※本記事は、セーラー広告株式会社の有価証券報告書(第75期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. セーラー広告ってどんな会社?
四国・中国エリアを中心に、メディアを活用した総合的な広告・プロモーション事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1951年に愛媛県新居浜市で設立され、1959年に広告業を開始しました。1991年にセーラー広告へ商号変更し、2003年にあわわを子会社化、2007年にジャスダック(現スタンダード)市場へ上場しました。その後、アド・セイルやゴングなどを子会社化し、2025年にはソフト開発のフェローを子会社化しています。
従業員数は連結192名、単体100名です。筆頭株主はセーラー広告取引先持株会で、第2位はセーラーグループ社員持株会、第3位は香川銀行です。地域に密着した広告会社として、取引先や社員が主要株主となっているほか、地元金融機関との資本提携関係が構築されています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| セーラー広告取引先持株会 | 10.20% |
| セーラーグループ社員持株会 | 7.70% |
| 香川銀行 | 3.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は香川裕史氏です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 香川裕史 | 代表取締役社長 | 1995年同社入社。営業部長、営業局次長、執行役員第三営業局長、取締役第三営業局長、取締役副社長を経て2025年4月より現職。 |
| 村上義憲 | 代表取締役会長 | 1977年同社入社。第二営業局長、常務取締役、専務取締役等を経て2011年代表取締役社長に就任。2025年4月より現職。 |
| 萱原一則 | 常務取締役コーポレートデザイン局長 | 1988年同社入社。営業部長、執行役員営業局長、取締役高松本社営業局長等を経て2022年4月より現職。 |
| 高藤聖二 | 常務取締役第二ビジネスプロデュース局長 | 1990年同社入社。営業部長、営業局次長、執行役員第二営業局長、取締役第二営業局長を経て2026年4月より現職。 |
| 森川稔 | 常務取締役第一ビジネスプロデュース局長 | 1990年同社入社。営業部長、徳島支社長、執行役員営業局長、取締役第一営業局長等を経て2026年4月より現職。 |
| 間敬三 | 取締役CIO | 1995年同社入社。営業部長、アド・セイル代表取締役社長、同社執行役員副社長、取締役副社長を経て2022年4月より現職。 |
社外取締役は、武田真由美(武田真由美公認会計士事務所代表)、福川盛二(元香川銀行常務取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「広告事業」「リテール事業」「ソフト開発事業」を展開しています。
■広告事業
テレビ、ラジオ、新聞、雑誌を中心とする各種メディアを活用した広告の企画、立案、制作のほか、セールスプロモーションやインターネット関連広告などのサービスを提供しています。ターゲット戦略やメディアプランニングを通じて企業や行政の課題解決を支援します。
収益は、広告主からのメディア出稿費や広告制作費、プロモーション費用として受け取ります。運営は同社のほか、あわわ、アド・セイル、ゴング、adear、FISHなどのグループ会社が行っています。
■リテール事業
徳島県および香川県の地域産品の販路拡大を目的として、物産販売店舗「徳島・香川トモニ市場〜ふるさと物産館〜」やオンラインショップ「トモニ市場オンライン」の運営を行っています。
収益は、店舗やECサイトでの商品販売代金として消費者から受け取ります。運営は子会社のMD&アソシエイツが行っています。
■ソフト開発事業
自治体における各種自動連絡システムや、24時間対応が求められる斎場のクラウド予約システムなど、社会インフラを支えるソフトウェアやハードウェア機器の開発・提供を行っています。
収益は、システムの開発費用や導入後のクラウド利用料、保守料として自治体や企業から受け取ります。運営は2025年に子会社化したフェローが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を比較すると、収益は増減を繰り返しながらも直近で増加傾向にあります。一方で経常利益や当期利益は変動が大きく、市場環境や先行投資の影響を受けて赤字となる期も見られます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 収益 | 19.4億円 | 21.1億円 | 20.5億円 | 21.0億円 | 22.2億円 |
| 経常利益 | 0.8億円 | 1.9億円 | 0.6億円 | 0.8億円 | 0.0億円 |
| 利益率(%) | 3.9% | 8.9% | 3.1% | 4.0% | 0.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.3億円 | 1.4億円 | -0.7億円 | 0.3億円 | -0.0億円 |
■(2) 損益計算書
収益及び売上総利益は増加し、売上総利益率も改善しています。しかし、人材投資やシステム導入などの先行投資により販売費及び一般管理費が増加し、営業利益は赤字に転じています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 収益 | 21.0億円 | 22.2億円 |
