データ・アプリケーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

データ・アプリケーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のデータ交換系ミドルウエア開発企業です。EDI(電子データ交換)やデータ連携基盤を主力とし、企業のDXを支援しています。直近の決算では、AI企業の子会社化に伴い連結決算へ移行しました。売上高は26億円、経常利益は3.6億円となり、AI技術との融合による事業拡大を進めています。


※本記事は、株式会社データ・アプリケーション の有価証券報告書(第40期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. データ・アプリケーションってどんな会社?


企業間データ交換(EDI)やデータ連携ミドルウエアの開発・販売を主力とし、高い市場シェアを持つ独立系ソフトウエア企業です。

(1) 会社概要


1982年に設立し、1989年に主力製品『ACMS』を発売しました。2007年にジャスダック(現スタンダード)へ上場し、2016年にはデータ連携プラットフォーム『ACMS Apex』をリリースするなど製品ラインナップを拡充しています。2024年7月にはAI開発を行うWEELを完全子会社化し、連結決算体制へ移行しました。

2025年3月31日現在の連結従業員数は150名(単体134名)です。大株主構成は、筆頭株主が創業者の橋本慶太氏で、第2位は光通信の共同保有者である投資会社、第3位は光通信となっています。

氏名 持株比率
橋本 慶太 11.76%
UH Partners 2 9.08%
光通信 7.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は安原武志氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
安原 武志 代表取締役社長執行役員 日商エレクトロニクス、日本オラクルを経て2009年同社入社。営業本部長などを歴任し、2020年4月より現職。
金子 貴昭 取締役経営企画管理本部管掌 NOK、アマナを経て2006年同社入社。経営管理部門を統括し、2025年4月より現職。
岩下 誠 取締役執行役員 サイプレス・ソリューションズを経て1995年同社入社。技術本部長などを歴任し、2025年4月よりカスタマーサービス本部長。


社外取締役は、板野泰之(元野村総合研究所取締役専務執行役員)、浅野昌孝(公認会計士)、本村健(弁護士・岩田合同法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ソフトウエア関連事業」の単一セグメントで事業を展開していますが、売上区分として「リカーリング」「パッケージ」「サービスその他」に分類されています。

(1) リカーリング事業


EDI(電子データ交換)やデータ連携を行うミドルウエア製品において、サブスクリプション形式での利用ライセンス提供や、製品の保守サポートサービスを提供しています。顧客は製造、流通、金融など多岐にわたる業界の企業です。

収益は、顧客企業からのサブスクリプション利用料や、保守契約に基づく定期的なメンテナンス料から構成され、安定的なストック収益となります。運営は主にデータ・アプリケーションが行っています。

(2) パッケージ事業


データ連携基盤『ACMS Apex』やデータハンドリングプラットフォーム『RACCOON』などのソフトウエア製品を、売り切りのライセンス形式で販売しています。企業の基幹システムやクラウドサービス間のデータ連携ニーズに対応します。

収益は、製品導入時に発生するライセンス販売代金です。システムインテグレーター等のパートナー(販売代理店)を経由した間接販売が主体となっています。運営は主にデータ・アプリケーションが行っています。

(3) サービスその他


ソフトウエア製品の導入支援や、顧客ごとのカスタマイズ開発、コンサルティングサービスを提供しています。また、子会社のWEELを通じ、生成AIを活用したシステム受託開発やAIコンサルティング、AI専門メディアの運営も行っています。

収益は、役務提供に対する対価や受託開発費です。運営はデータ・アプリケーションおよび子会社のWEEL、デジタルトランスコミュニケーションズ、メロンなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2024年3月期は連結財務諸表を作成していないため、表には記載していません。直近の2025年3月期より、WEEL社の子会社化に伴い再び連結決算へ移行しました。過去の連結期間と比較すると、売上高は緩やかに拡大傾向にありますが、AI関連などの先行投資や体制変更の影響もあり、利益率は変動しています。

