ULSグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ULSグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ULSグループは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、顧客企業の競争優位性を支える戦略的IT投資領域のコンサルティング事業を展開しています。直近の業績は売上高が166億円で前年度比25.7%増、経常利益が31億円で同16.1%増となり、好調な需要を背景に大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、ULSグループの有価証券報告書(第26期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ULSグループってどんな会社?


戦略的IT投資領域におけるコンサルティングサービスを提供し、顧客の競争優位性構築を支援しています。

(1) 会社概要


2000年にシステム開発やコンサルティングを目的に設立され、2006年に株式上場を果たしました。2011年の経営統合を経て現在のULSグループへ商号を変更し、持株会社体制へ移行しています。近年は2020年にアークウェイを子会社化するなど、戦略的IT投資領域での専門性をさらに強化しています。

現在の従業員数は連結で820名、単体で43名体制です。筆頭株主は創業者の漆原茂氏で、第2位は役員の高橋敬一氏、第3位は従業員持株会となっています。経営陣や従業員を中心とした安定的な株主構成を背景に、コンサルティングサービスを通じた持続的な事業の成長を推し進めています。

氏名 持株比率
漆原茂 45.40%
高橋敬一 5.16%
ULSグループ従業員持株会 4.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役会長は漆原茂氏、代表取締役社長は横山芳成氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
漆原茂 代表取締役会長 沖電気工業を経て、スタンフォード大学客員研究員に従事。2000年に同社社長に就任し、現在は同社会長およびアークウェイの社長などを兼任。
横山芳成 代表取締役社長 NEC情報システムズを経て、2005年に同社入社。ULSコンサルティングのイノベーションセンター長や取締役を歴任し、2025年より現職。
高橋敬一 取締役CFO 中央監査法人を経て公認会計士登録。2000年に同社へ入社し、財務担当執行役員を経て2003年より取締役。ULSコンサルティング等の取締役などを兼任。
犬伏靖 取締役(常勤監査等委員) 沖電気工業を経て、2000年に同社入社。事業部長等を歴任し、ULSコンサルティング等の監査役を経て、2022年より現職。


社外取締役は、唐津真美(元骨董通り法律事務所パートナー)、増成由佳(白鳥橋法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンサルティング事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

コンサルティング事業


同社グループは、主にサービス、金融、情報通信、製造業および公共事業体向けに、戦略的IT投資領域におけるコンサルティングサービスを提供しています。独自のナレッジベースや先端IT技術を活用し、デジタル・IT戦略の立案から業務・システム変革支援、アジャイル開発やAI駆動開発までを一貫して支援しています。

収益は、顧客企業の意思決定やプロジェクト実行を支援するコンサルティングの役務提供に対する対価として得ています。運営は、民間企業向けを主に担うULSコンサルティングおよびITアーキテクチャに強みを持つアークウェイ、そして公共事業体向けに特化したピースミール・テクノロジーの各子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績は、企業のデジタルトランスフォーメーション投資の拡大を背景に、一貫して増収基調を維持しています。経常利益も右肩上がりで推移し、直近では31億円を突破するなど、利益面でも安定した成長を遂げており、高い収益性を維持しながら事業を拡大させていることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 74億円 85億円 104億円 132億円 166億円
経常利益 16億円 17億円 18億円 26億円 31億円
利益率(%) 21.8% 20.3% 16.9% 20.0% 18.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 7億円 7億円 7億円 11億円

(2) 損益計算書


売上高は前年度から順調に拡大し、それに伴い売上総利益や営業利益も着実に増加しています。人材投資や採用活動の強化による費用増をこなしつつ、プロジェクトの品質管理や単価向上の徹底によって高水準の利益を確保しており、強固な収益基盤を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 132億円 166億円
売上総利益 53億円 66億円
売上総利益率(%) 40.3% 39.8%
営業利益 26億円 30億円
営業利益率(%) 19.9% 18.3%


販売費及び一般管理費のうち、採用費が8億円(構成比24%)、給与及び手当が7億円(同19%)を占めています。事業拡大に向けた人材獲得競争が激化するなか、エンジニアやコンサルタントの確保に積極的な投資を行っていることがコスト構造からも確認できます。

