オールアバウト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オールアバウト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オールアバウトはスタンダード市場に上場し、総合情報サイトなどを展開するマーケティングソリューションと、「サンプル百貨店」などを運営するコンシューマサービスを主力としています。直近の業績は、コンシューマサービスの売上減少や物流費増などの影響を受け、減収および営業赤字となる厳しい状況となっています。


※本記事は、株式会社オールアバウトの有価証券報告書(第34期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オールアバウトってどんな会社?


オールアバウトは、インターネットメディアを活用したデジタルマーケティングとeコマース事業を展開しています。

(1) 会社概要


2000年に設立され、About.com Inc.の資本参加によりインターネット情報サービス業を開始しました。2001年に情報サイト「All About Japan(現 All About)」をオープンし、2005年にジャスダック市場へ上場を果たしています。その後、2017年に日本テレビ放送網、2018年にNTTドコモとそれぞれ資本・業務提携を結び、メディアおよびeコマース領域の事業基盤を強化してきました。

従業員数は連結で296名、単体で126名となっています。筆頭株主は事業会社の日本テレビ放送網で、第2位も事業会社のNTTドコモ、第3位はリクルートホールディングスです。

氏名 持株比率
日本テレビ放送網 24.02%
NTTドコモ 14.86%
リクルートホールディングス 6.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長グループCEOは江幡哲也氏が務めています。社外取締役の比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
江幡 哲也 代表取締役社長グループCEO 1987年リクルート入社。2000年同社代表取締役社長兼CEOに就任。オールアバウトライフマーケティング代表取締役会長などを歴任し、現在に至る。
森田 恭弘 取締役CAO 1991年王子製紙入社。2000年同社入社。2009年に退職後、2014年に再入社しChief Administrative Officerに就任。2018年より現職。
宮﨑 秀幸 取締役 2001年ピーエイ入社。2003年同社入社。メディアビジネス事業部企画推進部ジェネラルマネジャー、オールアバウトナビ代表取締役社長などを経て、2020年より現職。
土門 裕之 取締役 1997年ティージー情報ネットワーク入社。2005年同社入社。メディア事業部長を経て、2013年オールアバウトライフマーケティング代表取締役社長に就任。2015年より現職。


社外取締役は、澤桂一(日本テレビホールディングス上席執行役員等)、伊藤邦宏(NTTドコモ執行役員等)、渡邊龍男(元イーワークスリミテッド代表取締役)、武田健二(元日立アメリカLTD上級副社長CTO・指名・報酬委員会委員長)、山縣敦彦(マーベリック法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「マーケティングソリューション」「コンシューマサービス」および「その他」事業を展開しています。

マーケティングソリューション


総合情報サイト「All About」を中心に、多様な分野の専門家が情報を発信するメディア事業と、SNSを活用したデジタルマーケティングの各種ソリューション、広告運用支援などを提供しています。主な顧客は広告主となる一般企業や官公庁です。

主な収益源は、サイトの閲覧者やSNSユーザーに向けたエディトリアル広告やバナー広告の掲載料、デジタルマーケティング施策の支援に伴う手数料です。運営は主にオールアバウトおよび子会社のオールアバウトナビなどが行っています。

コンシューマサービス


日本最大級のお試しサービス「サンプル百貨店」や、NTTドコモの総合通販サイト「dショッピング」、ふるさと納税ポータルなどの企画・運営を通じて、主に一般消費者に向けたeコマースサービスを提供しています。

主な収益源は、「サンプル百貨店」上でユーザーが支払うお試し費用や、共同運営する「dショッピング」での取扱高に応じた一定料率の手数料です。運営は主に子会社のオールアバウトライフマーケティングが行っています。

その他


主力2セグメントに含まれない新規事業として、銀行代理事業や金融に関する情報提供サービス事業などを展開しています。生活者が不安なく賢く生きるためのライフアセットマネジメント領域を支援しています。

