UTグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

UTグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場し、製造業向けの人材派遣・業務請負を主力とする企業です。2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比増収となる一方、経常利益は減益となりました。M&Aや海外事業の再編を進めつつ、半導体や自動車関連の人材需要に対応しています。


※本記事は、UTグループ株式会社 の有価証券報告書(第18期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. UTグループってどんな会社?


同社グループは、製造業向けの人材派遣・請負事業を中心に、地域密着型サービスや海外事業などを展開しています。

(1) 会社概要


1995年にエイムシーアイシー有限会社として創業し、1996年に日本エイムへ改組しました。2003年にアウトソーシング業界初となるJASDAQ市場への上場を果たし、2007年に持株会社体制へ移行しました。その後、積極的なM&Aにより事業を拡大し、2019年には東京証券取引所市場第一部へ市場変更を行いました。

連結従業員数は36,344名、単体では368名です。筆頭株主は創業者の若山陽一氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位以下も信託銀行や資産管理会社等の金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
若山 陽一 22.89%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.08%
日本カストディ銀行(信託E口) 5.56%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は外村学氏です。取締役5名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
若山 陽一 取締役会長(代表取締役) 1995年エイムシーアイシー有限会社設立、代表取締役社長。1996年日本エイム(現UTエイム)代表取締役社長。2007年同社代表取締役社長を経て、2024年4月より現職。
外村 学 取締役社長(代表取締役) 1991年リクルート入社。同社人事部長などを経て、2012年ベルシステム24執行役。2017年同社入社、上席執行役員社長室長。2024年4月より現職。


社外取締役は、井垣太介(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 法人社員弁護士)、島宏一(元リクルート執行役員)、林貴子(元新生銀行人事担当チーフオフィサー・常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「マニュファクチャリング事業」「エリア事業」「ソリューション事業」「日系人材事業」「ベトナム事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) マニュファクチャリング事業


主に国内の産業・業務用機械、エレクトロニクスおよび輸送機器関連の大手メーカーを顧客とし、製造現場向けの人材派遣・業務請負サービスを提供しています。

収益は、顧客企業から受け取る派遣料金や請負代金から成ります。運営は、同社連結子会社のUTエイムが行っています。

(2) エリア事業


国内各地域の製造業やサービス業を主な顧客とし、地域密着型の人材派遣・業務請負サービスを提供しています。

収益は、地域の顧客企業に対する人材派遣や業務請負による対価です。運営は、同社連結子会社のUTエージェント(旧UTコネクトおよびUTパートナーズ)が行っています。

(3) ソリューション事業


国内の大手電機メーカー等を主な顧客とし、構造改革に伴う人材の受け入れや人材派遣・業務請負サービスを提供しています。

収益は、顧客企業からの人材サービスの対価として得ています。運営は、同社連結子会社のUT東芝、FUJITSU UT、UT MESC、UT エフサス・クリエ、UTハイテスなどが行っています。

