スターティアホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スターティアホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のスターティアホールディングスは、ITインフラ関連事業とデジタルマーケティング関連事業を主軸に展開しています。直近決算では、ストック収益の積み上げやセキュリティ需要の高まりを背景に、売上高および経常利益ともに前期を上回る増収増益を達成しています。


※本記事は、スターティアホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第30期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スターティアホールディングスってどんな会社?


ITインフラ提供とデジタルマーケティング支援を両輪とするITソリューションベンダーです。

(1) 会社概要


1996年に有限会社テレコムネットとして設立し、2005年に東証マザーズ、2014年に東証一部へ上場しました。2009年に現在のデジタルマーケティング事業の中核となる子会社を設立し、AR制作ソフト等の提供を開始しました。2018年には持株会社体制へ移行し、現商号に変更しています。

同グループの連結従業員数は1,053名、単体では64名です。筆頭株主は代表取締役社長の本郷秀之氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は従業員持株会となっており、創業者と従業員が主要な持分を保有する構成です。

氏名 持株比率
本郷 秀之 26.75%
株式会社日本カストディ銀行(信託E口) 4.52%
スターティアホールディングス従業員持株会 3.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は本郷秀之氏です。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
本郷秀之 代表取締役社長 1996年同社設立、代表取締役社長就任。2019年グループ最高経営責任者を経て、2023年4月より最高経営責任者現職。
笠井充 取締役 2002年同社入社。ビジネスソリューション事業部長、インフラ事業本部長等を歴任。2025年4月よりスターティア取締役会長、クラウドサーカス取締役等を兼任。
植松崇夫 取締役 2004年同社入社。管理部長、管理本部長を経て、2025年4月より執行役員CFO兼コーポレート本部長現職。
北村健一 取締役 2001年同社入社。ウェブソリューション事業部長等を経て、2021年クラウドサーカス代表取締役CEO。2025年4月より執行役員COO兼事業戦略本部長現職。


社外取締役は、中本哲宏(株式会社TNnetwork代表取締役)、古市優子(Comexposium Japan株式会社代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルマーケティング関連事業」および「ITインフラ関連事業」などを展開しています。

(1) デジタルマーケティング関連事業


主に中小企業を対象に、「Cloud CIRCUS」というSaaSツール群を提供しています。「情報発信」「集客」「顧客体験価値向上」などの課題に対し、AR制作ソフトや電子ブック作成ソフト等のマーケティングツールを開発・提供しています。

収益は、SaaSツールのサブスクリプション利用料や、Webサイト・アプリの制作受託費等が柱です。運営は主にクラウドサーカス株式会社が行っています。

(2) ITインフラ関連事業


オフィスの通信環境構築や機器販売を行う事業です。複合機(MFP)、ビジネスフォン、ネットワーク機器の販売・施工に加え、クラウドソリューションやセキュリティ対策など、ITインフラのトータルソリューションを提供しています。

収益は、機器の販売代金、保守カウンター料金、通信回線手配によるインセンティブ収入等が主な源泉です。運営はスターティア株式会社、スターティアレイズ株式会社などが担っています。

(3) CVC関連事業


革新的なテクノロジーを持つITベンチャー企業への投資育成を行っています。同社グループの顧客基盤やノウハウを活用して投資先を支援し、グループ内へのイノベーション誘発を目指しています。

収益は、出資先企業の成長に伴うキャピタルゲイン等が該当します。運営はスターティアホールディングスおよびStartia Asia Pte.Ltd.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実な増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。経常利益も大幅な増益基調を維持しており、利益率も改善傾向にあります。当期利益に関しては、直近で変動が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 133億円 160億円 200億円 196億円 222億円
経常利益 0.7億円 6億円 18億円 23億円 28億円
利益率(%) 0.5% 3.5% 9.2% 11.5% 12.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.1億円 2.3億円 1.2億円 26億円 0.9億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。特に営業利益率は高い水準を維持しており、収益性の向上が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 196億円 222億円
売上総利益 92億円 100億円
売上総利益率(%) 46.9% 44.9%
営業利益 23億円 27億円
営業利益率(%) 11.7% 12.3%


