※本記事は、MIXIの有価証券報告書(第27期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. MIXIってどんな会社?
MIXIは、モンスターストライクをはじめとするエンタメ事業やスポーツ・ライフスタイル事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1999年6月にWeb系求人情報サイトの運営を目的に有限会社イー・マーキュリーとして設立されました。2004年にSNS「mixi」の運営を開始し、2006年に現社名へ変更するとともに東証マザーズへ上場しています。2013年にはスマートデバイス向けゲーム「モンスターストライク」の提供を開始し、その後もスポーツチームの運営会社を子会社化するなど事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で2,116名、単体で1,316名となっています。大株主については、筆頭株主は創業者の笠原健治氏で、第2位は資産管理業務等を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は日本カストディ銀行(信託口)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 笠原 健治 | 49.95% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.16% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 2.48% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長は木村弘毅氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 木村 弘毅 | 代表取締役社長上級執行役員 | 2003年モバイルプロダクション入社、2005年インデックスを経て2008年同社入社。モンストスタジオプロデューサー等を歴任し2015年取締役就任。2018年より代表取締役社長、2022年より現職。 |
| 島村 恒平 | 取締役上級執行役員 | 2004年USEN入社。日本アイ・ビー・エム、グリーを経て2016年同社入社。経営推進本部経営企画室室長、経営企画本部本部長を歴任し、2020年執行役員に就任。2025年より現職。 |
| 村瀨 龍馬 | 取締役上級執行役員 | 2005年イー・マーキュリー(現同社)入社。KH2O取締役、キュー・ゲームスを経て2013年同社再入社。XFLAG開発本部本部長等を歴任し2019年取締役就任。2022年より現職。 |
| 笠原 健治 | 取締役ファウンダー上級執行役員Vantageスタジオ本部長 | 1999年イー・マーキュリー(現同社)設立、取締役に就任。2000年代表取締役社長。2013年取締役会長を経て2016年Vantageスタジオ本部長に就任。2022年より現職。 |
社外取締役は、藤田明久(元ディーツーコミュニケーションズ社長)、渡瀬ひろみ(元ぱど社長)、河合俊明(元TBSホールディングス社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「デジタルエンターテインメント事業」、「スポーツ事業」、「ライフスタイル事業」および「投資事業」を展開しています。
■(1) デジタルエンターテインメント事業
同事業では、スマートデバイス向けゲームを中心としたサービスの提供を行っています。主力タイトルとして「モンスターストライク」を展開し、企画やマーケティング、メディアミックス施策などを通じてユーザー利用の拡大に注力しているほか、海外市場向けにもグローバル版タイトルの展開を図っています。
収益源は、主にユーザーからの有料サービス(ゲーム内アイテム等)の利用料です。同事業の運営は主に親会社であるMIXIが行っています。
■(2) スポーツ事業
同事業では、プロスポーツチーム経営や国内外のソーシャルベッティングサービスの提供を行っています。競輪・オートレース車券のオンライン投票サイト「チャリロト」やスポーツベッティングサービス「TIPSTAR」のほか、プロスポーツチーム「千葉ジェッツふなばし」や「FC東京」の運営も手がけています。
収益源は、主にユーザーからの車券等販売委託料およびプロスポーツ事業における興行収入や広告料収入です。運営は同社ならびにチャリ・ロト、ネットドリーマーズ、千葉ジェッツふなばし、東京フットボールクラブなどの子会社が行っています。
■(3) ライフスタイル事業
同事業では、インターネットを活用した人々の生活に密着したサービスの運営を行っています。家族向け写真・動画共有アプリ「家族アルバム みてね」、サロンスタッフ直接予約アプリ「minimo」、SNS「mixi」などの各種コミュニケーションサービスを提供しています。
収益源は、ユーザーからの有料サービス利用料(月額制サービスや物品販売等)および企業側からの広告料です。同事業の運営は主に親会社であるMIXIが担っています。
■(4) 投資事業
同事業では、スタートアップ企業やベンチャーキャピタルへの出資を行っています。グループの事業ポートフォリオ拡大やシナジー創出を目的とした戦略的な投資を実施し、中長期的な収益基盤の構築を目指しています。
収益源は、出資先のスタートアップ企業や投資先ファンドからの配当金・分配金収入、および投資先企業からの利益等です。同事業の運営は主に親会社であるMIXIが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、主力ゲームの安定的な推移に加え、スポーツ事業におけるM&A効果やライフスタイル事業の成長などにより、売上高は一貫して増加傾向にあります。利益面については、成長領域への先行投資等により一時的に減少した時期もありましたが、直近では高水準を維持しており、全体として安定した収益性を確保しながら事業の多角化を進めています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1220億円 | 1469億円 | 1469億円 | 1548億円 | 1714億円 |
| 経常利益 | 176億円 | 183億円 | 157億円 | 265億円 | 247億円 |
| 利益率(%) | 14.4% | 12.4% | 10.7% | 17.1% | 14.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 83億円 | 75億円 | 73億円 | 161億円 | 167億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しているものの、営業利益は減少しています。これは国内外での事業拡大に伴う一時的な広告宣伝費の増加や、M&Aに関連する費用の発生、さらには成長領域に対する積極的な先行投資による影響と考えられます。売上総利益率は高い水準を保っており、基礎的な収益力は堅調に推移しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1548億円 | 1714億円 |
| 売上総利益 | 1060億円 | 1136億円 |
| 売上総利益率(%) | 68.5% | 66.3% |
| 営業利益 | 266億円 | 223億円 |
