗転貸借事業は物件数の増加により大幅な増収増益を達成し、全体の業績を牽引しました。人材派遣事業やビルメンテナンス事業も堅調に推移しましたが、海外事業はコスト増により損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
移動体通信事業 234億円 277億円 5億円 4億円 1.6%
人材派遣事業 26億円 29億円 0.6億円 1億円 3.6%
ビルメンテナンス事業 61億円 62億円 3億円 3億円 4.9%
店舗転貸借事業 136億円 152億円 8億円 12億円 8.2%
不動産売買事業 7億円 15億円 2億円 1億円 9.6%
卸事業 76億円 75億円 4億円 3億円 3.6%
海外事業 6億円 6億円 -0.0億円 -0.9億円 -13.7%
連結(合計) 545億円 616億円 21億円 24億円 3.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、主に営業活動で得た資金と、必要に応じて調達した資金で事業投資を行っています。

営業活動では、税金等調整前当期純利益の計上等により資金を獲得しました。投資活動では、有形固定資産の取得や事業譲受等により資金を使用しました。財務活動では、長期借入金の返済や配当金の支払い等により資金を使用しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 15億円 14億円
投資CF -3億円 -2億円
財務CF -8億円 -5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、みずみずしい感性で新しい価値を創造し、顧客・社員・社会との共生を図り、永続的な発展を続けていくことを経営の基本方針としています。また、「みなさまのサプリメントになる」をコンセプトに、ステークホルダーが同社とかかわることでより良い状態になることを目指しています。

(2) 企業文化


今年度新たにコーポレート・ステートメント「つなげる力で、ワクワクする未来を。」、ミッション、ビジョンを制定しました。企業を持続的に成長させていくためには、社員一人一人の成長こそが最も重要な要素であると認識しており、社員教育の充実や働き甲斐のある環境づくりを推進する風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、既存企業の永続的な構造改革による業績向上と、M&Aやアライアンスによる新規事業取得により、収益力の向上と業容拡大を図る方針です。客観的な指標として、連結ベースでの売上高経常利益率を重視しており、当面の数値目標として以下の水準を掲げています。

* 連結売上高経常利益率:6.0%

(4) 成長戦略と重点施策


移動体通信事業では、通信事業者との連携強化や新たな商材紹介に加え、店舗のあり方を再定義し、顧客接点の価値最大化を図ります。人材派遣事業では専門人材の育成による高付加価値化、ビルメンテナンス事業では業務効率化と新規開拓を推進します。店舗転貸借事業は市場性の高い物件仕入れに注力し、M&Aも活用しながらグループ全体の企業価値向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材こそが最大の財産であるとの認識のもと、育成・評価・処遇の仕組みを運用しています。移動体通信事業では新たな人事評価・人材育成制度を導入し、階層別研修や従業員サーベイを実施しています。また、多様な働き方に対応する副業制度の導入や、キャリア開発支援、定着率向上のための施策も推進しており、社員が働きがいを持てる環境整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 30.7歳 3.5年 4,292,848円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.5%
男性育児休業取得率 71.4%
男女賃金差異(全労働者) 81.9%
男女賃金差異(正規雇用) 82.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 100.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定取引先への依存


移動体通信事業はKDDIとの代理店契約を前提としており、契約解除や条件変更があった場合、事業継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、仕入の99.6%、販売の93.3%をKDDIに依存しており、同社の事業戦略の影響を強く受けます。

(2) 受取手数料依存の収益構造


移動体通信事業の収益は、KDDIからの手数料(販売、作業、回線系)が主となります。これらの条件変更や、顧客の短期間での解約による手数料不払い等が発生した場合、業績に悪影響が生じる可能性があります。

(3) 店舗転貸借事業の与信・市場リスク


店舗転貸借事業では、不動産所有者に差入保証金を預託しており、所有者の倒産等で回収できないリスクがあります。また、感染症流行等による出店意欲低下や解約増加、テナントからの賃料回収不能が発生した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(4) 人材の確保・育成リスク


同社グループの成長には優秀な人材の確保と育成が不可欠です。しかし、人材の定着率悪化や新規採用の不調により人材不足が生じた場合、また労働環境の変化に対応できる人材育成が進まない場合、業績に影響が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。