日本M&Aセンターホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本M&Aセンターホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本M&Aセンターホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場しており、中堅中小企業のM&A仲介事業や企業評価などを展開しています。直近の業績は、売上高が前期比で増加し、経常利益および当期純利益も堅調な伸びを示しており、好調な増収増益トレンドを維持しています。


※本記事は、日本M&Aセンターホールディングスの有価証券報告書(第35期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本M&Aセンターホールディングスってどんな会社?


同社は国内最大級のネットワークを活かし、中堅中小企業のM&A仲介や事業承継を支援する企業です。

(1) 会社概要


1991年に公認会計士・税理士が中心となり日本エム・アンド・エーセンターとして設立されました。2006年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場後、2021年には純粋持株会社体制へ移行しています。直近では2024年に日本サーチファンドを、2026年にファンド事業を統括するJ-Capitalを新設しました。

現在、同社グループの連結従業員数は1,062名です。主要株主については、筆頭株主および第2位の株主が資産管理業務などを行う信託銀行となっており、第3位には代表取締役社長の三宅卓氏が名を連ねています。強固な経営基盤のもと、M&Aを通じた企業の存続と発展を支援しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 18.59%
日本カストディ銀行(信託口) 9.00%
三宅 卓 6.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は三宅卓氏が務めています。社外取締役比率は38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
三宅 卓 代表取締役社長 日本オリベッティを経て同社へ入社。取締役副社長等を歴任し、2008年より代表取締役社長。日本M&Aセンター代表取締役会長やJ-Capital取締役も兼務。
楢木 孝麿 取締役副社長 大王製紙、大和証券エスエムビーシー等を経て同社に入社。管理本部長等を歴任し、2025年より現職。
大槻 昌彦 専務取締役 三井住友銀行を経て同社へ入社。営業本部長等を経て2024年より現職。日本投資ファンド代表取締役なども兼務。
竹内 直樹 専務取締役 SFCGを経て同社へ入社。営業本部長等を経て、2024年に日本M&Aセンター代表取締役社長に就任し、2025年より同社専務取締役。
武田 安央 取締役 三菱商事等を経て同社へ入社。CCO兼コンプライアンス統括部長等を経て、2025年より取締役コーポレート本部長CHRO。


社外取締役は、森時彦(チェンジ・マネジメント・コンサルティング代表取締役)、竹内美奈子(TM Future代表取締役)、錦戸景一(光和総合法律事務所代表弁護士)、清水喬雄(カカクコム顧問)、小林慎和(bajji代表取締役)、山田善則(元安田生命保険常務取締役)、松永貴之(マイル法律事務所代表弁護士)、阿部美寿穂(阿部美寿穂公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「M&A仲介事業」および「その他の事業」を展開しています。

M&A仲介事業


中堅中小企業を中心に、企業評価からマッチング、各種交渉、デューデリジェンスの調整、最終的な事業統合(PMI)まで、M&Aにおけるすべてのプロセスにおいて付加価値の高いサービスを提供しています。主に後継者問題の解決や成長戦略の実現を目的とした譲渡・譲受企業が対象顧客です。

収益は主に、譲渡企業や譲受企業と基本合意や最終契約を締結した際に受け取る着手金、中間報酬、成功報酬などから構成されています。事業運営は日本M&Aセンターをはじめ、企業評価総合研究所、日本PMIコンサルティング、日本投資ファンドなどの子会社・関連会社が行っています。

その他の事業


全国の会計事務所が運営する地域M&Aセンターの会員組織の運営や、東京証券取引所が運営するプロ投資家向け株式市場「TOKYO PRO Market」への上場支援業務を提供しています。中堅中小企業の成長や全国の地方創生に貢献しています。

