日本M&Aセンターホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本M&Aセンターホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場するM&A仲介のリーディングカンパニーです。中堅中小企業の事業承継や成長支援を目的に、M&A仲介事業を主力として展開しています。直近の連結業績は、成約件数は減少したものの大型案件の増加により単価が上昇し、売上高は横ばいながら経常利益は増益となりました。


※本記事は、株式会社日本M&Aセンターホールディングス の有価証券報告書(第34期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本M&Aセンターホールディングスってどんな会社?


中堅中小企業のM&A仲介における最大手企業です。全国の会計事務所や金融機関とネットワークを構築しています。

(1) 会社概要


1991年に公認会計士・税理士が中心となり設立されました。2006年に東証マザーズ市場へ上場し、翌2007年には東証一部へ市場変更を果たしています。2016年には企業評価を行う子会社を設立するなど周辺分野へも進出しました。2021年に純粋持株会社体制へ移行し、現商号に変更しています。

同社の連結従業員数は1,086名、単体では従業員なし(子会社従業員が兼務)の体制をとっています。筆頭株主は信託銀行ですが、第3位に創業者の三宅卓氏が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.83%
日本カストディ銀行(信託口) 7.85%
三宅 卓 6.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名(社外取締役含む)の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は三宅卓氏です。社外取締役比率は61.5%です。

氏名 役職 主な経歴
三宅 卓 代表取締役社長 1991年同社入社。取締役、常務、専務、副社長を経て2008年より社長。日本プライベートエクイティ代表取締役副社長なども歴任。2024年より日本M&Aセンター代表取締役会長を兼務。
楢木 孝麿 専務取締役 1993年同社入社。大和証券エスエムビーシーを経て2005年同社再入社。管理本部長として取締役、常務、専務、副社長を歴任。2025年4月より現職。
大槻 昌彦 専務取締役 住友銀行を経て2006年同社入社。執行役員、取締役、常務、専務を歴任。日本投資ファンド代表取締役なども兼務。2024年6月より現職。
竹内 直樹 常務取締役 2007年同社入社。事業法人部長、執行役員、取締役などを経て、2024年日本M&Aセンター代表取締役社長就任。2025年4月より現職。
武田 安央 取締役 三菱商事出身。米国、ブラジル等の海外勤務や関連会社CFOを経て2022年同社入社。CCO兼コンプライアンス統括部長などを歴任し、2025年4月よりコーポレート本部長CHRO。


社外取締役は、森時彦(元テラダイン代表取締役)、竹内美奈子(TM Future代表取締役)、錦戸景一(弁護士)、大里真理子(アークコミュニケーションズ代表取締役)、清水喬雄(元JSR取締役)、中野淳文(元ウルトラファブリックスHD社長)、山田善則(元みずほ信託銀行常勤監査役)、松永貴之(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「M&A仲介事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) M&A仲介事業


国内の中堅中小企業を対象としたM&A(企業の合併・買収)の仲介業務を行っています。後継者問題の解決や企業の成長支援を目的とし、譲渡企業と譲受企業のマッチングから成約までのプロセスを一貫して支援しています。

主な収益は、提携仲介契約締結時に受領する着手金、およびM&A成約時に受領する成功報酬です。成功報酬は時価総資産等に応じた料率で算出されます。運営は主に株式会社日本M&Aセンターが行っています。

(2) その他の事業


M&A仲介以外の周辺業務やプラットフォーム運営を行っています。具体的には、全国の会計事務所が組織する地域M&Aセンターの会員組織運営や、プロ投資家向け株式市場であるTOKYO PRO Marketへの上場支援業務などが含まれます。

