JTP 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

JTP 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

JTPは東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。主幹事業として海外ICTや医療機器メーカーの日本参入を技術サービスで支援するアウトソーシング事業と、その知見を活かした自社ソリューション事業を展開します。直近の業績では、デジタルイノベーション事業などの伸長により増収増益を達成しています。


※本記事は、JTPの有価証券報告書(第39期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. JTPってどんな会社?


アウトソーシング事業と自社ソリューション事業を柱とする企業の特徴を紹介します。

(1) 会社概要


1987年に海外ハイテク機器メーカーの日本市場参入を技術サービスで支援する目的で設立されました。2006年にジャスダック証券取引所へ上場し、2017年にはAIを活用した新サービスを提供開始しました。2021年に現在のJTPへ商号変更し、2022年に東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。

現在の従業員数は単体で459名です。筆頭株主は創業メンバーであり代表取締役会長を務める森豊氏で、第2位は資本業務提携を結んでいる双日テックイノベーション、第3位は光通信KK投資事業有限責任組合無限責任組合員光通信となっています。

氏名 持株比率
森豊 8.79%
双日テックイノベーション 8.36%
光通信KK投資事業有限責任組合無限責任組合員光通信 6.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は為田光昭氏が務めています。取締役8名のうち、社外取締役は3名で比率は37.5%となっています。

氏名 役職 主な経歴
為田光昭 代表取締役社長 1994年4月同社入社。取締役新規事業開発本部長、取締役デジタルイノベーション本部長、取締役副社長ソリューション事業本部長を経て、2026年4月より現職。
森豊 代表取締役会長 2002年6月同社入社。ヘルプデスク部部長、執行役員新規事業推進本部SNS推進室長、代表取締役社長を経て、2026年4月より現職。
伊達仁 常務取締役コーポレート本部長 1997年3月同社入社。広報室長、取締役管理本部長、取締役コーポレート本部長などを経て、2022年6月より現職。
長谷川慎也 取締役事業本部長 1999年9月同社入社。ICTプラットフォームソリューション部長、執行役員ICT事業本部長、取締役ICT事業本部長を経て、2026年4月より現職。
木村裕之 取締役監査等委員 ベリタスソフトウェア代表取締役社長等を経て、2013年4月同社顧問。2018年6月常勤監査役を経て、2020年6月より現職。


社外取締役は、寺田由美(HRリスペクト代表取締役)、井出隆(元EY新日本有限責任監査法人シニアパートナー)、竹内洋平(竹内洋平公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルイノベーション事業」「ICT事業」「ライフサイエンス事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) デジタルイノベーション事業


人財育成にかかるコンサルテーションから研修の実施運用までをワンストップで提供する人財育成ソリューションサービス、企業向けの予防型セキュリティサービス、最新のAI技術等を活用したDX開発サービスの3つのサービスで構成されています。

顧客へのトレーニング提供やシステムの開発進捗、セキュリティサービスの契約期間に応じて収益を認識します。運営は同社が行っています。

(2) ICT事業


ICTシステムの設計、構築、運用、保守サービスを提供しています。クラウド運用サービスやテクニカルヘルプデスクなどを通じて、顧客のICTインフラを包括的に支援しています。

システムの設計・構築業務は作業の進捗度に応じて、運用・保守サービスは役務提供期間にわたって継続的に収益を認識します。運営は同社が行っています。

(3) ライフサイエンス事業


医療機器や化学分析装置などの保守サービスと海外医療機器メーカー向けのコンサルティングサービスの提供、およびライフサイエンス分野のICTサービスを提供しています。

医療機器などの据付、点検、修理等のサービス提供時や、保守契約に基づく役務提供期間に応じて収益を認識します。運営は同社が行っています。

(4) その他


報告セグメントに属さない事業として、グローバルIT人財紹介サービスであるReinforce HR、インド支店における事業、海外プロジェクト案件などが含まれています。

