ヒビノ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヒビノ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場するヒビノは、業務用音響・映像機器の販売施工や、コンサート・イベントの映像音響サービスを展開しています。大型案件や大阪・関西万博関連の需要を取り込み、M&Aによる事業領域の拡大も寄与したことで、当期の連結売上高は595億円、経常利益は39億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、ヒビノ株式会社 の有価証券報告書(第62期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヒビノってどんな会社?


同社は、音響と映像の分野において、機器の販売・施工からコンサート・イベントの演出サポートまでをワンストップで提供するプロフェッショナル企業です。

(1) 会社概要


1964年にヒビノ電気音響として設立され、2006年にジャスダック証券取引所(現スタンダード市場)へ株式を上場しました。その後、M&Aを通じて事業を拡大し、2019年には韓国のSama Sound Inc.等を子会社化して海外展開を加速させました。直近では2024年に映像制作のCHホールディングスやオフィス家具のオフィックス、豪州のInSight Systems Holdings Pty Ltdを子会社化するなど、多角化を進めています。

同社グループは連結従業員1,697名、単体632名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は創業家資産管理会社の有限会社ハイビーノで、第2位は代表取締役社長の日比野晃久氏、第3位はヒビノ従業員持株会となっており、創業家と経営陣、従業員が主要な株主構成となっています。

氏名 持株比率
有限会社ハイビーノ 35.44%
日比野 晃久 7.05%
ヒビノ従業員持株会 4.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は日比野晃久氏が務めています。取締役8名のうち社外取締役は2名であり、社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
日比野 晃久 代表取締役社長 1985年同社入社。映像事業部事業部長、ヒビノドットコム社長等を歴任し、2002年6月より現職。
吉松 聡 代表取締役副社長 1983年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。同社取締役常務執行役員ヒビノGMC担当等を経て、2022年6月より現職。
芋川 淳一 取締役常務執行役員 1991年同社入社。ヒビノビジュアル Div.事業部長等を経て、2024年5月より現職。ヒビノビジュアルグループ担当。
久野 慎幸 取締役常務執行役員 1985年同社入社。ヒビノプロオーディオセールス Div.事業部長等を経て、2022年12月より現職。販売施工事業等を担当。
井澤 孝 取締役常務執行役員 1989年同社入社。執行役員ヒビノサウンド Div.営業統括を経て、2022年6月より現職。ヒビノサウンドグループ担当。
高野 芳裕 取締役常務執行役員 1989年第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。同社上席執行役員等を経て、2022年6月より現職。ヒビノGMC担当。


社外取締役は、金子基宏(元みずほ情報総研副社長・報酬委員長)、山口孝太(弁護士・指名報酬委員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「販売施工事業」「建築音響施工事業」「コンサート・イベントサービス事業」および「その他の事業」を展開しています。

販売施工事業


業務用音響・映像・照明・制御機器の販売、システム設計、施工、メンテナンスを行っています。主な顧客は放送局、ホール、スタジアム、企業などで、LEDディスプレイの開発・製造・販売も手掛けています。

収益は、顧客への機器販売やシステム施工の対価として得ています。運営は主にヒビノ、ヒビノインターサウンド、エレクトリ、テクノハウス、ヒビノライティング、エヌジーシー、Cerevo、ヒビノスペーステック、ヒビノイマジニアリング、海外子会社などが行っています。

建築音響施工事業


建築音響や騒音対策に関する設計・施工を行っています。放送局のスタジオやホールの音響内装工事、メーカーの無響室・防音室の設置、騒音対策コンサルティングなどを提供しています。

収益は、顧客からの工事請負代金やコンサルティング料として得ています。運営は主に日本音響エンジニアリング、日本環境アメニティ、サンオーが行っています。

コンサート・イベントサービス事業


コンサートやイベントにおける音響・映像システムの企画立案、レンタル、オペレートを提供しています。また、コンサートの録音・中継や、イベントの企画運営、エンジニアの人材派遣も行っています。

収益は、主催者等からの機材レンタル料やオペレート料、制作費として得ています。運営は主にヒビノ、ヒビノメディアテクニカル、ヒビノシグマライズ、CHホールディングス、エルロイ、massive、海外子会社などが行っています。