会員組織からの会費収入や、上場支援に伴うコンサルティング報酬などが収益源となります。運営は株式会社日本M&Aセンター等が担い、地方創生や企業の成長戦略支援に貢献しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円台で安定的に推移していますが、成長率は鈍化傾向にあります。経常利益は150億円から170億円の間で推移しており、高い利益率を維持しています。2025年3月期は前期比で横ばいの売上高となりましたが、経常利益は微増し、当期純利益も増加しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 348億円 404億円 413億円 441億円 441億円
経常利益 155億円 169億円 155億円 165億円 169億円
利益率(%) 44.5% 41.7% 37.5% 37.4% 38.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 105億円 114億円 98億円 107億円 110億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高はほぼ横ばいですが、売上原価の減少により売上総利益が増加しています。販売費及び一般管理費も減少しており、結果として営業利益率は改善傾向にあります。高い利益率を維持しつつ、コストコントロールが進んでいることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 441億円 441億円
売上総利益 246億円 248億円
売上総利益率(%) 55.8% 56.2%
営業利益 161億円 167億円
営業利益率(%) 36.4% 37.9%


販売費及び一般管理費のうち、地代家賃が15億円(構成比19.2%)、支払手数料が16億円(同19.8%)を占めています。売上原価については、人件費等の詳細な内訳データはありません。

(3) セグメント収益


主力のM&A仲介事業は売上高が微減となりましたが、その他の事業は微増しています。M&A仲介事業では、成約件数が減少したものの、1件当たりの単価が上昇したことで売上高の減少幅が限定的となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
M&A仲介事業 427億円 427億円
その他の事業 14億円 14億円
連結(合計) 441億円 441億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローの状況は、本業で現金を稼ぎ出し、資産売却等による収入がある一方で、財務活動による支出を行っている「改善型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 105億円 131億円
投資CF -182億円 120億円
財務CF -152億円 -88億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は24.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「M&A業務を通じて企業の存続と発展に貢献する」ことを企業理念として掲げています。企業を「社会の公器」と捉え、深刻な後継者問題や先行き不安を解決し事業を存続させること、さらに相乗効果により事業を発展させ、全ステークホルダーが幸福になる友好的M&Aを実践することを社会的ミッションとしています。

(2) 企業文化


同社グループは、「正しいことを正しく」というフィロソフィー(行動規範)を重視しています。また、パーパス(存在意義)として「最高のM&Aをより身近に。」を掲げています。コンプライアンス意識の醸成と組織文化への定着を図るため、全社員に対しフィロソフィー研修を実施するなど、倫理観を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営目標の見直しを行い、最終年度である2028年3月期における連結経常利益目標を200億円としています。また、2026年3月期の業績予想として以下の数値を掲げています。

* 連結売上高:463億円
* 連結営業利益:170億円
* 連結経常利益:170億円

(4) 成長戦略と重点施策


持続的な再成長に向け、M&A成約件数の増加とコンプライアンス経営の継続を重点施策としています。具体的には、譲受候補企業の審査体制充実による安心・安全なM&Aの提供、案件マネジメント手法の標準化、ベテラン勢による案件分析の実施などを進めます。また、DX・AIの活用により生産性向上と成約率向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


優秀なコンサルタントの採用と定着、早期戦力化を重要課題としています。各種社内研修やOJTの充実に加え、管理職や中核層、若年層との定期的な面談プログラムを実施し、離職率低減に努めています。また、新人層への「2in1(ニコイチ)制度」の拡大や360度サーベイによるマネジメント層の育成強化に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与は、持株会社であり専属の従業員がいないため記載がありません(事業は連結子会社の従業員が兼務)。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 -歳 -年 -


※同社の事業は連結子会社である株式会社日本M&Aセンターの従業員が兼務しており、専属の従業員がいないため、記載はありません。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.7%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 53.1%
男女賃金差異(正規雇用) 55.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 37.3%


※数値は主要な連結子会社である株式会社日本M&Aセンターのデータです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 役員・従業員の不正によるリスク


同社グループではコンプライアンスを経営上の重要課題と位置付けていますが、万が一、役員や従業員による不正や不法行為が発生した場合、同社グループの財政状態や経営成績、社会的信用に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 情報セキュリティについて


M&A仲介業務において顧客の機密情報を扱っており、情報セキュリティマネジメントシステムの構築やISO27001認証の取得など対策を講じています。しかし、何らかの理由で機密情報が漏洩し、それが同社グループの責に帰すべきものである場合、信用失墜等により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 訴訟等に係る事項


事業遂行にあたり、法令違反の有無にかかわらず訴訟等を提起される可能性があります。これらの訴訟の結果によっては、同社グループの社会的信頼性に影響が及び、財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。