| 営業利益率(%) | 17.2% | 13.0% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が274億円(構成比30.0%)、決済手数料が184億円(同20.1%)、給与手当が100億円(同10.9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力であるデジタルエンターテインメント事業はユーザー利用動向の変化等により減収となりましたが、スポーツ事業では豪州やカナダで展開する企業の子会社化や既存サービスの伸長により大幅な増収を達成しました。また、ライフスタイル事業においても主力アプリの注力領域が好調に推移し増収となるなど、エンタメ事業への依存を脱し収益源の多角化が着実に進んでいます。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| デジタルエンターテインメント事業 | 941億円 | 839億円 |
| スポーツ事業 | 402億円 | 658億円 |
| ライフスタイル事業 | 148億円 | 172億円 |
| 投資事業 | 57億円 | 44億円 |
| 調整額 | 0.1億円 | 0.3億円 |
| 連結(合計) | 1548億円 | 1714億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.7%となっており、いずれもプライム市場の平均を上回っています。同社のキャッシュ・フローは、営業活動で安定的に資金を獲得しつつ、借入等の資金調達を組み合わせながら将来の成長に向けた積極的な投資を継続する「積極型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 275億円 | 193億円 |
| 投資CF | -145億円 | -316億円 |
| 財務CF | -104億円 | 142億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、『豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。』をパーパス(存在意義)と定め、『「心もつながる」場と機会の創造。』をミッションに掲げています。SNSやゲーム事業で培ってきたコミュニケーションサービスのノウハウと、AIなどの最新テクノロジーを活用することで、社会に貢献するサービスを生み出し続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、企業理念として、意思決定の軸となる「MIXI WAY(ユーザーサプライズファースト)」と、社員一人ひとりが体現すべきバリュー(行動指針)である「発明」「夢中」「誠実」を重視しています。これらを土台として、互いを尊重しながら高い目標にコミットするチームづくりや、多様な個性が活躍できる組織文化の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、より高い成長性と利益の創出を目指す観点から、目標とする経営指標として「売上高」および「EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)」の向上を掲げています。既存の主力事業における収益規模を維持・拡大しながら、新たな領域での収益の柱を創出し、サステナブルな収益基盤を確立することを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向け、デジタルエンターテインメント事業の収益規模を維持・拡大しつつ、スポーツ事業やライフスタイル事業で第二、第三の収益の柱となる事業の創出に取り組みます。国内ゲームのメディアミックス施策の強化や、新興国市場へのグローバル版タイトルの展開を進めるほか、スポーツ事業ではM&Aで取得した海外ブランドと自社のノウハウを掛け合わせ、市場トッププレイヤーを目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「心もつながるコミュニケーションサービスを複数創出し続ける会社」を目指し、人的資本を最も重視すべき資本の一つと位置付けています。「発明・夢中・誠実を体現する個」と「共に価値を創り続けるチーム」を育てることを人材ポリシーに掲げ、特に「次世代経営者候補」と「新規事業創出プロデューサー」の獲得・育成に重点的に投資しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.1歳 | 6.2年 | 8,470,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.7% |
| 男性育児休業取得率 | 52.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 76.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 79.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(33.4%)、グループ全体の女性社員比率(30.8%)、グループ全体の女性管理職比率(18.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) モバイル関連市場の競争激化
同社が事業を展開するスマートデバイスを通じた各種サービスは、参入障壁が低く、国内外の多くの企業との競争が激しい状況にあります。家庭用ゲーム機や動画共有サイトなど、ユーザーの余暇を奪い合う間接的な競合サービスも多岐にわたるため、競争力の維持や新規サービスの開発、プロモーションのためのコスト負担が増加し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定タイトルへの収益依存とユーザー嗜好の変化
デジタルエンターテインメント事業における収益の多くは特定の主力ゲームタイトルに依存しています。ユーザーの嗜好の移り変わりは激しく、新機能の追加や定期的なイベントの開催等の対策が功を奏さなかった場合や、競合他社がより魅力的なタイトルを市場に投入した場合、ユーザー数や課金利用の減少につながり、同社の収益基盤に重大な影響を与えるリスクがあります。
■(3) プラットフォーム事業者へのシステム・集客依存
スマートデバイス向けサービスは、主にAppleやGoogleといったプラットフォーム運営事業者を介して提供されています。システム利用やユーザー獲得の面でこれらの事業者に実質的に依存しているため、プラットフォーム側の運営方針の変更や手数料率の改定、あるいは何らかの理由で契約の継続が困難となった場合には、事業展開に大きな制約が生じる可能性があります。
■(4) 海外展開やM&Aに伴う事業統合・減損リスク
同社は事業規模の拡大と収益源の多様化を目指し、海外市場の開拓やM&Aを積極的に推進しています。しかし、各国の法令や文化の違いに適応できない場合や、被買収企業との融合が予定通り進まず想定したシナジーが得られない場合には、多額の投資に見合ったリターンを回収できない可能性があります。また、企業買収に伴い計上したのれんについて、将来的に減損損失が発生するリスクを抱えています。



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