※本記事は、アステリア株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 企業概要:どんな会社?
アステリアは、1998年の創業以来「ソフトウェアで世界をつなぐ」をコンセプトに、ソフトウェア技術とインターネット技術を中核とした開発・販売を行っています。企業情報システムやクラウドサービス、デジタル機器などを連携させるためのソフトウェアを市場に提供しています。
単体従業員数は115名、連結従業員数は145名です。セグメントはソフトウェア事業、投資事業の2つです。
同社グループは、前連結会計年度より事業構造改革を実施し、非中核事業の売却を通じて収益構造の改善を図っています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
アステリアは、ソフトウェア開発を中核とする企業として、人材を重要な経営資源と位置づけています。専門性の高い技術者や高度専門人材が活躍できるような報酬制度や育成方針が特徴です。多様な働き方を支援する環境も整備されており、社員のウェルビーイングと生産性向上を両立させています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社は、平均勤続年数と平均年齢から、比較的長く勤める社員が多い傾向が見られます。多様な働き方を支援する環境が、人材の定着に寄与している可能性が考えられます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 8,126,954円 |
| 平均勤続年数 | 9.5年 |
| 平均年齢 | 41.9歳 |
| 単体従業員数 | 115人 |
| 連結従業員数 | 145人 |
| 単体のグループ内比率 | 79.3% |
退職給付制度に関する記載はありません。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
アステリアグループは「ソフトウェアで世界をつなぐ」を経営理念とし、製品開発に特化した事業モデルを展開しています。競争優位の源泉をソフトウェアを生み出す技術者および関連する高度専門人材と位置づけ、人材戦略を経営戦略と一体不可分なものとして設計しています。
中期的な研究開発・投資の重点領域である「4D」(Data, Device, Decentralized, Design)を実現するため、人材戦略として4つの柱を据えています。具体的には、「ソフトウェア技術者・AI人材の継続的な確保と育成」「グローバル人材の確保とグローバル展開を支える組織能力の強化」「ウェルビーイングによる生産性向上」「ダイバーシティの推進を通じた多様な価値創出力の強化」です。
報酬制度は、2013年から導入しているジョブ型のオンライン評価システムに基づく成果連動型を採用しています。年齢・性別・国籍・在籍年数等の属性ではなく、担う職務の難易度、責任範囲および遂行成果に基づいて基本給を決定しています。これにより、若手や中途入社者の早期登用、高度専門人材の市場価値に即した処遇を可能にしています。
社員の年俸は、同社グループの業績および各人の職務成果を反映する設計とし、業績賞与により企業価値向上の成果が社員に還元される仕組みです。採用・昇進・処遇の各段階において、属性を理由とする差別を一切行わず、同一職務・同一成果に対する同一処遇を徹底しています。ウェルビーイングを支える働き方支援として、テレワークに必要な機器・通信費等の補助、勤続6年以上の社員を対象とする1ヶ月のサバティカル休暇、誕生日休暇、短時間勤務・在宅勤務・子の看護休暇等の子育て支援を整備しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体のデータを示します。男性労働者の育児休業取得率は、公表義務の対象ではないため記載を省略しています。また、常時雇用する労働者が101人以上300人以下の事業主のため、労働者の男女の賃金の差異についても記載を省略しています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 26.2% |
多様性・登用
数値はすべてアステリア株式会社単体です。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職(リーダー職以上)の女性比率 | 26.2% |
| 外国籍比率 | 8.0% |
育児・介護支援
数値はすべてアステリア株式会社単体です。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 育児休業からの復帰率 | 100.0% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
アステリアは、ソフトウェア技術とインターネット技術を中核に、企業情報システムやクラウドサービス、デジタル機器などを「つなぐ」ためのソフトウェアの開発と販売を行っています。個別の企業向けの受託開発ではなく、不特定多数向けのパッケージソフトウェアやクラウドサービスを提供する「製品開発」を事業の柱としています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、「ソフトウェア事業」と「投資事業」の2つのセグメントで事業を展開しています。主力であるソフトウェア事業の着実な成長に加え、投資事業セグメントにおける評価益の計上により、業績を伸長させています。
ソフトウェア事業
本事業は、データ連携ミドルウェア「ASTERIA Warp」シリーズ、デジタルコンテンツプラットフォーム「Handbook」シリーズ、モバイルアプリ作成ツール「Platio」シリーズの3つの主力製品を中心に展開しています。また、ノーコードアプリ開発ツール「Click」、AI搭載IoT統合エッジウェア「Gravio」、ロボット開発環境シミュレーション・プラットフォーム「Artefacts」、ステーブルコイン決済ゲートウェイ「JPYC Gateway」、生成AI導入支援コンサルティングサービス「AI活用変革センター」といった新領域の製品・サービスも提供しています。
収益は、主にライセンス、サブスクリプション、サポート、コンサルティングの対価から得ています。特にサブスクリプション型サービスが収益拡大を牽引しており、サポート売上と合わせたストック売上構成比は約7割を超えています。
投資事業
投資事業は、米国に拠点を置く100%子会社Asteria Vision Fund Inc.が管理する投資を行っています。投資対象は、ソフトウェア事業の研究開発投資対象である「4D」(Data, Device, Decentralized, Design)に絞り、単なる投資リターンのみならず中長期的なシナジーも企図した投資を実行しています。
