アドソル日進 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アドソル日進 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アドソル日進は、東京証券取引所プライム市場に上場し、電力等の社会インフラや先進インダストリー向けのシステム開発を提供する企業です。社会インフラ事業、先進インダストリー事業を展開し、直近の業績では売上高が前期比で増加し、営業利益も増益となるなど、安定した成長と収益性の向上を続けています。


※本記事は、アドソル日進株式会社の有価証券報告書(第51期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アドソル日進ってどんな会社?


アドソル日進は、暮らしと社会を支える社会インフラシステムの開発やDX推進支援を主力とする企業です。

(1) 会社概要


1976年、電力、通信、制御分野に強みを持つ情報サービス企業として設立されました。2007年にジャスダック証券取引所に株式を上場し、2016年には東京証券取引所市場第一部(現在はプライム市場)へ指定されています。また、2020年にはアジアでのシステム開発を推進する子会社を設立しています。

同社グループの従業員数は連結645名、単体640名です。大株主については、筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位はアドソル日進従業員持株会、第3位も信託業務を行う野村信託銀行(投信口)となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.35%
アドソル日進従業員持株会 7.58%
野村信託銀行(投信口) 2.49%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。取締役8名のうち社外取締役は4名で、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
篠﨑 俊明 取締役社長(代表取締役) 1989年同社入社。各種事業部長や常務取締役等を経て、2021年代表取締役社長兼COOに就任。2025年より現職。
上田 富三 取締役会長 1974年竹菱電機入社。日本インフォメーション・エンジニアリング等を経て2004年同社入社。2010年代表取締役社長、2025年より現職。
大西 元 常務取締役 1982年松下電工入社。パナソニックインフォメーションシステムズ専務取締役を経て2020年同社入社。ソリューション事業本部長等を経て2024年より現職。
寺村 知万 取締役経営企画室長 1991年同社入社。関西支社営業部長、業務部長、総務人事部長、管理本部長等を経て、2026年より現職。


社外取締役は、峰野博史(静岡大学学術院情報学領域教授)、廣田耕一(元大阪府警察本部長)、髙見澤將林(元軍縮会議日本政府代表部特命全権大使)、福井素子(元日本アイビーエム・ソリューション・サービス代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、社会インフラ事業、先進インダストリー事業およびその他事業を展開しています。

(1) 社会インフラ事業


同事業では、エネルギー(電力・ガス)、交通、次世代通信、公共・防災、デジタルサービス等の領域において、暮らしや社会を支えるITシステムをワンストップで提供しています。国内の社会インフラ関連企業などを主な顧客としています。

収益は、システムの新設、更新に関するコンサルティング、システムの企画提案から開発に至る構築、および稼働後の運用・保守サービスなどの対価として顧客から受け取ります。事業の運営は、アドソル日進および子会社のアドソル・アジアが行っています。

(2) 先進インダストリー事業


同事業では、モビリティ、医療・ヘルスケア、産業機器などの日本の高度なモノづくりを担う企業やサービス事業者向けに、最先端テクノロジーを駆使したDXやIoTの実現に向けたシステム開発等を提供しています。

収益は、顧客企業の事業特性やシステムのライフサイクルに合わせたコンサルティング、設計、開発、保守などのワンストップソリューションの提供により得ています。事業の運営は、アドソル日進および子会社のアドソル・アジアが行っています。

(3) ソリューション事業


同事業では、地理情報システム(GIS)、IoT空間情報、セキュリティをコアテクノロジーとした独自ソリューションを提供し、顧客企業に向けた新たな価値の創造と提供に取り組んでいます。

収益は、独自マーケティングに基づいたオリジナルソリューションの開発や提供、国内外のアライアンスパートナーとの共創によるシステム提供の対価として得ています。事業の運営は主にアドソル日進が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで拡大を続けています。利益面においても、経常利益および当期利益は継続して増加しており、利益率も年々改善する傾向が見られます。全体として、安定した成長と収益性の向上が両立している状況です。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 122億円 128億円 141億円 155億円 172億円
経常利益 11億円 12億円 15億円 18億円 22億円
利益率(%) 9.2% 9.7% 10.5% 11.4% 12.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 8億円 10億円 12億円 15億円

