nmsホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

nmsホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

nms ホールディングスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、製造派遣・請負などのHS事業、電子機器製造受託のEMS事業、カスタム電源製造のPS事業を展開しています。直近の業績は、売上高が前期とほぼ横ばいの757億円となったものの、一部事業での減益や特別損失の計上により最終減益となりました。


※本記事は、nms ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第41期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. nms ホールディングスってどんな会社?


製造派遣等の人材ビジネスと、電子機器等の製造受託や電源製造を行うモノづくり基盤を併せ持つ企業です。

(1) 会社概要


1985年に前身企業が設立され、2004年に合併を経て日本マニュファクチャリングサービスとして事業を本格化しました。2007年の上場後、2010年と2011年に電子部品関連企業を統合しEMS事業を発足させました。2014年にPS事業も加え、2017年に持株会社体制へ移行して現在の社名となりました。

現在の従業員数はグループ全体で13,047名、単体で21名体制です。筆頭株主は資本業務提携関係にある事業会社のワールドホールディングスで、第2位は元代表取締役の小野文明氏、第3位は投資ファンドが名を連ねています。

氏名 持株比率
ワールドホールディングス 32.91%
小野 文明 18.73%
投資事業有限責任組合JAICサプライチェーンファンド 3.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長CEOは樋口晋平氏が務めています。社外取締役は5名で構成されています。

氏名 役職 主な経歴
樋口 晋平 代表取締役社長CEO 野村総合研究所、日本郵政キャピタル等を経て2025年に入社し、2026年4月より現職。
松本 正登 取締役COO 2004年に入社。海外子会社社長や同社代表取締役社長等を経て2026年4月より現職。
渡辺 一博 取締役CHRO 松下電器産業(現パナソニック)等を経て2018年にパワーサプライテクノロジーに入社。2026年4月より現職。
太田 聡 取締役 ソニー等を経て2013年にテーケィアールに入社。同社代表取締役社長を経て2020年6月より現職。


社外取締役は、大野一郎(元オルタステクノロジー専務取締役)、上條勉(元東芝執行役上席常務)、横山友之(横山経営会計事務所代表者)、渡邉雅之(弁護士法人三宅法律事務所シニアパートナー)、森井じゅん(森井会計事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「HS事業」、「EMS事業」、「PS事業」を展開しています。

HS事業

製造・技術者分野における人材派遣、請負、紹介などのマニュファクチャリングサービス全般を国内外で展開しています。機動的な人材確保や生産効率向上の複合提案に加え、外国人材の定着支援サービス等も提供し、製造業の顧客ニーズに対応しています。

人材の派遣や業務請負によるサービス提供の対価として、顧客企業から料金を受け取ります。運営は主に日本マニュファクチャリングサービスやnms エンジニアリングなどが担当しています。

EMS事業

電子機器の基板実装、成型、組み立てから試作や部品調達まで、電子機器製造受託サービスを幅広く提供しています。国内外のメーカーを顧客とし、一貫生産からプロセス単体、少量多品種まで柔軟な生産体制を敷いています。

顧客からの製造受託に伴う製品販売やサービス提供により収益を得ています。運営は主にTKRや、海外にある多数の現地生産子会社が担っています。

PS事業

各種カスタム電源、マグネットロール、トランスなどの電源関連製品の開発、設計、製造および販売を行っています。複合機などのドキュメント市場に加え、産業機器やサステナブル分野に向けた付加価値の高い製品も提供しています。

自社開発または受託による電源・電源関連部品の販売代金を顧客から受け取ることで収益を上げています。運営は主にパワーサプライテクノロジーや志摩電子工業などが展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は700億円台で安定して推移していますが、経常利益は直近で減益となっています。また、当期利益については、事業基盤の再構築に伴う特別損失の計上などが影響し、直近2期連続でマイナスとなるなど、収益性の改善が課題となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 633億円 790億円 729億円 757億円 757億円
経常利益 1億円 14億円 14億円 18億円 12億円
利益率(%) 0.2% 1.8% 1.9% 2.3% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 2億円 1億円 -6億円 -4億円