その他の事業


オフィス家具の販売およびオフィス空間の設計・施工を行っています。高機能ワークチェアなどを中心に取り扱っています。

収益は、顧客への家具販売や内装工事の対価として得ています。運営は主にオフィックスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は305億円から595億円へと約2倍に拡大し、一貫して増加傾向にあります。利益面では、2021年3月期は損失を計上しましたが、翌期以降は黒字化し、経常利益率は3.3%から6.6%へと改善傾向にあります。当期純利益も順調に推移しており、増収増益基調が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 305億円 424億円 419億円 505億円 595億円
経常利益 -26億円 19億円 14億円 30億円 39億円
利益率(%) -8.6% 4.5% 3.3% 5.8% 6.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -24億円 11億円 6億円 16億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しています。売上総利益率は34.8%から35.6%へとやや上昇しました。営業利益は前期の28億円から42億円へと大幅に増加し、営業利益率も改善しています。全体として収益性が向上し、事業規模の拡大とともに利益を創出する力が高まっていることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 505億円 595億円
売上総利益 176億円 212億円
売上総利益率(%) 34.8% 35.6%
営業利益 28億円 42億円
営業利益率(%) 5.6% 7.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与が64億円(構成比38%)、賞与引当金繰入額が8億円(同5%)を占めています。売上原価の内訳データは有報に記載がありません。

(3) セグメント収益


全ての報告セグメントにおいて売上高が増加しました。特に販売施工事業と建築音響施工事業は、大型案件の寄与により大幅な増収増益となりました。コンサート・イベントサービス事業も市場の回復と拡大により過去最高の売上・利益を更新しています。新たに加わったその他の事業を含め、全セグメントが業績拡大に貢献しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
販売施工事業 251億円 305億円 12億円 21億円 6.9%
建築音響施工事業 93億円 106億円 7億円 10億円 9.7%
コンサート・イベントサービス事業 161億円 175億円 24億円 25億円 14.1%
その他の事業 -億円 9億円 -億円 -0.2億円 -2.0%
調整額 -億円 -億円 -14億円 -14億円 -
連結(合計) 505億円 595億円 28億円 42億円 7.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ヒビノ社のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に利益と減価償却費の計上により資金を獲得しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や子会社株式の取得により資金を使用しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金や長期借入金による収入があった一方で、配当金の支払いも行われました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 70億円 36億円
投資CF -42億円 -48億円
財務CF -13億円 7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「創造と革新(Creation & Innovation)」を経営理念に掲げ、「音と映像で、世界に感動をクリエイトする」ことをパーパス(存在意義)としています。この理念に基づき、ステークホルダーとの対話を深め、社会課題解決につながる価値創造に取り組むことで、持続的な成長と企業価値向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「ヒビノ10訓」というバリュー(価値観・心構え)を定めています。これには「クオリティを最優先!」「安全第一」「現場主義経営」「とことんこだわるプロ集団!」「オンリーワン」などが含まれ、品質や安全、独自性を重視する文化が醸成されています。また、「健康経営」も10訓の一つとして掲げられています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営計画「ビジョン2025」において、グループビジョン「世界のヒビノへ」の実現に向けたマイルストーンを設定しています。2026年3月期の数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:750億円(業績予想は660億円)
* 海外売上高比率:30%以上
* 経常利益:45億円(業績予想は40億円)、経常利益率6%
* 自己資本比率:30%以上(目標40%)

(4) 成長戦略と重点施策


「ハニカム型経営」と「イノベーション」を成長戦略の柱とし、M&Aを活用して新領域に挑戦することで事業構造を強化します。また、高収益体質への変革、未来事業の創造(騒音対策、バーチャルプロダクション等)、DX推進、サステナビリティマネジメントを主要課題としています。グローバルでは、世界4極体制(日本、アジア、北米、欧州)を確立し、海外展開を加速させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、「世界に通じるプロフェッショナル人材の育成」「クリエイティブでイノベーティブな企業文化の醸成」「全員経営参画」を人材・組織ビジョンとして掲げています。高度な専門性と変化対応力を持つ人材やグローバル人材の育成に注力し、大規模・高難度プロジェクトへの挑戦機会を提供することで、従業員の働きがいと成長を促進する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.7歳 14.5年 6,524,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.5%
男性育児休業取得率 86.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.6%
男女賃金差異(正規雇用) 75.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 57.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(39.7%)、交通安全教育対象者の研修受講率(89.2%)、ヒビノイノベーション活動(I Project)従業員参加率(9.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材の安定的確保について


専門的な知識や技術を要する音響・映像関連業務において、人材獲得競争の激化や流動化が進む中、必要な人材の確保・育成が計画通りに進まない場合、経営成績等に影響が及ぶ可能性があります。同社は採用強化や教育研修、環境整備に努めています。

(2) 情報セキュリティについて


業務の多くを情報システムに依存しているため、サイバー攻撃やシステム障害、個人情報等の漏洩が発生した場合、業務への支障や信用の低下を招き、経営成績等に影響を与える可能性があります。同社は防御システムの多層化や教育訓練等の対策を講じています。

(3) 国際情勢の不安定化について


音響・映像機器の多くを海外メーカーから仕入れているため、地政学リスクの高まりによるサプライチェーンの混乱、仕入価格や輸送費の高騰が経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。同社は情報収集や適正在庫の維持、価格改定等で対応しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。