同社グループの売上収益は、大部分が日本国内からのものです。また、SCSK株式会社とパナソニックインフォメーションシステムズ株式会社が主要な顧客となっています。
| セグメント | 売上収益(2025年3月期) | 売上収益(2026年3月期) | セグメント利益(2025年3月期) | セグメント利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ソフトウェア事業 | 31.7億円 | 33.9億円 | 7.9億円 | 5.8億円 | 17.2% |
| 投資事業 | - | - | △21百万円 | 3.9億円 | - |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの過去5期間の業績を見ると、売上収益は緩やかな増加傾向にあります。利益面では、過去に税引前利益および親会社の所有者に帰属する当期利益で損失を計上した期もありましたが、直近2期は回復基調にあり、当期は大幅な伸長を達成しました。特に当期は、ソフトウェア事業の成長と事業構造改革の効果、投資事業における評価益が利益を押し上げています。営業活動によるキャッシュ・フローは継続的にプラスを維持しており、本業でのキャッシュ創出力は安定している状況です。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 29.7億円 | 27.9億円 | 29.1億円 | 31.7億円 | 33.9億円 |
| 税引前利益 | 39.8億円 | △17.6億円 | △32.4億円 | 7.7億円 | 9.7億円 |
| 税引前利益率 | 134.3% | △63.0% | △111.4% | 24.1% | 28.7% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 25.1億円 | △16.7億円 | △18.1億円 | 5.9億円 | 8.0億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 152.43 | △99.63 | △107.84 | 35.02 | 48.14 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上収益は前期から増加しており、従業員1人あたりの営業利益も前期から増加しています。これらの指標の改善は、同社グループの生産性が向上していることを示しており、組織全体の効率化が進んでいる状況がうかがえます。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上収益(連結) | 22.8百万円 | 23.4百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 5.6百万円 | 7.1百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
アステリアの財務状況は、事業活動で得た資金を将来の成長投資に充てている段階を示しています。これにより、同社グループがどのような財務基盤を持ち、資金をどのように活用しているかを確認できます。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
アステリアの財務基盤は、高い自己資本比率とROEを示しており、安定した経営状況がうかがえます。プライム市場の非製造業平均と比較しても、自己資本比率は大幅に高く、ROEも上回っています。手元資金も増加傾向にあり、事業運営における資金的な余裕がある状態です。これらの財務指標は、同社の事業が安定しており、従業員の雇用や給与の安定性にも寄与する基盤があることを示しています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 自己資本 | 61.0億円 | 78.0億円 |
| 自己資本比率 | 77.7% | 73.6% |
| ROE(自己資本利益率) | 10.1% | 11.5% |
| 現金及び現金同等物 | 28.1億円 | 32.6億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
アステリアのキャッシュフローは、当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュフローがプラスを維持しつつも前期から減少しています。これは主に税引前利益の計上や減価償却費及び償却費の計上によるものです。投資活動によるキャッシュフローは前期の獲得から一転して使用に転じており、子会社株式取得や投資有価証券の取得による支出が主な要因となっています。これにより、フリーキャッシュフローはマイナスに転じています。財務活動によるキャッシュフローは、長期借入金や自己株式の処分による収入があり、前期の使用から獲得へと変化しました。これらの資金の流れは、同社グループが本業で得た資金を成長のための投資に積極的に充てている成長投資フェーズにあることを示しています。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.3億円 | 5.7億円 |
| 投資CF | 7.7億円 | △7.2億円 |
| 財務CF | △5.2億円 | 5.4億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 16.0億円 | △1.5億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、積極的な海外展開を進めており、進出国の法令や政治、経済の変化、為替相場の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、ソフトウェア業界の技術革新のスピードが速く、常に技術革新に適合した新製品をタイムリーに開発できない場合、企業収益に大きな影響を与える可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、事業拡大に伴い優秀な人材の確保と育成に注力していますが、必要な人材が十分に確保できない場合、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
