eBASE 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

eBASE 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

eBASEは、東京証券取引所プライム市場に上場しています。CMS開発プラットフォームを基盤とした商品情報データベースソリューションの提供やIT開発アウトソーシングを展開しています。直近の連結業績は減収減益となりましたが、企業向けから消費者向けまで一貫した事業モデルで安定した収益基盤を構築しています。


※本記事は、eBASE株式会社の有価証券報告書(第25期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. eBASEってどんな会社?


eBASEは、商品情報データベースソフトの開発・販売と、IT開発アウトソーシングを主力とする企業です。

(1) 会社概要


2001年10月に商品情報データベースシステムの販売を目的にホットアイとして設立され、2003年7月にeBASEへ商号変更しました。2005年3月に食品業界向けシステム「FOODS eBASE」を発売し、2006年12月に株式上場を果たしました。2010年11月にはeBASE-PLUSを設立し、IT開発アウトソーシング事業を本格化させています。

従業員数は連結で480名、単体で170名です。筆頭株主は代表取締役会長の常包浩司氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
常包 浩司 37.43%
日本マスタートラスト信託銀行 6.67%
西山 貴司 2.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長は常包浩司氏、代表取締役社長は岩田貴夫氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
常包 浩司 代表取締役会長 1985年凸版印刷入社。2001年10月同社設立、代表取締役社長に就任。2010年eBASE-PLUS代表取締役社長を経て、2020年6月より現職。
岩田 貴夫 代表取締役社長 2003年11月同社入社。2004年同社取締役、2007年取締役執行役員を歴任。市場開発B.U.管掌などを経て、2020年6月より現職。
窪田 勝康 取締役執行役員(CFO) 2005年1月同社入社。同年取締役就任。2007年4月同社取締役執行役員(CFO)に就任。2020年4月よりeBASE-PLUS代表取締役社長を兼任し現職。
西山 貴司 取締役執行役員 1992年凸版印刷入社。2001年同社取締役、2005年eBASE-NeXT代表取締役社長。2007年同社取締役執行役員に就任し、現在大阪ソリューションB.U.管掌。
上野 雅彦 取締役執行役員 2007年4月同社入社。2008年執行役員を経て、2013年より東京ソリューションB.U.を管掌。2018年6月より同社取締役執行役員として現職。


社外取締役は、永田博彦(元パナホームリフォーム事業部長)、高森浩一(元シャープ常務執行役員)、辻和孝(凸版印刷在籍)、野口京子(学校法人長野大学教授等歴任)です。

2. 事業内容


同社グループは、「eBASE事業」および「eBASE-PLUS事業」を展開しています。

eBASE事業


圧倒的な開発効率を実現するCMS開発プラットフォーム「ミドルウェアeBASE」を基盤に、企業別・業界別の統合商品情報データベースやパッケージソフトの開発・販売を行っています。また、消費者向けライフスタイルアプリ「e食住シリーズ」の提供も行い、小売業やメーカーなどの幅広い企業が顧客です。

収益源は、顧客企業に対するパッケージソフトのライセンス販売、システム構築のカスタマイズ開発費、クラウドサービスの利用料などです。運営は主にeBASE、および子会社のeBASE-NeXTが行っています。

eBASE-PLUS事業


IT開発アウトソーシングビジネスとして、顧客企業における基幹系情報システムの受託開発、開発派遣、システムサポートなどを提供しています。さらに、独自のオンライン教育システムを活用し、人材の育成・教育にも注力しています。

収益源は、企業からの受託開発費用、システムの統合運用管理やヘルプデスク等のITアウトソーシングに伴うサービス提供料などです。運営は主に子会社のeBASE-PLUSが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の連結業績を見ると、売上高は順調に拡大を続け50億円台に成長しましたが、直近の期では大型カスタマイズ開発案件の負荷増大などが影響し、やや減収となりました。利益面でも長らく増益傾向にあり高い利益率を維持していましたが、直近では減益に転じています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 44億円 47億円 52億円 55億円 53億円
経常利益 11億円 14億円 17億円 18億円 15億円
利益率(%) 25.0% 29.6% 32.0% 32.9% 27.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 7億円 9億円 10億円 10億円

