イントランス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イントランス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。不動産再生や開発、管理を行う不動産事業と、宿泊施設運営等のホテル運営事業を展開。当期は不動産販売の減少等により減収となり、営業損失、経常損失、当期純損失を計上し、赤字幅が拡大しました。


※本記事は、株式会社イントランス の有価証券報告書(第27期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イントランスってどんな会社?


不動産再生事業とホテル運営事業を柱とし、インバウンド需要を取り込んだ事業展開を行う企業です。

(1) 会社概要


1998年に不動産仲介等を目的として設立され、2006年に東証マザーズへ上場しました。2014年に大多喜ハーブガーデンを子会社化しましたが、2023年に譲渡しています。2019年には中国上海に現地法人を設立し、同年国内にてホテル運営子会社を設立するなど、インバウンド・ホテル事業へ本格参入しました。

連結従業員数は47名、単体では15名です。筆頭株主は合同会社インバウンドインベストメントで、第2位は資本業務提携先のディライトワークス、第3位は証券金融会社となっています。筆頭株主は同社代表取締役社長が職務執行者を務める法人です。

氏名 持株比率
合同会社インバウンドインベストメント 16.27%
ディライトワークス 14.32%
日本証券金融 9.42%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は何同璽氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
何 同璽 代表取締役社長 ETモバイルジャパン代表取締役などを経て、2019年より同社取締役。グループ会社の代表等を歴任し、2023年6月より現職。
須藤 茂 取締役 エスペシア代表取締役などを経て、2019年より同社子会社代表取締役。2023年6月より現職。


社外取締役は、日比野健(元JTB代表取締役専務)、仇非(正知資本CEO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産事業」「ホテル運営事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 不動産事業


中古の商業ビルやオフィスビル、レジデンス等を取得し、バリューアップを行って再販する不動産再生事業を中心に展開しています。また、不動産の売買仲介、開発販売、アセットマネジメント、プロパティマネジメントなどのサービスも提供しています。

収益は、投資家や事業法人、不動産ファンド等への物件売却収入や、仲介手数料、管理受託手数料等から構成されます。運営は主にイントランスが行っています。

(2) ホテル運営事業


国内外の観光客をターゲットとし、インバウンド送客の受け皿となる宿泊施設の運営を行っています。マスターリース方式による運営や、マネジメントコントラクト方式による運営受託、運営コンサルティングなどを手掛けています。

収益は、宿泊施設利用者からの宿泊料や、施設オーナーからの運営受託報酬、コンサルティングフィー等です。運営は、株式会社イントランスホテルズアンドリゾーツ、YUMIHA沖縄合同会社、京都ホテルオペレーションズ合同会社等が担っています。

(3) その他事業


インバウンド送客事業およびホテル投資ファンドの企画を行っています。中国等の海外からの観光客を国内宿泊施設へ送客するほか、ホテル投資に関するファンド組成等を目指しています。

収益は送客手数料等が主となります。運営は、瀛創(上海)商務咨洵有限公司、ジャパンホテルインベストメント株式会社等が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は年度によって大きく変動しており、特に当期は前期比で大幅な減収となりました。利益面では、第24期を除き経常損失および当期純損失が続いており、当期は赤字幅が拡大しています。厳しい経営状況が継続しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 12億円 24億円 6億円 13億円 8億円
経常利益 -10億円 2億円 -5億円 -2億円 -4億円
利益率(%) -82.1% 8.3% -78.7% -12.6% -52.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -10億円 1億円 -5億円 -2億円 -4億円

(2) 損益計算書


売上高は大幅に減少しましたが、売上原価の減少により一定の売上総利益を確保しています。しかし、販売費及び一般管理費が売上総利益を大きく上回っており、営業損失が拡大しました。営業外費用としてデリバティブ評価損等を計上したこともあり、経常損失も拡大しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 13億円 8億円
売上総利益 8億円 6億円
売上総利益率(%) 60.1% 77.2%
営業利益 -2億円 -4億円
営業利益率(%) -11.9% -42.7%


販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が2.7億円(構成比28%)、給料手当が1.9億円(同19%)、賃借料が1.6億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


不動産事業は販売用不動産の売却が進まず大幅な減収となり、セグメント利益も大きく減少しました。ホテル運営事業は増収となったものの、赤字が継続しています。その他事業も収益化には至っていません。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
不動産事業 7.4億円 2.4億円
ホテル運営事業 4.5億円 5.8億円
その他 0億円 0.0億円
連結(合計) 13億円 8億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3億円 -4億円
投資CF 0.3億円 -2億円
財務CF 1億円 3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-56.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、ホテル運営事業、不動産事業、インバウンド関連事業を融合することで収益を拡大し、企業価値を向上させることを基本方針としています。また、顧客ニーズを先取りした商品開発と送客(旅マエ)、接客(旅ナカ)、越境消費と投資活動支援(旅アト)によるインバウンドサイクルの展開を掲げています。

(2) 企業文化


同社は、高度なサードパーティオペレーションモデルによるホテル運営の推進や、中華圏をはじめとするグローバルなネットワークを生かした事業設計・資金調達を行うことを重視しています。これらを通じて、インバウンド関連事業における価値創造を目指す姿勢がうかがえます。

(3) 経営計画・目標


不動産事業を安定収益とし、ホテル運営事業とインバウンド関連事業において高い成長を目指すことで、企業価値の向上と財務体質の強化を目標としています。現在はホテル運営事業の基盤確立に向けた投資段階と位置づけ、インバウンド関連事業における売上および利益の拡大を経営指標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


財務基盤の強化、ホテル運営事業の早期拡大と収益化、人材の確保を課題としています。不動産事業では宿泊施設の転売や開発等へ注力し収益基盤を確保します。ホテル運営事業では運営権の確保やコンサルティング案件の取得を進めます。また、インバウンド送客の拡大や資金調達活動の強化により、事業の収益構造と費用構造の改善を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業成長の原動力は人材であるとし、国籍、宗教、年齢、性別を問わず多様な人材を確保する方針です。各年次・職位に応じた能力開発や自律的なキャリア構築を支援するほか、働きやすい環境とコミュニケーションを重視した社内整備を推進し、活力ある組織の構築を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.8歳 6.6年 6,123,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は常時雇用する労働者の数が300人を超えないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境に関わるリスク


不動産業界やホテル・観光業界は、景気動向、金利、税制等の影響を受けやすい特性があります。金利上昇による資金調達コストの増加や、不動産市況の変動、観光需要の低迷などが業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、競合との競争激化により物件取得が困難になるリスクもあります。

(2) 法的規制及び訴訟等に関するリスク


宅地建物取引業法や建築基準法、金融商品取引法などの法的規制を受けています。免許の取消や法的規制の強化・変更があった場合、事業活動に支障をきたす恐れがあります。また、物件の瑕疵や個人情報漏洩等に起因する訴訟リスクも存在します。

(3) 継続企業の前提に関する重要事象等


3期連続で営業損失等を計上し、当期は営業キャッシュ・フローもマイナスとなるなど、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる状況が存在しています。これに対し、事業の収益構造改善、費用構造の見直し、資金調達の実施等の対応策を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。