※本記事は、株式会社トランスジェニックグループの有価証券報告書(第28期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. トランスジェニックグループってどんな会社?
創薬の初期段階から臨床試験までを支援する事業と、M&Aによる事業承継・再生支援を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1998年に熊本市で抗体の開発・製造等を目的として設立されました。2000年に遺伝子破壊マウス事業に着手し、社名をトランスジェニックに変更しています。2002年に東証マザーズ(現スタンダード)へ上場し、2021年には純粋持株会社へ移行しました。その後、2024年に現在のトランスジェニックグループへ社名変更を行っています。
現在の従業員数は連結で227名、単体で6名体制です。大株主の構成をみると、筆頭株主と第2位には個人株主が名を連ねており、第3位には証券会社が入っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 小林哲朗 | 1.86% |
| 内田善久 | 1.42% |
| モルガン・スタンレーMUFG証券 | 1.39% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は福永健司氏が務めています。社外取締役比率は18.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 福永健司 | 代表取締役社長 | 1993年監査法人トーマツ入所。2003年同社ベンチャーサポート取締役等を経て2009年同社入社。TGビジネスサービス設立に伴い代表取締役社長に就任するなどグループ各社代表を歴任。 |
| 北島俊一 | 取締役CRO事業本部長兼施設運営室長 | 1987年パナファーム・ラボラトリーズ入社。2003年バイオラボ設立、取締役就任。2011年同社入社後、新規事業本部長を経て、2015年より取締役。 |
| 船橋泰 | 取締役IR&コーポレート管理室長兼情報管理室長兼総務人事部長 | 2002年同社入社。経営企画部長、管理部長を歴任し、2011年取締役に就任。グループ各社の取締役や監査役を経て、2021年より現職。 |
| 渡部一夫 | 取締役経理財務部長 | 1991年安田信託銀行入社。2001年監査法人トーマツ入所。公認会計士・税理士として従事後、2017年同社入社。経理財務部長を経て、2018年より取締役。 |
| 高島浩二 | 取締役 | 1981年日本通運入社。1985年ボゾリサーチセンター入社後、執行役員を歴任。2023年安評センター(現トランスジェニック)入社、取締役就任を経て、2024年より同社取締役。 |
| 冨田昭仁 | 取締役グループ事業推進部長 | 1998年監査法人トーマツ入所。公認会計士登録後、2021年同社入社。グループ事業推進部担当部長、TGビジネスサービス取締役を経て、2024年より同社取締役。 |
社外取締役は、清藤勉(免疫生物研究所代表取締役社長)、斎藤穂高(三菱ケミカルリサーチ特別研究員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「創薬支援事業」および「投資・コンサルティング事業」を展開しています。
■創薬支援事業
創薬の初期段階である探索基礎研究・創薬研究から、非臨床試験、臨床試験まで、あらゆるステージに対応するサービスを提供しています。主に遺伝子改変マウスの作製受託や、医薬品、農薬・食品関連物質に対する薬効薬理試験および安全性試験などを実施しています。
製薬企業等からの各種受託試験の費用や、抗体などの製品販売によって収益を得ています。主な事業運営は、トランスジェニックやメディフォムなどの連結子会社が行っています。
■投資・コンサルティング事業
M&Aによる新規事業の推進と、幅広い分野における事業承継および事業再生に係る助言・支援サービスを提供しています。具体的には、電機製品の小売・卸売、洋食器の輸入販売と通販サイト展開、情報通信機器の開発・販売などを手掛けています。
主にEコマースによる小売販売や卸売販売などの製品および商品販売代金として顧客から収益を得ています。事業の運営はTGビジネスサービス、アウトレットプラザ、TGMなどの連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の売上高は110億円から130億円台で推移しています。経常利益および当期利益は過去3期間にわたりマイナスが続いていましたが、当期は経常利益が黒字に転換するなど、収益性の改善に向けた動きが見られます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 126億円 | 114億円 | 131億円 | 130億円 | 132億円 |
| 経常利益 | 18億円 | 2億円 | 1億円 | -3億円 | 1億円 |
| 利益率(%) | 14.5% | 1.7% | 0.8% | -2.5% | 0.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 27億円 | -1億円 | -7億円 | -12億円 | -5億円 |
■(2) 損益計算書
当期の売上高は前期比で微増となりましたが、事業運営の合理化等により売上総利益が増加しました。また、販売費及び一般管理費における人員の適正化やコスト削減にも取り組み、営業黒字への転換を果たしています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 130億円 | 132億円 |
