※本記事は、株式会社ヒップ の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
ヒップは、大手メーカーを主要顧客とするアウトソーシング事業を展開しています。機械設計、電子設計、ソフト開発といった技術サービスを提供し、顧客企業の開発パートナーとして設計・開発業務を支援しています。
同社の単体従業員数は855名です。報告セグメントはアウトソーシング事業の単一となっています。
ヒップは、大手メーカーの開発パートナーとして、機械設計、電子設計、ソフト開発の技術サービスを直接提供しています。従業員である技術者が顧客企業内で設計・開発業務への派遣、または業務請負により技術力を提供する形態です。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
株式会社ヒップは、技術サービス事業を主軸とする企業であり、人材を事業の中心と位置付けています。社員のキャリア形成支援に力を入れ、長期的な成長と働きやすい環境づくりを重視する傾向が見られます。給与水準や働き方に関する具体的なデータから、同社の特徴を詳しく見ていきましょう。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、社員が長く活躍できる環境の整備に努めており、平均勤続年数から一定の定着傾向がうかがえます。平均年齢は30代後半であり、幅広い年齢層の社員が在籍していると考えられます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 5,118,000円 |
| 平均勤続年数 | 11.2年 |
| 平均年齢 | 38.4歳 |
| 単体従業員数 | 855人 |
同社は、従業員の退職給付に充てるため、確定給付型の制度(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)を採用しています。退職一時金制度があります。ただし支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。退職給付債務は4.0億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社は、人材を主要事業である技術サービス事業の中心と位置づけ、経営戦略における技術者価値の向上を目指しています。キャリア形成支援企業として、人材の採用、育成、働く環境の整備に継続的に取り組むことを基本方針としています。ビジョン「社員一人ひとりが、イノベーションの起点になる。」の実現に向け、バリュー「プロフェッショナル、リスペクト、コミュニケーション、アップデート」を掲げ、技術力と人間力を兼ね備え、同社の価値観に共感できる人材の採用を進めています。
人材育成においては、「生涯技術者」「プロの技術者」として永続的に成長できる教育に力を入れています。経験豊富な講師による社会人研修や、開発の第一線で活躍してきた技術者による技術教育、経験年数に応じた段階別研修、オンライン研修、リーダー研修などを実施し、技術力と人間力の向上に注力しています。また、幅広い業種の顧客に対し技術力を提供する強みを活かし、個々のキャリア形成に即した業務への転換を図ることで社員の能力向上に努めています。
働く環境の整備としては、生涯技術者として安心して活躍できる体制作りを推進しています。キャリア形成を支援する教育体制に加え、社員の希望や顧客ニーズに応じた拠点展開と受注獲得、社員のエンゲージメントを高める情報共有体制の強化、時代に即した制度や仕組みのアップデートを行っています。従業員の給与その他の給付は、本人の経験・能力・成果や同社が大切にする価値観に基づく行動の実践を評価・処遇の基本とし、会社の業績状況、社会情勢、外部環境を総合的に勘案して決定されます。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合は開示されていません。パート・有期労働者の男女賃金差異は、定年再雇用で専門性の高い職種の男性が多く含まれることにより生じています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 男性労働者の育児休業取得率 | 33.3% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) | 83.1% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(うち正規雇用労働者) | 84.4% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(うちパート・有期労働者) | 64.8% |
育児・介護支援
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性労働者の育児休業取得率 | 66.7% |
人材育成・エンゲージメント
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 段階別研修の受講割合 | 75.7% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
ヒップは、大手メーカーを主要顧客とし、技術サービスを提供するアウトソーシング事業を展開しています。顧客企業の開発パートナーとして、技術者の派遣や業務請負を通じて技術力を提供しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
