ユナイテッド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ユナイテッド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ユナイテッドは東京証券取引所グロース市場に上場し、投資、教育、人材マッチング、アドテク・コンテンツの4つの事業を展開しています。直近の業績は、教育と人材マッチングが増収増益となったものの、投資事業での投資先株式の売却量減少等が影響し、前年比で減収および各利益段階で赤字転換となっています。


※本記事は、ユナイテッドの有価証券報告書(第29期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ユナイテッドってどんな会社?


インターネットビジネスのインキュベーターとして成長し、現在は投資や教育など複数事業を展開しています。

(1) 会社概要


1998年にネットエイジとして設立され、インターネット事業分野のインキュベーターとしてスタートしました。2006年に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場し、2012年にスパイアを吸収合併して現在のユナイテッドに商号変更しました。近年はベストコの完全子会社化など、M&Aによる事業拡大を推進しています。

現在の従業員数は連結で456名、単体で36名です。筆頭株主は資本業務提携の解消により親会社からその他の関係会社へ移行したHakuhodo DY ONEで、第2位は代表取締役社長の早川与規氏です。

氏名 持株比率
Hakuhodo DY ONE 49.40%
早川 与規 3.10%
竹内 壮司 2.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は早川与規氏が務めており、社外取締役の比率は30%となっています。

氏名 役職 主な経歴
早川 与規 代表取締役社長 博報堂、サイバーエージェント副社長等を経て、インタースパイア(現ユナイテッド)設立。2020年より現職。
金子 陽三 代表取締役 リーマン・ブラザーズ証券等を経て、ネットエイジキャピタルパートナーズ(現ユナイテッド)取締役就任。2022年より現職。
山下 優司 取締役 デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム等を経て、2006年に同社へ出向。2022年より現職。
樋口 隆広 取締役 スパイア(現ユナイテッド)入社後、キラメックス(現ブリューアス)代表取締役社長等を経て、2022年より現職。


社外取締役は、田中雄三(Hakuhodo DY ONE取締役)、上原直人(博報堂DYホールディングス事業推進室長等)、石本忠次(メンターキャピタルホールディングス代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「投資事業」「教育事業」「人材マッチング事業」「アドテク・コンテンツ事業」の4事業を展開しています。

投資事業


シード・アーリーステージを中心としたスタートアップ企業への投資やファンド運営を行っています。事業性と社会課題の解決の両立を目指す「善進投資」をはじめ、幅広いテック企業への支援に注力しています。

保有する株式等の売却によるキャピタルゲインや、他社が運営するファンドの運用益により収益を獲得するモデルです。同社が主体となって投資活動および事業の支援を推進しています。

教育事業


小学生から高校生を対象とした個別指導学習塾の運営や、オンライン教育サービス、スマートフォン向けアプリの開発を提供しています。学習塾需要に対して供給が不足する地方における直営展開が特徴です。

受講生から受け取る月謝や講習会費用、教材販売による収入が主な収益源です。運営はベストコやブリューアスが担っています。

人材マッチング事業


採用要件を整理して就労希望者を紹介する人材紹介や、スカウト送信代行などの採用代行(RPO)サービス、デザイナー特化型マッチングサービスを提供し、顧客企業の採用課題を解決しています。

紹介した人材が顧客企業に採用された際に受け取る紹介料などを収益としています。主にユナイテッド・リクルートメントやリベイスがサービスを展開しています。

アドテク・コンテンツ事業


広告主向けの広告配信プラットフォームやメディア向けの広告管理プラットフォームの開発・運営、デジタルコンテンツの制作やファンビジネス、スポーツマーケティングなどを多角的に展開しています。

メディアへの広告出稿代行に伴う手数料や、サービス内で顧客がポイントを使用・消費する際の課金などが収益源です。ユナイテッドマーケティングテクノロジーズやフォッグ等が運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は減少傾向にあり、特に直近の事業年度では大幅な減収となっています。利益面でも、以前は高い利益率を維持していましたが、直近では各利益段階で赤字に転落しており、収益性の回復が課題となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 127億円 131億円 126億円 120億円 89億円
経常利益 58億円 59億円 48億円 26億円 -13億円
利益率(%) 45.3% 44.5% 38.4% 21.4% -14.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 35億円 37億円 21億円 15億円 -15億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な減少に伴い、売上総利益も半減しています。売上総利益率が大きく低下した影響等により、営業利益は赤字に転落しており、本業の収益構造に変化が生じていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 120億円 89億円
売上総利益 62億円 30億円
売上総利益率(%) 51.5% 33.8%
営業利益 26億円 -12億円
営業利益率(%) 22.0% -13.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が13億円(構成比30%)、役員報酬が3億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


