※本記事は、株式会社MIXI の有価証券報告書(第26期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. MIXIってどんな会社?
SNS「mixi」やスマホゲーム「モンスターストライク」等、コミュニケーションサービスを提供するIT企業です。
■(1) 会社概要
1999年に有限会社イー・マーキュリーとして設立され、求人サイト「Find Job !」を開始しました。2004年にSNS「mixi」の運営を開始し、2006年に東証マザーズへ上場しました。2013年には「モンスターストライク」を提供開始し、急成長を遂げました。2022年に株式会社MIXIへ商号変更し、現在に至ります。
連結従業員数は1,717名、単体では1,259名です。筆頭株主は創業者の笠原健治氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。創業者が半数近くの株式を保有しており、強力なオーナーシップのもとで経営が行われています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 笠原 健治 | 47.99% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 9.30% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 2.63% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長上級執行役員は木村弘毅氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 木村 弘毅 | 代表取締役社長上級執行役員 | 2008年同社入社。モンストスタジオ本部長、エックスフラッグスタジオ本部長などを経て、2018年6月より現職。 |
| 島村 恒平 | 取締役上級執行役員 | 2016年同社入社。経営企画本部本部長、執行役員経営推進本部本部長などを歴任し、2025年6月より現職。 |
| 村瀨 龍馬 | 取締役上級執行役員 | 2005年同社入社。XFLAG開発本部本部長、執行役員などを経て、2019年6月より現職。 |
| 笠原 健治 | 取締役ファウンダー上級執行役員Vantageスタジオ本部長 | 1999年同社設立、代表取締役社長。2013年取締役会長を経て、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、藤田明久(元ぐるなび代表取締役副社長)、渡瀬ひろみ(株式会社アーレア代表取締役)、河合俊明(元TBSホールディングス代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「デジタルエンターテインメント事業」、「スポーツ事業」、「ライフスタイル事業」、「投資事業」を展開しています。
■(1) デジタルエンターテインメント事業
スマートデバイス向けゲーム「モンスターストライク」を中心としたゲームの提供等を行っています。一般ユーザーを主な顧客としています。
主にユーザーからの有料サービス利用料を収益源としています。運営は主にMIXIが行っています。
■(2) スポーツ事業
プロスポーツチーム経営やソーシャルベッティングサービスの提供を行っています。主な顧客はスポーツファンや公営競技利用者です。
主に興行収入及び車券等販売委託料を収益源としています。運営は株式会社千葉ジェッツふなばし、東京フットボールクラブ株式会社、株式会社チャリ・ロト、株式会社ネットドリーマーズ等が行っています。
■(3) ライフスタイル事業
写真・動画共有アプリ「家族アルバム みてね」、サロンスタッフ直接予約アプリ「minimo」、SNS「mixi」等のサービス運営を行っています。一般ユーザーを主な顧客としています。
ユーザーからの有料サービス利用料及び企業側からの広告料を収益源としています。運営は主にMIXIが行っています。
■(4) 投資事業
スタートアップやベンチャーキャピタルへの出資を行っています。
投資先企業からの配当等を収益源としています。運営はMIXIおよび連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は第23期以降増加傾向にあり、当期は1,548億円に達しました。利益面では変動が見られますが、当期は経常利益が大きく伸長し、利益率も17.1%と高い水準を記録しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,193億円 | 1,220億円 | 1,469億円 | 1,469億円 | 1,548億円 |
| 経常利益 | 230億円 | 176億円 | 183億円 | 157億円 | 265億円 |
| 利益率(%) | 19.3% | 14.4% | 12.4% | 10.7% | 17.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 163億円 | 83億円 | 75億円 | 73億円 | 161億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は約70%と高い収益性を維持しています。営業利益は前期から大幅に増加し、営業利益率も改善しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,469億円 | 1,548億円 |
| 売上総利益 | 1,026億円 | 1,060億円 |
| 売上総利益率(%) | 69.9% | 68.5% |
| 営業利益 | 192億円 | 266億円 |
| 営業利益率(%) | 13.1% | 17.2% |
販売費及び一般管理費のうち、決済手数料が268億円(構成比34%)、広告宣伝費が177億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である「デジタルエンターテインメント事業」は、「モンスターストライク」において前年の10周年施策の反動によりMAU(月間アクティブユーザー数)が減少し減収となったものの、コスト削減効果等により増益となりました。