(2) 損益計算書


売上総利益率は50%以上と高水準ですが、前期と比較してやや低下しています。営業利益率も約27%と引き続き高い収益性を誇るものの、システム開発に関わる各種リソースの圧迫などにより利益率が低下する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 55億円 53億円
売上総利益 29億円 27億円
売上総利益率(%) 53.3% 51.7%
営業利益 17億円 14億円
営業利益率(%) 31.7% 27.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7億円(構成比51%)、役員報酬が2億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


eBASE事業は、主力製品である商品マスタ管理システムの大型案件で開発リソースが逼迫し、営業活動が停滞した影響から減収となりました。一方、eBASE-PLUS事業は、単価交渉の継続やストック型ビジネスの安定的な推移により、堅調に売上を伸ばしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
eBASE事業 29億円 26億円
eBASE-PLUS事業 26億円 27億円
連結(合計) 55億円 53億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 12億円 11億円
投資CF 1億円 -5億円
財務CF -8億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は91.0%でいずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「貢献なくして利益なし、利益なくして継続なし、継続なくして貢献なし」を企業理念に掲げています。社会から求められ賛同を得られるサービスでなければ利益を得られず、利益を上げなければ事業を成長・継続させることができず、継続的な成長を提供できなければ社会貢献は果たせないという信念のもと、事業を通じた社会課題の解決を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「中長期利益最大化」をあらゆる経営判断の尺度とする文化を持っています。目先の利益だけでなく、将来にわたり収益力のある企業グループを目指し、社会からの賛同を得られるサービスを創造・継続成長させることを重視しています。従業員一人ひとりが事業を通じて社会価値および財務価値を向上させることを意識して行動しています。

(3) 経営計画・目標


経営指標として、「経常利益の持続的成長と収益性の向上」を最大の経営目標とし、あわせて「売上高の持続的成長」を重要な経営指標に位置づけています。グループ各社の役割を明確にし、eBASE事業で高利益を、eBASE-PLUS事業で売上の安定を目指すことで、グループ全体としてバランスのとれた増収増益を図っています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、企業別の商品情報データベース提供から、業界横断型の商品データプール「商材ebisu」の普及、さらには消費者向けアプリ「e食住シリーズ」の展開へと段階的なビジネスモデルの拡大を進めます。また、商品詳細情報と購買POSデータを掛け合わせた新たなマーケティング分析事業にも進出し、AI技術の活用により更なる企業価値の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業の成長と変革を牽引する人材の輩出を重要課題と捉え、次世代の経営人材や幹部社員の育成に努めています。自社開発のeラーニングシステム「eB-learning」を活用して、未経験者から高度技術者まで幅広い層の教育を強化しています。多様性を尊重し、性別や国籍、新卒・中途を問わず能力を発揮できる職場環境づくりや、若手の抜擢機会創出に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.1歳 10.0年 5,732,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.6%
男性育児休業取得率 33.0%
男女賃金差異(全労働者) 96.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 95.6%
男女賃金差異(パート・有期雇用労働者) 155.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒新入社員の3年定着率(80%)、離職者数(28名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システム障害リスク


同社の事業はコンピューターネットワークシステムに大きく依存しており、セキュリティの強化やハードウェアの二重化等の対策を講じています。しかし、人為的過誤や自然災害等により予期せぬトラブルが発生した場合、サービスの信頼性低下を招き、同社の業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 受託開発案件の不採算リスク


受託開発では請負契約を基本とし、見積精度の向上やプロジェクト・品質管理の強化により不採算化の防止に努めています。しかし、新技術仕様の開発や進行途中の想定外の仕様変更などにより、作業工数が当初の見積もりを上回る場合、案件が最終的に不採算化し、業績に影響を与える可能性があります。

(3) IT専門人材の確保・定着に関するリスク


少子高齢化やデジタルトランスフォーメーションの進展により、IT人材の獲得競争は激化しています。同社は中長期視点での採用や教育プログラムの拡充を行っていますが、必要な技術者の採用や育成が計画通りに進まない、あるいは既存社員の流出を防げない場合、事業の成長に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 技術革新によるサービスの陳腐化リスク


IT業界では日々新しい技術が開発されており、OS機能のアップデートや生成AIなどの急速な進展によって市場環境が変化するリスクがあります。プラットフォーム機能自体が陳腐化した場合、事業モデルの根幹が揺らぐ可能性があり、同社は新たな技術に迅速に対応する体制を維持する必要があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。