販売費及び一般管理費のうち、賃金給与が30億円(構成比40.9%)、賞与及び賞与引当金繰入額が5億円(同7.6%)を占めています。

(3) セグメント収益


ITインフラ関連事業、デジタルマーケティング関連事業ともに増収となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
デジタルマーケティング関連事業 35億円 39億円
ITインフラ関連事業 161億円 183億円
CVC関連事業 0億円 -
その他 - -
調整額 - 0.1億円
連結(合計) 196億円 222億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、運転資金、設備・開発投資資金、M&A資金等を、営業活動によるキャッシュ・フロー、自己資金、金融機関からの借入で調達しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上等があったものの、法人税等の支払いや売上債権の増加、未払金の減少等により、収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得や貸付けによる支出があったものの、投資有価証券の売却による収入等により、支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期・短期借入れによる収入があったものの、長期・短期借入金の返済や配当金の支払いが上回ったため、支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 25億円 17億円
投資CF -5億円 -4億円
財務CF 4億円 -21億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「社会のニーズとマーケットを見極め、人と企業の未来を創造し、優れた事業と人材を輩出するリーディングカンパニーを目指す」を経営理念としています。最新技術を取り入れた迅速な経営とガバナンス強化により、企業価値向上に努めています。

(2) 企業文化


「デジタルシフトESG経営」を掲げ、中小企業のデジタル化支援を通じて持続可能な社会の実現を目指しています。また、「優秀な人材の確保及び育成」を重要視し、多様性を尊重した人材育成や健康経営、教育環境の整備に注力する文化があります。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「NEXT'S 2025」を策定し、変革と成長による企業価値向上を目指しています。当面の経営課題として、デジタルマーケティング事業の利益化やITインフラ事業の顧客基盤拡大などを挙げています。

(4) 成長戦略と重点施策


デジタルマーケティング事業ではサブスクリプションモデルによる収益性向上、ITインフラ事業ではM&Aや新規出店による顧客基盤拡大を進めています。また、社内業務のデジタルシフトによる生産性向上や、人材確保・育成への投資、コーポレート・ガバナンスの強化にも重点的に取り組む方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「優秀な人材の確保及び育成」を重要なサステナビリティと位置付けています。多様性を含む人材の確保と育成のため、社員の健康、働く環境、教育に注力し、各種制度や研修を導入することで、安心して働ける環境と個人の成長を両立させる取り組みを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.8歳 6.6年 8,258,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.6%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 49.4%
男女賃金差異(正規) 54.4%
男女賃金差異(非正規) 38.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員ワークエンゲージメントスコア(3.05ポイント)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 取り扱い商材に関するリスク


デジタルマーケティング事業では競合サービスの台頭や技術革新(生成AI等)による陳腐化、ITインフラ事業ではペーパーレス化による複合機需要の減少等のリスクがあります。顧客ニーズへの対応や新技術の活用、サービスの多角化で対応しています。

(2) 知的財産権の侵害リスク


事業分野における他社の知的財産権を完全に把握することは困難であり、予期せず抵触して損害賠償請求等を受けるリスクがあります。また、必要なライセンス供与が受けられない可能性もあります。専門家と相談しつつ、権利の取得・活用を進めています。

(3) 投資有価証券に係るリスク


上場株式やIT関連の未公開株式等を保有しており、市況低迷や投資先の経営悪化により評価額が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。外貨建て資産の為替変動リスクもあります。

(4) 企業買収等による事業拡大に係るリスク


事業拡大手段としてM&Aを検討・実施していますが、環境変化等により当初見込んだ効果が得られない場合や、想定以上の時間・労力を要する場合があり、業績等に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。