ADR120S 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ADR120S 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場し、細胞治療を行うメディカル事業と不動産事業を展開しています。不動産事業の縮小・撤退を進めた結果、当期の売上高は1.2億円と前期比で大幅な減収となりました。利益面でも多額の減損損失等を計上し、当期純損失21.4億円と赤字に転落しています。


※本記事は、株式会社サイトリ細胞研究所 の有価証券報告書(第21期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サイトリ細胞研究所ってどんな会社?


細胞治療技術の実用化を目指すメディカル事業と、不動産投資を行うリアルアセット事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


2004年に設立され、同年東証二部に上場しました。その後、2005年にセブンシーズホールディングス、2018年にFRACTALEへと商号変更を重ねています。2019年にサイトリ・セラピューティクスを子会社化して再生医療分野へ本格参入し、2021年に現在のサイトリ細胞研究所へ商号変更しました。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

同社グループの従業員数は連結10名、単体2名と極めて少数精鋭の体制です。筆頭株主は不動産業を営むHGキャピタルで、第2位は同社代表取締役社長の橋本征道氏、第3位は投資ファンドのCIGメディカル投資事業有限責任組合となっています。

氏名 持株比率
HGキャピタル 12.92%
橋本 征道 11.85%
CIGメディカル投資事業有限責任組合 11.04%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は橋本征道氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
橋本 征道 取締役社長(代表取締役) HGキャピタル取締役などを経て、2017年HGホールディングス代表取締役に就任。2025年6月より現職。
星野 喜宏 取締役 富士生命保険代表取締役社長兼COOなどを経て、2011年スターキャピタルマネージメント代表取締役に就任。2025年6月より現職。
天笠 勝 取締役 メリルリンチ日本証券を経て、ちよだ税理士事務所を開設。2007年ちよだコンサルティング代表取締役に就任。2025年6月より現職。
林 寿人 取締役 日産化学にてヘルスケア企画部主査などを歴任。2025年サイトリ・セラピューティクス代表取締役社長に就任し、同年6月より現職。


社外取締役は、井上尚之(元トヨタ自動車専務役員)、小林弘樹(アキュレートアドバイザーズ代表・元大阪府警財務捜査官)、久岡英彦(順天堂大学医学部特任教授)、小林弘明(B.ポジティヴ法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メディカル事業」および「リアルアセット事業」を展開しています。

(1) メディカル事業


医療アセットへの投資を行い、細胞治療技術や医療機器の提供を行っています。具体的には、患者自身の皮下脂肪組織から再生細胞を採取する分離装置「セルーション遠心分離器」や関連キットの販売、および男性腹圧性尿失禁治療などの治療法の実用化を目指しています。

収益は、医療機関や大学病院等への医療機器販売や、細胞治療サービスの提供から得ています。運営は主に連結子会社であるサイトリ・セラピューティクス株式会社が行っており、その他、サイトリ・セルセラピー株式会社等が自由診療分野での展開を担っています。

(2) リアルアセット事業


高収益な不動産の保有、賃貸管理、開発案件への投融資などを行っています。かつてはホテル事業や公営競技の場外売場運営も行っていましたが、ホテル事業からは撤退し、場外売場運営も終了しました。現在は保有不動産の売却を進めています。

収益は、保有不動産からの賃貸収入や、物件売却による収益が主となります。運営は主に連結子会社であるデューイ株式会社が行っており、事業規模の縮小と経営資源のメディカル事業への集中を進めています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は21億円規模から当期は1.2億円まで縮小しています。これは不動産事業の縮小・撤退による影響です。利益面では赤字基調が続いており、当期は減損損失等の計上により21.4億円の大幅な最終赤字となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 14億円 13億円 21億円 16億円 1.2億円
経常利益 -7.5億円 -4.2億円 -8.6億円 -9.1億円 -8.6億円
利益率(%) -53.7% -31.3% -40.2% -58.1% -707.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -8.3億円 -0.8億円 -10.6億円 1.4億円 -21.4億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高は15.6億円から1.2億円へと激減しました。これに伴い売上総利益もマイナスに転じています。一方、販売費及び一般管理費は大幅に圧縮されましたが、売上の減少幅が大きく、営業損失は拡大しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 16億円 1.2億円
売上総利益 13億円 -0.1億円
売上総利益率(%) 82.8% -4.9%
営業利益 -7.7億円 -8.1億円
営業利益率(%) -49.5% -660.3%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が2.7億円(構成比34%)、試験研究費が2.0億円(同25%)を占めています。売上原価の内訳はデータがありませんが、事業縮小に伴いコスト構造が変化しています。