(2) 損益計算書


売上高は前期と同水準を維持していますが、売上総利益率は微増にとどまり、営業利益は減少しています。各事業領域において収益性の改善に向けた構造改革やコスト削減の取り組みが進行中です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 757億円 757億円
売上総利益 101億円 102億円
売上総利益率(%) 13.4% 13.4%
営業利益 18億円 17億円
営業利益率(%) 2.3% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が32億円(構成比37%)、業務委託費が8億円(同9%)を占めています。売上原価は655億円で、売上高に対する構成比は87%となっています。

(3) セグメント収益


HS事業は国内のエンジニア人材派遣の拡大や海外事業の伸長により増収増益となりました。一方、EMS事業は主要顧客の販売不振や在庫調整の影響で減収減益となり、PS事業は市場低迷により減収となったものの、拠点再編や原価低減により増益を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
HS事業 232億円 253億円 7億円 10億円 3.8%
EMS事業 343億円 332億円 7億円 4億円 1.2%
PS事業 183億円 172億円 12億円 12億円 6.9%
連結(合計) 757億円 757億円 18億円 17億円 2.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で生み出した資金を用いて借入の返済と投資活動を行っており、健全なキャッシュ・フロー状況と言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 14億円 32億円
投資CF -9億円 -9億円
財務CF -13億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は13.1%となっており、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ニッポンのモノづくり品質を世界へ」をキーワードに、ともに成長をめざすという「経営理念」を掲げています。HS事業・EMS事業・PS事業の多様な事業構造を進化させ、変化に対し柔軟かつ機動的に対応できる基盤を強化し、企業価値や株主価値の一層の向上を図ることを使命としています。

(2) 企業文化


事業間のシナジーを追求し、グループ経営と事業執行の分離による意思決定スピードの向上と責任の明確化を重視しています。また、社員一人ひとりの活躍を支えるため、「ダイバーシティ&インクルージョン」を主眼に据え、多様な価値観を活かしてアイデアや社会ニーズを経営に取り込む文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、これまで抱えてきた事業成長力の低下や財務体質の悪化といった課題に対応するため、「中期経営計画(2026-2028)」を策定しています。2026年度からの3年間を再建フェーズと位置づけ、規模の拡大よりも利益率の改善を重視する経営への転換を図り、安定的な財務基盤の構築をめざしています。

(4) 成長戦略と重点施策


再建フェーズにおける重点施策として、ガバナンス、事業基盤、財務基盤の3つの強化を掲げています。HS事業ではエンジニア領域へのシフトや高付加価値サービスの拡大、EMS事業では戦略拠点の強化や自動化等の生産性向上を進めます。財務面では、営業キャッシュ・フローの改善と有利子負債の削減を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人が輝き、成長実感が溢れる会社」をめざし、会社と従業員の持続的な成長につながる関係構築を推進しています。人材管理、目標管理、教育、人材交流などを体系化したプログラムを導入し、次世代人材の確保・育成と既存人材の能力開発を図ることで、従業員エンゲージメントの向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 51.0歳 8.5年 7,768,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 28.6%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社および連結子会社は、一部指標について対象者がいない、または公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、海外現地法人ローカル幹部比率(43.2%)、年次有給休暇取得率(42.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客の生産変動に係るリスク

同社の事業は、エレクトロニクス分野や自動車関連分野における顧客の生産動向に大きく影響を受けます。世界経済や通商政策等に伴う顧客の大規模かつ急激な生産変動、生産地域および品目の変更等が生じた場合、収益や稼働率の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替変動に係るリスク

海外に多数の連結子会社を展開しており、外貨建てで行われる仕入や販売等の取引、ならびに現地通貨建て財務諸表の円換算において為替変動の影響を受けます。グループ内での外国通貨の融通や為替持ち高の圧縮等でリスク軽減を図っていますが、急激な変動が生じた場合は業績に影響が及ぶおそれがあります。

(3) 原材料・部材の調達と価格変動

製品の製造に必要な原材料や部材は、市況や産出国の事情により流通量や価格が変動します。調達コストの高騰分を販売価格に完全に転嫁できない場合や、部材の入手困難によって顧客の生産調整が行われ同社の稼働率が低下した場合には、収益が圧迫され、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 法的規制等への対応に係るリスク

HS事業における製造派遣事業は、労働者派遣法等の関係法令による厳格な規制を受けます。労働者の権利保護を目的とした法改正などに伴い、運用面での大きな変更が求められたり、コンプライアンス上の対応に遅れが生じたりした場合は、運営コストの増加や稼働停止等を招くおそれがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。