ヒビノ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヒビノ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヒビノは東京証券取引所スタンダード市場に上場する、音響・映像領域のプロフェッショナル企業です。販売施工、建築音響施工、コンサート・イベントサービスの各事業を展開しています。直近の業績は、大型イベント需要の獲得やコンサート市場の活況を背景に全事業で売上が伸長し、増収増益となり過去最高益を更新しました。


※本記事は、ヒビノ株式会社の有価証券報告書(第63期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヒビノってどんな会社?


音響・映像機器の販売からイベントの企画・運営、建築音響まで幅広い音と映像のサービスを提供しています。

(1) 会社概要


同社は1964年にヒビノ電気音響として設立され、業務用音響機器の事業からスタートしました。1988年に現在のヒビノへ商号を変更し、2006年に株式上場を果たしました。近年はオーストラリアやシンガポールなど海外企業のM&Aを積極的に推進し、アジア・オセアニア地域でのグローバル展開を加速させています。

現在の従業員数は連結で1,829名、単体で653名です。筆頭株主は有限会社ハイビーノで、第2位は代表取締役会長(CEO)の日比野晃久氏、第3位にはヒビノ従業員持株会が名を連ねています。経営トップや従業員持株会が上位株主となっており、経営と資本の距離が近い株主構成となっています。

氏名 持株比率
有限会社ハイビーノ 35.51%
日比野晃久 7.11%
ヒビノ従業員持株会 4.18%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長(COO)は吉松聡氏が務めています。社外取締役比率は18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
日比野晃久 代表取締役会長(CEO) 1985年同社入社。1990年取締役映像事業部事業部長、2002年同社代表取締役社長、ハイビーノ取締役社長などを経て、2026年6月より現職。
吉松聡 代表取締役社長(COO) 1983年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。同社取締役、Hibino USA取締役、同社代表取締役副社長などを経て、2026年6月より現職。
芋川淳一 取締役常務執行役員コンサート・イベントサービス事業ヒビノビジュアルグループ担当 1991年同社入社。同社取締役ヒビノビジュアルDiv.事業部長、H&X Technologies取締役などを経て、2025年6月より現職。
久野慎幸 取締役常務執行役員販売施工事業建築音響施工事業担当 1985年同社入社。ヒビノプロオーディオセールスDiv.事業部長、日本音響エンジニアリング取締役などを経て、2024年11月より現職。
井澤孝 取締役常務執行役員コンサート・イベントサービス事業ヒビノサウンドグループ担当 1989年同社入社。同社執行役員ヒビノサウンドDiv.営業統括を経て、2022年6月より現職。
高野芳裕 取締役常務執行役員ヒビノGMC担当 1989年第一勧業銀行入行。みずほ銀行九段支店長等を経て、2020年同社理事ヒビノGMC担当。2024年8月より現職。


社外取締役は、金子基宏(元みずほ情報総研副社長・指名委員長)、山口孝太(木村・多久島・山口法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「販売施工事業」「建築音響施工事業」「コンサート・イベントサービス事業」および「その他の事業」を展開しています。

販売施工事業


業務用音響・映像・照明・制御機器の販売やシステム設計、施工、メンテナンス、およびコンシューマー用音響・映像機器の販売を行っています。また、LEDディスプレイ及び周辺機器の開発・製造・販売も手掛け、国内外の顧客に提供しています。

機器の販売代金やシステムの設計・施工費、メンテナンス料などを顧客から受け取ります。運営は同社をはじめ、ヒビノインターサウンドやエレクトリ、海外子会社のInSight Systems Holdings Pty Ltdなどが担っています。

建築音響施工事業


建築音響や騒音対策に関する設計・施工、音響製品の開発・製造・販売を行っています。また、音や振動に関するコンサルティング、調査、測定サービスも提供し、快適な音環境を求める多様な顧客のニーズに応えています。

建築音響の設計・施工に係る工事請負代金や、音響製品の販売代金、コンサルティング・測定業務の役務提供に対する手数料を収益源としています。運営は主に日本音響エンジニアリングや日本環境アメニティが担当しています。

コンサート・イベントサービス事業


コンサート・イベント用の音響・映像システムの企画立案からレンタル、オペレートまでを提供しています。また、録音、中継、イベントの企画・運営、音響・映像関連のエンジニア派遣など、ライブエンターテインメントに関わる総合的なサービスを展開しています。

機材のレンタル料やイベントの企画・運営費、技術者のオペレート代金や人材派遣料を顧客から受け取ります。この事業は、同社およびヒビノメディアテクニカルなどが主力となって運営を行っています。

その他の事業


新規事業領域として、オフィス空間の快適性や機能性を高めるためのサービスを提供しています。具体的には、オフィス家具の販売およびオフィス空間の設計・施工を手掛けています。