「スポーツ事業」は、ベッティングサービス「TIPSTAR」や「チャリ・ロト」の販売増、観戦事業(FC東京、千葉ジェッツ)の好調により大幅な増収増益となりました。
「ライフスタイル事業」は「家族アルバム みてね」の注力商材が好調で増収となり、投資を継続しつつもセグメント損失は縮小しました。「投資事業」は保有株式(タイミー等)の売却やファンド損益の取込みにより、大幅な増収増益を記録しています。
| 項目 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| デジタルエンターテインメント事業 | 988億円 | 941億円 | 385億円 | 443億円 | 47.1% |
| スポーツ事業 | 329億円 | 402億円 | -1億円 | 20億円 | 5.0% |
| ライフスタイル事業 | 134億円 | 148億円 | -7億円 | -1億円 | -0.9% |
| 投資事業 | 15億円 | 57億円 | 1億円 | 20億円 | 34.8% |
| 連結(合計) | 1,469億円 | 1,548億円 | 235億円 | 317億円 | 20.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「健全型」です。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 92億円 | 275億円 |
| 投資CF | -69億円 | -145億円 |
| 財務CF | -157億円 | -104億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.4%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、『豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。』をパーパスと定め、『「心もつながる」場と機会の創造。』をミッションに掲げています。SNSやゲームで培ったノウハウと最新テクノロジーを活用し、サステナブルな収益基盤の構築を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は意思決定の軸として「ユーザーサプライズファースト」を掲げ、行動指針(VALUES)として「発明」「夢中」「誠実」を定めています。これらに基づき、コミュニケーションを軸とした多角的な事業運営を行っています。
■(3) 経営計画・目標
より高い成長性と利益の創出を目指す観点から、経営指標においては売上高及びEBITDAの向上を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
デジタルエンターテインメント事業の収益規模を維持拡大しつつ、スポーツ事業やライフスタイル事業において新たな収益の柱を創出し、サステナブルな収益基盤を構築することを目指しています。
* デジタルエンターテインメント事業:「モンスターストライク」の強化およびインド市場へのリリース準備。
* スポーツ事業:「TIPSTAR」の差別化、子会社間のシナジー創出、豪州ベッティング市場でのシェア獲得。
* ライフスタイル事業:「家族アルバムみてね」の経済圏拡大、「minimo」の成長、新SNS「mixi2」の育成。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」というパーパス実現のため、人的資本を重視しています。「PMWVの浸透」と「組織能力の発揮」を人材戦略の柱とし、経営人材の育成(サクセッションプラン)、事業キーパーソンの戦略的配置、MIXIらしいサービス創出のための共通言語化(MCS)に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 37.4歳 | 5.8年 | 7,918,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.8% |
| 男性育児休業取得率 | 52.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 85.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員全体に占める女性比率(33.0%)、中途社員比率(87.1%)、外国人比率(3.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) モバイル市場の変動
国内モバイル市場の成長率は逓減傾向にありますが、技術革新や法的規制、通信事業者の動向等により急激な変動が生じる可能性があります。市場の発展が阻害されたり想定する成長が実現しなかった場合、同社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競合との競争激化
スマートデバイス向けサービスは参入障壁が低く、国内外の企業との競争が激しい状況にあります。資本力や開発力等で勝る競合他社との競争激化や、代替サービスの台頭によりユーザーの可処分時間を奪い合うことになった場合、同社サービスの需要が減少し、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 特定タイトルへの依存
デジタルエンターテインメント事業における収益の大半を「モンスターストライク」の課金売上に依存しています。ユーザーの嗜好変化や競合タイトルの台頭等により同タイトルの競争力が低下した場合、ユーザー数や課金利用の減少につながり、同社グループの事業や業績に大きな影響を与える可能性があります。
■(4) プラットフォーム運営事業者への依存
スマートデバイス向けゲーム等はApple Inc.やGoogle Inc.等のプラットフォームを介して提供されており、これら事業者に依存しています。契約継続が困難になった場合や手数料等の運営方針が変更された場合、収益の大部分を依存しているため、同社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。