※本記事は、株式会社翻訳センター の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
翻訳センターは、翻訳サービスを主たる業務とする企業です。同社グループは、特許、医薬、工業・ローカライゼーション、金融・法務といった多岐にわたる分野で専門性の高い翻訳サービスを提供しています。また、派遣事業や通訳事業も展開しています。
単体従業員数は391名、連結従業員数は540名です。セグメントは翻訳事業、派遣事業、通訳事業、その他、ウェブ制作事業の5つです。
主な国内グループ会社は、アイ・エス・エス(派遣事業・通訳事業・その他)、メディア総合研究所(翻訳事業)、シトラスジャパン(ウェブ制作事業)などです。
同社グループは、2025年10月1日付でシトラスジャパンの全株式を取得し連結子会社化しました。また、同日付でFIPASを吸収合併しています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
翻訳センターは、言語サービスを通じてグローバルな事業活動を支援する企業です。社員一人ひとりの専門知識と経験を重視し、人材育成や多様な働き方を推進することで、高品質なサービス提供と企業価値向上を目指しています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社は、平均勤続年数が10.0年と比較的長く、従業員が安定してキャリアを築いている傾向が見られます。平均年齢も42.7歳であり、経験豊富な人材が活躍していることがうかがえます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 5,603,259円 |
| 平均勤続年数 | 10.0年 |
| 平均年齢 | 42.7歳 |
| 単体従業員数 | 391人 |
| 連結従業員数 | 540人 |
| 単体のグループ内比率 | 72.4% |
同社は確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる制度)の退職給付制度を採用しており、連結子会社は退職一時金制度を採用しています。退職一時金制度があります。ただし支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
退職給付債務は5.7億円、年金資産は5.0億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、翻訳・通訳をはじめとする言語サービスを通じて、お客様のグローバルな事業活動を支援しています。社員一人ひとりの専門知識や経験を企業価値創造の源泉である重要な経営資本と位置付けています。事業環境の変化に対応するため、「人材育成」「多様な人材の活躍推進」「働きやすい職場環境の整備」を人事戦略の柱としています。
個々の従業員のパフォーマンスに応じたきめ細かい給与体系、賞与配分、キャリアパス等を実現するため、2024年度より人事制度を刷新しました。これにより、全従業員のモチベーション及びエンゲージメントの向上に取り組んでいます。報酬については、経営状況等を勘案しつつ、事業戦略の実現に必要な人材の確保・育成に資する形となるよう、報酬水準の適正化に向けた施策を実施しています。
人材育成では、職種やキャリアステージに応じた育成を推進しており、職種別研修や階層別研修、新任管理職研修、昇格後フォロー研修を実施しています。また、eラーニングや資格取得支援制度を通じて、自律的な学びを後押ししています。多様な人材の活躍推進と働きやすい職場環境の整備においては、在宅勤務制度やフレックスタイム制度を導入し、多様な働き方に対応しています。年1回実施する自己申告制度を通じて社員のキャリアに関する考えや意見を把握し、人材配置や職場環境の改善に活かしています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。各指標は、女性活躍推進法および育児介護休業法の規定に基づき算出されています。男女の賃金格差は、男性の賃金に対する女性の賃金の割合を示しており、同一労働の賃金に差はなく等級別人数構成の差によるものです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 | 49.2% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) | 78.4% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(正規雇用労働者) | 83.0% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(パート・有期労働者) | 67.3% |
グループ全体(連結)
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性労働者比率 | 70.0% |
| 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 | 50.0% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
翻訳センターは、翻訳サービスを主軸に、派遣事業や通訳事業などを展開する企業グループです。多岐にわたる言語サービスを通じて、顧客企業のグローバルビジネスを支援しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、主に翻訳、派遣、通訳の3つの事業セグメントと、その他の事業を展開しています。各事業は専門性の高いサービスを提供し、顧客の多様なニーズに応えることで収益を上げています。特定の顧客に収益が集中する状況は見られず、また、本邦の外部顧客への売上高が連結損益計算書の大部分を占めており、海外市場への依存度は低い傾向にあります。
翻訳事業
特許、医薬、工業・ローカライゼーション、金融・法務の主要4分野を中心に、専門性の高い翻訳業務を提供しています。顧客は特許事務所、各種メーカー、製薬会社、金融機関など多岐にわたります。
収益は、特許出願明細書や医薬品開発関連資料、技術仕様書、金融レポートなどの翻訳サービスから得ています。運営は、翻訳センター、メディア総合研究所、パナシア、福山産業翻訳センターが行っています。
派遣事業
高い語学力を持つ翻訳者や通訳者を顧客企業に派遣する人材派遣業務を行っています。顧客企業内で機密保持が必要な文書の翻訳や、通訳業務に従事する人材を提供しています。
