※本記事は、アドソル日進株式会社 の有価証券報告書(第50期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アドソル日進ってどんな会社?
社会インフラと先進産業向けにICTシステムを提供する独立系SIerです。DXやIoT技術に強みを持ちます。
■(1) 会社概要
1976年に日進ソフトウエアとして設立され、2003年に現社名へ変更しました。2007年のJASDAQ上場を経て、2016年に東証一部へ指定替え、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しました。米国シリコンバレーやベトナムにも拠点を展開し、グローバルな開発体制を構築しています。
連結従業員数は623名、単体では616名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は従業員持株会となっており、従業員の経営参画意識が高い構成です。第3位には主要取引先とも関連の深いIT企業が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行信託口 | 15.66% |
| アドソル日進従業員持株会 | 7.64% |
| インテック | 3.62% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役会長は上田富三氏、代表取締役社長は篠﨑俊明氏です。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 上田 富三 | 取締役会長 | たけびし、SCSKを経て2004年に入社。常務取締役、代表取締役社長を経て2021年より現職。 |
| 篠﨑 俊明 | 取締役社長(代表取締役) | 1989年に入社。社会システム事業部長、常務取締役、専務取締役を経て2021年より現職。 |
| 大西 元 | 常務取締役 | パナソニックインフォメーションシステムズ専務取締役を経て2020年に入社。ソリューション事業本部長等を歴任し現職。 |
| 寺村 知万 | 取締役管理本部長 | 1991年に入社。執行役員業務部長、人事管理部長、管理本部長を経て2022年より現職。 |
社外取締役は、峰野博史(静岡大学教授)、廣田耕一(元大阪府警察本部長)、髙見澤將林(元内閣官房副長官補)、福井素子(元日本アイ・ビー・エム執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「社会インフラ事業」および「先進インダストリー事業」を展開しています。
■(1) 社会インフラ事業
エネルギー(電力・ガス)、交通、公共・防災、通信などの領域で、社会基盤を支えるICTシステムを提供しています。特に電力・ガス自由化や発送電分離に対応したシステム開発に強みを持ち、近年はクラウドやAIを活用したDX支援も拡大しています。
収益は、主に電力会社やガス会社、官公庁などの顧客から、システム開発、コンサルティング、保守運用の対価として受領します。運営は主にアドソル日進が行い、一部開発を海外子会社やパートナー企業と連携して進めています。
■(2) 先進インダストリー事業
製造業やサービス業向けに、IoTやAI技術を活用したシステムを提供しています。具体的には、自動車(モビリティ)、医療機器、決済サービスなどの領域で、組み込みソフトウエア開発や業務システムのDX化を支援しています。セキュリティやGIS(地理情報システム)などのソリューションも展開しています。
収益は、自動車メーカー、医療機器メーカー、決済サービス事業者などから、システム開発費やソリューション導入費、ライセンス料として受領します。運営は主にアドソル日進が担い、ベトナムの関連会社等を活用したオフショア開発も推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高、利益ともに右肩上がりの成長トレンドにあります。特に当期は売上高が155億円に達し、経常利益も18億円へと伸長しました。利益率は11%台へと向上しており、増収効果に加え、生産性向上や高付加価値案件へのシフトが進んでいることが窺えます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 135億円 | 122億円 | 128億円 | 141億円 | 155億円 |
| 経常利益 | 13億円 | 11億円 | 12億円 | 15億円 | 18億円 |
| 利益率(%) | 9.7% | 9.2% | 9.7% | 10.5% | 11.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 8億円 | 8億円 | 10億円 | 12億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が拡大しています。売上総利益率は27.1%から27.8%へ改善し、営業利益率は10.2%から11.1%へ上昇しました。増収効果に加え、プロジェクト管理の徹底や不採算案件の抑制などが利益率向上に寄与していると考えられます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 141億円 | 155億円 |
| 売上総利益 | 38億円 | 43億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.1% | 27.8% |
| 営業利益 | 14億円 | 17億円 |
| 営業利益率(%) | 10.2% | 11.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が8億円(構成比31%)、役員報酬が3億円(同11%)を占めています。売上原価については、労務費や外注費が主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