ヒップは、大手メーカーを中心とした顧客企業に対し、その開発パートナーとして技術サービスを提供しています。具体的には、機械設計、電子設計、ソフト開発の技術サービスをアウトソーシング事業として展開しています。同社の提供するサービスは、従業員である技術者が担っており、顧客企業内での設計・開発業務への派遣、または顧客からの設計・開発等の業務請負により技術力を提供しています。
収益は、主に二つの契約形態から得ています。一つは「労働者派遣契約」で、同社が常用雇用する技術者を顧客企業の指揮命令のもとで労働に従事させるものです。もう一つは「業務請負(委託)契約」で、顧客企業から設計・開発を請け負い、その成果を提供することで収益を上げています。
同社の主要顧客は製造業であり、自動車、航空機、半導体、製造装置、医療機器などの分野に集中しています。本邦以外の外部顧客への売上高はないため、海外での事業展開は行っていません。同社の報告セグメントは単一であるため、事業はアウトソーシング事業に集約されています。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
ヒップの当事業年度における売上高は、前年同期に比べて増加しました。これは主に技術料金の上昇と稼働人員の増加が要因となっています。利益面では、社員の処遇改善やリブランディング、社員向け周年イベントの実施に伴う費用増加があったものの、増収効果がこれを吸収し、営業利益、経常利益、当期純利益のいずれも前年同期を上回る結果となりました。稼働率は前年同期からわずかに低下したものの、引き続き高い水準を維持しています。
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
ヒップの従業員1人あたりの収益性および生産性に関する数値は、提供されたデータに含まれていないため、具体的な分析はできません。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社の財務基盤と資金の流れから、現在の経営状況と将来に向けた投資の方向性が見えてきます。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社の財務基盤は、自己資本比率が非製造業のプライム市場平均と比較して高い水準にあります。これは、安定した経営基盤を示しています。手元資金である現金及び現金同等物は、前期から減少しています。これらの状況は、同社が事業を継続し、従業員の雇用や給与の安定性を維持するための財務的な余力を持っていることを示しています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 39.8億円 | 40.8億円 |
| 自己資本比率 | 67.4% | 71.5% |
| ROE(自己資本利益率) | - | - |
| 現金及び現金同等物 | 34.3億円 | 25.8億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社のキャッシュフローを見ると、本業の稼ぎを示す営業活動によるキャッシュフローは、当期にプラスとなりました。これは税引前当期純利益の増加などが主な要因です。投資活動によるキャッシュフローは、定期預金の預入や投資有価証券の取得などにより、当期はマイナスとなっています。財務活動によるキャッシュフローは、短期借入金の減少や自己株式の取得、配当金の支払いなどにより、当期はマイナスとなりました。これらの資金の流れは、同社が本業で安定的に資金を生み出しつつ、成長のための投資を行っていることを示しており、中長期的な成長と雇用安定性への期待が持てます。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 2.2億円 | 4.8億円 |
| 投資CF | △1.0億円 | △6.0億円 |
| 財務CF | △4.4億円 | △7.4億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | - | - |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社は、主要顧客であるメーカーの業績低迷による開発費削減やアウトソース抑制が、業績に影響を及ぼす可能性があると認識しています。また、取引先業種において自動車を中心とした輸送用機器業界への売上高構成比が高く、特定の業界の不振が業績に影響を与えるリスクがあります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社は、事業拡大に必要な優秀な技術者の確保が、経済環境や雇用環境の変化により十分に行えない場合に、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があると認識しています。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
ヒップは、「開発・設計のプロ集団」として技術者の永続的成長と社会貢献を目指す企業です。技術者のための会社作りと育成に注力し、「ともに、新たな時代を設計する。」というブランドメッセージを掲げています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