(3) セグメント収益


メディカル事業は医療機器販売の低迷により減収となり、営業損失が継続しています。リアルアセット事業はホテル事業撤退等の影響で売上が大幅に減少し、営業損失を計上しました。両セグメントともに苦戦しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
メディカル事業 1.3億円 1.0億円 -5.6億円 -4.4億円 -462.1%
リアルアセット事業 14億円 0.3億円 -0.3億円 -0.9億円 -343.8%
調整額 - - -1.9億円 -2.7億円 -
連結(合計) 16億円 1.2億円 -7.7億円 -8.1億円 -660.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、経営資源の集中を目的とした不動産アセットの売却による資金回収等に努めています。

営業活動では、主に税金等調整前当期純損失により資金が減少しました。投資活動では、有形固定資産の売却による収入により資金が増加しました。財務活動では、短期借入れによる収入により資金が増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -12億円 -9.9億円
投資CF 87億円 0.2億円
財務CF -72億円 1.7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、市況や動向を見極めながら、より良い企業経営と企業価値の向上に向けたコーポレートガバナンス強化に取り組んでいます。また、細胞治療サービスを主軸とした競争力のあるサービスを展開し、景気変動に強い企業体質への転換を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、より良い企業経営の実現に向けて、コーポレートガバナンスの強化を重視しています。また、経営資源の選択と集中を進め、保有不動産の売却による経営資源の集約を図るなど、環境変化に対応するための柔軟かつ合理的な経営判断を行う姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、グループ各社の安定的な収益力の確保と継続的な成長に注力しています。具体的には、連結ベースにおける売上高、営業利益、ROE(株主資本利益率)の向上、および営業キャッシュ・フローの拡充を経営目標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


「リアルアセット事業」の保有不動産売却を完了させ、経営資源を「メディカル事業」へ集中させます。特に細胞治療分野において、研究開発の推進、自由診療・保険診療下でのサービス提供、サウジアラビアをはじめとした海外展開を加速させ、難治性疾患などの社会課題解決を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は少人数で構成されており、ジョブローテーションは行っていませんが、業務や人員不足に柔軟に対応できるフラットな組織を構築しています。今後は、フレックス制度や在宅勤務など働きやすい環境づくりを進めるとともに、多様性の確保に向けた施策を推進する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.5歳 10.2年 6,086,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 研究開発に関するリスク


医薬品・医療機器の開発には多額の投資と期間を要しますが、臨床試験の結果次第では開発が遅延・中止となる可能性があります。また、承認が得られない場合や保険適用が遅れる場合、投資回収ができず、業績や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 少人数での組織運営上のリスク


同社グループは比較的少人数で事業活動を行っています。そのため、事業の中核を担う従業員に不測の事態が生じた場合や、人材の流出が起きた場合、業務遂行に支障をきたし、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 継続企業の前提に関する重要事象


先行投資期間にあり営業損失が続いているため、継続企業の前提に重要な疑義が生じています。これに対し、不妊治療分野や動物向け治療等の新分野展開、中東への海外展開、保険収載に向けた活動、コスト削減、主要株主からの資金支援等の対策を進めていますが、不確実性は残ります。

(4) 金利情勢による業績変動


同社グループは金融機関等からの借入れによって資金調達を行っています。そのため、現行の金利水準が予想以上に上昇した場合には、支払利息の増加などを通じて、同社の業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。