主な収益源は、提携する金融機関の各種金融商品やサービスを紹介し、顧客が利用した際に発生する手数料などです。運営は主に子会社のみらいバンクが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は150億円台から160億円台で推移していましたが、直近は減少傾向にあります。経常利益と当期利益は赤字が続いており、収益性の改善が課題となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 154億円 169億円 157億円 160億円 155億円
経常利益 6.7億円 0.2億円 -4.4億円 0.1億円 -1.1億円
利益率(%) 4.4% 0.1% -2.8% 0.1% -0.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.8億円 -2.1億円 -2.8億円 -0.4億円 -4.7億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、売上総利益率は上昇しました。一方で販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は赤字に転落しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 160億円 155億円
売上総利益 96億円 97億円
売上総利益率(%) 60.2% 62.9%
営業利益 0.1億円 -1.1億円
営業利益率(%) 0.1% -0.7%


販売費及び一般管理費のうち、物流費が22億円(構成比22%)、給与手当が16億円(同16%)、販売手数料が16億円(同16%)を占めています。売上原価は57億円で、売上高に対する構成比は37%です。

(3) セグメント収益


マーケティングソリューションはデジタルマーケティング事業の増収などにより売上が増加しましたが、コンシューマサービスは商品調達不足などの影響で減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
マーケティングソリューション 21億円 22億円
コンシューマサービス 139億円 132億円
その他 - 1.3億円
連結(合計) 160億円 155億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2.5億円 0.7億円
投資CF -4.5億円 -11.7億円
財務CF -0.4億円 -0.4億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.6%で、スタンダード市場の非製造業平均を上回っています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されていません。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「個人を豊かに、社会を元気に。」をミッションとして掲げ、世の中の人々が多様な価値観やライフスタイルを発見、実現することを支援し、一人ひとりが豊かに人生を楽しめる社会の実現に貢献することを目指しています。また、「システムではなく、人間。」という考え方を大切にし、人間ならではの創造性や価値に目を向けています。

(2) 企業文化


多様な人材がお互いの違いを認め合い、その能力を最大限に発揮し、自律型人材が活躍し続ける会社風土の醸成を目的に、仕事のやり方を「All About Way」として言語化しています。これを評価制度に取り入れ、体現した従業員やチームを全体で共有して認め合い、定期的に表彰する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


世の中に新しい価値を生み出し続け、持続的に企業価値を向上させていくことを測る重要な指標として、売上高、営業利益、自己資本利益率(ROE)を位置付けています。中長期的なマイルストーンとして、以下の数値を掲げています。

* 2029年3月期における売上高:190億円
* 2029年3月期における営業利益:6億円
* 指標達成時の自己資本利益率(ROE):10%超

(4) 成長戦略と重点施策


既存のマーケティングソリューションやコンシューマサービス領域に加え、生活者の意思決定や行動をサポートする「ライフアセットマネジメント」領域へのサービス開発や投資を進めています。また、各事業のグローバル展開を模索するほか、独自の強みを持つベンチャー企業への投資を進め、事業拡大の加速に向けたシナジー効果を狙っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


デジタルマーケティングやコマース領域における専門性の高い即戦力人材の確保を優先しつつ、新卒採用を継続して中長期的な事業成長の基盤を作ります。また、人材育成ポリシーに基づき、オンライン学習システムやジョブローテーションプログラムを提供し、従業員の自律的な学びとキャリア形成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 35.8歳 5.7年 5,508,768円


※平均年間給与は賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 33.3%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 72.8%
男女賃金差異(正規雇用) 78.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 130.8%


※男性育児休業取得率については、有報に記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社員に占める女性社員の割合(52.4%)、育児休業からの復帰率(100%)、フレキシブルワーク環境の整備率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) メディア&デジタルマーケティング事業への景気変動の影響


広告費は景気の影響を受けやすいため、不景気や社会情勢の変動が生じた場合、広告費が削減され、業績に影響を与える可能性があります。同社は安定的な収益確保のため費用構造の改善に取り組んでいます。

(2) 検索エンジンからの集客依存


総合情報サイト「All About」のユーザーの多くは検索エンジンからの集客に依存しています。検索エンジンのロジック変更や、生成AIの普及によるゼロクリック検索の増加などで検索体験が変化し、来訪ユーザー数が減少した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) インターネット広告における価値基準の変化


広告手法や広告主の求める効果など、インターネット広告の価値基準は常に変化しています。新たな広告手法の登場や広告主のニーズ変化に対し、適切に対応できなかった場合、想定した収益を得られず業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。