※本記事は、アステリア株式会社の有価証券報告書(第28期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. アステリアってどんな会社?
企業情報システムなどを「つなぐ」ソフトウェアの開発・販売と、関連領域への投資事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1998年9月にXML専業ソフトウェア開発企業として設立されました。2007年6月に東証マザーズに上場し、2018年3月に東証一部へ市場変更しました。同年10月にインフォテリアからアステリアへ社名を変更し、現在は東証プライム市場に上場しています。直近では2025年にアステリアキャンバスを子会社化しています。
従業員数は連結で145名、単体で115名です。筆頭株主は創業者の平野洋一郎氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業時からの役員である北原淑行氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 平野 洋一郎 | 10.95% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.29% |
| 北原 淑行 | 5.23% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は平野洋一郎氏が務めています。取締役6名のうち4名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 平野 洋一郎 | 代表取締役社長 | 1983年にキャリーラボ設立に参画し、ロータス(現日本IBM)を経て1998年9月に同社を設立し代表取締役社長に就任。現在はCEOや京都大学経営管理大学院特命教授も歴任。 |
| 北原 淑行 | 取締役副社長 | キヤノン、ロータス(現日本IBM)を経て1998年9月の同社設立時に常務取締役に就任。2001年1月に取締役副社長に就任し、最高技術責任者も歴任。 |
社外取締役は、五味廣文(元金融庁長官)、Anis Uzzaman(ペガサス・テック・ベンチャーズ・ジャパン取締役)、正宗エリザベス(@アジア・アソシエイツ・ジャパン代表取締役)、大三川彰彦(元トレンドマイクロ取締役副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ソフトウェア事業」および「投資事業」を展開しています。
■ソフトウェア事業
企業情報システムやクラウドサービスなどをつなぐソフトウェア製品を不特定多数向けに開発し提供しています。主力製品のデータ連携ミドルウェア「ASTERIA Warp」やモバイルアプリ作成ツール「Platio」のほか、AI連携やデジタル通貨関連の新サービスも展開しています。
収益は主にライセンスおよびサブスクリプション型の利用対価と保守サポートから得ており、安定的なストック収益が特徴です。事業の運営はアステリアやアステリアキャンバスなどのグループ各社が主体となって行っています。
■投資事業
ソフトウェア事業の研究開発投資対象であるデータ、デバイス、分散化、デザインの「4D」領域に絞り、中長期的なシナジーも企図した企業投資を行っています。
収益は、投資先企業の評価益や売却益などから得ています。事業の運営は米国に拠点を置く100%子会社のAsteria Vision Fund Inc.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は安定して推移し、直近ではソフトウェア事業のサブスクリプション型サービスが牽引して増収となっています。税引前利益は、投資事業における評価損益の影響を大きく受けて一時的に損失を計上した期もありましたが、直近2期は事業構造改革の効果や投資先の評価益により黒字を回復し、増益傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 29.7億円 | 27.9億円 | 29.1億円 | 31.7億円 | 33.9億円 |
| 税引前利益 | 39.8億円 | -17.6億円 | -32.4億円 | 7.7億円 | 9.7億円 |
| 利益率(%) | 134.3% | -63.0% | -111.4% | 24.1% | 28.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 25.1億円 | -16.7億円 | -18.1億円 | 5.9億円 | 8.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益はソフトウェア事業における継続的なストック売上の拡大により、前期から堅調に増加しています。営業利益も前年度から大きく増加しており、利益率も30%台へと改善しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 31.7億円 | 33.9億円 |
| 売上総利益 | 26.1億円 | 27.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 82.2% | 81.3% |
| 営業利益 | 7.8億円 | 10.2億円 |
