ULSグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ULSグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する、戦略的IT投資領域に特化したコンサルティング及び受託開発企業です。主力のコンサルティング事業において、DX投資需要の拡大や先端IT技術を活用した高付加価値サービスの受注が好調に推移しました。当期は売上高27.2%増、経常利益50.1%増となり、過去最高益を更新しています。


※本記事は、ULSグループ株式会社 の有価証券報告書(第25期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ULSグループってどんな会社?


戦略的IT投資領域におけるコンサルティングと受託開発を主軸とし、顧客のDXやイノベーション支援を行う企業グループです。

(1) 会社概要


2000年にウルシステムズとして設立され、2006年にジャスダックへ上場しました。2011年の経営統合により現在の商号へ変更し、持株会社体制へ移行しています。2020年にはアークウェイを子会社化するなど体制を強化し、2022年の市場区分見直しに伴い東証スタンダード市場へ移行しました。

同グループの連結従業員数は693名、単体では36名です。筆頭株主は創業者の漆原茂氏で、第2位は同社取締役の髙橋敬一氏、第3位は業務提携先であるIT企業のインテックとなっています。

氏名 持株比率
漆原 茂 46.04%
高橋 敬一 5.31%
インテック 4.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性2名(比率33.3%)の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は横山芳成氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
横山 芳成 代表取締役社長 NEC情報システムズを経て同社入社。ウルシステムズ事業開発部副部長、同社代表取締役社長などを歴任し、2025年6月より現職。
漆原 茂 代表取締役会長 沖電気工業、スタンフォード大学客員研究員を経て同社設立。代表取締役社長、ウルシステムズ社長などを歴任し、2025年6月より現職。
高橋 敬一 取締役CFO 公認会計士。同社入社後、財務担当執行役員、オープンソースCRM取締役などを経て、2003年12月より現職。
犬伏 靖 取締役(常勤監査等委員) 沖電気工業を経て同社入社。コンサルティング第三事業部長、ウルシステムズITイノベーション本部長などを歴任し、2022年6月より現職。


社外取締役は、唐津真美(高樹町法律事務所パートナー)、増成由佳(白鳥橋法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンサルティング事業」の単一セグメントを展開しています。

**コンサルティング事業**
顧客企業の競争優位性を支える戦略的IT投資領域に特化し、デジタル・IT戦略立案、業務・システム変革支援、プロジェクトマネジメント、アジャイル開発などのサービスを提供しています。主な顧客は金融、情報通信、サービス、製造業の企業や公共事業体です。

収益は、顧客企業に対するコンサルティングサービス、受託開発、保守サービスの対価として得ています。運営は、ウルシステムズ、ピースミール・テクノロジー、アークウェイの連結子会社3社がそれぞれの専門領域(民間企業向け、公共向け、ITアーキテクチャ特化など)に応じて行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高、利益ともに右肩上がりの成長を続けています。特に当期は売上高が130億円を突破し、経常利益率も20%水準を回復するなど、収益性の高さと成長性を維持しています。DX需要の取り込みが進み、順調に事業規模を拡大させています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 72億円 74億円 85億円 104億円 132億円
経常利益 14億円 16億円 17億円 18億円 26億円
利益率(%) 19.7% 21.8% 20.3% 16.9% 20.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 6億円 7億円 7億円 7億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しています。増収効果がコスト増を吸収し、利益率も改善傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 104億円 132億円
売上総利益 39億円 53億円
売上総利益率(%) 37.2% 40.3%
営業利益 18億円 26億円
営業利益率(%) 16.9% 19.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が5億円(構成比19%)、役員報酬が5億円(同18%)、採用費が4億円(同16%)を占めています。人的資本への投資を重視していることがコスト構成からも読み取れます。

