※本記事は、株式会社クシム の有価証券報告書(2025年10月期、2024年11月1日 ~ 2025年10月31日、2026年1月30日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
同社グループは、ブロックチェーン技術の社会実装と普及に貢献することを目指し、ブロックチェーン開発・コンサルティング事業を再開しています。また、デジタルアセットトレジャリー(DAT)事業の推進にも取り組んでいます。
単体従業員数は7名、連結従業員数は7名です。セグメントはブロックチェーンサービス事業の1つです。
2025年2月3日付で連結子会社であったZEDホールディングス他5社の株式譲渡による代物弁済が行われ、これらの子会社は第30期連結会計年度の期首より連結の範囲から除外されました。同社は現在、この株式譲渡の有効性を争う訴訟を提起しています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
クシムはブロックチェーンサービス事業を展開しており、少数精鋭の体制で事業を進めています。そのため、従業員一人ひとりの専門性が重視され、柔軟な働き方が期待できる環境です。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、平均年齢が比較的若く、勤続年数も短い傾向が見られます。これは、新しい技術領域で事業を展開する企業の特徴であり、活発な人材の流動性や成長フェーズにあることを示しています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 6,000,000円 |
| 平均勤続年数 | 1.0年 |
| 平均年齢 | 34.0歳 |
| 単体従業員数 | 7人 |
| 連結従業員数 | 7人 |
| 単体のグループ内比率 | 100.0% |
同社は確定拠出型の企業年金制度である中小企業退職金共済制度に加入しています。確定拠出型とは、会社が拠出した資金を従業員が自ら運用する制度です。
なお、退職一時金の有無や支給条件、従業員ごとの会社拠出額などは、有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、「人と組織」の成長を支援するソリューションの提供において、人材の育成が重要であると認識しています。性別、年齢、性的指向、性同一性、人種、国籍、宗教等を問わず、多様な人材が活躍できる職場環境や企業風土の醸成に取り組んでいます。
働きがいのある環境づくりのため、従業員が多様かつ柔軟な働き方ができる組織を目指しています。具体的には、従業員個人の意思を尊重した適材適所の配属、時差出勤、テレワーク(在宅勤務)の実施、子育て等のライフイベントや従業員のライフスタイルと仕事の両立を支援しています。
また、従業員の健康を重視し、健康診断の参加率向上など、健康管理に努めています。組織面では、子会社設立や分社化の経済的合理性及び必要性を慎重に検討し、グループ内組織の統合を進めることで、組織の複雑化に伴う管理リスクの低減に取り組んでいます。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率、および労働者の男女の賃金の差異は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく公表義務の対象ではないため、記載を省略しています。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
同社グループは、ブロックチェーン技術の社会実装を推進し、その普及に貢献することを企業理念としています。かつては複数の事業セグメントを展開していましたが、現在は「ブロックチェーンサービス開発・コンサルティング事業」を単一セグメントとして再構築を進めています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、ブロックチェーン技術を活用したサービスの開発支援やコンサルティングサービスを提供しています。これは、暗号資産やWeb3領域で培った知見と技術力を活かした事業です。
以前はブロックチェーンサービス事業、システムエンジニアリング事業、インキュベーション事業を展開していましたが、連結子会社の譲渡により、これらの事業は連結の範囲から除外されました。現在は、収益基盤の再構築を目指し、ブロックチェーン開発・コンサルティング事業を再開し、顧客開拓と案件獲得に注力しています。収益は、主に先端IT技術を適用するシステムの受託開発や受託研究、ブロックチェーン技術の基礎研究、製品の製造販売、役務の提供から得ています。また、デジタルアセットトレジャリー(DAT)事業の推進にも取り組んでおり、イーサリアム(ETH)の購入および試験運用を開始しています。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの業績は、過去5年間で変動が大きく、特に直近の連結会計年度では売上高が大幅に減少しています。これは、連結子会社の範囲から複数の事業会社が除外されたことが主な要因となっています。
経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は、過去5期中4期で損失を計上しており、直近の連結会計年度も損失が続いています。特に、当連結会計年度では臨時損失や投資有価証券評価損といった特別損失も計上されており、これらが純損失に影響を与えています。営業活動によるキャッシュ・フローも継続してマイナスとなっており、本業でのキャッシュ創出力の課題を示しています。
| 項目 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 16.2億円 | 16.0億円 | 9.6億円 | 16.1億円 | 27百万円 |
| 経常利益 | △1.1億円 | 1.8億円 | △14.0億円 | △11.5億円 | △4.5億円 |
