※本記事は、株式会社オールアバウト の有価証券報告書(第33期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オールアバウトってどんな会社?
専門家がガイドする総合情報サイト「All About」の運営や、日本最大級のお試しサービス「サンプル百貨店」等のEC事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1993年にリクルートエリアネット西東京として創業し、2000年にリクルート・アバウトドットコム・ジャパンへ商号変更して情報サイトを開始しました。2004年に現社名へ変更し、2005年にJASDAQへ上場しています。その後、2011年に大日本印刷、2017年に日本テレビ放送網、2018年にNTTドコモと資本・業務提携を行い、事業基盤を拡大しました。2013年には現在のEC事業の中核となるルーク19(現オールアバウトライフマーケティング)を子会社化しています。
連結従業員数は280名、単体従業員数は127名です。筆頭株主は資本・業務提携先である日本テレビ放送網で、第2位は同じく提携先のNTTドコモ、第3位は創業母体であるリクルートホールディングスとなっており、大手事業会社が主要株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本テレビ放送網 | 24.20% |
| NTTドコモ | 14.97% |
| リクルートホールディングス | 7.04% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長グループCEOは江幡哲也氏が務めています。社外取締役は5名で、取締役全体の過半数を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 江幡 哲也 | 代表取締役社長グループCEO | 1987年リクルート入社。2000年同社代表取締役社長兼CEO就任。2024年オールアバウトライフマーケティング代表取締役会長。2025年みらいバンク取締役会長等を兼務。 |
| 森田 恭弘 | 取締役CAO | 1991年王子製紙入社。2000年同社入社。2014年Chief Administrative Officer就任。2018年より取締役。 |
| 宮﨑 秀幸 | 取締役 | 2001年ピーエイ入社。2003年同社入社。2013年オールアバウトナビ代表取締役社長。2020年より取締役。 |
| 土門 裕之 | 取締役 | 1997年ティージー情報ネットワーク入社。2005年同社入社。2013年オールアバウトライフマーケティング代表取締役社長就任。2015年より取締役。 |
社外取締役は、石澤顕(日本テレビホールディングス取締役副会長)、伊藤邦宏(NTTドコモ執行役員)、渡邊龍男(元イーワークスリミテッド代表取締役)、武田健二(元日立製作所新事業推進本部部長)、山縣敦彦(マーベリック法律事務所代表弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「マーケティングソリューション」および「コンシューマサービス」事業を展開しています。
■(1) マーケティングソリューション
総合情報サイト「All About」の運営による広告収益や、デジタルマーケティング支援を行っています。専門家である「ガイド」が発信する信頼性の高い情報を基盤に、エディトリアル広告やSNS活用支援、広告業界DXプラットフォーム「PrimeAd」などを提供し、広告主や提携メディアから収益を得ています。
運営は主にオールアバウトが行い、SNSマーケティング等は子会社のオールアバウトナビが担当しています。また、グローバルマーケティング事業として「All About Japan」を通じたインバウンド施策支援なども行っています。
■(2) コンシューマサービス
日本最大級のお試しサービス「サンプル百貨店」や、NTTドコモと共同運営する「dショッピング」などを展開しています。主な収益源は、ユーザーからの商品購入代金や「お試し費用」、および取扱高に応じた手数料収入です。メーカーに対しては、商品サンプリングを通じたマーケティングソリューションも提供しています。
運営は主に子会社のオールアバウトライフマーケティングが担当しています。「dショッピング」等はNTTドコモとの協業により運営されており、dポイントやドコモの顧客基盤を活用しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は150億円から170億円の範囲で推移していますが、利益面では変動が見られます。当期は売上高が微増し、経常利益等の段階利益は黒字転換を果たしました。一方で、当期純利益は引き続きマイナスとなっていますが、赤字幅は大幅に縮小しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 173億円 | 154億円 | 169億円 | 157億円 | 160億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 7億円 | 0.2億円 | -4.4億円 | 0.1億円 |
| 利益率(%) | 5.3% | 4.4% | 0.1% | -2.8% | 0.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 3億円 | -2.1億円 | -2.8億円 | -2.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微増となりました。売上原価率の低下に伴い売上総利益が増加し、営業利益は黒字に転換しました。営業利益率は依然として低い水準ですが、収益性の改善傾向が見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 157億円 | 160億円 |
| 売上総利益 | 92億円 | 96億円 |
| 売上総利益率(%) | 58.6% | 60.2% |
| 営業利益 | -4.6億円 | 0.1億円 |
| 営業利益率(%) | -2.9% | 0.1% |
