※本記事は、株式会社ドリコムの有価証券報告書(第25期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ドリコムってどんな会社?
スマートフォン向けゲームの開発・運用を中心としたゲーム事業と、出版などのコンテンツ事業を展開しています。
■(1) 会社概要
同社は2001年に京都市で設立され、2003年に組織変更しました。2006年に東京証券取引所マザーズに上場し、その後ゲーム事業を主力に成長を遂げました。近年はオリジナルゲームだけでなく他社IPを活用したゲームの開発や、出版・アニメ等のコンテンツ事業にも事業領域を広げています。
同社の従業員数は連結で275名、単体で271名です。筆頭株主は創業者の内藤裕紀氏で、第2位は事業会社であり資本業務提携を行うバンダイナムコホールディングスとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 内藤裕紀 | 33.76% |
| バンダイナムコホールディングス | 18.80% |
| 山口憲一 | 2.47% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は内藤裕紀氏が務めています。社外取締役の比率は60%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 内藤裕紀 | 代表取締役社長 | ドリコム設立、ドリコムテック設立代表取締役社長等を経て現職。 |
| 後藤英紀 | 取締役 | 大和総研、ドイツ証券等を経て同社入社。取締役就任後、現職。 |
社外取締役は、青木理惠(青木公認会計士事務所所長)、村田雅夫(村田・若槻法律事務所代表弁護士)、清水勝彦(慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ゲーム事業」および「コンテンツ事業」を展開しています。
■(1) ゲーム事業
スマートフォン向けやPC向けのコンテンツ企画・開発・運用、およびオンラインゲームの開発・運営を行っています。オリジナルゲームだけでなく、他社コンテンツをテーマとしたIPゲームを成長基盤とする戦略を打ち出し、企画から運用まで幅広く注力しています。
収益源は、ユーザーがアイテムを購入する際の課金収入や、共同事業者から受領する開発報酬やレベニューシェア等です。これらの運営は主に同社および子会社のドリアップが行っており、国内外のプラットフォームを通じてサービスを提供しています。
■(2) コンテンツ事業
ゲーム事業で培ったIPプロデュース力や運用ノウハウ、先端技術を活用し、ゲーム以外のエンターテインメント領域における新規事業の創出に取り組んでいます。小説やコミック等の出版やアニメを中心としたIP展開、グッズ企画などを行っています。
収益源は、電子書籍を中心とした書籍の販売代金や、グッズ販売代金、ならびに企業向けに提供するテクノロジーソリューションサービスの対価等です。出版・アニメ・MD事業等の展開を通じてIPの創出と育成を図り、これらの運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一時減少したものの直近では大幅な増加に転じています。経常利益率は以前の高い水準から低下した時期がありましたが、直近では黒字を確保し、回復基調にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 105億円 | 108億円 | 98億円 | 127億円 | 175億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 22億円 | 8億円 | 0.5億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | 14.6% | 20.3% | 8.1% | 0.4% | 1.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 7億円 | 4億円 | -10億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益と営業利益がともに増加しています。収益性が改善し、営業利益率も上昇傾向を示しており、新規タイトルのリリース効果が見て取れます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 127億円 | 175億円 |
| 売上総利益 | 35億円 | 54億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.5% | 30.9% |
| 営業利益 | 1億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | 0.9% | 2.3% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が23億円(構成比47%)、給与手当が8億円(同15%)を占めています。売上原価は121億円であり、売上原価合計に対する構成比として同社のゲーム運用にかかる支払手数料等が含まれていると考えられます。
■(3) セグメント収益
ゲーム事業は新規タイトルの好調により売上・利益ともに前期比で増加し、全体の収益を牽引しています。コンテンツ事業は電子コミック等で増収となったものの、IPプロデュース等への先行投資が継続しており営業赤字となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ゲーム事業 | 119億円 | 168億円 | 10億円 | 13億円 | 7.6% |
| コンテンツ事業 | 7億円 | 8億円 | -9億円 | -9億円 | -114.2% |
| 連結(合計) | 127億円 | 175億円 | 1億円 | 4億円 | 2.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFと資産売却等による資金で借入返済を進める改善局面であることを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6億円 | 22億円 |
| 投資CF | -9億円 | 19億円 |
| 財務CF | -17億円 | -16億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「with entertainment」を存在意義として掲げ、質の高いサービス提供はもちろん、その上で多くの人の期待を超える価値を生み出していくことを目指しています。
■(2) 企業文化
基本方針に基づき、たえず変化し成長し続けるインターネットの分野において新しい楽しさや便利さを生み出せるよう、常に新たな事業領域に挑戦し続け、ユーザーの満足度向上に努めています。
■(3) 経営計画・目標
企業価値の拡大を図るという視点に立ち、増収率、営業利益率、親会社株主に帰属する当期純利益及びフリーキャッシュ・フローを重要な経営指標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存ゲーム事業の不採算タイトルへの対応を中心とした収益性の向上と経営リソースの最適配分を推進し、安定的な利益創出とキャッシュ・フロー確保を最優先としています。IPを活用したゲーム事業を基軸とし、クロスプラットフォーム展開やメディアミックスを積極的に進め、IP価値の最大化と収益機会の多様化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
IPをプロデュースし、エンターテインメントの最先端を担う企業となるため、コアコンピタンスの強化に資する人材の定義を明確化し、プロデュース人材等の重点領域での採用・育成を推進しています。組織・制度のハード面と組織風土のソフト面の両面から仕組みを整備し、マネジメント層の強化や次世代中核人材の育成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.1歳 | 6.8年 | 7,617,515円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 71.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 73.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) モバイルゲーム市場の変化と競争激化
市場の成熟化による成長鈍化や、ユーザーの要求水準の上昇、ゲームシステムの複雑化と開発費の高騰により競争が激化しています。市場環境の急激な変化や市場の衰退が起きた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) IP戦略およびパートナー企業への依存
外部のパートナーと共同でIPゲームを展開する戦略に注力していますが、パートナー企業の事業方針の転換や投資の縮小、中止等が生じた場合、意図した事業運営ができなくなるリスクがあります。
■(3) プラットフォーム運営事業者等への依存
国内外のプラットフォーム運営事業者を介してサービスを提供しており、各社の利用規約の変更や配信基準を満たさないと判断された場合、対応に多大な費用を要する可能性があります。また、特定企業への配信依存度が高い点もリスク要因です。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。