| 経常利益率 | △7.1% | 11.2% | △145.6% | △71.4% | △1709.9% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | △3.6億円 | 6.1億円 | △27.4億円 | △19.6億円 | △13.7億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | △49.72 | 47.47 | △186.36 | △114.63 | △77.12 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高は、前期と比較して大きく減少しています。これは、連結子会社の除外に伴う事業規模の縮小と従業員数の大幅な減少が影響していると考えられます。
従業員1人あたりの営業利益も、前期に引き続きマイナスとなっていますが、損失額は縮小しています。これは、事業再編とコスト構造の見直しが進められている状況を示唆しています。現在の同社グループは、新たな収益基盤の構築と財務基盤の安定化に取り組んでおり、今後の事業の進捗が生産性指標に影響を与える可能性があります。
| 指標 | 2024年10月期(前期) | 2025年10月期(当期) |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 20.2百万円 | 3.8百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | △14.2百万円 | △70.0百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループの財務状況は、事業活動や投資活動において資金流出が続いています。手元資金も減少傾向にあり、財務基盤の安定化が課題となっています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、自己資本比率が前期から大きく改善し、プライム市場平均と比較して高い水準となっています。しかし、ROEは当期・前期ともにマイナスであり、収益性の改善が課題です。現金及び預金は減少傾向にあり、手元資金の厚みは薄くなっています。これらの状況は、今後の事業展開や雇用・給与の安定性に影響を与える可能性があります。
| 指標 | 2024年10月期(前期) | 2025年10月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 14.3億円 | 4.3億円 |
| 自己資本比率 | 1.6% | 78.7% |
| ROE(自己資本利益率) | -91.4% | -150.4% |
| 現金及び預金 | 15.4億円 | 2.2億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
本業の稼ぎを示す営業活動によるキャッシュフローは、当期もマイナスが継続し、前期よりもマイナス幅が拡大しています。これは主に臨時損失の増加によるものです。
投資活動によるキャッシュフローは、当期もマイナスですが、前期に比べてマイナス幅が縮小しています。貸付による支出がある一方で、投資有価証券や有形固定資産の売却による収入も発生しています。
財務活動によるキャッシュフローはプラスですが、前期に比べてプラス幅が減少しています。これは主に第三者割当増資によるものです。結果として、事業活動と投資活動を合わせたフリーキャッシュフローは、当期もマイナスが継続しています。
この状況は、同社グループが資金繰りの安定化と収益基盤の早期確立に取り組んでいることを示しており、今後の事業再構築の進捗が雇用や給与の安定性に影響を与える可能性があります。
| 項目 | 2024年10月期(前期) | 2025年10月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | △6.3億円 | △6.5億円 |
| 投資CF | △3.0億円 | △2.5億円 |
| 財務CF | 9.4億円 | 2.0億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △9.3億円 | △9.0億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
同社グループは、2025年度に発生した経営交代の結果、主要な子会社や資産を喪失し、売上高の著しい減少と重要な損失を計上しています。これらの状況により、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しています。同社グループは、子会社や資産の取り戻しなどの法的対応を進め、収益基盤の早期確立と資金調達を検討していますが、現時点では重要な不確実性が認められています。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、経営交代の結果、主要な子会社や資産、事業、人材を喪失し、連結損益計算書の売上高が大幅に減少しています。これにより、同社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があります。また、不当に譲渡された子会社や資産の取り戻しに関する法的対応を進めており、多額な訴訟費用が発生する可能性も指摘されています。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、旧経営陣によって従業員数が0となった組織の再整備を進めています。収益基盤の早期確立とともに、組織体制の再構築が課題となっています。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
クシムは、ブロックチェーン技術を中核とした事業展開を通じて、持続的な企業価値向上を目指しています。過去の事案を踏まえ、企業風土とコーポレート・ガバナンスの見直しを進め、信頼回復に向けた取り組みを強化しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
クシムは、イーサリアム及びその関連技術を中核とする技術・サービス提供とデジタル資産戦略を推進し、持続的な企業価値及び株主価値の向上を図ることを経営の基本方針としています。同社グループは、ブロックチェーン技術が暗号資産の取引基盤にとどまらず、「実金融」領域へと応用範囲を拡大していることを重要な事業環境の変化と捉えています。
金融イノベーションの中心としての地位を確立しつつあるブロックチェーン上の金融において、イーサリアムを金融インフラのスタンダードの本命と認識しています。ブロックチェーンの技術・ビジネスに精通した人材と実績・知見を強みとし、金融領域へのブロックチェーン採用の国際的な潮流を事業機会として、積極的な事業展開と株主価値の最大化に努めています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