(4) 日系人材事業


国内の産業・業務用機械、エレクトロニクスのメーカーを主な顧客とし、日系人の人材派遣・業務請負サービスを提供しています。

収益は、顧客企業への人材派遣および業務請負サービスの提供による対価です。運営は、同社連結子会社のUTスリーエムが行っています。

(5) ベトナム事業


ベトナム国内のメーカーを顧客とし、同国内における人材サービスを提供しています。

収益は、ベトナム現地での人材サービス提供による対価です。運営は、同社連結子会社が行っています(なお、一部子会社は2025年3月に売却されました)。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では2023年3月期に赤字を計上しましたが、直近2期は黒字を確保しており、回復基調にあります。特に2025年3月期は、売上高が過去最高水準に達する一方で、経常利益は前期比で減少しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,151億円 1,568億円 1,706億円 1,670億円 1,947億円
経常利益 72億円 60億円 88億円 94億円 83億円
利益率(%) 6.2% 3.8% 5.2% 5.6% 4.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 66億円 49億円 -13億円 92億円 108億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は約16.6%増加し、売上総利益も増加しましたが、利益率はやや低下しました。営業利益は減少し、営業利益率も低下しています。これは事業規模拡大に伴うコスト増や構造改革の影響が含まれている可能性があります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,670億円 1,947億円
売上総利益 304億円 319億円
売上総利益率(%) 18.2% 16.4%
営業利益 93億円 81億円
営業利益率(%) 5.6% 4.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与が73億円(構成比31%)、採用関連費が56億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収を達成しました。特にベトナム事業と日系人材事業が高い増収率を示しています。利益面では、ソリューション事業や日系人材事業が大幅な増益となる一方、主力であるマニュファクチャリング事業やエリア事業は減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
マニュファクチャリング事業 654億円 659億円 61億円 55億円 8.4%
エリア事業 558億円 672億円 20億円 10億円 1.4%
ソリューション事業 179億円 221億円 1億円 7億円 3.0%
日系人材事業 77億円 103億円 1億円 4億円 4.2%
ベトナム事業 109億円 292億円 1億円 5億円 1.8%
連結(合計) 1,670億円 1,947億円 93億円 81億円 4.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「改善型」のキャッシュ・フロー状態にあります(営業CF+、投資CF+、財務CF-)。本業で現金を生み出しつつ、資産売却等による収入もあり、借入金の返済や配当支払い等の財務活動を進めています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 40億円 57億円
投資CF -2億円 59億円
財務CF -64億円 -91億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は31.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「はたらく意欲を持ったすべての人にスキルアップやキャリア形成の機会が等しく提供され、公正に処遇される社会の実現」を企業目的としています。グループミッションとして「はたらく力で、イキイキをつくる。」を掲げ、2030年に向けた長期経営ビジョンとして「これからのはたらき方のプラットフォームになる」を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「はたらく人」と「企業」双方を顧客として捉える「ツインカスタマー戦略」を推進しています。働く人の意欲と帰属意識を高め、働く人自らが事業成長を牽引する姿を目指しており、働く人との関係を一時的なものではなく、生涯を通じたパートナーシップとして構築することを重視しています。

(3) 経営計画・目標


2028年3月期を最終年度とする第5次中期経営計画を策定しています。働く人への人的資本投資を通じて持続的な事業成長基盤を構築することを目的とし、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:2,930億円
* 営業利益:253億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:169億円
* EPS:357.39円
* 技術職社員数(国内):56,700名

(4) 成長戦略と重点施策


「モーター・エナジー事業」「セミコンダクター事業」「エージェント事業」「ネクストキャリア事業」の4つを重点領域とし、各市場ニーズに合わせた事業戦略を推進します。また、働く人へのサービス基盤を強化し、即日就業やポイント制度などを導入することで、働く人との関係強化を図ります。さらに、景気変動に強い事業基盤の構築やM&Aによる事業拡大も進めていきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「働く意欲を持ったすべての人」に対して、年齢や性別、国籍等に関わらず就業機会を提供し、その可能性を見出すことを採用方針としています。育成においては、適切な職場への配属やキャリア支援制度を通じて、公平な機会提供と挑戦できる風土づくりを推進しています。また、顧客企業と協働し、安全で働きやすい職場環境の継続的な改善に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.6歳 5.9年 5,132,000円


※平均年間給与は、賞与、基準外賃金及び確定拠出型年金の掛金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 29.1%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.5%
男女賃金差異(正規雇用) 78.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 58.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技術職社員の月間定着率(95.3%)、育児休業復職率(84.7%)、無期雇用比率(81.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の市場への依存について


半導体・電子部品関連の売上比重が高いため、シリコンサイクル等の景気変動の影響を受ける可能性があります。これに対し、事業領域を自動車等へ広げたり、エンジニア派遣やソリューション事業を強化することでリスク分散を図っています。

(2) 業界の競争の激化、競合について


製造派遣・エンジニア派遣領域では、競合他社の営業強化やM&Aによる規模拡大が見られ、競争が激化しています。同社グループは、既存顧客のシェア拡大や新規開拓、M&Aによって対抗していく方針です。

(3) 許認可について


労働者派遣事業や有料職業紹介事業の許可を取得して事業を行っていますが、法令違反等により許可の取り消しや事業停止命令を受けた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。コンプライアンス教育の徹底等により対策を講じています。

(4) 技術職社員とその雇用について


業務を遂行する技術職社員の確保が困難になったり、定着率が低下したりした場合、採用費の増加や機会損失につながる可能性があります。労働人口の減少もリスク要因ですが、多様な人材の活用や地域ごとの採用強化により対応を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。