中広 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中広 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中広は東証スタンダードおよび名証プレミアに上場し、地域密着型のフリーマガジン発行とセールスプロモーションを展開するメディア広告事業を主力としています。直近の業績は、DX化推進や求人メディア子会社の取得効果により増収増益のトレンドを維持しており、地域課題解決に貢献しつつ成長を続けています。


※本記事は、株式会社中広の有価証券報告書(第48期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 中広ってどんな会社?


同社は各家庭へ直接配布するフリーマガジンを軸に、地域に密着したメディア広告事業を展開しています。

(1) 会社概要


1978年に広告代理業として設立され、1994年に地域フリーマガジンを創刊して自社メディアを有する広告会社へ業態転換しました。2007年に名証セントレックスへ上場後、順次市場を変更し、2015年には東証および名証の一部へ指定替えを果たしました。近年は2021年の関西ぱどの関連会社化や、2025年の中広ワークインの子会社化など、M&Aを積極的に活用して事業エリアと求人ジャンルを拡大しています。

従業員数は連結588名、単体328名です。筆頭株主はオリベ興産で、第2位は創業者の後藤一俊氏、第3位は金融機関である岐阜信用金庫です。

氏名 持株比率
オリベ興産 33.30%
後藤一俊 11.29%
岐阜信用金庫 4.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は大島斉氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大島斉 代表取締役社長 2000年中広入社。2015年取締役フリーマガジン本部長、2019年常務取締役営業本部長を経て、2022年より現職。
後藤一俊 代表取締役会長 1981年中広入社。同年常務取締役、1987年代表取締役社長を経て、2019年より現職。
倉橋誠一郎 取締役管理本部長 1988年日興証券入社。2017年中広入社、2018年執行役員営業本部東京支社長などを経て、2019年より現職。
池戸武志 取締役アライアンス事業部長 1996年ケイ・クリエイト入社。2019年中広執行役員、2022年関西ぱど取締役などを経て、2023年より現職。


社外取締役は、渡邉泰宏氏(兵庫県立大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メディア広告事業」の単一セグメントを展開しています。

(1) 自社メディア広告


地域密着型のフリーマガジン『地域みっちゃく生活情報誌』等の発行や、クーポンアプリ『フリモ』の運用を行っています。読者には地域の時事情報やクーポンを提供し、広告主には各家庭へ直接配布することで高レスポンスの広告媒体を提供しています。

収益源は、地域の店舗や企業からの広告掲載料です。直営のほかVC(ボランタリー・チェーン)契約により全国展開しており、運営は中広や中広メディアソリューションズ、関西ぱど等の連結子会社が行っています。

(2) セールスプロモーション


総合広告会社として、広告戦略の立案から販売促進策の企画運営までを行っています。自社媒体以外のテレビ、ラジオ等の媒体への広告出稿や、イベントの企画運営、採用管理システムの販売等のDX商材も提供しています。

収益源は、顧客からの広告制作費や企画運営費、システム利用料等です。地域の社会課題に応えるソリューション事業として展開しており、同社および子会社の中広ワークイン等が運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は右肩上がりで拡大しており、継続的な増収傾向を示しています。経常利益も売上成長に伴い安定して増加しており、利益率も改善傾向にあります。事業エリアの拡大やDX化による生産性向上が業績を力強く牽引しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 71億円 85億円 102億円 113億円 122億円
経常利益 1億円 2億円 3億円 3億円 4億円
利益率(%) 1.7% 2.0% 3.0% 2.8% 3.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 1億円 1億円 2億円 2億円 2億円

(2) 損益計算書


増収に伴い売上総利益が順調に拡大しており、利益率も改善傾向を示しています。デジタル化とAIの活用による生産性向上や業務効率化の取り組みが奏功し、営業利益も着実に増加しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 113億円 122億円
売上総利益 50億円 58億円
売上総利益率(%) 44.4% 47.5%
営業利益 3億円 4億円
営業利益率(%) 2.7% 3.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が30億円(構成比56%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループはメディア広告事業の単一セグメントであるため、事業全体の収益動向を示します。直営誌の発行エリア見直しによる生産性向上や、子会社の取得効果により、売上高および利益ともに順調に拡大しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
メディア広告事業 113億円 122億円 3億円 4億円 3.2%
連結(合計) 113億円 122億円 3億円 4億円 3.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CF・投資CF・財務CFがそれぞれプラス、マイナス、マイナスとなっているため、「健全型」に分類されます。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 0.1億円 4.7億円
投資CF -2.5億円 -2.1億円
財務CF -0.2億円 -0.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「地域社会への貢献」を理念に掲げています。あらゆる地域でローカルな事業を営み、グローバルな企業を目指すという経営原則のもと、セールスプロモーション事業とメディア事業を通じ、地域住民の豊かさと顧客の事業展開に尽くすことで、地域経済の活性化に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は「人が命・人が宝・人が財産」「機会損失の排除」を社是とし、「飲水不忘掘井人」を社訓として掲げています。人材への投資を重視し、教育研修制度を積極的に実施するなど、企業の成長に必要で適正な利潤を得ることで、従業員と株主に個人の目的を達成する喜びを与えることを重視する文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的な数値目標として、営業利益10億円、売上高営業利益率10%を目指しています。また、全国5,000万世帯に地域みっちゃく生活情報誌を直接届けることや、東京証券取引所プライム市場の数値基準を可能な限り早期に達成することも重要な経営目標に掲げています。

* 営業利益10億円
* 売上高営業利益率10%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「地域データインフラ企業」へのトランスフォーメーションを推進しています。紙媒体とデジタルを掛け合わせたハイブリッド広告2.0の展開や、AIを活用した広告制作システムの運用により、メディアの価値向上を図ります。さらに、M&Aを通じた求人分野の強化や、官公庁との協働による地域課題解決にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、地域・社会の広告ニーズを的確に捉えた提案力を備えた人材の確保と育成を重要な経営課題と位置づけています。新卒および中途採用を随時実施し、各種研修やOJTを中心とした徹底した社員教育に加え、公的資格取得の支援制度を設けて戦略的な人材開発を継続的に進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.4歳 10.8年 4,902,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 28.6%
男性育児休業取得率 33.0%
男女賃金差異(全労働者) 57.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 37.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、営業職の離職率(26.9%)、営業職における女性比率(46.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 地方景気動向の影響に関するリスク


企業の広告費は景気動向の影響を受けやすいため、メディア展開エリアの地方景気が悪化した場合、地域企業の広告出稿意欲が大幅に低下し、同社グループの売上が減少する可能性があります。同社はコスト削減等により収益性確保を図りますが、業績や財政状態に悪影響を及ぼす懸念があります。

(2) 広告メディアのデジタル化への対応遅延


広告市場においてデジタルメディアが著しく成長する中、同社は紙とデジタルを掛け合わせたハイブリッド広告の推進などで自社メディア価値の向上に取り組んでいます。しかし、想定を超えてデジタル化が進展し適切に対応できない場合、広告収入が減少し、業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。

(3) 不適切な広告掲載による信用低下リスク


同社は、法令に抵触せず独自の掲載基準を満たす広告のみを掲載する方針で品質管理を徹底しています。しかし、掲載後に広告が景品表示法などの法令に違反していることが判明した場合、法的責任の発生や社会的信用の低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。