収益は、人材派遣による役務提供と人材紹介による紹介手数料から得ています。運営は、アイ・エス・エスが行っています。
通訳事業
企業内会議や中小規模の国際会議における通訳業務を提供しています。専門性の高い通訳サービスを通じて、円滑なコミュニケーションを支援しています。
収益は、通訳業務の請負契約に基づく役務提供から得ています。運営は、アイ・エス・エスが行っています。
その他の事業セグメント
イベントの企画・運営を行うコンベンション事業、通訳者・翻訳者を養成する語学教育、外国出願用の特許明細書作成支援、各種データ収集・分析・活用支援、多言語でのウェブサイト企画制作や外国語コピーライティングなど、幅広いサービスを提供しています。
収益は、これらの多様なサービス提供から得ています。運営は、翻訳センター、アイ・エス・エス、シトラスジャパンが行っています。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 翻訳事業 | 85.1億円 | 81.0億円 |
| 通訳事業 | 11.9億円 | 13.2億円 |
| 派遣事業 | 11.8億円 | 11.2億円 |
| その他の事業セグメント | 3.4億円 | 3.3億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの直近5期間の業績を見ると、売上高は前期に比べて減少傾向にあります。経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益も、前期から減少する結果となりました。特に親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に計上された子会社株式売却益や移転補償金の反動減も影響し、大きく減少しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 103億円 | 109億円 | 113億円 | 112億円 | 109億円 |
| 経常利益 | 8.4億円 | 9.6億円 | 9.4億円 | 9.1億円 | 7.5億円 |
| 経常利益率 | 8.1% | 8.8% | 8.3% | 8.1% | 6.9% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 5.7億円 | 6.9億円 | 7.1億円 | 7.2億円 | 4.6億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 172.14 | 205.94 | 212.88 | 216.18 | 137.79 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高は前期から減少しており、従業員1人あたりの営業利益も前期に比べて減少しています。これは、連結売上高の減少と利益の減少が影響していると考えられます。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 20.6百万円 | 20.1百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 1.6百万円 | 1.3百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループは、安定した財務基盤を維持しながら、事業活動を通じて着実に資金を生み出しています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの自己資本比率はプライム市場の非製造業平均と比較して高い水準にあります。手元資金も潤沢に確保されており、安定した事業運営を支える財務基盤が形成されています。ROE(自己資本利益率)は前期から減少していますが、引き続きプラスとなっています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 67.6億円 | 70.2億円 |
| 自己資本比率 | 76.5% | 80.0% |
| ROE(自己資本利益率) | 11.1% | 6.7% |
| 現金及び預金 | 48.3億円 | 50.5億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは10.6億円の収入となり、前期の5.0億円から増加しました。これは主に税金等調整前当期純利益の計上や売上債権の減少によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは△9.4億円の支出となり、前期の△2.0億円から支出が増加しました。主な要因は定期預金の預入による支出です。
財務活動によるキャッシュ・フローは△2.9億円の支出となり、前期の△2.2億円から支出が増加しました。これは主に配当金の支払額によるものです。結果として、フリーキャッシュ・フローは1.1億円の収入となり、本業で得た資金で投資を賄い、なお余剰資金を生み出している状況を示しています。この資金の流れは、同社グループが安定した事業運営を継続し、将来に向けた投資も行いつつ、財務的な健全性を保っていることを示しています。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.0億円 | 10.6億円 |
| 投資CF | △2.0億円 | △9.4億円 |
| 財務CF | △2.2億円 | △2.9億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 3.1億円 | 1.1億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループの事業は、主要顧客が属する業界の法制度変更、景気変動、業界再編、顧客の方針変更などにより、サービスへの需要が大きく変動する可能性があります。また、AIを含むICTを活用した技術開発が進む中で、これらの技術開発への対応が遅れた場合、競争力が低下する可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、翻訳、派遣、通訳の各事業において、登録スタッフであるフリーランスの翻訳者・通訳者の確保が重要であると認識しています。質的・量的に十分な登録スタッフを確保できない場合、事業及び業績に影響を与える可能性があります。また、優秀な従業員の確保・育成も重要な課題であり、これらの施策により優秀な人材を確保・育成できなかった場合、労働力不足やサービス品質の低下等により、事業及び業績に影響を与える可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
