※本記事は、ジェイ・エスコムホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第20期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ジェイ・エスコムホールディングスってどんな会社?
通信販売事業とデジタルマーケティング事業を展開する持株会社です。事業ポートフォリオの再構築を進めています。
■(1) 会社概要
2005年に株式会社エスコム(現・株式会社スープ)との株式移転により持株会社として設立され、同年に上場しました。その後、M&Aや事業譲渡を通じて体制を変化させてきました。2017年に連結子会社の株式会社東京テレビランドを設立し、通信販売事業を強化。2022年にはMafin inc.等を子会社化し、デジタルマーケティング事業へ本格参入しました。直近では2024年に日本国内のデジタルギフト事業(株式会社マフィン)を譲渡するなど、事業の選択と集中を進めています。
連結従業員数は59名、単体では4名です。筆頭株主は会長の丁廣鎭氏が代表を務める株式会社KJCインターで、第2位は株式会社明日クリエイト、第3位も丁廣鎭氏が代表を務める株式会社ジャックです。経営陣の関連会社が上位株主を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社KJCインター | 31.35% |
| 株式会社明日クリエイト | 14.06% |
| 株式会社ジャック | 5.84% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は大谷利興氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大谷 利興 | 代表取締役社長 | NISグループ等を経て2017年ゼストブレイン・コンサルティング(同)設立。スープ代表取締役などを歴任し、2020年6月より現職。 |
| 丁 廣鎭 | 代表取締役会長 | キヤノン、日興證券、スイスユニオン銀行を経てジャック代表取締役。2005年10月同社会長就任。2024年6月より現職。 |
| 宗田 こずえ | 取締役業務管理統括本部長 | スイスユニオン銀行、ジャックを経て2005年10月より現職。スープ取締役などを兼任。 |
社外取締役は、雙田裕三(雙田裕三税理士事務所所長)、関口博(関口博法律事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「通信販売事業」「デジタルマーケティング事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 通信販売事業
テレビ通販およびインターネットでの通信販売を行っています。主な媒体としてテレビ通販番組「ショップ島」などを活用し、各種商品を販売しています。また、既存顧客へのアウトバウンドコールやDM発送などの派生ビジネスも展開し、サービスの利便性向上を図っています。
収益は、一般消費者への商品販売代金です。運営は主に連結子会社の株式会社東京テレビランドが行っています。同事業では、番組制作から放送枠の仕入販売までを顧客の要望に応じて対応することで、安定的な収益構造の構築を目指しています。
■(2) デジタルマーケティング事業
デジタルギフトおよびリワード広告の提供を行っています。特に韓国市場において事業を展開しており、デジタルギフトの販売や企業のマーケティング活動支援などを手掛けています。なお、日本におけるデジタルギフト事業は2024年に売却されました。
収益は、デジタルギフトの販売に伴う手数料やリワード広告の掲載料などです。運営は、韓国の連結子会社であるMafin inc.およびSmartcon inc.が行っています。韓国市場での利益率を重視した営業活動を推進しています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、理美容事業、コンサルティング事業、出版関連事業、投資事業および代理店手数料収入などが含まれます。運営は、株式会社スープや株式会社JEインベストメントなどのグループ各社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2024年3月期から2025年3月期にかけて、売上高は減少傾向にあります。利益面では、営業損失および経常損失が継続していますが、2025年3月期は子会社株式売却益の計上などにより、親会社株主に帰属する当期純利益は黒字化しました。事業再編による特別利益が最終損益に大きく寄与しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 11億円 | 9億円 | 16億円 | 16億円 | 13億円 |
| 経常利益 | 0.3億円 | 0.2億円 | -0.3億円 | -2.3億円 | -2.2億円 |
| 利益率(%) | 2.7% | 1.7% | -1.7% | -14.7% | -16.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.2億円 | 0.0億円 | 0.4億円 | -2.9億円 | 3.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少しました。売上総利益率も低下していますが、販売費及び一般管理費の削減により、営業損失の赤字幅は縮小しています。事業譲渡に伴う規模縮小とコスト削減が進んでいることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 16億円 | 13億円 |
| 売上総利益 | 10億円 | 9億円 |
| 売上総利益率(%) | 61.6% | 66.0% |
| 営業利益 | -2.4億円 | -1.1億円 |
