※本記事は、ヒップの有価証券報告書(第31期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヒップってどんな会社?
アウトソーシング事業を通じて開発・設計の技術サービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
平成7年9月にアウトソーシング事業を開始して設立されました。平成18年12月にジャスダックに上場し、その後、全国各地に営業所やテクノセンターを新設・統合してネットワークを拡大してきました。平成30年1月には労働者派遣事業許可を取得し、令和4年4月に東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。
同社の従業員数は単体で855名です。筆頭株主はベストプランニングで、第2位はヒップ従業員持株会、第3位は光通信KK投資事業有限責任組合となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ベストプランニング | 35.57% |
| ヒップ従業員持株会 | 8.50% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合 | 4.33% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は田中伸明が務めており、取締役6名のうち社外取締役は2名(33.3%)となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田中 伸明 | 代表取締役社長 | 平成13年入社。中部事業部名古屋営業所長、経営企画部課長等を経て、令和4年に専務取締役就任。令和5年より現職。 |
| 大原 達朗 | 取締役事業本部長 | 平成18年入社。中部事業部営業担当部長等を経て、令和4年に取締役事業本部長就任。令和6年より現職。 |
| 倉掛 達也 | 取締役西日本事業部長 | 平成12年入社。西部事業部事業部長、近畿・九州統括部統括部長等を経て、令和4年に取締役西日本事業部長就任。令和5年より現職。 |
| 陶山 五彦 | 取締役神奈川事業部長 | 平成20年入社。関東・東北統括部統括部長代理、東日本事業部特命部長等を経て、令和2年に執行役員神奈川事業部長就任。令和4年より現職。 |
社外取締役は、及川善雅(ブレス代表取締役)、池田由美子(池田公認会計士事務所開設)です。
2. 事業内容
同社は、「アウトソーシング事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■アウトソーシング事業
大手メーカーを中心とした顧客企業の開発パートナーとなり、機械設計、電子設計、ソフト開発等の技術サービスを提供しています。自動車、航空機、半導体製造装置、AV機器、IoT機器、通信システムなど、幅広い業界の技術中枢部門に対して専門的な設計開発業務を担っています。
収益は、顧客企業に対する労働者派遣契約および業務請負(委託)契約に基づく技術サービスの対価として得られます。技術者の役務提供による派遣契約や、成果物の納品による請負契約を通じて事業を展開しており、同社が直接これらのサービスを提供して運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の単体業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は過去5期にわたり連続して増加しており、着実なトップラインの成長が確認できます。経常利益も概ね5億円台後半で安定的に推移しており、稼働率の高水準維持や技術料金の適正化によって強固な収益基盤を確立していることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 52億円 | 55億円 | 57億円 | 60億円 | 62億円 |
| 経常利益 | 5.9億円 | 5.9億円 | 5.5億円 | 5.6億円 | 5.8億円 |
| 利益率(%) | 11.3% | 10.8% | 9.7% | 9.5% | 9.4% |
| 当期純利益 | 4.0億円 | 4.0億円 | 3.9億円 | 4.1億円 | 4.3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の伸長に伴い、売上総利益と営業利益も増加しています。社員の処遇改善や教育投資の推進によりコストは増加していますが、増収効果がこれを吸収し、安定した利益水準を保っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 60億円 | 62億円 |
| 売上総利益 | 13億円 | 14億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.4% | 22.1% |
| 営業利益 | 5.6億円 | 5.7億円 |
| 営業利益率(%) | 9.5% | 9.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が3.5億円(構成比44.1%)、採用費が0.7億円(同9.2%)を占めています。また、売上原価の大部分は労務費が47.5億円(構成比98.5%)を占め、技術力を中核とする人材事業特有の原価構造となっています。
■(3) セグメント収益
単一セグメントでの事業展開ですが、製造業を中心とした開発投資の継続を背景に、技術者増員への底堅いニーズを取り込み、売上高を着実に伸ばしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| アウトソーシング事業 | 60億円 | 62億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2.2億円 | 4.8億円 |
| 投資CF | -1.0億円 | -6.0億円 |
| 財務CF | -4.4億円 | -7.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も71.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「開発・設計のプロ集団として業界の長期安定と社員の永続的成長を図り技術を通じ社会に貢献する。」という経営理念を掲げています。技術者のための会社作りと社員の育成、付加価値の高い技術力の提供により、顧客企業の価値創造への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
技術者が生涯活躍していくための環境づくりを重視し、社員一人ひとりに寄り添う文化を持っています。プロフェッショナル、リスペクト、コミュニケーション、アップデートという価値観(バリュー)のもと、企業や業界の壁を越えた新たな価値の創造に挑戦する姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
経営基盤、財務体質、キャリア形成支援の強化を図るうえで企業規模の拡大が重要であると考え、中長期的な目標として以下を掲げています。
・社員数:1,000人
・営業利益率:10%
■(4) 成長戦略と重点施策
技術者の価値を高める「キャリア形成支援企業」への成長を最優先課題として、以下の施策に注力しています。自らの成長可能性が感じられる環境の整備を進め、顧客価値と企業価値の向上を目指しています。
・情報発信の強化による優秀な人材の確保
・個々のキャリア形成と多様な働き方に応えるための幅広い業種・地域での受注獲得
・長期的な視点での教育や計画的な業務ローテーションの提供
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「社員一人ひとりが、イノベーションの起点になる。」というビジョンの実現に向けて、技術力と人間力を備えた人材の採用と育成を推進しています。経験豊富な講師による社会人研修や技術教育に加え、多様な現場経験を通じて、生涯技術者として成長し続けられる環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.4歳 | 11.2年 | 5,118,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 83.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 84.4% |
| 男女賃金差異(非正規等) | 64.8% |
※女性管理職比率については有報に数値の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、段階別研修の受講割合(75.7%)、女性労働者の育児休業取得率(66.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 顧客企業の業績動向による影響
主要顧客であるメーカーの業績低迷によって開発費が削減されたり、アウトソース活用が抑制されたりした場合、収益に影響が及ぶ可能性があります。同社は年間約200社との取引実績を有し、業種や企業ごとの情報収集と戦略的な営業展開により、特定の業界に依存しないよう努めています。
■(2) 法規制の変更や違反リスク
主要事業である技術者派遣は労働者派遣法などの法規制を受けています。法令違反による事業停止命令や、将来的な法規制の緩和・改正が事業に不利な影響を及ぼすリスクがあります。同社は関係法令の遵守を徹底し、管轄官庁からの情報収集によって適時適法に対応する体制を整えています。
■(3) 業界内での競争激化
アウトソーシング業界での新規参入や競争激化により、取引先からの値下げ要請や受注確保が困難になるリスクがあります。同社は教育による技術者のスキルアップや適正な配属、継続的な契約条件の交渉を通じて、提供するサービスの品質向上と適正な収益の確保に取り組んでいます。
■(4) 優秀な技術者の確保
サービスを提供する技術者が重要な経営資源であるため、雇用環境の変化により十分な人材が確保できない場合、事業拡大に支障をきたす恐れがあります。同社は会社の価値観を伝える丁寧な採用活動と、技術者が生涯活躍できる環境の整備により、定着率の向上と優秀な人材の確保に注力しています。



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