JTP 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

JTP 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

JTPは、海外ICT・医療機器メーカーの日本市場参入支援や技術サービスを展開する東証スタンダード上場企業です。DXやAI関連のソリューション事業が伸長し、直近決算では売上高92億円、経常利益8億円と増収増益を達成。ROE16.2%と高い資本効率も特徴です。


※本記事は、JTP株式会社 の有価証券報告書(第38期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. JTPってどんな会社?


海外の有力なICT・医療機器メーカーの日本進出を技術面で支える「イネイブラー」として独自の地位を築く企業です。

(1) 会社概要


1987年に日本サードパーティとして設立され、海外ハイテク機器の技術支援を開始しました。2006年にJASDAQへ上場し、2017年にはAIサービス「Third AI」の提供を開始するなど事業領域を拡大。2021年に現在のJTPへ商号変更し、2022年の市場再編に伴い東証スタンダード市場へ移行しました。

同社の従業員数は単体で462名です。筆頭株主は社長の森豊氏で、第2位は資本業務提携先である双日テックイノベーション、第3位は光通信となっています。

氏名 持株比率
森 豊 8.65%
双日テックイノベーション株式会社 8.27%
光通信株式会社 5.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は森豊氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
森 豊 代表取締役社長 2002年入社。ヘルプデスク部長、執行役員新規事業推進本部SNS推進室長などを経て、2014年より現職。
為田 光昭 取締役副社長ソリューション事業本部長 1994年入社。取締役新規事業開発本部長、取締役デジタルトランスフォーメーション事業本部長などを経て、2022年より現職。
伊達 仁 常務取締役コーポレート本部長 1997年入社。総務部マネージャ、取締役管理本部長などを経て、2022年より現職。
長谷川 慎也 取締役ICT事業本部長 1999年入社。ICTプラットフォームソリューション部長、執行役員システムエンジニアリング事業部長などを経て、2022年より現職。
木村 裕之 取締役監査等委員 元株式会社シマンテック代表取締役社長。2013年同社顧問、常勤監査役を経て、2020年より現職。


社外取締役は、吉田雅彦(元日本HPファイナンシャルサービス社長)、井出隆(公認会計士)、竹内洋平(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルイノベーション事業」「ICT事業」「ライフサイエンス事業」および「その他」事業を展開しています。

デジタルイノベーション事業

AI技術を活用したソリューションや、IT技術者向け教育プラットフォーム「Learning Booster」、企業向けの内部脅威対策セキュリティサービスなどを提供しています。顧客はDXを推進する一般企業やITエンジニアを抱える企業です。

収益は、教育サービスの受講料やプラットフォーム利用料、セキュリティ製品のライセンス・保守料、AI開発の対価として顧客企業から受け取ります。運営は主にJTPが行っています。

ICT事業

ICTシステムの設計・構築から運用・保守までを一貫して提供するインフラ支援サービスです。クラウド環境の構築やガバメントクラウド支援なども手掛け、通信キャリアやSIer、官公庁などが主な顧客です。

収益は、システム構築のプロジェクト報酬や、運用・保守業務の委託料として顧客企業から受け取ります。運営は主にJTPが行っています。

ライフサイエンス事業

海外製の医療機器や化学分析装置などの保守サービス、および医療機器メーカー向けの日本市場参入コンサルティングを提供しています。また、ライフサイエンス分野向けのICTサービスも展開しています。