(3) セグメント収益


同社は「コンサルティング事業」の単一セグメントで事業を展開しています。顧客企業のデジタルトランスフォーメーションに対する旺盛な需要を背景に、AI技術を駆使したデジタル戦略立案や業務変革支援などの高付加価値サービスの受注が堅調に推移し、大幅な売上増を達成しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
コンサルティング事業 132億円 166億円
連結(合計) 132億円 166億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も74.7%で市場平均を大きく上回っています。本業で稼いだ営業利益を手元資金として投資や借入返済に充てており、極めて健全なキャッシュ・フロー状況と財務基盤を構築しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 16億円 20億円
投資CF -2億円 -5億円
財務CF -2億円 -1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「お客様の次世代ビジネスの成功を先端IT技術でリードし、お客様とIT業界にイノベーションを起こす」という理念を掲げています。先端IT技術と独自のナレッジベース「ULBOK(ウルボック)」を駆使し、顧客本位のIT戦略立案から実行までを支援することで、唯一無二のビジネスパートナーとなることを目指しています。

(2) 企業文化


最大の資産は「人材(人財)」であるという認識のもと、人的資本への投資を最重要視する文化が根付いています。多様な社員が自主的に学び合う社内コミュニティ活動を奨励し、理論と実践を繰り返しながら組織知を蓄積する風土を醸成しています。心身の健康を重視し、多様な働き方を支援する環境整備にも力を入れています。

(3) 経営計画・目標


同社は特定の数値目標を掲げた中期経営計画の策定・公表は行っていませんが、経常利益とその中長期的成長を最重要の経営指標として位置づけています。経常利益は専門家集団としての競争力の証であり、株主をはじめとするステークホルダーへの利益配分の源泉となるため、その持続的な成長を重視した経営を行っています。

(4) 成長戦略と重点施策


顧客の競争優位性を支える戦略的IT投資領域を基軸としつつ、AI駆動開発やアジャイル開発によるコンサルティングサービスの高付加価値化を図っています。また、事業拡大を支えるため、優秀な人材の中途採用を年間120~140名規模に拡大し、グループ全体で1,500~2,000名体制を目指す盤石な経営基盤の強化を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


厳選採用と充実した研修制度を通じて、ビジネスと先端IT技術の双方に精通した「二刀流」人材の育成を進めています。多様なキャリアプランに対応できる実践型プログラムや、個人の専門性と成果を事業戦略に即して適切に評価する透明性の高い人事評価制度を運用し、高いモチベーションの維持と優秀な人材の定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.9歳 7.5年 8,486,193円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.0%
男性育児休業取得率 72.7%
男女賃金差異(全労働者) 97.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 97.3%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) -


※男女賃金差異(非正規雇用労働者)については、該当者がいないため記載されていません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(7.4%)、定期健康診断受診率(99.9%)、中途採用数(127名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システム開発における工程見積もりのリスク


請負契約において、顧客の要件が確定していない段階で見積もりを誤ると、大規模なコスト超過や作業遅延による損害賠償が生じる可能性があります。同社は独自ノウハウの活用や契約の細分化によりリスク回避を図っていますが、不測の事態が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) プロジェクトの品質およびリスク管理


プロジェクトの提案から実行までにおいて、信用リスクや品質管理などの様々な問題が発生するリスクがあります。同社は社内規程に基づく厳格なレビューや、品質管理を専門に支援する部署を通じた体制整備を行っていますが、事業拡大のスピードに管理体制が追いつかない場合、事業運営に支障をきたす恐れがあります。

(3) 検収時期等の遅延による業績への影響


収益の認識において、受託したプロジェクトの成果物に対する顧客の受入検査(検収)が重要な要素となります。予定通りの検収を受けるべく品質管理に努めていますが、顧客都合などで検収時期が遅延した場合、収益計上が遅れ、同社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 優秀な人材の確保と定着


コンサルタントの増減が売上に直結するため、事業拡大には優秀な人材の継続的な確保と育成、定着率の向上が不可欠です。透明性の高い人事評価や充実した報酬制度など様々な施策を講じていますが、採用活動の不振や退職者の増加が想定を超えた場合、事業の拡大に大きな制約が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。