(3) セグメント収益


コンサルティング事業単一セグメントですが、企業のDX投資拡大を背景に、デジタル戦略立案や業務変革支援などの高付加価値サービスの受注が堅調に推移し、大幅な増収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
コンサルティング事業 104億円 132億円
連結(合計) 104億円 132億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ULSグループは、営業活動により潤沢な資金を生み出し、事業基盤を強化しています。営業活動によるキャッシュ・フローは大幅に増加し、これは主に事業活動による利益の計上が要因です。投資活動では、将来の事業展開を見据えた設備投資や保証金の差し入れ等により資金を使用しました。財務活動では、株主への配当金の支払いが主な資金流出となりました。これらの活動の結果、同社の現金及び現金同等物は増加しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 8億円 16億円
投資CF -1億円 -2億円
財務CF -2億円 -2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同グループは、「お客様の次世代ビジネスの成功を先端IT技術でリードし、お客様とIT業界にイノベーションを起こす」ことを理念としています。顧客企業の競争優位性を支える戦略的IT投資を成功に導くことで、顧客にとって唯一無二のビジネスパートナーになることを目指しています。

(2) 企業文化


先端IT技術と独自のナレッジベース「ULBOK(ウルボック)」を駆使し、顧客本位のIT戦略立案から実行までを一貫して顧客サイドで支援する姿勢を重視しています。顧客企業やIT業界にイノベーションを起こすため、人材(人財)の成長を最重要視した組織運営を行っています。

(3) 経営計画・目標


同グループは、期間収益に対応する最終利益項目であり、競争力の証かつ利益配分の源泉となる「経常利益」とその中長期的成長を最重要視する経営を行っています。具体的な数値目標としての中期経営計画等は公表していませんが、経常利益の持続的な成長を経営の基本方針としています。

(4) 成長戦略と重点施策


コンサルティング事業を基軸としつつ、そこで得られた知見をもとにソフトウェア開発や先端技術領域への積極投資を行い、事業を拡大させる戦略です。特にDX需要が今後も拡大すると見込み、人材採用・育成、経営基盤強化、先端技術の研究開発に注力しています。

* 年間100-120名規模のエンジニア・コンサルタント採用
* ビジネスと先端IT技術に精通した「二刀流」人材の育成
* グループ全体で1,000-1,500名体制への拡大に向けた経営基盤強化
* 外部企業とのアライアンスやM&A、有望な先端技術への投資

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材(人財)の成長なくしてグループの成長なし」との認識のもと、人的資本への投資を最重要視しています。実力本位の採用、メンター制度による定着支援、多様なキャリアに対応した研修制度、ナレッジベース「ULBOK」を活用した能力開発などを推進し、優秀なコンサルタントの育成と組織的な知見の蓄積を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.2歳 8.0年 7,481,538円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 50.0%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 110.7%
男女賃金差異(正規雇用) 110.7%
男女賃金差異(非正規雇用) -%


※男性育児休業取得率は提出会社の実績がなく、上記は主要子会社ウルシステムズ株式会社の数値(80.0%)を採用しています。
※男女賃金差異(非正規雇用)は該当者がいないため記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用数(96名)、新卒採用数(25名)、定期健康診断受診率(99.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) プロジェクトのリスク管理


プロジェクトの提案から実行までの一連の活動には、見積もり、契約、品質、外注管理など様々なリスクが存在します。同社は専門部署による支援や厳格なレビュー体制を整備していますが、事業拡大のスピードが想定以上に速い場合、管理体制が十分に機能せず、経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 検収時期等の遅延


受託プロジェクトの収益認識において、顧客の検収は重要な要素です。同社は品質管理を徹底していますが、顧客都合等により検収時期が遅延した場合、予定していた時期に売上や利益を計上できず、経営成績に変動が生じる可能性があります。

(3) システム開発の工程見積もり


システム開発等の請負契約において、作業開始時の見積もりを誤るとコスト超過や納期遅延が発生し、損害賠償責任が生じるリスクがあります。同社は要件明確化後の契約締結などを徹底していますが、不測の事態によりこれらのリスクが顕在化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。