キーウェアソリューションズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キーウェアソリューションズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。社会インフラや通信、鉄道等のシステム開発およびSI事業を主力とします。2025年3月期は、官公庁や運輸系等の受注が堅調に推移し、売上高は211億円へ伸長。利益面でも不採算案件の収束や関係会社株式売却益の計上などにより、増収増益を達成しました。


※本記事は、キーウェアソリューションズ株式会社 の有価証券報告書(第60期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. キーウェアソリューションズってどんな会社?


社会インフラ企業の基盤構築や通信キャリア、鉄道会社向けのシステム開発に強みを持つ独立系SIerです。

(1) 会社概要


1965年に日本電子開発として設立され、2001年に現在の社名へ変更しました。2006年にジャスダック証券取引所へ上場し、2008年には東京証券取引所市場第二部へ上場しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に移行しています。長年にわたり社会インフラや特殊業務分野のシステム化を支えています。

連結従業員数は1,289名、単体では797名です。筆頭株主は元持分法適用会社で現在はその他の関係会社であるHBA、第2位は同社従業員持株会、第3位は主要顧客であり資本業務提携先でもあるJR東日本情報システムです。安定株主として取引先企業や従業員が名を連ねています。

氏名 持株比率
HBA 16.59%
キーウェアソリューションズ従業員持株会 10.07%
JR東日本情報システム 7.90%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は三田昌弘氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
三田 昌弘 代表取締役社長 NEC入社後、2002年同社入社。経営企画室長、執行役員常務、営業本部長などを経て2012年1月より現職。
小川 俊一 取締役兼執行役員専務 1985年同社入社。経営企画室長、執行役員コーポレートスタッフ担当などを経て2024年4月より現職。
斉藤 郁夫 取締役兼執行役員常務 1988年同社入社。官公システム事業部長、執行役員システム開発事業担当などを経て2025年4月より現職。
末綱 琢也 取締役 1993年同社入社。IT基盤構築本部長、執行役員SI事業担当を経て2022年6月より現職。
脇谷 勝 取締役 1990年同社入社。運輸システム事業部長、キーウェア九州代表取締役社長などを経て2024年6月より現職。


社外取締役は、野田万起子(元ベンチャー・リンク取締役)、ステファン グスタフソン(ビューポイント代表取締役社長)、舘田あゆみ(東北大学特任教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システム開発事業」「SI事業」および「その他事業」を展開しています。

(1) システム開発事業


コンピュータシステム構築に必要な全体または一部のソフトウェア開発を受託しています。社会インフラ企業の基盤構築や通信キャリア、鉄道会社向けの収入・料金管理、社会インフラネットワークの監視・制御システムなどを手がけています。

収益は主に顧客からのシステム開発受託費等によって得ています。運営は、同社およびキーウェア北海道、キーウェア東北、キーウェア西日本、キーウェア九州、クレヴァシステムズが行っています。

(2) SI事業


各種ERPパッケージ等によるシステム構築を核としたエンドユーザ向けのシステムインテグレーションを行っています。定型業務ではない複雑な顧客固有の特殊業務分野のシステム化にも対応しています。

収益は主にエンドユーザ企業からのシステム構築費等によって得ています。運営は主に同社が行っています。

(3) その他事業


顧客のコンピュータシステムに関する運用・保守等のサポートサービス、関連機器・パッケージソフトの販売、農業ICTなどの新事業を展開しています。

収益は運用・保守サービス料や商品販売代金等から得ています。運営は同社、キーウェアサービス、オーガルが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は180億円台から210億円台へと着実に増加しています。利益面でも、経常利益や当期利益が右肩上がりで推移しており、特に直近の2025年3月期は大幅な増益となりました。利益率も改善傾向にあり、安定した成長を続けています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 186億円 184億円 192億円 205億円 211億円
経常利益 8億円 8億円 9億円 11億円 12億円
利益率(%) 4.1% 4.1% 4.8% 5.3% 5.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 2億円 1億円 4億円 14億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。営業利益率も改善傾向にあり、本業の収益性が向上していることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 205億円 211億円
売上総利益 38億円 40億円
売上総利益率(%) 18.7% 19.1%
営業利益 9億円 9億円
営業利益率(%) 4.3% 4.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が11億円(構成比35%)、賞与引当金繰入額が1億円(同4%)を占めています。

(3) セグメント収益


システム開発事業は売上が横ばいですが、SI事業とその他事業が増収となり全体を牽引しました。特にその他事業は大幅な増収増益を達成し、黒字転換しています。SI事業も増収増益となり、利益率も安定しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
システム開発事業 138億円 138億円 7億円 7億円 4.8%
SI事業 52億円 54億円 2億円 3億円 4.8%
その他事業 15億円 19億円 -0.3億円 0.1億円 0.8%
調整額 - - -0.3億円 -0.2億円 -
連結(合計) 205億円 211億円 9億円 9億円 4.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 12億円 -3億円
投資CF -2億円 4億円
財務CF -1億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


情報技術によってお客様の要求を超えたソリューションを提供し、お客様の夢・理想を実現させ、豊かな社会の発展に貢献することを社会的役割としています。スローガン「IT can create it.」のもと、情報技術の持つ新たな可能性の実現に取り組んでいます。

(2) 企業文化


個人の個性と能力を発揮することに価値を置いた「企業風土」を重視しています。また、創業者が抱いていた「教育は社会を変革する力である」という信念をDNAとして受け継ぎ、人材育成や教育を通じた人づくりを大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2023年3月期から2027年3月期までの5ヵ年中期経営計画「Vision2026」を推進しています。ビジョンとして「100年先までも選ばれ続ける企業へ」を掲げ、以下の数値目標を設定しています。

* 売上高:240億円
* 営業利益:14億円
* 営業利益率:6%

(4) 成長戦略と重点施策


「Vision2026」に基づき、「基盤事業の質的転換」「プライムビジネスの拡大」「新領域へチャレンジ」の3つの方針を推進しています。具体的には、プロダクトやクラウドサービスの活用拡大、資本業務提携先との連携強化、プライム顧客の拡大、コンサルタント育成、サイバーセキュリティやデジタル金融領域への参入などに取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人」を最大の経営資源と位置づけ、社員一人ひとりの前向きな意欲と成長が企業の持続的成長を支える原動力と考えています。「多様な挑戦機会の提供」「豊富な成長機会の提供」「自律と成長を促す制度設計」「自ら変化し学びと挑戦が循環する文化の醸成」の4本柱で人的資本経営を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.1歳 17.3年 6,383,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.9%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 80.1%
男女賃金差異(正規雇用) 82.4%
男女賃金差異(非正規) 58.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定取引先への依存


社会インフラ企業の基盤システム構築業務において、NECグループ、NTTグループ、JR東日本グループなど特定取引先からの売上高が全体の約5割を占めています。これら取引先の業績動向等が同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(2) 業績の季節的変動


事業の特性上、契約期間が年度(4月から翌年3月)を基準にする案件が多く、納期に合わせて作業が増える傾向にあります。そのため、売上高が第4四半期に偏重し、業績に季節的変動が生じるリスクがあります。

(3) プロジェクトの採算管理


受注ソフトウェア開発において、契約時にサービス内容を詳細に確定することが困難な場合があり、当初見積りと実際工数に乖離が生じることがあります。プロジェクトの採算が確保できない場合、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 協力会社の確保


業務の一部を協力会社に委託しており、外注費率は売上原価の約4割を占めています。高度な技術レベルを持つ優良な協力会社を安定的かつ継続的に確保できない場合、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。