| 売上総利益 | 22億円 | 24億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.7% | 18.5% |
| 営業利益 | -3億円 | 1億円 |
| 営業利益率(%) | -2.0% | 1.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.7億円(構成比25.0%)、役員報酬が2.1億円(同9.2%)、支払手数料が1.7億円(同7.6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
創薬支援事業は、前期からの繰越受注試験の完了や新規受注の獲得により大幅な増収となりました。一方、投資・コンサルティング事業は、物価上昇による消費マインド低下等の影響で微減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 創薬支援事業 | 19億円 | 23億円 |
| 投資・コンサルティング事業 | 111億円 | 109億円 |
| 連結(合計) | 130億円 | 132億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
改善型:営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1億円 | 0.3億円 |
| 投資CF | -3億円 | 1億円 |
| 財務CF | 3億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROEは当期純損失のため算出されていませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.1%で、スタンダード市場の非製造業平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「未来に資するとともに世界の人々の健康と豊かな暮らしの実現に貢献する」という経営理念を掲げています。事業環境の変化に迅速に反応し、事業モデルや構造を的確に変化させることで、グループの成長拡大を実現することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
働きやすい環境づくりに関する意識を重視しており、変形労働時間制やテレワークの併用など、職務内容に応じた環境整備を推進しています。また、女性管理職の登用や外国籍従業員の雇用など、人材の多様性を尊重する組織づくりを進めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、グループの持続的成長および企業価値の持続的な増大を図るため、「売上高および営業利益の拡大」を経営指標の目標に掲げています。
* 2027年3月期:売上高140億円、営業利益2.6億円
■(4) 成長戦略と重点施策
創薬支援事業と投資・コンサルティング事業の特性を活かした「Hybrid型」の事業展開を進めています。創薬支援事業では、短期発がん性試験など高付加価値サービスの強化や拠点集約による固定費削減を図ります。一方の投資事業では、優良投資先の発掘を通じた短期間での成果獲得と安定的な業績成長を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業環境の変化に適応しながら持続的な成長を実現するため、各職員が能力を最大限発揮できる組織の環境整備と必要な人材の確保を重視しています。専門性が高い創薬分野では長期的な能力開発に取り組み、投資分野では各社の事業環境を踏まえた柔軟な組織づくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 47.9歳 | 10.0年 | 6,790,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 企業買収の成果発現遅延
事業領域の拡大に向け、業務提携や企業買収等を実施することがあります。事前に詳細な調査を行っていますが、事業環境の変化等により想定した効果が得られない場合、のれんの減損処理等によって財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 製薬業界の動向による影響
創薬支援事業は製薬企業からの非臨床試験等の受託割合が高く、安定した受注を維持しています。一方で、薬価改定や後発薬の普及により製薬企業の研究開発費が抑制される傾向にあり、急激な環境変化が生じた場合は業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 実験動物・遺伝子関連の法的規制
実験動物関連サービスにおいて、動物愛護の観点から使用規制が導入された場合、市場が閉塞する恐れがあります。また、遺伝子組換え生物等の使用等に関する法律が強化された場合も、事業内容や業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 原材料等の調達コスト上昇
創薬支援事業における施設の稼働に必要な重油や、投資・コンサルティング事業での商品調達において、エネルギーコストや仕入コストの上昇が懸念されます。増加したコストを販売価格へ適切に転嫁できない場合、収益性が低下する可能性があります。



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