UTグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

UTグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

UTグループは東京証券取引所プライム市場に上場し、大手自動車・半導体製造業等に向けたモノづくり領域の人材サービスを展開しています。直近の業績は、売却事業の反動減等により減収となったものの、稼働人員の適正化や単価交渉、コスト抑制が奏功し大幅な増益を達成しました。人的資本への投資で更なる成長を目指します。


※本記事は、UTグループ株式会社の有価証券報告書(第19期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. UTグループってどんな会社?


同社は、製造業向けの派遣・請負を中心とした人材サービスを提供しています。

(1) 会社概要


1995年にエイムシーアイシー有限会社として設立し、2003年にアウトソーシング業界初の株式店頭上場を果たしました。2007年に持株会社化してユナイテッド・テクノロジー・ホールディングス(現UTグループ)を設立。近年はM&Aや組織再編を通じて製造業向け人材サービスを拡大しています。

従業員数は連結34,772名、単体247名です。大株主については、筆頭株主は創業者の若山陽一氏で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
若山陽一 22.71%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.61%
日本カストディ銀行(信託口) 7.17%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は外村学氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
外村学 取締役社長(代表取締役) リクルートにて人事部長等を歴任後、ベルシステム24常務執行役員等を経て2017年入社。社長室長等を経て2024年4月より現職。
若山陽一 取締役会長(代表取締役) 1995年エイムシーアイシー有限会社を設立し代表取締役社長に就任。2007年同社代表取締役社長を経て2024年4月より現職。


社外取締役は、井垣太介(西村あさひ法律事務所法人社員弁護士)、林貴子(三井住友フィナンシャルグループ執行役員)、石井隆一(ティーガイア社外取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「モーター・エナジー事業」「セミコンダクター事業」「エージェント事業」「ネクストキャリア事業」の報告セグメントを展開しています。

(1) モーター・エナジー事業


主に大手自動車製造業向けの人材サービスを提供しており、顧客は自動車製造関連のメーカーです。業界特有の生産変動に対応する短納期での大規模動員という人材ニーズと、求職者のニーズをマッチングさせています。

運営はUTエイム、UTスリーエムが行っています。顧客企業の生産計画に応じた人材派遣や請負契約により、派遣料金や請負代金として収益を得ています。

(2) セミコンダクター事業


主に大手半導体製造業向けの人材サービスを提供しており、顧客は半導体製造関連のメーカーです。全国的に不足している半導体人材の確保・育成を行い、エンジニア人材育成による中長期的な人材ニーズに応えています。

運営はUTエイム、UT東芝が行っています。半導体エンジニアの派遣や請負等を通じて、顧客企業からの派遣料金や請負代金として収益を得ています。

(3) エージェント事業


地方の中堅・中小企業を主要顧客とし、地域密着型の人材サービス等を提供しています。人手不足により採用に課題を抱えている企業と、地元で働きたい人をマッチングさせることで課題解決を図っています。

運営はUTエージェントが行っています。製造派遣に加え、有料職業紹介事業を行っており、人材紹介手数料や派遣料金として収益を得ています。

(4) ネクストキャリア事業


国内の大手電機メーカーを主要顧客とし、大手製造業の構造改革に伴う人材の受け入れや人材サービス等を提供しています。受け入れた人材がスキルを活かせる新たな職場を提供し、企業横断での最適な人員配置を目指しています。

運営はFJUTプラス、UTハイテスが行っています。富士通グループや日立グループとの合弁会社で構成され、人材派遣や業務請負等のサービス対価として収益を得ています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が1500億円台から1900億円台で推移し、M&Aや事業再編の影響を受けつつも成長基盤を維持しています。経常利益は60億円から108億円へと順調に拡大しており、利益率も直近では6.5%まで改善し収益性の向上が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1568億円 1706億円 1670億円 1947億円 1669億円
経常利益 60億円 88億円 94億円 83億円 108億円
利益率(%) 3.8% 5.2% 5.6% 4.2% 6.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 49億円 -13億円 92億円 108億円 46億円

(2) 損益計算書


売上高は売却事業の反動減等により前期比で減少したものの、売上総利益は微増となり、売上総利益率が改善しています。単価交渉の進展や稼働人員の適正化、コスト抑制が奏功し、営業利益および営業利益率ともに向上しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1947億円 1669億円
売上総利益 319億円 320億円
売上総利益率(%) 16.4% 19.2%
営業利益 81億円 106億円
営業利益率(%) 4.1% 6.4%