投資事業は投資先株式の売却量減少により大幅な減収および赤字となりました。一方で、教育事業は子会社化の影響等で増収となり赤字幅が縮小、人材マッチング事業も拡大による増収で赤字が改善しています。アドテク・コンテンツ事業は一部案件の失注により減収減益となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
投資事業 50億円 4億円 39億円 -2億円 -46.6%
教育事業 18億円 37億円 -4億円 -2億円 -4.5%
人材マッチング事業 7億円 8億円 -2億円 -0.4億円 -5.0%
アドテク・コンテンツ事業 46億円 40億円 3億円 1億円 3.3%
調整額 - - -10億円 -10億円 -
連結(合計) 120億円 89億円 26億円 -12億円 -13.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


直近のキャッシュ・フローは営業・投資・財務のすべてがマイナスとなる「末期型」の構造となっています。営業投資有価証券の増加や法人税等の支払いによって営業キャッシュ・フローがマイナスとなり、加えて配当金の支払いや自己株式の取得により財務キャッシュ・フローもマイナスとなっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 14億円 -40億円
投資CF -2億円 -1億円
財務CF -15億円 -26億円


企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.5%で、市場平均を上回っています。なお、ROE(自己資本利益率)については当期純損失のため算出されていません。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「意志の力を最大化し、社会の善進を加速する。」をパーパスとして掲げています。人が持つ意志の力や事業に込められた意志の力こそが社会を善い方向へ動かす原動力であると考え、事業を通じてそれらを最大化させ、社会に前向きな成長の連鎖を生み出すことを目指しています。

(2) 企業文化


社員の意志の力を最大化するため、定期的に社員自らが意志表示を行う機会を設け、その意志を尊重したキャリア・チャレンジ機会を提供することで成長を促す文化があります。四半期ごとの面談やコンディションチェックなどを通じて、社員が柔軟に意思表示できる環境を整備しています。

(3) 経営計画・目標


2027年3月期は、各事業個別の戦略で成長を目指すとともに、連結全体として黒字化を目指すことを計画しています。投資事業とベストコでは増収および黒字転換を計画し、ユナイテッドマーケティングテクノロジーズでは安定的な利益創出を目標に掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


収益の柱となる投資事業、ベストコ、ユナイテッドマーケティングテクノロジーズを「中核事業」と位置付け、各社個別の戦略で成長を目指しています。投資事業では「善進投資」の拡大、ベストコでは直営展開による教室数と生徒数の拡大、アドテク事業ではAI活用による生産性向上を重点施策として推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員のチャレンジ意欲を引き出す人事制度の導入や権限委譲を促進し、積極的なAI等の新技術の活用、リスキリング、業務プロセスの見直しによる生産性向上に取り組んでいます。また、部門ごとにオフィス出社日を設けつつ在宅勤務も選択できる働き方を採用し、環境整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.8歳 9.9年 7,079,682円

※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.7%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(パート・有期労働者) -

※同社および一部の連結子会社は公表義務の対象ではない、または公表項目として選択していないため、有報には上記数値の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育休取得率(100%)、女性管理職比率(31.3%)、平均勤続年数(8.7年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変化と競争激化

技術分野の急速な進化や新規参入により、既存事業が陳腐化するリスクがあります。特に教育事業や人材マッチング事業ではデジタル人材育成の需要増加に伴い、品質や価格面での競争が激化しており、適切に対応できない場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 投資事業の回収遅延と評価損

シード・アーリーステージ企業への投資は回収までに長期を要し、上場や売却時期の予測が困難です。投資先企業の業績悪化や市場環境の変化により、保有株式の評価損の計上や想定通りの売却ができない場合、同社の財政状態に悪影響を与えるリスクがあります。

(3) 法的規制とコンプライアンス

人材マッチング事業は職業安定法、投資事業は金融商品取引法など様々な規制を受けています。将来的な法令の改正や新たなガイドラインの策定により事業に制約が生じるリスクのほか、個人情報や機密情報の取り扱いにおける情報漏洩リスクも存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。