中広 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中広 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード・名証プレミア上場。フリーマガジン『ハッピーメディア(R)』の発行・運用を中心としたメディア広告事業を展開。直近の連結業績は、メディア拡充や子会社の通期寄与により売上高は増収、営業利益も増益となった一方、のれん減損損失等の計上により最終利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社 中広 の有価証券報告書(第47期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 中広ってどんな会社?

中広は、地域密着型のフリーマガジン『ハッピーメディア(R)』の発行を主軸に、広告代理業や販売促進支援を行う企業です。

(1) 会社概要

1978年に広告代理業として設立。1994年に地域フリーマガジン事業を開始し、自社媒体を持つ広告会社へ転換しました。2007年に名古屋証券取引所セントレックスへ上場、2014年には東京証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、市場変更を経て、2022年より東証スタンダード・名証プレミアへ移行しています。

連結従業員数は527名、単体では341名体制です。筆頭株主は創業家資産管理会社と見られる有限会社オリベ興産で、第2位は代表取締役会長の後藤一俊氏です。第3位には地元金融機関の岐阜信用金庫が名を連ねています。

氏名 持株比率
有限会社オリベ興産 33.70%
後藤 一俊 11.29%
岐阜信用金庫 4.91%

(2) 経営陣

同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表は代表取締役社長の大島斉氏が務めています。社外取締役比率は12.5%です。

氏名 役職 主な経歴
大島 斉 代表取締役社長 2000年同社入社。取締役フリーマガジン本部長、営業本部長などを歴任し、2022年6月より現職。中広メディアソリューションズ等の取締役も兼任。
後藤 一俊 代表取締役会長 1981年同社入社。常務取締役を経て1987年社長に就任。日本地域広告会社協会理事長等を務め、2019年6月より現職。
倉橋 誠一郎 取締役管理本部長 日興証券、みずほ証券を経て2017年同社入社。経営企画部長、執行役員等を経て2019年6月より現職。
池戸 武志 取締役アライアンス事業部長 ケイ・クリエイト代表取締役などを経て、2023年6月より現職。関西ぱど取締役、ケイピーエス取締役も兼任。


社外取締役は、渡邉泰宏(公認会計士・大学教授)です。

2. 事業内容

同社グループは、「メディア広告事業」の単一セグメントですが、事業内容は「自社メディア広告」と「セールスプロモーション」等に大別されます。

(1) 自社メディア広告事業

地域フリーマガジン『地域みっちゃく生活情報誌(R)』やクーポンアプリ「フリモ」などの企画・発行・運営を行っています。各家庭へのポスティングによる高い到達率や、全世代が安心して読める掲載基準、地域情報の特集記事などを特徴とし、全国展開を進めています。

収益は主に、飲食店や美容室、不動産会社などの地域広告主から受け取る広告掲載料で構成されています。運営は中広に加え、関西ぱど、ケイ・クリエイトなどの連結子会社やVC加盟店が行っています。

(2) セールスプロモーション事業

総合広告会社として、広告戦略の立案から媒体選択、デザイン提案、イベントやセミナーの企画運営までをトータルでサポートしています。新聞、雑誌、テレビ、インターネット広告のほか、パンフレット等の制作やDX商材の販売なども手掛けます。

収益は、広告主から受け取る媒体費、制作費、企画運営費などが主な源泉です。運営は主に中広およびグループ各社が担い、地域課題に応えるソリューション提供を通じて業容拡大を図っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の推移を見ると、売上高は継続的な増加傾向にあります。利益面では、経常利益は増加基調にあるものの、当期純利益は変動が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 66億円 71億円 85億円 102億円 113億円
経常利益 -2.7億円 1.2億円 1.7億円 3.1億円 3.2億円
利益率 -4.2% 1.7% 2.0% 3.0% 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -3.7億円 0.7億円 1.2億円 1.9億円 1.6億円

(2) 損益計算書

売上高は増加し、売上総利益率も改善傾向にありますが、販管費の増加により営業利益率は横ばいで推移しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 102億円 113億円
売上総利益 45億円 50億円
売上総利益率 44.3% 44.4%
営業利益 3.0億円 3.1億円
営業利益率 3.0% 2.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が27億円(構成比58%)、その他が18億円(同39%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスで、本業で得た現金を借入返済や投資に回す「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5.1億円 0.1億円
投資CF 0.5億円 -2.5億円
財務CF -4.1億円 -0.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、広告業を通して「地域社会への貢献」を理念としています。地域経済の活性化のために社会貢献することで発展し続けることを目指し、持続的な成長と安定的な収益確保の両立を重視しています。

(2) 企業文化

「人が命・人が宝・人が財産」「機会損失の排除」を社是とし、従業員一人ひとりが経営者の感覚を持つことを重視しています。また、「飲水不忘掘井人(水を飲むときには井戸を掘った人のことを忘れない)」を社訓とし、感謝の心を忘れない企業風土を大切にしています。

(3) 経営計画・目標

中長期的な数値目標として、全国5,000万世帯へのフリーマガジン『地域みっちゃく生活情報誌(R)』の直接配布と、東証プライム市場の数値基準達成を掲げています。
* 売上高営業利益率 10%
* 営業利益 10億円

(4) 成長戦略と重点施策

「Data Driven Innovation」をスローガンに、実践データとAIを活用した反響の出る広告作りを目指しています。紙媒体の信頼性とデジタル媒体の利便性を融合した「ハイブリッド広告」の推進や、発行エリアの全国展開、官公庁営業の強化による地域課題解決に取り組んでいます。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

地域・社会の広告ニーズを捉えた提案力を持つ営業人材の育成を急務としています。新卒および中途採用による優秀な人材の確保に加え、OJTを中心とした徹底した社員教育や公的資格取得支援制度を実施し、組織力の向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.4歳 10.0年 4,877,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 28.7%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 58.8%
男女賃金差異(正規) 71.7%
男女賃金差異(非正規) 47.0%

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 地方景気動向の影響

広告費は景況感に連動しやすいため、展開エリアの地方景気が悪化した場合、地域広告主の出稿抑制により売上が減少する可能性があります。コスト削減等で対応しますが、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 不適切な広告掲載

掲載広告について品質管理を徹底していますが、掲載後に法令抵触や掲載基準不適合が判明する可能性は排除できません。その場合、法的責任の発生や社会的信用の低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 健康食品及び化粧品の安全性

通信販売事業で取り扱う健康食品や化粧品等において、予期せぬ安全性等の問題が発生する可能性があります。商品回収や損害賠償、信用の低下により、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 広告メディアのデジタル化

デジタルメディアの成長に伴い、紙媒体であるフリーマガジンの競争力が低下する恐れがあります。「ハイブリッド広告」やAI活用で対応を進めていますが、想定を超えるデジタルシフトが起きた場合、広告収入減少のリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。