エコミック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エコミック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エコミックは、東京証券取引所スタンダード市場および札幌証券取引所アンビシャスに上場する企業です。給与計算や年末調整のアウトソーシングを行うBPO事業を主力としています。直近の業績は、主力事業の受注は堅調なものの、体制強化のための投資がかさみ、前期比で減収減益となっています。


※本記事は、株式会社エコミック の有価証券報告書(第28期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エコミックってどんな会社?


エコミックは、給与計算や年末調整などのバックオフィス業務を代行するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は1997年に札幌市で設立され、2000年に人材サービス大手のキャリアバンクの子会社となりました。2006年に札幌証券取引所アンビシャスへ上場し、2017年にはクラウド年末調整システム「簡単年調」をリリースしました。その後、2020年にJASDAQ(現スタンダード市場)へ上場を果たし、2022年にはシステム開発を行うビズライト・テクノロジーを子会社化するなど、事業領域を拡大しています。

現在、連結従業員数は154名、単体では65名体制です。筆頭株主は、元親会社であり現在はその他の関係会社となっているキャリアバンクです。第2位は同社親会社の役員である佐藤良雄氏、第3位は個人株主の目時伴雄氏となっています。

氏名 持株比率
キャリアバンク 34.96%
佐藤 良雄 5.52%
目時 伴雄 4.16%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は熊谷浩二氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
熊谷 浩二 代表取締役社長 さくら銀行(現三井住友銀行)を経て同社入社。管理部長などを歴任し、2013年より現職。
荒谷 努 取締役管理部長システム企画室管掌 セントラル自動車、京セラタイコムを経て同社入社。管理部長などを経て2020年より現職。
武田 朋宜 取締役セットアップ部長品質管理部長オペレーション部管掌 2009年同社入社。オペレーション部長などを経て2025年より現職。


社外取締役は、西田光志(元クオリカ社長)、井上晋一(井上晋一事務所代表)、小林董和(元つうけんビジネス社長)、荒木俊和(アンサーズ法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「BPO事業」および「その他」事業を展開しています。

**BPO事業**
顧客企業の給与計算、賞与計算、年末調整、住民税額更新などの人事業務を代行するサービスを提供しています。クラウドサービス「簡単年調」を活用したデータ化や、マイナンバー収集代行なども手掛けます。主な顧客は業務効率化を目指す一般企業です。
収益は、顧客企業から受け取る業務委託料やシステム利用料などから構成されます。運営は主にエコミックが担い、中国の現地法人である栄光信息技術(青島)や栄光未来信息技術(上海)がオフショア拠点として実務をサポートしています。

**その他事業**
主にソフトウェアやハードウェアの開発を行っています。顧客の要望に応じたウェブソリューションや業務管理ソフトの開発に加え、同社の主力サービスである「簡単年調」の開発も担っています。
収益は、顧客企業からのシステム開発受託料などが主となります。運営は連結子会社のビズライト・テクノロジーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は22億円規模で推移していましたが、直近では微減傾向にあります。利益面では、2023年3月期をピークに減少傾向にあり、特に直近の2025年3月期は大幅な減益となりました。これは先行投資や体制強化に伴うコスト増が影響しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 16億円 18億円 22億円 22億円 21億円
経常利益 1.4億円 1.9億円 2.2億円 1.8億円 0.6億円
利益率(%) 8.7% 10.7% 9.9% 8.5% 2.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.0億円 1.1億円 1.7億円 1.3億円 0.4億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は微減となりましたが、売上原価が増加したことで売上総利益が減少しました。さらに、販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は前期の約3分の1の水準まで低下しています。利益率も大きく低下しており、コストコントロールが課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 22億円 21億円
売上総利益 7億円 6億円
売上総利益率(%) 30.2% 27.8%
営業利益 2億円 0.5億円
営業利益率(%) 8.0% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与が1.2億円(構成比22%)、支払手数料が0.7億円(同13%)、役員報酬が0.6億円(同12%)を占めています。売上原価では、労務費や外注費などの人件費関連が大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


主力のBPO事業は、給与計算BPOの受注増により増収となりましたが、人材確保のための賃上げやオフィス増床などの先行投資がかさみ、利益は大幅に減少しました。その他事業は、グループ内のサービス強化に向けた開発にリソースを集中させたため、外部顧客への売上が大きく減少しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
BPO事業 21億円 21億円 2億円 1億円 3.6%
その他 1億円 0.1億円 -0.1億円 0.1億円 11.9%
調整額 -0.5億円 -1億円 -0.2億円 -0.4億円 -
連結(合計) 22億円 21億円 2億円 0.5億円 2.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2.1億円 1.5億円
投資CF -0.8億円 -1.2億円
財務CF 3.0億円 -1.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は91.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「お客様への価値あるサービスの提供」を経営理念として掲げています。顧客企業に合わせた人事ソリューションを提供し、人事パートナーとしての信頼を得ることを目指しています。BPO事業を通じて、給与計算だけでなく、年末調整や勤怠・人事システムなど多岐にわたるサービスを展開しています。

(2) 企業文化


同社は「信用と品質に基づくプロ集団が、ソリューションを提供する」というブランドステートメントを掲げています。顧客企業の生産性向上に寄与し、成長を支える「カスタマーサクセス」を使命とし、社員一人ひとりがプロフェッショナルとして顧客へのソリューション提案を行う文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、持続的な成長と安定的な収益確保を経営目標としています。具体的な数値目標として、以下の指標を掲げています。

* 売上高営業利益率:10%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、人手不足やDX化の進展を背景に高まるアウトソーシング需要に応えるため、クラウドサービスを活用した業務効率化(BPaaS)の提案を強化しています。また、業務のスピードアップや品質向上、情報管理体制の強化に取り組むとともに、災害リスク分散のための複数拠点化や、日本国外のマーケット開拓も進めていく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材を最も重要な資産と捉え、「多様な人材が自律的なキャリアを形成できる環境と、生産性高く成果を出せる環境を整備する」ことを方針としています。性別や国籍、年齢などを問わず優秀な人材を採用・育成し、社員一人ひとりが第一人者となれるよう支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 36.8歳 6.4年 4,085,668円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.4%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 54.1%
男女賃金差異(正規雇用) 81.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 104.7%


※男性労働者の育児休業取得率は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍社員の比率(13.8%)、テレワーク制度利用率(93.8%)、フレックスタイム制度適用率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合他社の動向と競争激化

BPO事業は参入障壁が高くなく、新規参入や価格競争の激化がリスクとなります。特に給与計算アウトソーシングでは、大企業向け市場において多くの競合他社が参入しており、受注獲得競争が激化しています。サービスの優位性を維持できなければ、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 事業のBPO事業への依存

売上高の大部分をBPO事業が占めており、特定事業への依存度が高い状態です。第二の柱としてシステム開発事業の育成を進めていますが、多角化が計画通り進まない場合、BPO事業の成長鈍化が業績全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(3) システムトラブルと情報管理

事業基盤であるコンピュータシステムに、ウイルスやハッキング等による重大なトラブルが発生した場合、業務に支障をきたす恐れがあります。また、大量の個人情報を扱っているため、情報漏洩が発生した場合には、損害賠償や信用低下により業績に影響を与える可能性があります。

(4) 中国での事業環境

中国の青島および上海に子会社を持ち、オフショア拠点として活用しているため、中国のカントリーリスクの影響を受けます。人民元の切り上げや人件費の上昇によるコスト増、中国の法規制の変更などが、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。