| 営業利益率(%) | 24.6% | 30.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7.0億円(構成比32%)、研究開発費が3.5億円(同16%)を占めています。売上原価では、当期製品製造原価が5.6億円(構成比85%)、ソフトウエア償却費が1.0億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ソフトウェア事業は主力製品のデータ連携需要が堅調に推移し、サブスクリプション売上が成長を牽引して増収となりました。一方で投資事業は、投資先の評価益を計上したことで前年度の損失から黒字に転換し、全体の利益を大きく押し上げています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ソフトウェア事業 | 31.7億円 | 33.9億円 | 7.9億円 | 5.8億円 | 17.2% |
| 投資事業 | - | - | -0.2億円 | 3.9億円 | - |
| 連結(合計) | 31.7億円 | 33.9億円 | 7.7億円 | 9.8億円 | 28.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入等によって積極投資を行う状態(積極型)です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.3億円 | 5.7億円 |
| 投資CF | 7.7億円 | -7.2億円 |
| 財務CF | -5.2億円 | 5.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.4%となっており、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「世界で通用するソフトウェアを開発し提供する」ことを使命(ミッション)として掲げています。同社グループ自体が「『つなぐ』エキスパート」として社会的な価値を生み出し、社会に貢献することを目指しており、社会的価値の提供を通じて企業価値の増大を図ることを基本方針としています。
■(2) 企業文化
採用や昇進において性別、国籍、宗教、人種等を問わず登用する多様性を尊重する文化を持っています。職務記述書に基づくジョブ型のオンライン評価システムを導入しており、職務・成果に基づく公正な評価と、社員自身のキャリア形成を後押ししています。また、社員一人ひとりが自身のポテンシャルを最大限に発揮できるよう、自律的な学びと挑戦を支援しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年3月期から2029年3月期までの中期経営目標期間において、売上収益および利益の持続的な拡大を目標として設定しています。既存事業からのオーガニック成長を前提としつつ、戦略的M&Aによる非連続的な成長の機会も検討対象としています。
・売上収益:年平均8~12%の成長率
・利益指標:2029年3月期において、調整後EBITDA率25%の達成
・株主還元:連結配当性向30%を中期目標
■(4) 成長戦略と重点施策
従来のソフトウェア領域に加え、ハードウェア、ロボティクス、デジタル通貨を含む統合的なソリューション提供を本格化させ、新たな市場機会の創出を目指しています。特にデータ、デバイス、分散化、デザインの「4D」領域において投資と製品開発を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を持続的成長の源泉と位置づけ、ウェルビーイングによる生産性の向上と、ダイバーシティの推進を柱としています。ソフトウェア技術者やAI人材の継続的な確保・育成を最優先の投資課題とし、外資系企業を意識した給与水準やジョブ型評価による処遇を行うとともに、グローバル市場での展開を支える組織能力の強化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.9歳 | 9.5年 | 8,126,954円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 26.2% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
※男性労働者の育児休業取得率は公表義務の対象ではないため、労働者の男女の賃金の差異は常時雇用する労働者が101人以上300人以下の事業主のため、有報には記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍比率(8%)、育児休業からの復帰率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新製品・新サービスについての予測困難性
魅力的な新製品・新サービスの開発による売上収益の増加を重視し、革新的な技術に早期に取り組んでいます。しかし、ソフトウェア業界の技術革新のスピードは速く予測が困難なため、見込み違いや市場動向への遅れが生じた場合、収益計画に影響を与えるリスクがあります。
■(2) 投資・M&Aの展開
中長期的な成長を目的としてM&Aや戦略的投資を実施しています。事前のデューデリジェンスで各種リスクの低減を図っていますが、投資後の事業展開が計画通りに進まない場合、期待した効果が得られないことや投資価値の減損処理が必要となり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 提供ソフトウェアの不具合
ソフトウェアの不具合(誤作動、バグ等)を発生させないよう品質管理に注意を払い、リスク低減措置を講じています。しかし、将来にわたって不具合が発生しないとは限らず、不具合に起因する損害賠償責任の発生や社会的信頼の喪失により、事業及び業績に影響を与えるリスクがあります。



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