ヒップは、「開発・設計のプロ集団として業界の長期安定と社員の永続的成長を図り技術を通じ社会に貢献する。」という経営理念を掲げています。令和7年9月には、この経営理念を根幹に新たな価値観としてミッション、ビジョン、バリューを策定しました。
同社のブランドメッセージは「ともに、新たな時代を設計する。」です。技術者が生涯技術者として活躍できる環境を整備し、プロの技術者を育成することで質の高い技術サービスを提供しています。企業や業界、技術の壁を越えた新たな価値創造に挑戦し、ミッションとして「ハイブリッドな技術者のホームであり続ける。」ことを目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
ヒップは、技術者の価値を高めることを重視する企業風土を持っています。社員一人ひとりに寄り添い、技術者それぞれが成長していける「キャリア形成を支援する企業」であることを目指しています。同社は、技術者にとって魅力ある会社作りを進め、技術者の価値を高めることで、顧客価値や企業価値、社会価値の向上を目指しています。
設立当初から人材教育に力を入れ、技術者が「生涯技術者」「プロの技術者」として永続的に成長していくことを目標としています。技術力だけでなく人間力の向上にも注力し、誰もが働きやすい環境づくりに取り組んでいます。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
ヒップは、主要事業である技術サービス事業の中心を人材と捉え、技術者の成長を支え続けるためのキャリア形成環境づくりと多様な働き方への対応を課題としています。技術者価値、顧客価値、企業価値、社会的価値を高めるために、以下の課題に取り組んでいます。
具体的には、優秀な人材の確保、安定的な受注の獲得、そしてキャリア形成支援を重点テーマとしています。情報発信の強化による採用力の向上、幅広い業種や地域の受注獲得による取引先の拡大、長期的な視点に立った教育や業務ローテーションによる多様な現場経験の提供、働きやすい環境の整備を推進しています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
同社は、代表取締役社長が議長を務める取締役会が経営の意思決定と業務執行の監督を担い、監査役会が独立した立場から監査を行う体制をとっています。社外取締役および社外監査役が経営の公正性と透明性の確保に貢献しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
同社の筆頭株主はベストプランニングであり、従業員持株会も上位株主として名を連ねています。複数の機関投資家も主要な株主として同社を支える構成となっています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| ベストプランニング | 35.57% |
| ヒップ従業員持株会 | 8.50% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合 | 4.33% |
| 横浜銀行 | 1.18% |
| 田中 伸明 | 1.16% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は9名(男性8名・女性1名)で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は田中伸明氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田中 伸明 | 取締役社長 (代表取締役) | 平成13年同社入社。中部事業部名古屋営業所長、経営企画部課長、営業企画部課長、取締役事業推進部長などを経て、令和5年8月より同社代表取締役社長に就任。 |
| 大原 達朗 | 取締役 事業本部長 | 平成18年同社入社。中部事業部営業担当部長、東海・北陸統括部統括部長、神奈川・静岡統括部統括部長などを経て、令和6年7月より同社取締役事業本部長に就任。 |
| 倉掛 達也 | 取締役 西日本事業部長 | 平成12年同社入社。西部事業部事業部長兼大阪営業所長、近畿・九州統括部統括部長などを経て、令和5年6月より同社取締役西日本事業部長に就任。 |
| 陶山 五彦 | 取締役 神奈川事業部長 | 平成20年同社入社。関東・東北統括部統括部長代理兼東京営業所長、東日本事業部特命部長などを経て、令和4年6月より同社取締役神奈川事業部長に就任。 |
社外取締役は、及川善雅氏(株式会社ブレス代表取締役)、池田由美子氏(池田公認会計士事務所開設)です。
同社は監査役会設置会社であり、取締役会が経営の意思決定と業務執行の監督を担っています。社外取締役は経営陣から独立した視点に立ち、長年の経営経験や専門的見地に基づき、監督と助言を行っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社の役員報酬は、役員が企業価値向上への意欲を高めることを目的として、会社の経営状況や世間水準を考慮して決定されています。報酬は固定報酬と退職慰労金で構成されています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 4名 | 24百万円 | 5.9百万円 |
| 監査役(社外除く) | 1名 | 7百万円 | 6.6百万円 |
| 社外役員 | 4名 | 8百万円 | 1.9百万円 |
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。