(2) 損益計算書


損益状況を見ると、売上高の拡大に伴い売上総利益も順調に増加しています。また、売上総利益率や営業利益率も前期と比較して上昇しており、事業の付加価値向上や効率的なコスト管理が利益の拡大に貢献していることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 155億円 172億円
売上総利益 43億円 50億円
売上総利益率(%) 27.8% 29.0%
営業利益 17億円 21億円
営業利益率(%) 11.1% 12.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が10億円(構成比34%)、役員報酬が3億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、主力の社会インフラ事業が前期から大きく成長し、全体の増収を牽引しています。また、先進インダストリー事業も堅調に売上を伸ばしており、両セグメントともに着実な事業拡大を遂げていることが確認できます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
社会インフラ事業 97億円 112億円
先進インダストリー事業 57億円 60億円
連結(合計) 155億円 172億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.6%であり、いずれも市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 10億円 19億円
投資CF -2億円 -0.1億円
財務CF -17億円 -18億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、企業理念として「高付加価値サービスの創造・提供を通じて お客様の満足と豊かな社会の発展に貢献します」と定めています。この理念に基づき、暮らしと社会の安心・安全と、快適で環境に配慮されたサステナブルな社会の実現を目指し、日本の社会インフラや産業を支えるITシステムと先進的なデジタルテクノロジーを提供しています。

(2) 企業文化


同社グループは、企業の社会的責任を全うすることが企業価値向上につながるとの認識のもと、「サステナビリティ方針(企業行動規範)」を策定しています。法令を遵守し、公明正大な企業活動を遂行するとともに、従業員が連帯感を持って自己の能力や活力を発揮できる環境づくりや、地域社会との共生を重視する文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2027年3月期を初年度とする5か年の新・中期経営計画「New Canvas 2031 –The Next Page–」を策定しています。「スマートシティのオンリーワンITカンパニー」を目指し、資本コストや株価も意識した経営の実現に向けた取り組みを進めています。

* 2029年3月期の目標:ROE 22%

(4) 成長戦略と重点施策


今後の注力領域として、スマートシティのテーマである「エネルギー」「交通」「まちづくり」を掲げています。DX・AX(AI Transformation)に対応する「次世代SIビジネス」をベースロードとし、そこで得た強みを活かした「オファリングビジネス」を新たな成長事業の柱として育成します。また、高度IT人材の育成やグローバル体制の展開も推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、「社員の成長が会社の成長の源泉」と捉え、変化の激しい市場環境に対応できる組織力を醸成するため、多様な人材の確保と育成に注力しています。高度IT人材やコンサルティング人材の育成、基礎力や経営人材の強化を進めるほか、ジョブ型要素を取り入れた人事制度を導入し、自律的なキャリア形成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.2歳 12.4年 6,645,344円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.5%
男性育児休業取得率 87.5%
男女賃金差異(全労働者) 83.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 84.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 71.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントサーベイ平均スコア(69点)、女性新卒採用比率(24.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客の投資計画に係るリスク


同社グループの事業は顧客のIT投資動向に依存しているため、経済環境や収益動向の悪化により投資が凍結・延期・削減された場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、特定の事業セグメントや顧客に過度に依存しないバランス経営を図っています。

(2) プロジェクトに係るリスク


システムやソリューションの提供において、受注時のコスト見積りの誤りや品質管理、工程管理の問題が発生した場合、追加コストや損害賠償が生じ、採算性が低下するリスクがあります。これに対し、品質保証推進活動やプロジェクトの進捗状況の可視化、リスクマネジメントの強化に努めています。

(3) 海外オフショア開発に係るリスク


開発コストの抑制を目的とした海外オフショア開発において、地政学リスクや災害、人件費の高騰などにより安定した発注が困難になる可能性があります。子会社のアドソル・アジアを中心に、開発委託国の多様化や拠点の整備を進め、体制の維持と最適化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

アドソル日進の転職研究 2026年3月期通期決算に見るキャリア機会

アドソル日進の2026年3月期通期決算は、売上高・すべての利益指標で過去最高を更新。新たにAIビジネス推進部を新設するなど、AI・データマネジメント領域への投資を強化しています。「なぜ今アドソル日進なのか?」「転職希望者がどの事業で、どんな役割を担えるのか」を整理します。