アステリアは、「世界で通用するソフトウェアを開発し提供する」ことを使命とし、社会的な価値の創出を通じて企業価値の増大を目指しています。同社グループは「『つなぐ』エキスパート」として、社会貢献を重視する企業文化を築いています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
アステリアグループは、「世界で通用するソフトウェアを開発し提供する」ことを使命(ミッション)としています。同社グループ自体が「『つなぐ』エキスパート」として社会的な価値を生み出し、社会に貢献することを目指しています。
「売上収益」を社会に生み出した価値、「利益」を生み出した価値と消費した価値の差分と捉え、社会的価値の提供を通じて企業価値の増大に努める方針です。同社グループは独自の製品を企画開発し提供する事業形態であり、市場やニーズの変化に先行した製品化を重視しています。
今後の投資分野として、「Data(データ)」「Device(デバイス)」「Decentralized(分散化)」「Design(デザイン)」の4つの”D”を掲げています。クラウドを基盤としたビジネスにおいて、これらの領域を加速させるソフトウェアの提供を目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
アステリアグループは、サステナビリティへの取り組みをコーポレートガバナンスの一部と位置づけ、社会の持続的発展への貢献を目指しています。透明性と公正性を重視し、取締役会の構成は社外取締役が2/3を占め、女性および外国籍の取締役を登用するなど、ダイバーシティに配慮した構成としています。
人的資本については、「ウェルビーイングによる生産性の向上」と「ダイバーシティの推進」を二つの柱とする戦略を採用しています。社員一人ひとりが自身のポテンシャルを最大限に発揮できるよう、自律的な学びと挑戦を支援する人材育成方針を掲げています。
職務記述書に基づくジョブ型のオンライン評価システムを2013年から導入し、職務・成果に基づく公正な評価と社員自身のキャリア形成を後押ししています。また、2011年からの全社的なテレワーク導入や社内システムのクラウド化を通じて、場所や事情に依存しない柔軟な働き方を支援する環境を整備しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
アステリアグループは、変化の激しい市場環境に対応し、さらなる成長を実現するため、以下の重点分野への取り組みを加速させています。コーポレート・ガバナンスのさらなる高度化を目指し、株主との建設的な対話や構成の多様性を重視した取締役会構成を継続しています。
事業領域の拡大に伴うリスク管理体制の強化や、グループ会社・投資先を含む内部統制の高度化
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
アステリアは、透明性及び健全性の高い企業経営を目指し、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでいます。監査役会設置会社として、社外取締役を招聘し、意思決定の妥当性や業務執行の適正な監査を確保する体制を構築しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
アステリアの株主構成を見ると、代表取締役社長である平野洋一郎氏が筆頭株主となっています。また、取締役副社長の北原淑行氏も上位株主に名を連ねており、経営陣が主要な株主として同社を支えていることがうかがえます。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 平野 洋一郎 | 10.95% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.29% |
| 北原 淑行 | 5.23% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は9名(男性7名・女性2名)で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は平野洋一郎氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 平野 洋一郎 | 代表取締役 社長 | 1983年株式会社キャリーラボ設立に参画、1987年ロータス株式会社(現 日本IBM株式会社)入社。1998年同社設立、代表取締役社長CEOより現職。2023年京都大学経営管理大学院特命教授。 |
| 北原 淑行 | 取締役 副社長 | 1988年日本デジタルイクイップメント株式会社入社。キヤノン株式会社、ロータス株式会社を経て、1998年同社設立、常務取締役。2001年取締役副社長、2019年より現職。 |
社外取締役は、五味廣文氏(元金融庁長官・青山学院大学特別招聘教授・SBI新生銀行取締役会長)、Anis Uzzaman氏(Pegasus Tech Ventures Inc. CEO・京都大学経営管理大学院特命教授)、正宗エリザベス氏(元オーストラリア貿易促進庁東北アジア地域本部本部長・@アジア・アソシエイツ・ジャパン代表取締役)、大三川彰彦氏(トレンドマイクロ取締役副社長)です。
同社は監査役会設置会社であり、監査役による監査体制が業務執行状況の監査機能として有効であると判断しています。取締役6名中4名が社外取締役であり、独立性の高い第三者的観点から意思決定や業務執行の適正な監査を確保する体制です。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
アステリアの役員報酬は、持続的な企業価値の向上と中長期的な成長を動機づける報酬体系を目指しています。社外取締役を除く取締役には、業績に連動しない固定金銭報酬と、連結営業利益(IFRS)に連動する業績連動報酬を支給する仕組みです。一方、社外取締役および監査役の報酬は、その職務上の役割と独立性を考慮し、固定報酬としています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 2名 | 60百万円 | 29.8百万円 |
| 社外取締役 | 5名 | 17百万円 | 3.3百万円 |
| 社外監査役 | 3名 | 19百万円 | 6.4百万円 |
役員報酬等の総額は95百万円であり、対象となる役員の総数は10名です。
なお、役員報酬等に関する株主総会の決議では、取締役の年間報酬総額の上限を160百万円、監査役の年間報酬総額の上限を60百万円と定めています。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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