項目 2025年3月期 2023年3月期 2022年3月期 2021年3月期
売上収益(または売上高) 26億円 25億円 23億円 20億円
経常利益 4億円 5億円 5億円 2億円
利益率(%) 13.8% 20.3% 19.9% 10.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 2億円 3億円 2億円

(2) 損益計算書


前期は単体、当期は連結決算のため単純比較はできませんが、概況を分析します。売上高は前期単体と比較して減少していますが、これは前期に大型案件の特需があった反動が含まれています。AI事業への投資や連結化に伴うのれん償却等の影響もあり、利益率は低下していますが、60%を超える高い売上総利益率を維持しています。

項目 2025年3月期 2024年3月期
売上高 26億円 29億円
売上総利益 18億円 21億円
売上総利益率(%) 69.5% 72.6%
営業利益 3億円 5億円
営業利益率(%) 12.6% 18.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が4億円(構成比30%)、研究開発費が3億円(同19%)を占めています。新製品開発やAI技術への投資を積極的に行っていることが伺えます。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、売上区分別の状況を見ると、サブスクリプションを含む「リカーリング」が売上の約76%を占め、安定収益基盤となっています。「パッケージ」は前期の特需剥落により減少しましたが、「サービスその他」はAI子会社の寄与により大幅に増加しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
リカーリング 21億円 20億円
パッケージ 8億円 5億円
サービスその他 0億円 1億円
連結(合計) 29億円 26億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得たキャッシュを、借入返済や投資活動に充当している「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2025年3月期
営業CF 1億円
投資CF -3億円
財務CF -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「データと一緒にワクワクする未来へ!」をありたい姿として定義し、社会インフラを支えるソフトウエアの提供を通じて、社会の利便性や生産性向上を目指しています。この実現に向け、2028年3月期までの中期ビジョンとして「個人と組織がともに成長し続ける DIGITAL WORK を実現する」を掲げています。

(2) 企業文化


「未来情報社会創造はひとりひとりの喜びから」を企業理念とし、社員一人一人が顧客や社会の課題に向き合う姿勢を重視しています。自律型人材の育成を方針とし、自ら考え判断し行動できる人材を評価する文化があります。また、ウェルビーイングの推進や自由な働き方の尊重など、社員が能力を発揮しやすい環境づくりに取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2028年3月期を最終年度とする中期経営計画において、以下の数値目標を掲げています。

* 連結売上高:60億円
* 連結EBITDA:10億円
* ROE:15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「DIGITAL WORK」の実現に向け、「事業領域の拡大・開拓」「収益安定性の向上」「人的資本経営の推進」の3つを基本方針としています。特に、既存のデータ連携事業に加え、AI技術を活用した新サービスの開発やM&Aによる事業領域の拡張を推進し、企業成長と収益性の両立を図っていく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


少数精鋭の組織であることから、専門性が高く実践的な教育と、自ら考え行動する「自律型人材」の育成を重視しています。また、多様性の向上やエンゲージメント向上を掲げ、リモートワークや副業制度の導入、処遇改善など、柔軟で働きがいのある環境整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.7歳 10.8年 6,950,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(22.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場動向と技術革新への対応


生成AIやクラウド技術の急速な進化により、市場競争が激化しています。技術や製品の陳腐化、競合他社による新製品投入等の影響を受ける可能性があります。同社はAI子会社の活用や研究開発体制の強化により、新技術への対応と競争優位性の確保に努めています。

(2) 製品の致命的な不具合


ソフトウエア製品やAIソリューションにおいて、予期せぬ不具合(バグ)が発生する可能性があります。特にAIは不確実性を含むためリスクとなります。不具合が生じた場合、対応コストの発生や信頼低下により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。ISO9001に基づく品質管理やテスト体制の強化でリスク低減を図っています。

(3) パートナー販売への依存


同社の製品販売は、システムインテグレーター等のパートナーを経由した間接販売が主体です。パートナーとの関係悪化やパートナー自身の経営状況の変化、競合他社との提携などが生じた場合、同社の販売実績や業績に影響を与える可能性があります。パートナーとの関係強化や付加価値の高い提案支援に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。