収益は、機器の設置・点検・修理などの技術サービス料やコンサルティングフィーとして、医療機器メーカー等から受け取ります。運営は主にJTPが行っています。

その他事業

上記セグメントに含まれない事業として、インド支店での業務や海外プロジェクト案件、グローバル人材紹介サービスなどを展開しています。

収益は、海外関連業務の対価や人材紹介手数料として顧客から受け取ります。運営は主にJTPが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実な右肩上がりを続けており、直近では90億円台に達しています。利益面でも拡大傾向にあり、経常利益、当期純利益ともに過去最高水準を更新しています。特に直近の利益率は改善傾向にあり、増収効果と高付加価値サービスへのシフトが進んでいることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 63.1億円 70.4億円 73.8億円 81.2億円 92.1億円
経常利益 3.8億円 4.7億円 4.8億円 6.7億円 8.3億円
利益率 6.1% 6.7% 6.5% 8.2% 9.0%
当期純利益(親会社所有者帰属) 2.7億円 2.5億円 3.1億円 4.8億円 5.6億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率も改善しており、収益性が高まっています。営業利益率は前期からさらに上昇し、効率的な事業運営が行われていることが示されています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 81.2億円 92.1億円
売上総利益 15.3億円 18.7億円
売上総利益率(%) 18.9% 20.3%
営業利益 6.3億円 8.2億円
営業利益率(%) 7.8% 8.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が3.4億円(構成比32%)、支払手数料が2.2億円(同21%)を占めています。売上原価においては、労務費が30億円(売上原価の41%)、経費(主に外注費)が36億円(同49%)を占めており、エンジニア人件費と外注費が主なコスト要因です。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収を達成しています。特にデジタルイノベーション事業は24%増と高い成長率を示しました。主力であるICT事業も売上・利益ともに伸長し、全社の利益拡大を牽引しています。ライフサイエンス事業も堅調に推移し、安定した収益基盤となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
デジタルイノベーション事業 18.0億円 22.4億円 1.5億円 1.8億円 8.0%
ICT事業 45.3億円 50.2億円 9.2億円 12.3億円 24.6%
ライフサイエンス事業 17.7億円 19.2億円 2.7億円 2.8億円 14.5%
その他 0.2億円 0.3億円 -0.1億円 -0.0億円 -11.8%
調整額 - - -6.9億円 -8.7億円 -
連結(合計) 81.2億円 92.1億円 6.3億円 8.2億円 8.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動でしっかりと現金を稼ぎ出し、その範囲内で投資を行い、余剰資金で配当等の財務活動を行っている「健全型」のキャッシュ・フローです。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5.5億円 7.8億円
投資CF -1.0億円 -0.7億円
財務CF -1.5億円 -2.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「開かれた市場の形成と世界の格差是正を実現する」をパーパス(存在意義)としています。技術革新の果実が広く等しく享受されるよう、経済格差や保護主義による不均衡を是正し、競争力ある市場形成を通じて国際社会に貢献することを目指しています。また、「Connect to the Future」をミッションとし、顧客の未来を技術で繋ぐことで日本の国際的地位向上を図っています。

(2) 企業文化


「JTP Value」として、「オープンマインド」「パッション」「プロアクティブ」「コラボレーション」「ありがとう」「+αもうひと知恵」の6つを行動指針として定めています。全役職員が高い倫理観と使命感を持ち、法令遵守はもちろんのこと、多様性を尊重し合いながらイノベーションと新しい価値創造を実現する風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


第2次中期経営計画において、2027年3月期に向けた定量目標を掲げています。また、ROE(自己資本利益率)を営業利益と並ぶ重要指標と位置づけ、中長期的に高い資本効率の維持を目指しています。

* 売上高:92~100億円
* 営業利益:7.1~10億円
* ROE:15%以上の水準維持

(4) 成長戦略と重点施策


「業界随一のイネイブラー」を目指し、ビジネス形態を知恵集約型へ転換する方針です。具体的には、AI関連サービスによる「DX」、内部脅威対策を強化する「セキュリティ」、ICTを活用した「ライフサイエンス」、DXプラットフォーム支援を行う「次世代システム運用」の4分野に注力し、顧客のDX加速と事業変革を支援します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本を成長のための最重要資本と位置づけています。エンジニアマインドと課題解決力を持つ「イネイブラー人財」の育成に注力し、多様な専門性に応じた育成体系やコミュニティ学習を推進しています。第2次中期経営計画期間中には、採用と育成に総額2.5億円の投資を見込んでおり、多様な人材が活躍できる環境整備とエンゲージメント向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 36.2歳 10.4年 6,068,492円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 18.2%
男性労働者の育児休業取得率 60.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 90.7%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 93.0%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 94.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者に占める外国籍労働者の割合(10.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変化に関するリスク

情報サービス業界は競争が激化しており、顧客企業のIT投資ニーズの急変や価格競争の激化が経営成績に影響を与える可能性があります。また、顧客のIT投資は経済環境の影響を受けやすく、景気動向によって受注規模や時期が変動するリスクがあります。

(2) 情報セキュリティに関するリスク

業務上、個人情報や機密情報を取り扱うため、サイバー攻撃等による情報漏洩が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償により経営に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は専門組織の設置や認証取得、教育を通じて対策を強化しています。

(3) 人材の確保に関するリスク

IT業界は売り手市場であり、優秀な人材の獲得競争が激しい状況です。同社は学歴や国籍等にとらわれない採用を行っていますが、必要な資質を持つ人材を十分に確保できない場合、事業展開や経営成績に支障が出る可能性があります。

(4) システム運用に関するリスク

社会インフラに関わるシステムやサービスを提供しているため、運用中の障害発生時には賠償責任やブランドイメージの低下を招く恐れがあります。これは同社の経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。