セーラー広告 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セーラー広告 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。広告事業を主軸に、中四国エリア等でメディアプランニングやセールスプロモーションを展開。直近の業績は、売上高が前期比で増加し、経常利益も拡大、当期純利益は黒字転換を果たしており、増収増益のトレンドにあります。


※本記事は、セーラー広告株式会社 の有価証券報告書(第74期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. セーラー広告ってどんな会社?


広告業を中心に、中四国・九州・東京で事業を展開。地域密着型の提案力とデジタル領域の強化を推進しています。

(1) 会社概要


1951年に愛媛県新居浜市で看板製作を目的に設立され、1959年に広告業を開始しました。その後、高松市へ本社を移転し、中四国エリアへ拠点を拡大。2007年にジャスダック証券取引所(現スタンダード市場)へ上場しました。2008年にはインターネット広告強化のためアド・セイルを設立し、デジタル領域へ進出しています。

連結従業員数は179名、単体では100名です。筆頭株主は取引先で構成される「セーラー広告取引先持株会」で、第2位は従業員による「セーラーグループ社員持株会」、第3位は地元の金融機関である「香川銀行」となっており、取引先や従業員、地域金融機関が主要な株主となっています。

氏名 持株比率
セーラー広告取引先持株会 13.50%
セーラーグループ社員持株会 9.40%
香川銀行 4.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役会長は村上義憲氏、代表取締役社長は香川裕史氏です。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
村上 義憲 代表取締役会長 1977年入社。専務取締役第三営業本部長、中国九州地区担当を経て、2011年代表取締役社長に就任。関連会社社長などを歴任し、2025年4月より現職。
香川 裕史 代表取締役社長 1995年入社。営業部長、営業局次長、執行役員第三営業局長、取締役副社長などを経て、2025年4月より現職。
間 敬三 取締役CIO 1995年入社。アド・セイル代表取締役社長、執行役員副社長、取締役副社長などを歴任。現在はMD&アソシエイツ代表取締役社長も兼務し、2022年4月より現職。
萱原 一則 常務取締役コーポレートデザイン局長 1988年入社。執行役員営業局長、取締役高松本社営業局長などを歴任。あわわ、アド・セイル等のグループ会社取締役も兼務し、2022年4月より現職。
高藤 聖二 常務取締役第二営業局長 1990年入社。営業部長、営業局次長、執行役員第二営業局長、取締役第二営業局長を経て、2025年4月より現職。
森川 稔 取締役第一営業局長 1990年入社。徳島支社長、高松本社第一営業部長、営業局次長などを経て、ゴング代表取締役社長を兼務。2019年6月より現職。
原渕 定夫 取締役監査等委員 1979年入社。西讃支社長、高松本社第一営業部長、内部監査室などを経て常勤監査役に就任。2021年6月より現職。


社外取締役は、田辺真由美(公認会計士事務所代表)、福川盛二(元香川銀行常務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「広告事業」および「リテール事業」を展開しています。

(1) 広告事業


テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネット等の各メディアを活用した広告の企画・制作・実施、セールスプロモーション、イベントの企画運営、フリーマガジンの発行などを行っています。顧客は一般企業や官公庁・自治体など多岐にわたります。

広告掲載料や制作費、イベント運営費等を顧客から受領することで収益を得ています。運営は主にセーラー広告が行うほか、あわわ、アド・セイル、ゴング、adear、FISH、メディア・エーシーなどのグループ各社がそれぞれの地域や専門分野で事業を展開しています。

(2) リテール事業


地域産品の販路拡大を目的として、物産館「徳島・香川トモニ市場」の実店舗運営およびECサイト「トモニ市場オンライン」の運営を行っています。一般消費者を対象に、地域の特産品などを販売しています。

店舗やECサイトでの商品販売代金を収益源としています。運営は、セーラー広告およびMD&アソシエイツが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、直近では約80億円規模となっています。利益面では、経常利益が前期から増加し、当期純利益も黒字転換を果たしました。利益率は低い水準ですが、改善の兆しが見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
総売上高 76.3億円 79.7億円
経常利益 0.6億円 0.8億円
利益率(%) 0.8% 1.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.7億円 0.3億円

