ドリコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ドリコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。スマートフォン向けゲームの開発・運営を行うゲーム事業と、出版やファンコミュニティ支援等を行うコンテンツ事業を展開。2025年3月期は、新規タイトル貢献で売上高は127億円(前期比29.4%増)と伸長したが、開発費や減損損失等の計上で大幅な減益となり、最終赤字に転落した。


※本記事は、ドリコム の有価証券報告書(第24期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ドリコムってどんな会社?


同社は、スマートフォン向けゲームアプリの企画・開発・運用を行うゲーム事業を主力とし、出版やWeb3領域等のコンテンツ事業も展開する企業です。

(1) 会社概要


2001年に設立され、ブログサービス等を経て2006年にマザーズへ上場しました。その後、ソーシャルゲームへ事業転換し、2012年に本社を移転、2014年には株式会社BXD(現株式会社バンダイナムコネクサス)を設立するなど事業を拡大しました。2022年の市場区分見直しに伴い、東証グロース市場へ移行しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は356名、単体では270名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の内藤裕紀氏であり、第2位には主要な取引先でもある大手エンターテインメント企業グループの統括会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
内藤 裕紀 33.88%
バンダイナムコホールディングス 18.87%
山口 憲一 2.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は創業者の内藤裕紀氏が務めています。なお、社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
内藤 裕紀 代表取締役社長 2001年に同社を設立し代表取締役に就任。2003年の組織変更に伴い代表取締役社長となり、関連子会社の代表も歴任。20年以上トップとして経営を牽引。
後藤 英紀 取締役 大和総研、ドイツ証券等を経て2010年に同社入社。2015年より取締役として管理部門や経営企画等を管掌。現職。


社外取締役は、青木理惠(公認会計士)、村田雅夫(弁護士)、清水勝彦(大学教授・経営学博士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ゲーム事業」および「コンテンツ事業」を展開しています。

(1) ゲーム事業


主にスマートフォン向けゲームアプリの企画・開発・運用を行っています。他社の有力なIP(知的財産)を活用したゲーム開発に強みを持ち、自社パブリッシングのほか、パートナー企業との協業タイトルも手掛けています。

収益は、プラットフォームを経由したユーザーからのアイテム課金収入や、共同事業者からの開発・運用報酬、レベニューシェア(収益分配)などが主な柱です。運営は主にドリコムおよび子会社のスタジオレックス等が担っています。

(2) コンテンツ事業


ライトノベルレーベル「DREノベルス」やコミックレーベル「DREコミックス」の出版・販売を行うほか、Web3領域やファンコミュニティ支援サービス等の新規事業開発に取り組んでいます。

収益は、書籍・電子書籍の販売収入や、法人顧客に対する事業支援サービスの対価などから構成されています。運営は主にドリコムが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2025年3月期は、売上高が過去5期間で最高水準に達しました。一方で、利益面では経常利益が大きく落ち込み、当期純損失を計上しています。売上の拡大に対し、開発投資や減損損失などの費用負担が重なり、収益性が低下した形となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 118億円 105億円 108億円 98億円 127億円
経常利益 20億円 15億円 22億円 8億円 1億円
利益率(%) 17.1% 14.6% 20.3% 8.1% 0.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 7億円 7億円 4億円 -7億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は約29億円増加し成長しましたが、売上総利益の伸びは限定的でした。一方で営業利益は大幅に減少し、収益性が低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 98億円 127億円
売上総利益 34億円 35億円
売上総利益率(%) 34.8% 27.5%
営業利益 9億円 1億円
営業利益率(%) 9.2% 0.9%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が14億円(構成比41%)、給与手当が6億円(同17%)を占めています。また、売上原価の増加要因として、新規タイトルのリリースに伴う費用負担等が影響しています。

(3) セグメント収益


ゲーム事業は新規タイトルの貢献等により増収となりましたが、運用タイトルの減速等により減益となりました。コンテンツ事業は出版物の点数増加により増収となり、赤字幅も縮小傾向にあります。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
ゲーム事業 93億円 119億円
コンテンツ事業 4億円 7億円
連結(合計) 98億円 127億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -5億円 6億円
投資CF -20億円 -9億円
財務CF 24億円 -17億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期赤字のため算出できず市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.6%で市場平均(グロース非製造業43.3%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同グループは「with entertainment」を存在意義として掲げています。質の高いサービス提供に加え、多くの人の期待を超える価値を生み出すことを目指し、インターネット分野において新しい楽しさや便利さを創出することで、ユーザー満足度と企業価値の向上に努めています。

(2) 企業文化


同社は、絶えず変化し成長し続けるインターネット分野において、常に新たな事業領域に挑戦し続ける姿勢を重視しています。質の高いサービス提供を前提としつつ、ユーザーの期待を超える価値創造を目指すことを基本方針としています。

(3) 経営計画・目標


同社は、安定的な利益創出とキャッシュ・フローの確保を最優先事項と位置づけています。具体的な数値目標として、増収率、営業利益率、親会社株主に帰属する当期純利益、およびフリーキャッシュ・フローを重要な経営指標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


ゲーム事業では他社IPゲームを基軸としつつ、自社IPの創出・育成にも注力し、クロスプラットフォーム展開やメディアミックスによる収益多角化を推進しています。コンテンツ事業では出版等のIP育成に加え、Web3などの新技術を活用した事業開発を行い、中長期的な成長を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同グループは、コアコンピタンスを強化できる人材の定義化を図り、組織・制度のハード面および組織風土のソフト面の両面から環境整備を進めています。IPとテクノロジーを軸にグローバル展開を目指す上で、人的資本の課題解決を重要な経営課題と位置づけています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.0歳 6.4年 7,128,586円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 11.9%
男性労働者の育児休業取得率 40.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 67.5%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 67.9%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期) 78.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) モバイルゲーム市場の競争激化


国内モバイルゲーム市場の成熟化や競争激化、開発費の高騰などが進んでおり、ユーザーニーズへの対応遅れや市場環境の変化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) IP戦略におけるパートナー依存


他社IPを活用したゲーム開発・運営において、パートナーの方針変更や契約終了等が生じた場合、事業運営が制約され、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 特定プラットフォームへの依存


AppleやGoogle等のプラットフォーム運営事業者の規約変更や手数料改定、または同社コンテンツが審査基準を満たさないと判断された場合、対応費用や収益機会の損失が発生する可能性があります。

(4) システムトラブルとセキュリティ


ゲームやサービスの安定稼働が不可欠ですが、アクセス集中やサイバー攻撃、自然災害等によるシステム障害や情報漏洩が発生した場合、損害賠償や社会的信用の低下を招く可能性があります。

(5) 開発投資の回収リスク


新作ゲーム開発には多額の投資が必要ですが、リリース後の収益が想定を下回った場合、ソフトウェア資産の減損処理が必要となり、業績が悪化する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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