| 売上総利益 | 16.6億円 | 17.3億円 |
| 売上総利益率(%) | 79.1% | 77.8% |
| 営業利益 | 0.1億円 | -0.2億円 |
| 営業利益率(%) | 0.5% | -1.0% |
販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が9.5億円(構成比54%)、賞与引当金繰入額が0.5億円(同3%)を占めています。売上原価の内訳は、制作費が1.7億円(構成比99%)、商品原価が0.0億円(同1%)となっています。
■(3) セグメント収益
広告事業は大型スポット案件の反動減等により減収減益となりました。リテール事業は店舗での販売が好調で増収となったものの赤字が継続しています。当期より新設されたソフト開発事業は安定した保守料等により黒字を確保しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 広告事業 | 20.5億円 | 20.4億円 | 0.3億円 | -0.2億円 | -0.9% |
| リテール事業 | 0.5億円 | 0.6億円 | -0.1億円 | -0.1億円 | -10.7% |
| ソフト開発事業 | - | 1.2億円 | - | 0.0億円 | 1.7% |
| 連結(合計) | 21.0億円 | 22.2億円 | 0.1億円 | -0.2億円 | -1.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業は赤字ですが、将来成長のため借入等で投資を継続する「勝負型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.5億円 | -1.1億円 |
| 投資CF | -0.1億円 | -0.8億円 |
| 財務CF | 0.9億円 | 1.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-0.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「企業と生活者を結ぶ情報の橋渡し役として、社会生活の向上と文化の発展に貢献する」ことを経営の基本方針としています。顧客の課題を提案活動によって解決し、地域の皆様とともに豊かな文化を育て、社会をより楽しく、美しく、豊かにすることを目指しています。
■(2) 企業文化
「人こそ財産」という考えのもと、社員一人ひとりの幸福の実現を人的資本経営の礎としています。未来に目を向けた創造性と革新性を発揮し、自由かつ柔軟なプロフェッショナル集団を組織することで、失敗を恐れず挑戦し続ける企業風土の醸成を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、外注費を除く諸費用が固定的である事業特性から、売上総利益の確保を重要視しています。営業成果である売上高と連動した収益性指標として、売上総利益および売上総利益率を重要な経営指標に掲げ、日々の業績管理や行動管理に連動させて目標達成に取り組んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
「マーケティングデザイン」を基本概念とし、次世代デジタル技術を活用したコンサルティング型ソリューションを拡充します。また、新設したソリューションデザイン局を中心に組織の総合力を強化し、地域資源を活用した新規事業や西日本エリアへの事業拡大を推進して新たな収益の柱の構築を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、中長期的な視点での新卒採用と即戦力となるキャリア採用を推進し、「個性」や「バイタリティ」豊かな人材確保に努めています。また、外部講師による研修や資格取得支援を通じて、社員一人ひとりの企画・提案力向上とデジタル領域のリスキリングを図り、能力を最大化する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.4歳 | 17.3年 | 5,429,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境の変化による競合激化
地域市場における地元有力広告会社や大手広告会社のほか、印刷会社、イベント会社、さらにはインターネット専門企業との競争が激化しています。デジタルメディアの発展により既存メディアの需要が低下し、広告の受注が確保できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 取引先との関係
特定の顧客に対する依存関係はありませんが、地域市場環境の変動や広告主との関係変化に的確に対応できない場合、業績に影響する恐れがあります。また、媒体社や外部協力会社との取引関係が悪化した場合にも、事業運営に支障をきたす可能性があります。
■(3) 新しい技術の台頭とシステム等の不具合
ソフト開発事業においては技術革新のスピードが速く、対応が遅れた場合は競争力の低下を招くリスクがあります。また、提供する自治体向けシステム等は社会インフラの性格を持つため、予期せぬ重大な不具合が発生した場合には、損害賠償や社会的信用の低下を招く可能性があります。



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