オフィス家具の販売代金やオフィス空間の設計・施工に伴う請負代金を顧客から受け取ります。運営はオフィックスが担当し、事業ポートフォリオの拡充を推進しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は一時的に横ばいとなった時期もありましたが、その後は右肩上がりで成長を続け、大幅な増収を達成しています。経常利益も売上の拡大に連動して増加傾向にあり、利益率も着実に改善しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 424億円 419億円 505億円 595億円 676億円
経常利益 19億円 14億円 30億円 39億円 51億円
利益率(%) 4.5% 3.3% 5.8% 6.6% 7.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 4億円 9億円 11億円 33億円

(2) 損益計算書


直近の業績を見ると、売上高の拡大に伴い売上総利益も順調に増加しており、売上総利益率も改善しています。これに合わせて営業利益も高い伸びを示し、営業利益率も上昇していることから、収益性の高い事業運営が行われていることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 595億円 676億円
売上総利益 212億円 246億円
売上総利益率(%) 35.6% 36.4%
営業利益 42億円 51億円
営業利益率(%) 7.1% 7.5%


販売費及び一般管理費(195億円)のうち、給与及び賞与が72億円(構成比37%)、賞与引当金繰入額が11億円(同6%)、退職給付費用が7億円(同4%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの増減要因を見ると、コンサート・イベントサービス事業が大型イベントの需要拡大により大幅な増収を牽引しました。また、販売施工事業や建築音響施工事業も堅調に推移しており、新規連結子会社の寄与も全社的な売上規模の拡大に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
販売施工事業 305億円 327億円
建築音響施工事業 106億円 116億円
コンサート・イベントサービス事業 175億円 213億円
その他の事業 9億円 19億円
連結(合計) 595億円 676億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を元に投資を行い、さらに借入金の返済等も進める「健全型」の状態にあります。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は24.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.6%で市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 36億円 86億円
投資CF -48億円 -31億円
財務CF 7億円 -60億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は経営理念として「創造と革新(Creation & Innovation)」を掲げ、パーパス(存在意義)を「音と映像で、世界に感動をクリエイトする」と定めています。また、ビジョンには「世界のヒビノへ」を掲げ、音響と映像を中心に販売・施工やサービスを組み合わせた独自のビジネスモデルをグローバルに展開しています。

(2) 企業文化


同社は企業文化の基盤としてバリュー(価値観・心構え)である「ヒビノ10訓」を掲げています。具体的には「クオリティを最優先!」「安全第一」「現場主義経営」「とことんこだわるプロ集団!」「イノベーション」などを定めており、安全と品質を重視しながら業界初の製品やサービスを生み出し続けるプロフェッショナルな組織風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は2027年3月期からの新中期経営計画「Beyond 1000」において、「健全経営2.0による持続的成長の実現」を方針に掲げています。成長力や収益力の強化と財務の安定を図り、以下の財務目標の達成を目指しています。

* 売上高(2029年3月期):1,000億円
* 経常利益(2029年3月期):70億円
* 自己資本比率:35%以上(目標40%)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は成長戦略として「ハニカム型経営の進化による事業の創造と革新」を掲げ、M&Aも活用しながら外部環境の変化に強い事業ポートフォリオの構築を進めています。重点施策として、既存事業のシェア拡大やアジア・オセアニアを中心としたグローバル展開の強化、大型案件の獲得に向けたグループ連携の高度化に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本経営の目標として、感動を媒介とした貢献と感謝の輪を広げることで、会社の発展と従業員の幸福を実現することを目指しています。人材・組織ビジョンには「世界に通じるプロフェッショナル人材の育成」「クリエイティブでイノベーティブな企業文化の醸成」「多様な従業員が個の強みを発揮する全員経営参画」を掲げています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.7歳 14.5年 6,712,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.4%
男性育児休業取得率 50.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 75.6%
労働者の男女の賃金の差異(うち正規雇用労働者) 76.8%
労働者の男女の賃金の差異(うちパート・有期労働者) 62.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(29.0%)、従業員エンゲージメントの好意的回答割合(45.9%)、ヒビノイノベーション活動従業員参加率(10.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際情勢の不安定化とサプライチェーンへの影響


同社グループは音響・映像機器の多くを海外メーカーから仕入れています。地政学リスクの高まりや通商政策等の影響により、メーカーからの商品供給の遅延、仕入れ価格の上昇、輸送費の高騰といったリスクが生じる可能性があります。これに対し、適正在庫の維持や機動的な販売価格の改定に取り組んでいます。

(2) 専門人材の安定的確保と育成


音響・映像機器のオペレートやシステム設計等には高度な専門知識や技術が必要です。人材獲得競争が激化する中、必要な人材の確保や育成が計画通りに進まない場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。同社は採用の強化や研修の充実、ワークライフバランスを支える制度整備などで人材の定着を図っています。

(3) 情報セキュリティとシステム障害


事業運営の多くを情報システムに依存しているため、サイバー攻撃等によるシステム障害や情報漏えいが発生した場合、業務に重大な支障をきたすとともに社会的信用の低下を招くリスクがあります。防御システムの多層化やインシデント対応体制の整備、従業員向け教育を通じて情報管理の強化に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。