nmsホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

nmsホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のnms ホールディングスは、製造派遣・請負の人材ビジネス、電子機器製造受託、電源事業を展開する企業グループです。2025年3月期は、各事業の需要が堅調に推移し増収増益(経常利益ベース)となりましたが、特別損失の計上等により最終損益は赤字に転落しました。


※本記事は、nms ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第40期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. nms ホールディングスってどんな会社?

人材派遣・請負事業を祖業とし、M&A等を通じてモノづくり(EMS・電源)分野へ展開した独自のビジネスモデルを持つ企業です。

(1) 会社概要

1985年に前身となるテスコが設立され、2002年に人材ビジネスを行う日本マニュファクチャリングサービスへ商号変更しました。2007年にジャスダック証券取引所へ上場後、2010年に志摩電子工業、2011年にテーケィアール(現TKR)を子会社化しEMS事業を開始しました。2014年にはパナソニックから電源事業を譲り受け、2017年に持株会社体制へ移行しました。

連結従業員数は12,608人、単体では24人です。筆頭株主は同業で資本業務提携先のワールドホールディングス、第2位は元代表取締役の小野文明氏、第3位は投資ファンドの投資事業有限責任組合JAICサプライチェーンファンドです。

氏名 持株比率
ワールドホールディングス 19.37%
小野 文明 18.73%
投資事業有限責任組合JAICサプライチェーンファンド 8.51%

(2) 経営陣

同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は河野 寿子氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
河野 寿子 代表取締役全社統括 日立金属コミュニケーション部長等を経て、2016年同社入社。2024年12月より現職。
太田 聡 取締役事業管掌 ソニー入社。米国法人GM等を経てTKR代表取締役。2020年6月より現職。
渡辺 一博 取締役事業管掌 松下電器産業入社。パナソニックの事業部経営戦略総括等を経て、2020年6月より現職。
小野 文明 取締役 テクノブレーン取締役等を経て、2002年日本マニュファクチャリングサービス社長。2024年12月より現職。


社外取締役は、中村 亨(公認会計士)、根本 豊(元日本電気経営監査本部シニアマネージャー)、大原 達朗(アルテホールディングス代表取締役)、鈴木 真紀(弁護士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「HS事業」「EMS事業」「PS事業」および「その他」事業を展開しています。

HS事業(ヒューマンソリューション事業)

製造派遣・製造請負を柱とし、エンジニア派遣や修理・カスタマーサービスなどを日本、中国、ASEAN諸国で展開しています。顧客ニーズに合わせた人材確保や、グループ内ノウハウを活かした生産効率向上の提案も行っています。

顧客企業からの派遣料や請負代金などが主な収益源です。運営は主に日本マニュファクチャリングサービス、nms エンジニアリング、および海外現地法人が行っています。

EMS事業(エレクトロニクスマニュファクチャリングサービス事業)

電子機器の基板実装、プレス、成型、組立などの製造受託サービスを提供しています。中国、マレーシア、ベトナム、米国、メキシコに生産拠点を持ち、車載関連機器や3Dプリンター等の製造を行っています。

顧客メーカー等からの製造受託費や製品販売代金が収益源です。運営は主にTKR、志摩電子工業、および各国の海外生産子会社が行っています。

PS事業(パワーサプライ事業)

カスタム電源、マグネットロール、各種トランス等の開発・設計・製造・販売を行う電源専業メーカー事業です。産業機器の電動化に対応するEV関連製品の開発など、新規分野への参入も進めています。

顧客への製品販売代金が収益源です。運営は主にパワーサプライテクノロジー、および中国の生産子会社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上収益はM&Aや新規受注により拡大傾向にあり、700億円台で推移しています。経常利益は一時的な落ち込みから回復基調にありますが、当期は特別損失の計上等により最終損益が赤字となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 549億円 633億円 790億円 729億円 757億円
経常利益 1.6億円 1.2億円 14億円 16億円 17億円
利益率(%) 0.3% 0.2% 1.8% 2.2% 2.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.7億円 1.8億円 1.6億円 1.2億円 -6.4億円