販売費及び一般管理費のうち、物流費が22億円(構成比23%)、販売手数料が17億円(同18%)、給与手当が15億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
コンシューマサービス事業が全社売上の大半を占めており、利益面でも同セグメントが牽引しています。マーケティングソリューション事業は売上が微増したものの、セグメント損失を計上しています。全社費用等の調整額が大きく、連結営業利益を圧迫する構造となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| マーケティングソリューション | 21億円 | 21億円 | -3億円 | -1億円 | -4.1% |
| コンシューマサービス | 137億円 | 139億円 | 3億円 | 5億円 | 3.7% |
| 調整額 | -0.6億円 | -0.4億円 | -4億円 | -4億円 | - |
| 連結(合計) | 157億円 | 160億円 | -5億円 | 0.1億円 | 0.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で現金を稼ぎ出し(営業CFプラス)、その資金で投資を行い(投資CFマイナス)、借入金の返済や配当支払い等を行っている(財務CFマイナス)ことから、「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.4億円 | 2.5億円 |
| 投資CF | -3.8億円 | -4.5億円 |
| 財務CF | 0.2億円 | -0.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できませんが市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.1%で市場平均(スタンダード市場非製造業平均48.5%)とほぼ同じ水準です。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「個人を豊かに、社会を元気に。」をミッションとして掲げています。世の中の人々が多様な価値観やライフスタイルを発見、実現することを支援し、一人ひとりが豊かに人生を楽しめる社会の実現に貢献することを目指して企業活動を行っています。
■(2) 企業文化
企業活動を行う上で「システムではなく、人間。」という言葉を大切にしています。最新のテクノロジーを取り入れながらも、人間ならではの創造性や価値に目を向け、さまざまな人や企業と共創することで新たな価値を生み出し続ける姿勢を重視しています。また、大切にする仕事のやり方を「All About Way」として定めています。
■(3) 経営計画・目標
「個人を豊かに、社会を元気に。」というミッションの実現に向け、高い成長性を確保・継続することを目指しています。その達成状況を判断するための重要な客観的指標として、以下の3つを位置づけています。
* 売上高
* 営業利益(営業利益率)
* 経常利益
■(4) 成長戦略と重点施策
「テクノロジーと人の力で『不安なく、賢く、自分らしく』を支えるプラットフォームになる。」というビジョンのもと、既存の2事業に加え、「ライフアセットマネジメント」領域への開発・投資を進めています。これはお金、健康、キャリア等の人生基盤を最適化するサービスです。また、各事業のグローバル展開や、ベンチャー企業への投資を通じたシナジー創出も目指しています。
* メディア基盤の強化(All About Japan、SNS運用等)
* 広告業界DXプラットフォーム「PrimeAd」の推進
* ドコモ経済圏との連携強化(dショッピング等)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「個人を豊かに、社会を元気に。」というミッションのもと、多様な人材が能力を最大限発揮できる風土づくりを目指しています。性別や国籍等を問わず多様な人材を採用・起用し、個人の成長を組織の成長につなげる方針です。また、「All About Way」による行動評価や、子会社経営を通じた後継者育成、健康経営の推進などにも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 35.9歳 | 5.9年 | 5,503,324円 |
※平均年間給与は、賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 34.3% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性育児休業取得率および男女賃金差異については、関連する法令の公表義務の対象外であるため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社員に占める女性社員の割合(51.4%)、育児休業からの復帰率(100%)、フレキシブルワーク環境の整備率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 検索エンジンからの集客について
同社が運営する「All About」のユーザーの多くは検索エンジンからの流入であり、集客機能をこれに依存しています。SEO対策を実施していますが、検索エンジンのロジック変更等により来訪ユーザー数が減少した場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) メディア&デジタルマーケティング事業への景気変動の影響について
企業の広告費は景気の影響を受けやすく、不景気や不安定な社会情勢下では広告費が削減される傾向があります。同社グループは費用構造の改善に取り組んでいますが、想定以上の社会経済情勢の変動が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 「ガイド」が制作する制作物について
「All About」のコンテンツの多くは社外の専門家「ガイド」が制作しています。契約による保証や学習機会の提供等で権利侵害の防止に努めていますが、何らかの理由でコンテンツが第三者の権利を侵害していた場合、業績や社会的信用に影響を与える可能性があります。



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