| 営業利益率(%) | -15.4% | -8.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与が3.5億円(構成比36%)、販売手数料及び輸送費が1.6億円(同16%)、支払手数料及び業務委託料が1.3億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
通信販売事業は減収となりましたが、黒字化を達成しました。デジタルマーケティング事業は日本事業の売却により減収となり、セグメント損失が継続していますが、赤字幅は縮小しています。その他事業も減収となりましたが、利益を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 通信販売事業 | 4億円 | 4億円 | -0.2億円 | 0.0億円 | 0.0% |
| デジタルマーケティング事業 | 11億円 | 9億円 | -2.4億円 | -1.5億円 | -15.8% |
| その他 | 2億円 | 1億円 | 0.7億円 | 0.7億円 | 68.0% |
| 調整額 | -0.9億円 | -0.9億円 | 0.5億円 | 0.8億円 | - |
| 連結(合計) | 16億円 | 13億円 | -2.4億円 | -1.1億円 | -8.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ジェイ・エスコムホールディングスは、デジタルマーケティング事業において韓国市場への注力を進めています。営業活動によるキャッシュ・フローは、子会社株式売却益や前渡金の増加により黒字に転換しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社株式の売却収入が定期預金の預入を上回ったことでプラスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加によりプラスを維持しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -4.0億円 | 0.1億円 |
| 投資CF | -1.9億円 | 3.6億円 |
| 財務CF | 1.7億円 | 1.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「会社の社会的責任」を経営方針として掲げ、徹底したマーケティング活動を通じて「信頼をかち得る企業」を目指しています。また、経営理念として「すべてのステークホルダーの皆様に高い満足を提供する」ことを目的とし、社会への貢献と企業集団の再構築を積極的に行う方針です。
■(2) 企業文化
長期的な視点での従業員の能力開発に取り組み、効率的な組織作りとコンプライアンス体制の強化を重視しています。また、行動指針として「地域の健全な発展と快適で安全・安心な生活に資する活動への参加」や「環境と経済が調和した持続可能な社会の構築への寄与」を掲げ、地域社会との共存や環境配慮を大切にする文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
経営理念の実現に向け、連結財務諸表ベースでの収益性向上と資本効率の改善を目標としています。具体的には、売上高営業利益率の拡大と、株主視点での1株当たり当期純利益(EPS)および資本コストの観点からのROIC(投下資本利益率)を重要な経営指標として位置付けています。
* 売上高営業利益率:5.0%
* EPS(1株当たり当期純利益):5.00円
* ROIC:10.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
通信販売事業とデジタルマーケティング事業への資源集中により既存事業の安定的な黒字化を目指すとともに、M&Aやファンド運営を通じた新規事業の発掘により規模拡大を図ります。通信販売では顧客対応強化による収益安定化、デジタルマーケティングでは韓国市場での利益率重視の運営を推進します。また、日本事業売却資金を活用した新規投資も進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
業務効率化と必要なスキルを持つ人材の採用を推進しています。「人材及び社内環境整備に関する育成方針」を定め、生産性の向上と優秀な人材の確保を目指すとともに、社内教育による離職防止に努めています。また、柔軟な働き方を検討し、人材の多様化を進める方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.3歳 | 4.7年 | 7,920,550円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 通信販売事業の運営リスク
感染症流行やタレントの不祥事等により、通販番組の収録や放送が困難になる可能性があります。これにより新規番組制作が滞り、番組枠の確保や商品販売に支障をきたした場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) デジタルマーケティング事業のシステムリスク
デジタルギフト等のサービス提供において、システムトラブルが発生した場合、事業運営に支障が生じる可能性があります。また、予期せぬサイバー攻撃やウイルス感染等によるシステム停止やデータ消失が発生した場合、信頼失墜や売上減少につながるリスクがあります。
■(3) 新規事業およびM&Aに関するリスク
M&Aやファンド運営を通じた新規事業展開を進めていますが、買収後の事業が計画通り進捗しない場合や、想定外の偶発債務が発生する可能性があります。また、新規ビジネスモデル特有の不確実性により、当初の見通しと異なる結果となり、業績や財務状態に影響を与える可能性があります。



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