クシムは、過去の事案を踏まえ、企業風土とコーポレート・ガバナンスの見直しを通じて信頼回復を目指す姿勢を示しています。意思決定と管理体制の実効性を高め、適時適切な情報開示と説明責任の徹底に取り組んでいます。
また、人材の多様性を重視し、性別、年齢、人種等を問わず多様な人材が活躍できる職場環境と企業風土の醸成に取り組んでいます。従業員が多様かつ柔軟な働き方ができる組織を目指し、個人の意思を尊重した適材適所の配属や、時差出勤、テレワークの実施、ライフイベントと仕事の両立支援を行っています。
さらに、国内外のイーサリアム関連技術コミュニティとの連携や、ブロックチェーン技術の強化にも積極的に取り組む方針です。サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視するため、内部監査室長を任命し、リスク管理と内部統制の整備を進めています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
経営課題として、子会社の経営支配権の喪失と流出資産の回復が挙げられています。クシムは現在、全ての事業子会社について実質的な経営支配権を喪失しており、その回復と関連資産の回収を重要な課題と認識しています。
旧経営陣による不正な取引を受けて経営交代に至り、流出した資産等を取り戻すべく、複数の訴訟を提起しています。また、コーポレート・ガバナンスの再構築も重点テーマです。
旧経営体制下で課題の多かったガバナンス体制を見直し、新たな経営体制の下で取締役会をはじめとした各種機関の独立性及び組織運営における健全性確保のため、再発防止策に取り組んでいます。中長期的な視点に立った安定株主の獲得と株主構成の安定化も、経営基盤強化の観点から重要な課題としています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
クシムは、監査等委員会制度を採用しており、複数の独立社外取締役を中心に構成される監査等委員会が、取締役の職務執行の監査・監督機能を強化しています。これにより、取締役への権限委譲による迅速な意思決定と経営の透明性確保に努めています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
クシムの株主構成を見ると、筆頭株主は個人である山中夕典氏です。上位株主には複数の個人株主や事業会社が名を連ねています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山中 夕典 | 4.77% |
| a'gil | 4.63% |
| 坂元政弘 | 3.87% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は9名(男性9名・女性―名)で構成され、女性役員比率は―%です。代表取締役は田原弘貴氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田原 弘貴 | 代表取締役 | 2018年1月中小企業診断士資格取得、2018年3月東京大学工学部卒業、2019年6月チューリンガム設立、2023年1月同社取締役、2025年4月同社代表取締役就任より現職。 |
| 田中 遼 | 取締役 | 2011年4月東京都庁入庁、2018年1月Aerial Partners入社、2020年2月LINE株式会社入社(LVC出向)、2022年8月チューリンガム入社、2025年4月同社取締役就任より現職。 |
| 大島 卓也 | 取締役 | 2011年4月株式会社大和総研ビジネス・イノベーション入社、2018年4月Fintertech株式会社入社、2022年6月チューリンガム株式会社入社、2023年11月株式会社Zaif代表取締役就任、2025年10月同社入社より現職。 |
| 伊藤 光佑 | 取締役 | 2018年6月株式会社Aerial Partners入社、2019年9月チューリンガム株式会社共同創業、2023年3月東京大学工学部システム創生学科卒業、2025年10月同社入社より現職。 |
| 竹中 大介 | 取締役 | 2004年3月高知大学人文学部社会経済学科卒業、2004年9月信永中和会計士事務所入所、2008年5月イオンクレジットサービス入社、2025年11月同社入社より現職。 |
社外取締役は、石濱嵩博氏(ナナメウエ代表取締役)、荒木久雄氏(LKdance取締役・監査等委員長)、渡辺治氏(新樹法律事務所弁護士・監査等委員)、佐藤憲介氏(佐藤憲介公認会計士事務所公認会計士・監査等委員)です。
同社は監査等委員会設置会社であり、客観的かつ中立的な経営監視機能を発揮することで、適切な牽制と監視体制を確保し、企業統治の有効性を高める役割を担っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
クシムの取締役の報酬は、企業価値の持続的な向上を図るインセンティブとして、株主利益と連動した報酬体系を採用しています。業務執行取締役の報酬は、固定報酬としての基本報酬、業績連動報酬等、および株式報酬により構成されています。基本報酬は月例の固定報酬であり、役位、職責、在任年数に応じて決定されます。業績連動報酬は、事業年度ごとの業績向上に対する意識を高めるため、連結営業利益の目標値に対する達成度合いに応じて算出された賞与額が決定されます。非金銭報酬は、中長期的な企業価値向上との連動性を強化するため、ストック・オプションとしています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(監査等委員及び社外除く) | 6名 | 38百万円 | 6.3百万円 |
| 社外取締役 | 8名 | 11百万円 | 1.4百万円 |
同社グループの役員報酬総額は48百万円であり、報酬対象となった役員は合計14名です。なお、報酬総額には期中に退任した役員の報酬が含まれており、人数は事業年度中に報酬の支給対象となった人数であり、期中に退任した役員を含みます。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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