エコミック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エコミック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エコミックは東証スタンダード及び札証アンビシャスに上場し、給与計算や年末調整等のバックオフィス業務を支援するBPaaS事業を展開しています。直近の業績は、年末調整業務の処理件数増加や平均処理単価の向上などにより、売上高が前期比増収となり、営業利益や経常利益も大幅な増益を達成し、成長を続けています。


※本記事は、株式会社エコミックの有価証券報告書(第29期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エコミックってどんな会社?


給与計算などのバックオフィス業務をクラウドとBPOで支援する企業です。

(1) 会社概要


1997年4月、札幌市においてペイロール事業を目的として設立されました。2006年4月に札証アンビシャスへ上場し、2013年5月には中国山東省青島市に子会社を設立してオフショア化を推進しました。2017年10月にクラウド年末調整システム「簡単年調」をリリースし、近年はHR分野でのM&Aも進めています。

現在の従業員数は連結152名、単体65名体制で事業を運営しています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は創業者の熊谷浩二氏であり、第2位には社会保険労務士法人が名を連ねています。また、第3位は個人の目時伴雄氏となっています。

氏名 持株比率
熊谷浩二 8.29%
日本社会保険労務士法人 6.71%
目時伴雄 6.16%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOは熊谷浩二氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
熊谷浩二 代表取締役社長CEO さくら銀行(現三井住友銀行)入行後、同社入社。管理部長等を経て、2026年4月より現職。
荒谷努 取締役CFOシステム企画室管掌 トヨタ自動車東日本や京セラ等を経て同社入社。執行役員管理部長等を経て、2026年4月より現職。
武田朋宜 取締役COOセットアップ部長品質管理部長オペレーション部管掌 同社入社後、オペレーション部長等を歴任し、2026年4月より現職。


社外取締役は、西田光志(元クオリカ社長)、井上晋一(井上晋一事務所代表)、小林董和(元苫東社長)、荒木俊和(アンサーズ法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「BPaaS事業」を展開しています。

(1) 給与計算関連サービス


顧客企業の状況に合わせたクラウドサービスの提案と事務作業代行を融合した給与・賞与計算BPaaSや、「簡単年調」を活用した年末調整BPaaSなどを提供しています。さらに、住民税関連BPaaS、マイナンバー収集BPaaSのほか、付帯するシステムの受託開発や人事システムの提供も行っています。

収益源は、顧客企業から受け取る業務代行やクラウドサービス利用の対価です。運営はエコミックのほか、システム開発を担うビズライト・テクノロジー、中国での業務委託先である栄光信息技術(青島)有限公司、中国での人事システム提供を行う栄光未来信息技術(上海)有限公司が連携して行っています。

(2) BPaaSその他サービス


給与計算関連以外のバックオフィス業務の代行サービスを提供しています。具体的には、飲食店の割引券発行や確認業務の受託など、顧客企業内で発生する様々なノンコア業務を支援し、業務の標準化や生産性向上に寄与しています。

収益源は、顧客企業からの業務受託に伴う手数料です。運営は主にエコミックが行っており、これまで培ってきたBPOに関するノウハウとクラウドサービスなどのテクノロジーを掛け合わせた高付加価値なサービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は概ね20億円台で推移し、直近では過去最高の売上高を記録しています。経常利益は一時的に落ち込みを見せたものの、単価向上や処理件数の増加、新規連結子会社の貢献により回復傾向にあり、利益率も改善しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 17.6億円 22.2億円 21.6億円 21.2億円 23.5億円
経常利益 1.9億円 2.2億円 1.8億円 0.6億円 1.6億円
利益率(%) 10.7% 9.9% 8.5% 2.9% 6.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.1億円 1.7億円 1.3億円 0.4億円 1.1億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に加え、業務効率化の推進により売上原価率が低減し、売上総利益率は改善しています。営業利益率も大幅に向上し、収益性の高まりが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 21.2億円 23.5億円
売上総利益 5.9億円 7.6億円
売上総利益率(%) 27.8% 32.5%
営業利益 0.5億円 1.7億円
営業利益率(%) 2.2% 7.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与が1.3億円(構成比22%)、支払手数料が1.2億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社はBPaaS事業の単一セグメントです。年末調整業務の処理件数増加や平均処理単価の向上、上海子会社の新規連結効果などにより、売上高は増加しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
BPaaS事業 21.2億円 23.5億円
連結(合計) 21.2億円 23.5億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態である「健全型」となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1.5億円 3.7億円
投資CF -1.2億円 -0.7億円
財務CF -1.7億円 -6.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「お客様への価値あるサービスの提供」を経営理念とし、「カスタマーサクセス-顧客企業の生産性向上に寄与し、顧客企業の成長を支える」というミッションを掲げています。社会課題の解決を目指し、多くの顧客企業にサービスを提供することで、持続可能な社会の実現に貢献することを目標としています。

(2) 企業文化


人材を最も重要な資産と捉え、多様な人材が自律的なキャリアを形成できる環境と、生産性高く成果を出せる環境の整備を重視しています。社員一人ひとりが「第一人者」になれる人材育成や、成果に基づいた公平な評価を実施し、性別や国籍等を問わず活躍できる組織文化を構築しています。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長および安定的な収益確保の実現を経営目標としており、バックオフィスの生産性向上を実現する戦略的パートナーとして、サービスの質を向上させることで目標達成を目指しています。

* 売上高営業利益率10%

(4) 成長戦略と重点施策


テクノロジー(AI・SaaS)と人の力(BPO)を融合した「ハイブリッド戦略」を推進し、顧客の生産性向上を支えるソリューションを提案することで業界をリードする方針です。AI活用による業務プロセスの見直しと改善、業務品質の向上と情報管理体制の強化、新サービスの開発や外部SaaS企業との連携による収益基盤の多様化を重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大を支えるマネジメント人材、専門性を有する人材、AI・IT活用人材の育成を基本方針としています。階層別教育やOJTを通じた次世代リーダーの育成に加え、労働力人口の減少を見据えた国籍を問わない採用を推進し、多様な背景を持つ人材が能力を発揮できる環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.6歳 7.2年 4,754,475円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.4%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 55.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 82.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 104.8%


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍社員の比率(21.5%)、テレワーク制度利用率(89.2%)、フレックスタイム制度適用率(100.0%)、副業実施率(9.2%)、一人当たりの教育研修費用(123千円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合他社の動向について


クラウド技術やAI技術の進展により市場拡大が期待される一方、SaaSベンダーやコンサルティングファームなどの参入で競争が激化しています。価格競争や技術革新への対応の遅れが生じた場合、競争力の低下や収益性の悪化につながる可能性があります。

(2) サービス領域への依存について


給与計算関連サービスへの依存度が高い収益構造となっています。サービス領域の拡張を進めているものの、特定領域の需要減少や主要顧客との契約変更、競争環境の変化による処理件数の減少などが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) システム・クラウド基盤の障害リスク


サービスはクラウド基盤や情報システムに大きく依存しており、外部クラウドサービスの障害、サイバー攻撃、通信障害等が発生した場合、サービス停止や業務処理の遅延が生じる恐れがあります。その結果、顧客の信用低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 将来的な人材の確保について


持続的な成長には、業務運用とITの双方に精通した人材が不可欠ですが、近年はDXやAI分野での人材獲得競争が激化しています。必要な人材の確保が進まない場合や、人材の流出が生じた場合、サービス品質の低下や事業拡大の制約につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。