翻訳センターは、産業技術翻訳を核に国際的な経済・文化交流に貢献することを目指す企業です。顧客企業のグローバルコミュニケーションを包括的に支援し、持続的な成長を追求しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは「産業技術翻訳を通して、国内・外資企業の国際活動をサポートし、国際的な経済・文化交流に貢献する企業を目指す」ことを企業理念に掲げています。高い顧客満足度の得られるランゲージサービスを提供することにより、顧客の企業価値・競争力向上に貢献することを目指しています。
また、全てのステークホルダーの満足度を高め、透明性の高い経営を推進し、企業価値を向上させることを方針としています。多様化・高度化する顧客ニーズに迅速かつ柔軟に対応し、顧客企業にとって最適かつ価値あるサービスを追求することで、グループの持続的な成長を目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、各事業が有する高い専門性や技術・ノウハウを活かし、付加価値の高いランゲージサービスを提供しています。顧客企業のグローバルコミュニケーション構築を包括的に支援することを強みとしています。
人材を企業価値創造の源泉である重要な経営資本と位置づけ、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境づくりを重要な経営課題としています。2024年度より人事制度を刷新し、全従業員のモチベーション及びエンゲージメントの向上に取り組んでいます。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、中期経営計画の着実な推進により、以下の課題解決に取り組んでいます。AI・データの活用による事業競争力の強化として、MT(機械翻訳)・LLM(大規模言語モデル)の活用やデータドリブンな営業・マーケティング活動を実践しています。
業務効率化の推進として、プロジェクトマネージャの業務効率化が不可欠であると認識し、知識や経験をシステムに実装することで工程管理の精度を高めています。安定した収益基盤の確立に向けて、資本効率を重視した事業ポートフォリオの最適化を進め、経営資源を効果的に配分しています。
また、成長の基盤となる人材の育成や成長領域に対する投資にも取り組んでいます。経営資源の充実と経営管理の厳格化を図ることで、安定した収益基盤を確立し、株主価値の向上に努めています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
翻訳センターは、取締役会が経営方針等の重要事項の意思決定と監督を担い、3名の社外取締役で構成される監査等委員会が経営の透明性向上と監視機能を担う体制を採用しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
同社グループの株主構成を見ると、事業会社であるエムスリーが筆頭株主となっています。また、複数の投資事業有限責任組合が上位株主として名を連ねており、個人株主も上位に複数存在しています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| エムスリー | 19.75% |
| UHPartners3投資事業有限責任組合 無限責任組合員株式会社UHPartners3 | 7.66% |
| UHPartners2投資事業有限責任組合 無限責任組合員株式会社UHPartners2 | 7.46% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合 無限責任組合員光通信株式会社 | 6.41% |
| エスアイエル投資事業有限責任組合 無限責任組合員株式会社エスアイエル | 5.54% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は7名(男性6名・女性1名)で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長は二宮俊一郎氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 二宮 俊一郎 | 代表取締役社長 | 1997年4月同社入社、2004年6月取締役就任、2018年6月代表取締役社長就任より現職。 |
| 武山 佳憲 | 取締役 営業統括 (兼) 医薬本部長 医薬本部制作部長 マーケティング部長 | 2000年10月同社入社、2017年6月取締役就任、2025年4月営業統括兼医薬本部長兼医薬本部制作部長兼マーケティング部長より現職。 |
| 魚谷 昌司 | 取締役 管理統括 (兼) 経理部長 | 2002年4月同社入社、2018年6月取締役就任 管理統括兼経理部長より現職。 |
| 西野 奈々 | 取締役 業務統括 | 2002年12月同社入社、2023年6月取締役就任、2025年4月業務統括より現職。 |
社外取締役は、大西耕太郎氏(公認会計士大西耕太郎事務所代表・常勤監査等委員)、山本淳氏(弁護士法人堂島法律事務所・監査等委員)、村田淳一氏(パナソニックITソリューションズ代表取締役社長・監査等委員)です。
同社は監査等委員会設置会社であり、取締役の職務執行の監査等を担う監査等委員を取締役会の構成員とすることで、取締役会の監督機能を強化しています。また、複数の社外取締役を置くことで、独立性のある監督・監視機能の強化を図り、経営の透明性確保に努めています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社の役員報酬は、優秀な人材の確保と企業価値向上へのモチベーションを高めることを主眼に置いた体系です。取締役(監査等委員及び社外取締役を除く)の報酬は、固定報酬としての基本報酬、業績連動報酬としての賞与、そして非金銭報酬としての譲渡制限付株式報酬で構成されています。一方、監査等委員である取締役の報酬は、独立性を確保するため固定の月額報酬のみが支給されています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(監査等委員及び社外除く) | 4名 | 1.2億円 | 30.7百万円 |
| 社外役員 | 3名 | 24百万円 | 8.0百万円 |
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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