イントランス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イントランス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イントランスは東京証券取引所グロース市場に上場し、中古物件を再生する不動産事業や、宿泊施設の運営等を行うホテル運営事業を展開する企業です。直近の業績トレンドとして、両事業の売上が伸び増収となった一方、事業拡大に向けた先行投資や費用増により営業損失が継続し、収益化に向けた基盤構築の途上にあります。


※本記事は、株式会社イントランスの有価証券報告書(第28期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イントランスってどんな会社?


不動産再生事業とホテル運営事業を中心に、顧客ニーズを先取りしたトータルサービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


1998年5月に不動産の仲介およびコンサルティングを目的として設立されました。2005年にプロパティマネジメント事業を開始し、2006年に東京証券取引所マザーズに上場を果たしました。その後、2019年にイントランスホテルズアンドリゾーツを設立してホテル運営事業に参入し、新たな事業領域を開拓しています。

従業員数は連結で48名、単体で11名です。筆頭株主は事業会社のディライトワークスで、第2位は信託銀行等の常任代理人であるSCBHK A/C GF SEC CLIENT A/C 1です。

氏名 持株比率
ディライトワークス 14.32%
SCBHK A/C GF SEC CLIENT A/C 1(常任代理人 三菱UFJ銀行) 8.25%
BNP Paribas London Branch for Prime Brokerage Clearance ACC for third party(常任代理人 香港上海銀行東京支店) 3.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は何同璽氏が務めています。取締役における社外取締役の比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
何 同璽 代表取締役社長 オリエンタル・ソリューション取締役を経て、2023年6月より現職。
須藤 茂 取締役 SONEA設立等を経て、イントランスホテルズアンドリゾーツ代表取締役。2023年6月より現職。


社外取締役は、日比野健(元JTB代表取締役専務)、仇非(元福特汽車大中華区マーケティング総監)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産事業」、「ホテル運営事業」および「その他」を展開しています。

不動産事業


全国の商業ビル、オフィスビル、レジデンスなど幅広い中古物件を対象とした不動産再生事業を行っています。未利用や低稼働の不動産を取得してバリューアップを行い、投資家等へ販売するほか、売買仲介やプロパティマネジメントなどのサービスを提供しています。

収益源は不動産の売却代金や、プロパティマネジメント等の受託に伴う管理フィーなどです。当事業は、主に親会社である同社が運営を行っています。

ホテル運営事業


国内外の観光客をターゲットとしたインバウンド送客の受け皿として、国内において宿泊施設を展開しています。マスターリース方式による施設の運営、マネジメントコントラクト方式による運営受託、そして宿泊施設に対する運営コンサルティングなどを手掛けています。

収益源は宿泊者からの宿泊代金や飲食代金、業務委託者からのコンサルティング報酬などです。当事業の運営は、主にイントランスホテルズアンドリゾーツなどの子会社が行っています。

その他


インバウンド送客事業やホテル投資ファンドの企画を行っていましたが、一部子会社の解散を決議し、今後は外部連携により推進する方針です。

収益は限定的であり、運営は主にジャパンホテルインベストメントやホスピタリティインベストメント合同会社などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は年度により大きく変動しており、特定の大型物件売却の有無などが影響していると推測されます。また、新規事業への投資や先行費用等の負担により経常損失が続いており、事業基盤の確立を通じた安定的な黒字化が課題となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 24.0億円 6.0億円 12.9億円 8.3億円 10.7億円
経常利益 2.0億円 -4.7億円 -1.6億円 -4.3億円 -5.0億円
利益率(%) 8.3% -78.7% -12.6% -52.0% -46.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.5億円 -4.9億円 -1.4億円 -4.3億円 -5.0億円

(2) 損益計算書


売上高は増加したものの、事業拡大に伴う売上原価や販売費及び一般管理費も増加し、営業損失が拡大しました。ホテル運営事業の基盤確立に向けた各種投資や関連費用が増加傾向にあり、利益面での改善が今後の焦点となります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 8.3億円 10.7億円
売上総利益 6.4億円 7.6億円
売上総利益率(%) 77.2% 70.6%
営業利益 -3.5億円 -4.2億円
営業利益率(%) -42.7% -38.8%


販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が3.4億円(構成比29%)、給料手当が2.0億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


不動産事業は宿泊施設の転売などが寄与し増収となりました。ホテル運営事業も増収でしたが、新規開発に向けた先行費用等により営業損失が継続しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
不動産事業 2.4億円 3.8億円
ホテル運営事業 5.8億円 6.9億円
その他 0.0億円 0.0億円
連結(合計) 8.3億円 10.7億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -3.9億円 -5.0億円
投資CF -2.4億円 -0.7億円
財務CF 2.8億円 15.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-110.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は9.4%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、ホテル運営事業、不動産事業、インバウンド関連事業を融合することで収益を拡大し、企業価値を向上させることを基本方針としています。また、送客(旅マエ)、接客(旅ナカ)、越境消費と投資活動支援(旅アト)のすべてを事業領域としたインバウンドサイクルを展開することを掲げています。

(2) 企業文化


国籍、宗教、年齢、性別に関係なく多様な人材が活躍できる環境や仕組みを整備し、専門性や経験、感性、価値観の異なる人材を積極的に取り込むことを重視しています。多様な人材が意欲をもって活躍する活力ある組織の構築を目指し、働きやすい環境とコミュニケーションを重視する文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、不動産事業を安定収益とし、ホテル運営事業とインバウンド関連事業において高い成長を目指しています。現在はホテル運営事業の基盤確立に向けた投資段階にあり、ホテル運営事業および不動産事業を含めたインバウンド関連事業における売上および利益の拡大を経営指標として定めています。

(4) 成長戦略と重点施策


都市型アパートメントホテル開発と地方創生ホテル投資の推進によるホテル運営収益の拡大を基本戦略としています。不動産事業では高収益が期待できる宿泊施設の転売や戸建宿泊施設の開発に注力し、ホテル運営事業ではホテルの運営権確保やコンサルティング案件の取得を推進し、事業規模の拡大と早期の収益化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


競争力の源泉は人材であるとし、国籍や性別を問わず多様な人材を確保しています。獲得した人材に必要なスキルを身につけさせ、能力を最大化させるため、職位や職能ごとに求められる専門知識の習得や、従業員一人ひとりの自律的なキャリア構築を支援する教育を継続的に実施しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.7歳 6.2年 6,665,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 定期建物賃貸借契約に関するリスク


ホテル運営事業において、ホテル施設の定期建物賃貸借契約を締結し自社で運営していますが、長期契約が一般的であり、運営が予定どおりに進まない場合でも期間満了まで解約できず、継続的に賃料が発生することで業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 有利子負債への依存と資金繰りリスク


不動産取得時に仕入価格相当額を主に金融機関からの借入れで調達するため、総資産に対する有利子負債への依存度が高くなる傾向があります。金利上昇による調達コストの増加や、販売用不動産の売却が難航した場合の資金繰り悪化がリスクとなります。

(3) 法的規制・免許の取消リスク


宅地建物取引業法に基づく免許や、金融商品取引法に基づく金融商品取引業者としての登録を受けて事業を展開しています。何らかの理由でこれらの免許や登録が取り消されたり、更新が認められなかった場合、事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。