社会インフラ事業は、エネルギー分野や公共分野の案件が好調で増収増益となり、全社業績を牽引しました。先進インダストリー事業は、製造分野の一部で調整局面があったものの、サービス分野の決済・カード領域等は堅調に推移しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 社会インフラ事業 | 83億円 | 97億円 | 17億円 | 21億円 | 22.0% |
| 先進インダストリー事業 | 58億円 | 57億円 | 12億円 | 13億円 | 22.3% |
| 連結(合計) | 141億円 | 155億円 | 14億円 | 17億円 | 11.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.8%で市場平均を大幅に上回っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | 10億円 |
| 投資CF | -0.7億円 | -2億円 |
| 財務CF | -4億円 | -17億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「高付加価値サービスの創造・提供を通じて お客様の満足と豊かな社会の発展に貢献します」を企業理念としています。暮らしと社会の安心・安全、サステナブルな社会の実現に向け、社会インフラや産業を支えるICTシステムに加え、AIやデータマネジメント等の先進デジタル技術の提供を目指しています。
■(2) 企業文化
法令遵守と公明正大な企業活動を基本とする「企業行動規範」を定めています。顧客ニーズにかなう高付加価値サービスの提供、取引先との信頼関係構築、公正な企業経営、従業員が能力を発揮できる環境づくりなどを重視しています。また、地域社会との共生や反社会的勢力の排除なども行動指針として掲げています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「New Canvas 2026」において、2026年3月期を最終年度とする数値目標を掲げていましたが、当期においてこれらを1年前倒しで達成しました。また、資本コストや株価を意識した経営として、2029年3月期に向けた新たな目標も設定しています。
* 2026年3月期目標(達成済み):売上高150億円、営業利益15億円以上、営業利益率10%以上
* 2029年3月期目標:ROE 22%
■(4) 成長戦略と重点施策
「デジタル社会の“あした”をリードするイノベーションカンパニー」をスローガンに、成長事業とベースロード事業の強化を推進しています。「次世代エネルギー」「スマートインフラ/スマートライフ」を成長領域と位置づけ、AIや宇宙・衛星データ等の最新技術との融合を図っています。
* 次世代エネルギー:ICTシステムの次世代化、エネルギーマネジメントシステム
* スマートインフラ:スマートレジリエンス、スマートモビリティ、スマートエネルギー
* 経営高度化:人的資本、M&A/アライアンス、エリア戦略(中部、九州等)、研究開発
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「社員の成長が会社の成長の源泉」と捉え、高度IT人材やコンサルティング人材の育成に注力しています。また、多様な人材が活躍できる環境整備として、女性や外国籍社員の採用強化、ジョブ型要素を取り入れた人事制度の導入などを進めています。「人財開発センター」を設置し、市場環境の変化に対応できるスキル習得を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.5歳 | 12.4年 | 6,135,084円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.1% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 82.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 83.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 68.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性新卒採用比率(24.8%)、外国籍新卒採用人数(1.3名/年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 顧客の投資計画に係るリスク
事業の性質上、顧客の投資計画の影響を強く受けます。経済環境や収益動向の悪化により、主要顧客である社会インフラ関連企業や大手メーカーのICT投資が凍結・延期・削減された場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、特定顧客への依存度低減やバランス経営を図っています。
■(2) プロジェクトに係るリスク
システム開発において、受注時の見積り誤りや品質管理・工程管理の問題により、追加コストが発生し採算性が低下するリスクがあります。また、納期遅延や不具合発生による損害賠償や信用失墜の可能性もあります。同社はISO9001に基づく品質保証活動やPMP資格取得推奨によるプロジェクト管理強化でリスク低減に努めています。
■(3) 協力会社の活用に係るリスク
システム開発において多くの協力会社と協業していますが、これらの会社との連携が計画通りに進まない場合、必要な技術や開発体制の提供が困難になる可能性があります。また、協力会社の管理不備が品質や納期に影響を与えるリスクもあります。同社は円滑なアライアンス体制の維持・強化を通じて対応しています。



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