(3) セグメント収益


主力事業であるモーター・エナジー事業およびセミコンダクター事業が着実に売上を伸ばしています。エージェント事業およびネクストキャリア事業は減収となったものの、組織再編や業務の効率化を進めることでグループ全体の利益向上に寄与する体制を構築しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
モーター・エナジー事業 463億円 520億円
セミコンダクター事業 364億円 376億円
エージェント事業 672億円 626億円
ネクストキャリア事業 155億円 147億円
ベトナム事業 292億円 -
調整額 0億円 -
連結(合計) 1947億円 1669億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の健全型を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 57億円 76億円
投資CF 59億円 -3億円
財務CF -91億円 -95億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は26.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.8%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「はたらく意欲を持ったすべての人にスキルアップやキャリア形成の機会が等しく提供され、公正に処遇される社会の実現」を企業目的として掲げています。グループミッションである「はたらく力で、イキイキをつくる。」を実現するため、「はたらく人」と「企業」双方を顧客として捉える独自の「ツインカスタマー戦略」を推進し、事業展開を行っています。

(2) 企業文化


同社グループは、はたらく人一人ひとりが自分の可能性を信じ、挑戦によって成長し、自らの価値を高めていくことを重視する企業文化を持っています。失敗を糧にして何度でも挑戦できる制度や仕組みを整備し、誰もが常に前向きに挑戦できる組織風土の醸成に努めています。また、多様な人材が活躍しチームや組織の力が高まるよう、組織として真摯に向き合う姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2030年に向けた長期経営ビジョンとして「これからのはたらき方のプラットフォームになる」を掲げています。これを実現するため、2029年3月期を最終年度とする第5次中期経営計画において、以下の財務目標および非財務目標を設定しています。

* 売上高:1,850億円
* 営業利益:150億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:91億円
* 入社数:19,400人
* 離職率:3.9%
* 在籍数:38,000人

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、求職者にとっての就業選択肢の最大化を図るため、製造現場における多様な職場とキャリア選択を可能とする独自プラットフォーム「貯まるワーク」の構築を中核戦略と位置付けています。働く時間に応じた株式付与等の仕組みを通じて求職者の会員化を促進し、長期的なパートナーシップを構築します。これにより、会員の定着率向上や採用コストの抑制を図り、安定した収益基盤の維持・拡充と成長分野への積極的な投資を両立させて持続的な企業価値の向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材を中長期的な企業価値向上の源泉となる最も重要な経営資本と位置付け、事業戦略と一体となった人材戦略を推進しています。「はたらく人が主役」という理念のもと、プラットフォーム「貯まるワーク」を通じて自由異動の促進や選択可能な雇用形態の拡充を図り、キャリア選択肢を最大化しています。また、独自の株式報酬制度を通じて会社の成長の成果をはたらく人と共有し、エンゲージメントと帰属意識の向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.3歳 7.2年 4,514,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 30.6%
男性育児休業取得率 52.2%
男女賃金差異(全労働者) 62.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 65.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 35.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員の女性比率(27.9%)、育児休業復職率(59.8%)、平均残業時間(11.8時間/月)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の市場への依存


同社グループは、半導体・電子部品関連の売上高の比重が高いため、半導体業界特有のシリコンサイクルと呼ばれる景気変動の影響を受ける可能性があります。このリスクを軽減するため、自動車等の製造業全般へ事業領域を広げ、エンジニア派遣領域の拡大などを進めています。

(2) 有能な人材の確保と維持


顧客企業の人材需要を取り込み事業規模を拡大する中で、経営管理や事業運営を行う人員が想定以上に流出するなど、安定的な人材確保ができない場合、業務遂行に支障をきたし持続的成長を妨げる可能性があります。柔軟な人事制度の設計やシステム化による体制構築を進めています。

(3) 製造業の生産変動と待機人員の発生


顧客である国内メーカーの減産に伴い、契約数が減少する傾向があります。同社が雇用する技術職社員は無期雇用を原則としているため、配置転換が円滑に進まない場合は待機人員が発生し、収益を圧迫するリスクがあります。顧客とパートナーシップを構築し安定的な人材供給を目指しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。