※本記事は、
株式会社ADR120S
(旧会社名 株式会社サイトリ細胞研究所)
の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
ADR120Sグループは、連結子会社8社で構成されており、メディカル事業を主軸に事業を展開しています。かつてはリアルアセット事業も行っていましたが、現在はメディカル事業に経営資源を集中させています。
単体従業員数は3名、連結従業員数は13名です。セグメントはメディカル部門、管理部門の2つです。
主な国内グループ会社は、ADRセラピューティクス(医療機器の販売)、アニマルセラピー(動物の治療サービス)、サイトリ・セルセラピー(医療サービスの提供)、ホテル金沢(匿名組合の運営)などです。
同社グループは、かつて展開していたリアルアセット事業から撤退し、2025年5月に最後の保有不動産を譲渡しました。現在はメディカル事業に経営資源を集中させています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
ADR120Sは、少数精鋭の体制で事業を展開しており、個々の従業員の専門性と経験が重視される環境であると考えられます。給与水準や働き方については、同社の規模や事業特性を考慮した上で、詳細なデータを確認することが重要です。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、従業員の平均年齢が比較的高く、平均勤続年数も一定の水準にあることから、経験豊富な人材が長く活躍している傾向が見られます。これは、専門性の高い業務において、長期的なキャリア形成が期待できる環境である可能性を示唆しています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 5,906,000円 |
| 平均勤続年数 | 7.8年 |
| 平均年齢 | 51.67歳 |
| 単体従業員数 | 3人 |
| 連結従業員数 | 13人 |
| 単体のグループ内比率 | 23.1% |
同社は、従業員の退職給付に充てるため、確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる制度)の退職給付制度を採用しています。この制度は国内の従業員を対象としています。
退職一時金制度はありますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
なお、当連結会計年度末における退職給付に係る負債は12百万円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、「人材が企業価値向上の源泉である」との認識のもと、多様な人材の活躍を促進し、持続的な成長を実現することを人材戦略の基本方針としています。社員一人ひとりの能力開発とエンゲージメント向上に努めるとともに、多様性を尊重した組織づくりを推進しています。
給与の額及び内容については、職務内容、役割、成果、そして同社グループの業績を総合的に勘案して決定されます。基本給は職務の内容及び責任の程度に応じて決定され、公正性及び透明性を確保するため、人事評価に基づき評価結果が給与に適切に反映されています。
また、人的資本に関する重点テーマとして、多様性推進(女性管理職比率向上など)、人材育成への投資、働き方改革の推進に注力しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社及び連結子会社は、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の規定による公表義務の対象ではないため、法定開示データは開示されていません。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
ADR120Sグループは、メディカル事業に経営資源を集中して事業を展開しています。以前はリアルアセット事業も行っていましたが、当連結会計年度中に保有不動産の譲渡を完了し、現在はメディカル事業の単一セグメントで事業を進めています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループのメディカル事業は、医療機器の開発、製造、販売、およびこれらに関連するサービスを提供しています。主力商品は、医療機器として認可されたセルーション遠心分離器と、高度管理医療機器クラスⅢとして認可されたセルセラピーキットです。これらを国内の医療機関へ販売することで収益を得ています。
同社グループは、成人患者自身の皮下脂肪組織から脂肪組織由来再生(幹)細胞「Adipose Derived Regenerative Cells (ADRCs)」を数時間で採取する特許技術を有しています。この技術は、細胞の培養が不要で、拒絶反応などの一般的な問題を回避しながら、新鮮な状態で細胞治療を行うことを可能にしています。
具体的な取り組みとして、男性腹圧性尿失禁治療のための医療機器として国内製造販売承認を取得し、現在は保険診療下での提供に向けた手続きを進めています。また、自由診療の分野での事業展開や、医療機器新製品の開発も行っています。
収益は主に商品販売とサービス提供から得られており、直近の連結会計年度では商品からの収益が大部分を占めています。特定の医療法人等への販売実績が比較的大きい傾向にあります。主力商品の販売については、海外輸入から国産品への移行期にあり、一部商品の販売時期の見直しが行われました。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの売上高は、直近5期において減少傾向にあります。経常利益は継続して損失を計上している状況です。
親会社株主に帰属する当期純利益は、直近の連結会計年度で損失幅が縮小しました。これは、債務免除益や新株予約権戻入益といった特別利益を計上したことによるものです。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 13.4億円 | 21.4億円 | 15.6億円 | 1.2億円 | 51百万円 |
