FRONTEO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

FRONTEO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場上場のFRONTEOは、独自開発の自然言語処理AIを活用し、AI創薬や医療機器開発、不正調査支援、DX推進などを展開しています。直近の業績は、AI創薬の成長やアルネッツの子会社化に伴うDX事業の拡大により大幅な増収と営業増益を達成しており、好調なトレンドで推移しています。


※本記事は、株式会社FRONTEOの有価証券報告書(第23期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. FRONTEOってどんな会社?


独自AIを活用し、医療や法務などの専門分野で課題解決を支援するAIソリューション企業です。

(1) 会社概要


2003年に設立され、2004年にフォレンジックツールの提供を開始し、2007年に東証マザーズ(現グロース)へ上場しました。2015年に自社開発の人工知能「KIBIT」を発表して以降、医療や金融分野へ事業を拡大しています。直近では2023年にAI創薬支援サービスを開始し、2025年にはアルネッツを完全子会社化してDX事業を強化しています。

現在の従業員数は連結で272名、単体で170名です。筆頭株主は創業者の守本正宏氏で、第2位は業務資本提携を行っている事業会社のフォーカスシステムズ、第3位は個人の池上成朝氏となっています。

氏名 持株比率
守本正宏 16.29%
フォーカスシステムズ 9.28%
池上成朝 6.71%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長CEOは守本正宏氏が務めており、社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
守本正宏 代表取締役社長CEO 海上自衛隊任官、アプライドマテリアルズジャパンを経て2003年に同社を設立し代表取締役社長に就任。現在は米国法人の代表取締役会長も兼任。
豊柴博義 取締役 米国国立環境健康科学研究所、武田薬品工業等を経て2017年に同社入社。CTOや研究所長を歴任し、2025年よりCSO。


社外取締役は、舟橋信(元警察庁技術審議官)、桐澤寛興(響き税理士法人代表社員)、永山妙子(プレリューダーズ代表取締役)、鳥居正男(元ノバルティスファーマ代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ライフサイエンスAI事業」「リスクマネジメント事業」「DX事業」を展開しています。

(1) ライフサイエンスAI事業


独自AI「KIBIT」を活用し、AI創薬とAI医療機器の分野で製薬企業やバイオベンチャー、金融機関などを顧客にサービスを提供しています。創薬標的分子の探索や疾患メカニズムの仮説提示、認知機能検査用AIアプリなどの開発を行っています。

製薬企業等との共創プロジェクトやライセンスアウトによる一時金、マイルストーン収入、ロイヤルティを主な収益源としています。運営は同社が主体となって行っています。

(2) リスクマネジメント事業


平時および有事の企業リスクに対応するソリューションを提供しており、金融機関をはじめとする大手企業を顧客としています。法令違反や情報漏洩を検知するAI監査ソリューション、有事のデジタル・フォレンジック調査、サプライチェーン等の経済安全保障リスク解析を行っています。

AI監査システムの導入・利用料や、訴訟・不正調査などの受託サービス料を主な収益源としています。運営は同社および韓国の連結子会社であるFRONTEO Korea等が担っています。

(3) DX事業


製造業などを中心に、企業内に分散するデータの統合やデジタル化を通じてDX推進を支援しています。ローコードプラットフォームを活用したシステムモダナイゼーションや、技能伝承・業務高度化ソリューションを提供しています。

システム構築の受託開発費や技術者派遣(SES)、各種ソフトウエアのライセンス利用料などを収益源としています。運営は同社および連結子会社のアルネッツが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一時的に落ち込んだものの、直近では回復傾向にあり増収を達成しています。利益面でも、過去に赤字を計上した時期がありましたが、現在は黒字化して収益性が改善し、安定した経常利益を確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 109億円 72億円 74億円 61億円 76億円
経常利益 17億円 -13億円 -2億円 5億円 7億円
利益率(%) 15.4% -17.9% -2.3% 8.9% 8.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 -0.1億円 -67億円 2億円 9億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も堅調に伸びています。売上総利益率は低下しましたが、営業利益率は改善しており、本業の収益効率が向上していることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 61億円 76億円
売上総利益 35億円 39億円
売上総利益率(%) 56.6% 51.1%
営業利益 5億円 7億円
営業利益率(%) 8.6% 9.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が9億円(構成比29%)、支払手数料が6億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


リスクマネジメント事業は減収となったものの、ライフサイエンスAI事業とDX事業が大きく成長し、全体の売上高を牽引しています。特にDX事業はアルネッツの子会社化により大幅な増収を記録しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ライフサイエンスAI事業 4億円 10億円
リスクマネジメント事業 54億円 40億円
DX事業 4億円 26億円
連結(合計) 61億円 76億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 8億円 3億円
投資CF -3億円 -25億円
財務CF -9億円 13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「Bright Valueの実現~集合知に埋もれたリスクとチャンスを見逃さないソリューションを提供し、情報社会のフェアネスを実現する~」という企業理念を掲げています。社会課題と向き合う専門家の判断をAIで支援し、社会のさまざまな場面で必要かつ適切な情報に出会えるフェアな世界の実現を目指しています。

(2) 企業文化


「日本の科学技術は日本の技術で守る」「日本を再び創薬の地へ」といったコンセプトのもと、事業活動を通じた社会課題の解決を重視しています。独自の自然言語処理技術を用いた方程式駆動型AI「KIBIT」を通じてイノベーションの起点を創造し、ステークホルダーとのエンゲージメントを大切にする行動様式を有しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(ステージ4)の達成に向け、ライフサイエンスAI事業を中核事業と位置付けています。同事業のAI創薬分野における黒字化を予定しており、中長期的な非連続の成長を目標としています。また、各分野のプロダクトの選択と集中を進め、リカーリング収益の拡大と収益性の高い事業構造への転換を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略として、AI創薬分野では製薬企業との共創プロジェクトやバイオベンチャーへの支援モデルを拡大し、ライセンスアウト等によるアップサイド型の収益モデルへの転換を推進します。リスクマネジメント分野ではAI監査ソリューションの導入を進め、DX事業では子会社化したアルネッツの技術を活用して企業のデータ統合とデジタル化基盤の整備を重点的に行います。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「情報社会のフェアネスを実現する」という理念のもと、性別、国籍、年齢、採用区分にとらわれない多様な人材を積極的に採用しています。適材適所の配置と公正で透明性の高い評価・処遇制度を整備し、柔軟な働き方やエンゲージメント向上施策を実施することで、生産性の最大化と従業員が主体的に成長できる環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.8歳 4.1年 9,064,814円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 71.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 70.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 54.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員に占める女性の割合(28.8%)、外国籍従業員が全従業員に占める割合(5.9%)、正社員に占めるキャリア採用者の割合(91.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新と顧客ニーズの変化

AIを活用したソリューションを提供しているため、急速な技術変化やサービス水準の向上に伴う顧客ニーズへの対応が遅れた場合、競争力の低下につながり、事業や経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(2) 機密情報の管理と情報漏洩

医療情報や金融、知財、サプライチェーンなどの機密性の高い重要な情報を取り扱っています。サイバー攻撃や不正アクセス、従業員の不正等により情報漏洩が発生した場合、損害賠償や信用の低下により事業に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 高度な専門性を有する人材の確保

AI事業やリスクマネジメント事業の拡大には、専門的な情報技術や業務知識を持つ人材の確保が不可欠です。人材獲得競争の激化により必要な人材が確保できない、または社外へ流出した場合、事業展開に支障が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。