(2) 損益計算書


売上高は増加し、売上総利益率も微増しています。営業利益は減少しましたが、営業外収益の増加により経常利益は増益となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 20.5億円 21.0億円
売上総利益 15.7億円 16.6億円
売上総利益率(%) 76.6% 79.1%
営業利益 0.4億円 0.1億円
営業利益率(%) 1.8% 0.5%


販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が8.8億円(構成比53.5%)、賞与引当金繰入額が0.4億円(同2.5%)を占めています。

(3) セグメント収益


広告事業は、デジタル領域の拡大やイベント需要の回復により増収となりましたが、利益は減少しました。リテール事業は赤字が続いていますが、損失幅は縮小しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
広告事業 19.6億円 20.5億円
リテール事業 0.6億円 0.5億円
連結(合計) 20.5億円 21.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

セーラー広告は、運転資金は短期借入、事業資金は長期借入で調達することを基本としています。

営業活動では、税金等調整前当期純利益や減損損失が主な要因となり、資金を得ました。投資活動では、新規連結子会社の取得による支出が主な要因となり、資金を使用しました。財務活動では、自己株式の処分や社債の発行による収入、配当金の支払いなどにより、資金を得ました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -0.5億円 0.5億円
投資CF -0.1億円 -0.1億円
財務CF -1.8億円 0.9億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「企業と生活者を結ぶ情報の橋渡し役として、社会生活の向上と文化の発展に貢献すること」を経営の基本方針としています。この方針のもと、顧客の課題を解決し、地域と共に豊かな文化を育て、社会をより楽しく、美しく、豊かにすることを目指しています。

(2) 企業文化


顧客の経営課題解決につながる戦略を設計し、共に実践するパートナーになることを「マーケティングデザイン」と定義し、これを日々の営業活動の基本概念としています。地域に密着した広告会社としての強みを活かしながら、デジタル領域の拡大や新事業への挑戦を重視する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


外注費を除く諸費用が固定的であるため、売上総利益の確保が重要であるとし、売上高と連動した収益性の指標として「売上総利益」および「売上総利益率」を重要な経営指標と定めています。これらを日々の行動管理や人事評価等に連動させ、目標達成に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


次世代デジタル技術を活用した付加価値提案力の向上や、地域資源を活用したプロモーション活動の展開を推進しています。また、商業・オフィス空間のプロデュースなど新規事業への取り組みや、関東・関西圏を中心とした事業エリアの拡大、M&Aを含む成長投資、人材への投資を重点施策として掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を競争力の源泉かつ最も重要な経営資源と位置づけています。優秀な人材の確保と育成に加え、デジタルなど専門知識を持つ人材の獲得を課題としています。また、多様な働き方の尊重や心身の健康に配慮した安全衛生に取り組み、従業員のエンゲージメント向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.0歳 16.5年 5,366,000円


※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員全体に占める女性社員の割合(28.7%)、男性社員の配偶者出産休暇の取得(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変動と季節的偏重


広告主の広告費は国内景気動向の影響を受けやすく、特に四国・中国・九州エリアの経済情勢悪化は業績に影響します。また、年末商戦や年度末の広告需要により、経営成績が年後半(第3・第4四半期)に偏重する傾向があり、この時期の受注動向が通期業績を左右するリスクがあります。

(2) 競争激化とメディア環境の変化


地域有力広告会社や大手支社に加え、印刷会社やイベント会社、ネット専業代理店との競合が激化しています。また、スマートフォンの普及等により既存メディアの広告需要が低下する一方で、インターネット広告への対応が遅れた場合、競争力が低下し業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 専門人材の確保・育成


付加価値の高いコミュニケーションサービスを提供するためには、優秀な人材や専門知識を持つ人材が不可欠です。特にデジタル領域での人材確保が急務となる中、人材の流出や採用難により十分な体制が構築できない場合、競争力が低下する恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。