| 経常利益 | △4.2億円 | △8.6億円 | △9.1億円 | △8.6億円 | △9.2億円 |
| 経常利益率 | △31.3% | △40.2% | △58.1% | △707.8% | △1809.6% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | △78百万円 | △10.6億円 | 1.4億円 | △21.4億円 | △4.0億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | △8.79 | △118.71 | 15.47 | △239.70 | △44.46 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高は、前期から減少しています。一方で、従業員1人あたり営業利益は、前期と比較して損失幅が縮小する傾向を示しています。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 12.2百万円 | 3.9百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | △80.7百万円 | △69.7百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループは、現在先行投資期間にあり、継続的に営業損失とマイナスの営業キャッシュ・フローが発生している状況です。このような状況下で、財務基盤の強化と事業の成長に向けた取り組みを進めています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの自己資本比率は、前期から減少傾向にあり、プライム市場の平均と比較すると低い水準です。ROE(自己資本利益率)も前期からさらに悪化しており、プライム市場平均を下回る状況を示しています。手元資金を示す現金及び預金は、前期末から減少しています。これらの財務指標は、同社グループが現在、財務基盤の強化と収益性の改善に取り組んでいる段階であることを示しています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 6.3億円 | 22百万円 |
| 自己資本比率 | 11.8% | 6.0% |
| ROE(自己資本利益率) | △142.8% | △180.0% |
| 現金及び預金 | 2.6億円 | 1.3億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループの当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失により減少となりましたが、前期から減少幅は縮小しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産(信託受益権)の譲渡による収入が主な要因となり、前期から大幅に増加しました。これにより、営業活動と投資活動を合わせたフリーキャッシュ・フローはプラスに転じています。一方、財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の返済により前期から減少しました。これらの資金の流れは、同社グループが事業活動で資金を創出できていないものの、固定資産の売却によって資金を確保し、有利子負債の返済を進めている状況を示しています。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | △9.9億円 | △7.8億円 |
| 投資CF | 23百万円 | 29.8億円 |
| 財務CF | 1.7億円 | △23.2億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △9.6億円 | 21.9億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
同社グループは、継続的に営業損失およびマイナスの営業キャッシュ・フローが発生していることから、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在しています。この状況を解消するため、医療機器の保険収載や商品の国産化移行、新分野での事業展開、費用の削減、財務体質の改善と資金調達などの対応策を進めています。しかし、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる状況です。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、医薬品・医療機器等の開発に多額の投資と長い時間を要するため、研究開発が予定通りに進行せず、開発の延期や中止の判断を行うリスクがあります。また、薬事関連法等の法的規制により、上市や保険償還適用が予定通りできないことで、研究開発投資を回収できず、業績や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、専門人材の確保や育成が計画どおりに進まない場合、事業拡大や競争力維持に支障を来す可能性があります。また、比較的少人数で事業活動を行っているため、事業の中核をなす従業員に不測の事態が生じた場合や既存人員の流出が生じた場合、業績に影響を及ぼすリスクも存在します。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
ADR120Sグループは、再生医療領域における細胞治療を中心に事業を展開し、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を両立することを目指しています。コーポレートガバナンスの強化とメディカル事業への経営資源集中を通じて、社会課題の解決に貢献する企業文化を築いています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、より良い企業経営と企業価値の向上に向けたコーポレートガバナンス強化に取り組んでいます。今後は、再生医療領域における細胞治療を中心に競争力のあるサービスを展開していく方針です。