収益は主に、地域M&Aセンターに加盟する会計事務所からの会費収入や、上場支援業務に伴う手数料収入などで構成されています。これらの事業運営は同社およびグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高は404億円から503億円へと順調な右肩上がりの成長を続けています。経常利益は一時的に足踏みした時期もありましたが、直近では192億円まで拡大し、利益率も30%台後半から40%前後の高い水準を安定して維持しています。当期利益についても着実な増加傾向が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 404億円 413億円 441億円 441億円 503億円
経常利益 169億円 155億円 165億円 169億円 192億円
利益率(%) 41.7% 37.4% 37.4% 38.4% 38.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 81億円 27億円 79億円 84億円 123億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の441億円から当期は503億円へと順調に拡大しました。これに伴い売上総利益も267億円から303億円へと増加しています。売上総利益率および営業利益率はともに高水準を維持しており、付加価値の高い専門的なサービス提供による強固な収益構造がうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 441億円 503億円
売上総利益 267億円 303億円
売上総利益率(%) 60.6% 60.2%
営業利益 167億円 188億円
営業利益率(%) 37.9% 37.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が22億円(構成比19%)、支払手数料が20億円(同17%)、地代家賃が16億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるM&A仲介事業の売上高が大きく成長し、全体の増収を牽引しました。その他の事業についても前年比で順調に売上を伸ばしており、各領域で事業規模の拡大が着実に進んでいることが確認できます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
M&A仲介事業 427億円 485億円
その他の事業 14億円 18億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 131億円 156億円
投資CF 120億円 -43億円
財務CF -88億円 -106億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は25.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も75.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「M&A業務を通じて企業の存続と発展に貢献する」ことを企業理念に掲げています。深刻な後継者問題を解決し、相乗効果の発揮により事業を発展させることで、譲渡側・譲受側の両当事者はもとより、従業員や取引先などステークホルダー全員が幸福になる「友好的M&A」の実践を社会的ミッションとしています。

(2) 企業文化


従来のフィロソフィーを「コアバリュー」として刷新し、コンプライアンスを最優先とした風通しの良い企業文化の醸成に努めています。役員・全社員が遵守すべきグループコンプライアンス基本指針を定め、日々の業務における倫理観の徹底や相互のコミュニケーションを通じて、信頼関係の涵養と不正防止に注力しています。

(3) 経営計画・目標


次連結会計年度から2033年3月期までを「Next Genesis ビジョン300」と位置づけ、以下の数値目標の達成を目指しています。また、業績予想を確実に達成することで持続的な成長サイクルを再構築し、投資家からの信頼回復と長期的な関係構築を図っています。

* 2027年3月期 連結売上高:528億円
* 2027年3月期 連結経常利益:193億円
* 2033年3月期 連結経常利益:300億円

(4) 成長戦略と重点施策


持続的な再成長に向け、優秀なコンサルタントの採用と育成、定着支援を最重要項目として推進しています。また、案件の質的改善を意識し、成約可能性や顧客への結果責任を重視した受託方針への転換を図っています。さらに、AIを活用した商談解析システムによるコンサルティング品質の高度化や、地域金融機関との連携を通じた地方創生プロジェクトにも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な経営資本と位置づけ、持続的競争優位を生み出す成長投資の中核として戦略を推進しています。採用では、理念や価値観への共感と高い倫理意識を重視したポテンシャル採用や、専門的知見を持つ中途採用を行っています。育成面では、基礎教育から階層別研修まで体系的に実施し、組織として再現性のある高品質なサービス提供体制を構築しています。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.3%
男性育児休業取得率 38.8%
男女賃金差異(全労働者) 53.8%
男女賃金差異(正規雇用) 55.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 31.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) M&A関連の法的規制の変更

同社グループのM&A仲介業務は現在のところ特段の許認可等の制限を受けていませんが、今後、関連する法令の制定や改廃によって新たな制限が設けられた場合や、M&A取引の促進にマイナスの影響を与える税法・会社法の改正があった場合、同社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 機密情報の漏洩リスク

M&A仲介では顧客の機密情報を取り扱うため、厳格な守秘義務が求められます。同社グループでは情報セキュリティマネジメントシステムを構築し保護に努めていますが、予期せぬ理由で機密情報が外部に漏洩し、同社グループの責任となった場合、社会的な信用の失墜を招き、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 役員および従業員の不正行為

同社グループはコンプライアンスを重視し、内部統制システムの充実と強化を図ることで不正行為の未然防止に努めています。しかしながら、万一、役員や従業員による不正や不法行為が発生した場合には、企業の信頼性が大きく損なわれ、同社グループの事業運営や財政状態に重大な影響を与える可能性があります。

(4) M&A市場の動向への依存

同社グループの事業は国内の中堅中小企業のM&A仲介事業に大きく依存しています。後継者問題を背景に市場は安定的に拡大すると分析していますが、将来的に市場が縮小へ転じた場合や、案件完了の長期化、成約率の低下などが生じた際には、成功報酬を主体とするビジネスモデルに影響が及び、業績が低下するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。