人財紹介サービスや海外における各種プロジェクトの提供等を通じて収益を獲得しています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間を通じて売上高は着実に拡大しており、2022年3月期の70億円から2026年3月期には99億円へと成長しました。利益面でも増益基調が続いており、経常利益率は6%台から9%台後半まで上昇し、収益性の向上が伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 70億円 74億円 81億円 92億円 99億円
経常利益 5億円 5億円 7億円 8億円 10億円
利益率(%) 6.7% 6.4% 8.3% 9.0% 9.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 3億円 5億円 6億円 7億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。特に営業利益は高い成長を維持しており、営業利益率も改善傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 92億円 99億円
売上総利益 19億円 20億円
売上総利益率(%) 20.7% 20.2%
営業利益 8億円 10億円
営業利益率(%) 8.9% 9.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が3億円(構成比30%)、支払手数料が2億円(同22%)を占めています。また、売上原価では経費が38億円(同48%)、労務費が31億円(同40%)と高い構成比となっています。

(3) セグメント収益


主力であるICT事業が安定した売上基盤を形成する一方、デジタルイノベーション事業が大きく伸長しています。AIソリューションやセキュリティサービスなどの需要拡大が寄与しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
デジタルイノベーション事業 22億円 27億円
ICT事業 50億円 52億円
ライフサイエンス事業 19億円 19億円
その他 0.3億円 0.6億円
連結(合計) 92億円 99億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 8億円 7億円
投資CF -1億円 -1億円
財務CF -2億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も61.7%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、存在意義(パーパス)として「開かれた市場の形成と世界の格差是正を実現する」を掲げています。世界で生み出された技術革新の果実を広く等しく享受できるよう、不均衡を修正し競争力ある市場を形成することで国際社会に貢献することを目指します。また、ミッションに「Connect to the Future」を掲げ、顧客が描く未来を技術でつなぐことで国際的地位の向上を図ります。

(2) 企業文化


同社は、全役員・従業員の価値観や行動指針となる「JTP Value」として、「オープンマインド」「パッション」「プロアクティブ」「コラボレーション」「ありがとう」「+αもうひと知恵」の6つを定めています。多様性を尊重し、誰もが活躍できる職場環境づくりを進めるとともに、社員一人ひとりが自律的な成長と組織運営への参画を通じて、イノベーションと新しい価値創造の実現を目指す文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は第2次中期経営計画において、2027年3月期に向けた定量目標を掲げています。資本効率を重視し、ROE(自己資本利益率)を営業利益に並ぶ重要な経営指標と位置づけています。

・売上高:92〜100億円
・営業利益:7.1〜10億円
・ROE:中長期で15%以上を維持

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「業界随一のイネイブラー」となることを目指し、「“知恵集約型”のビジネス形態への完全な転換」を基本方針としています。具体的な注力分野として、最新技術を活用した「DX」、内部脅威対策サービスを拡充する「セキュリティ」、遠隔医療関連などを推進する「ライフサイエンス」、DX型プラットフォームの運用を支援する「次世代システム運用」の4領域を掲げ、顧客の事業変革を加速させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人的資本を成長のための最重要資本と位置づけています。エンジニアマインドを持ち、顧客の課題をITで解決する「イネイブラー人財」の育成に注力しています。多様な専門性に応じた育成体系の整備や、高い技術力に応じた処遇を実現する制度運用を推進し、働く時間と場所を柔軟に設定できる環境を提供することで、従業員エンゲージメントの向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 36.3歳 10.9年 6,183,090円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 91.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 94.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 83.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) IT投資ニーズの変化による事業環境リスク


情報サービス業界における競争激化や異業種からの参入に加え、経済環境の影響による顧客企業のIT投資ニーズの急速な変化、業界内での価格競争の激化が、同社の経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) サイバー攻撃等による情報セキュリティリスク


業務遂行の一環として個人情報や機密情報を取り扱うため、サイバー攻撃等による情報漏えいやセキュリティ事故が発生した場合、社会的信用の低下や損害賠償金の支払い等により、財務状況に悪影響を与えるリスクがあります。

(3) システム障害による運用リスク


同社が提供するシステムやサービスの一部は社会インフラに大きく関わっており、運用中に大規模な障害が発生した場合、ブランドイメージの低下や損害賠償請求等に発展し、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。