持続可能な社会の実現と企業価値の向上を両立することが重要であると認識しており、環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点を経営の重要課題と位置付けています。事業活動を通じて社会課題の解決に取り組むことを目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、当連結会計年度中に「リアルアセット事業」を縮小させ、経営資源を「メディカル事業」に集中させています。メディカル事業においては、収益性の高い事業構造への転換を進める方針です。
持続的な成長には人材が不可欠であると考え、多様性の確保と人材育成に注力しています。具体的には、多様性推進(女性管理職比率向上など)、人材育成への投資、働き方改革の推進に取り組んでいます。
取締役会を中心にサステナビリティに関する体制を構築し、長期的な社会・環境の変化に伴うサステナビリティに関する取り組みを推進しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、今後、細胞治療に関する臨床研究と細胞治療サービスの提供に経営資源を集中させていく方針です。業務プロセスの可視化、共通データによる予実管理の徹底、案件リスク管理体制の構築、全体最適化の中での選択と集中を進めています。
細胞治療における研究・開発の意思決定の迅速化と、細胞治療サービスを主軸とした差別化された競争力のあるサービスを展開することが企業価値を高めるものと考えています。また、二酸化炭素排出量削減や女性管理職比率等に関する指標や目標数値の設定についても引き続き検討していくとしています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
ADR120Sグループは、持株会社制を採用しており、グループ全体の利益最大化を目指しています。取締役会は経営に関する重要事項を決定し、業務執行を相互に確認する機関として機能しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
同社グループの筆頭株主は事業会社であるHGキャピタルであり、代表取締役会長も上位株主に名を連ねています。複数の事業会社や機関投資家が上位株主として同社グループを支えている構成です。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| HGキャピタル | 12.92% |
| SBI証券 | 12.03% |
| 橋本 征道 | 11.85% |
| FTLキャピタルマネジメント | 11.05% |
| 東京ウエルズ | 9.22% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は8名(男性8名・女性0名)で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長は橋本征道氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 橋本 征道 | 取締役会長 (代表取締役) | 2016年12月株式会社HGキャピタル取締役、2017年7月株式会社HGホールディングス代表取締役、2018年10月株式会社HGキャピタル代表取締役、2025年6月ADRセラピューティクス株式会社代表取締役、2026年6月同社代表取締役会長より現職。 |
| 鈴木 隆二 | 取締役社長 (代表取締役) | 2013年4月東京女子医科大学消化器病センター外科膵臓外科助教、2015年4月筑波胃腸病院外科主任、2020年6月医療法人筑三会筑波胃腸病院理事長、2026年6月同社代表取締役社長より現職。 |
| 天笠 勝 | 取締役 | 1999年4月メリルリンチ日本証券株式会社入社、2001年2月税理士登録ちよだ税理士事務所開設所長、2007年12月株式会社ちよだコンサルティング代表取締役、2019年6月株式会社Work System Design代表取締役、2025年6月同社取締役より現職。 |
| 林 寿人 | 取締役 | 2006年4月日産化学工業株式会社(現日産化学株式会社)入社、2016年10月同社本社新事業企画部主査、2021年4月同社本社企画本部ヘルスケア企画部主査、2025年6月ADRセラピューティクス株式会社代表取締役社長、2025年6月同社取締役より現職。 |
社外取締役は、井上尚之氏(東京トヨタ自動車取締役社長)、小林弘樹氏(アキュレートアドバイザーズ代表取締役・ビーマップ社外監査役・監査等委員)、久岡英彦氏(順天堂大学医学部・大学院医学研究科特任教授・監査等委員)、小林弘明氏(B.ポジティヴ法律事務所代表・監査等委員)です。
同社は監査等委員会設置会社であり、監査等委員である取締役3名全員が社外取締役で構成されています。社外取締役は経営の監視強化や企業価値向上に向けた客観的な意見提供を担っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社は、企業価値の持続的な向上と株主利益に連動する報酬体系を採用しています。取締役(監査等委員を除く)の報酬は、固定報酬である基本報酬と非金銭報酬としてのストック・オプションで構成されています。監査等委員である取締役には、その職責を考慮し固定報酬のみが支払われる仕組みです。基本報酬は役位や職責、在任年数、業績などを総合的に勘案して決定されます。
なお、取締役(監査等委員を除く)の支給額には使用人兼務取締役の使用人分給与は含まれていません。また、取締役(監査等委員を除く)のうち3名については報酬が支払われていません。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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