(2) 損益計算書

売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。販管費の増加が見られますが、営業利益は一定水準を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 729億円 757億円
売上総利益 93億円 100億円
売上総利益率(%) 12.8% 13.2%
営業利益 19億円 17億円
営業利益率(%) 2.6% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が31億円(構成比37%)、その他経費が16億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益

EMS事業とPS事業が増収増益となり全体の業績を牽引しました。一方、HS事業は売上が微増したものの、利益面では減少しており、セグメント間で業績の明暗が分かれる結果となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
HS事業 227億円 232億円 11億円 7.3億円 3.2%
EMS事業 343億円 361億円 5.8億円 6.8億円 1.9%
PS事業 159億円 164億円 7.9億円 11億円 6.8%
連結(合計) 729億円 757億円 19億円 17億円 2.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスであり、本業で得た資金で投資と借入返済を行っている健全型です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 48億円 14億円
投資CF -11億円 -9.0億円
財務CF -31億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は14.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「ニッポンのモノづくり品質を世界へ」をキーワードに、ともに成長をめざすという経営理念を掲げています。日本のモノづくりの品質を世界基準で展開し、ステークホルダーと共に成長することを目指しています。

(2) 企業文化

中期経営方針として「私たちの約束」を掲げ、株主利益の追求による誠実な会社への変革、社員還元による豊かさの実感、外部環境変化に強い体質への強化を重視しています。また、不正事案を契機に「新生・nms」として、ガバナンス強化と企業風土改革に取り組む姿勢を示しています。

(3) 経営計画・目標

2025年度から2027年度を対象とする新中期経営計画を策定しています。最終年度となる2027年度の目標として以下の数値を掲げています。
* 営業利益50億円超
* フリーキャッシュ・フロー80億円規模の創出
* 有利子負債50億円削減
* 自己資本比率20%
* ネットD/Eレシオ1.5倍

(4) 成長戦略と重点施策

成長実現に向け、ワールドホールディングスとの業務提携によるHS事業の拡大や、EMS事業におけるグローバル生産体制(ベトナム・北米等)の収益化、PS事業でのEV関連製品開発などを推進します。また、不採算拠点の整理や有利子負債の削減による財務体質改善、ガバナンス強化にも重点的に取り組みます。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

成長の源泉である人材の定着に向け、多様な働き方やキャリア形成ができる仕組みづくりを進めています。特に、ワールドホールディングスとの連携による採用機能強化や、グループ内での人材交流、エンジニア人材の育成・採用強化に取り組んでいます。また、社員還元施策や対話を通じた風土改革も重視しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 50.6歳 7.8年 7,336,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -

※男性育児休業取得率、男女賃金差異について、「-」は対象となる従業員がいないことを示しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(9.1%)、海外現地法人ローカル幹部比率(44.4%)、年次有給休暇取得率(40.4%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客の生産変動に係るリスク

同社の事業は顧客の生産動向に大きく影響を受けます。世界経済の減速やサプライチェーンの変化により顧客が大幅な減産や生産拠点の変更を行った場合、受注減少や稼働率低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外への事業展開に係るリスク

北中米、中国、ASEAN等で事業を展開しており、現地の法規制変更、政治経済情勢の悪化、為替変動等の影響を受けるリスクがあります。特に米国の保護主義政策強化に伴う関税影響等は、事業活動の制限やコスト増加につながる可能性があります。

(3) 社会的な信用に係るリスク

元代表取締役による不適切な経費使用等の不正事案が発生しており、これに伴う社会的信用の低下が懸念されます。再発防止策を講じていますが、対応が不十分な場合、取引先や金融機関との関係悪化、受注減少等を招く可能性があります。

(4) 原材料・部材の調達・価格変動リスク

半導体や電子部品などの部材調達難や価格高騰が発生した場合、生産遅延やコスト増加が生じる可能性があります。価格転嫁が遅れたり、十分に行えなかったりする場合、利益率が低下するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。