ジェイテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジェイテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジェイテックは東京証券取引所スタンダード市場および名古屋証券取引所メイン市場に上場し、製造業の開発・設計部門に向けた技術者派遣に特化した技術職知財リース事業を展開しています。業績は技術者需要が底堅いものの、人員確保の課題等から直近の決算では売上高、各段階利益ともに減少する減収減益となっています。


※本記事は、ジェイテックの有価証券報告書(第30期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジェイテックってどんな会社?


技術者派遣に特化した技術職知財リース事業を展開し、独自のテクノロジスト育成を強みとする企業です。

(1) 会社概要


ジェイテックは1996年に人材派遣会社として設立され、1999年に現社名へ変更しました。2006年に現・東証スタンダード市場へ上場を果たしています。2012年には企業買収により事業を拡大し、2022年からは教育・就職支援を行う生活支援コミュニティスペース「まなクル事業」を新たに開始しました。

従業員数は連結で430名、単体で281名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長を務める藤本彰氏で、第2位は同社の従業員持株会、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
藤本 彰 20.03%
ジェイテック従業員持株会 2.38%
堀江 耕治 2.21%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は藤本彰氏が務めています。社外取締役比率は38.4%(13名中5名)です。

氏名 役職 主な経歴
藤本 彰 代表取締役社長 1985年メイテック入社。1997年同社入社し取締役就任。1998年代表取締役社長、会長等を経て2014年より現職。
小川 典男 取締役 1995年メイテック入社。1996年同社入社。2015年執行役員経営企画室長等を経て2017年より取締役。2026年より現職。
村田 竜三 取締役ファイナンスHQ本部長 2002年同社入社。執行役員技術本部長等を経て2021年取締役。経営企画室長や人事戦略室長等を経て2026年より現職。
岩崎 秀樹 取締役技術商社HQ本部長 メディア工房取締役等を経て2015年同社入社。技術本部部長等を経て2022年より取締役。2025年より現職。
西田 和弘 取締役マネジメントHQ本部長 オートバックスセブン等を経て2018年同社入社。人材開発本部等の本部長を経て2023年取締役。2026年より現職。
崔 在亨 取締役 1999年FUJITSU Korea入社。2001年同社入社。子会社代表等を経て2014年取締役。2024年より現職。


社外取締役は、山田峻介(山田経理法務事務所設立)、尾野恭史(弁護士)、関口輝比古(JILAFタイ事務所長)、藤浪昭男(八事財産税理士法人統括税理士)、髙田和幸(行政書士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「技術職知財リース事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 技術職知財リース事業


製造業の研究開発部門や設計部門を対象に、「機械設計」「電気・電子設計」「ソフトウエア開発」「建築設計」の4分野で専門技術を提供する技術者派遣事業です。同社は自社の技術者を「テクノロジスト」と呼び、専門知識と創造力を用いて顧客とともに新たな価値を創造することを重視しています。

収益源は、顧客企業から受け取る人材派遣契約に基づく派遣料金や、請負・業務委託契約に基づく成果物の対価です。運営は主にジェイテックおよび子会社のジェイテックアドバンストテクノロジが行っており、国内各拠点から自動車や産業用機器関連などの企業へサービスを提供しています。

(2) その他の事業(一般派遣及びエンジニア派遣事業・まなクル事業等)


連結子会社において、製造現場等への一般派遣事業、ヒューマンリソース事業、介護事業等を行っています。また、リスキリングなどのニーズに応えるため、生活支援コミュニティスペースを提供する「まなクル事業」を通じた教育・就職支援サービスも展開しています。

一般派遣等は派遣先企業からの派遣料金が主な収益源ですが、現在は全業務を休止しています。まなクル事業等の教育支援サービスは利用料が収益源となります。一般派遣事業および各種関連事業の運営は子会社のジェイテックアドバンストテクノロジが、まなクル事業の運営は同社が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は30億円台で堅調に推移していましたが、直近の第30期は人員確保の課題等により減収となりました。経常利益と当期利益は第29期まで増益傾向でしたが、第30期は人件費などコスト増加の影響を受け、大幅な減益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 29.9億円 31.8億円 32.4億円 33.9億円 33.6億円
経常利益 1.2億円 2.2億円 2.3億円 3.3億円 2.1億円
利益率(%) 3.9% 6.8% 7.0% 9.7% 6.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.2億円 0.1億円 1.5億円 1.6億円 1.0億円

(2) 損益計算書


第29期と第30期の損益構成を比較すると、売上高の微減に対し、売上原価が上昇したため売上総利益率は33.9%から32.0%へ低下しました。さらに販売費及び一般管理費も増加したことで、営業利益率は9.7%から7.0%へと下落しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 33.9億円 33.6億円
売上総利益 11.5億円 10.8億円
売上総利益率(%) 33.9% 32.0%
営業利益 3.3億円 2.4億円
営業利益率(%) 9.7% 7.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が2.7億円(構成比33%)、役員報酬が1.0億円(同12%)、地代家賃が0.8億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


技術職知財リース事業は、テクノロジストの稼働率や平均単価は上昇したものの、人員確保が想定通りに進まなかったこと等により、売上高は前期比で微減となり、セグメント利益も減少しました。一般派遣及びエンジニア派遣事業は前期より全業務を休止しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
技術職知財リース事業 33.9億円 33.6億円 7.4億円 7.1億円 21.2%
一般派遣及びエンジニア派遣事業 - - - - -
連結(合計) 33.9億円 33.6億円 3.3億円 2.4億円 7.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.2%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.0%で、いずれも市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2.5億円 1.2億円
投資CF 0.0億円 -0.1億円
財務CF -1.1億円 -1.4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「技術者の地位向上と業界最高の収入を実現し創造的個人経営者集団を形成させる」を経営理念に掲げています。知識に基づく知恵を扱う「技術商社」として、豊かな感性と柔らかな発想を兼ね備えた人材を育成し、社会に貢献することを使命として経営を行っています。

(2) 企業文化


同社は、自社の技術者を単なるエンジニアと区別し「テクノロジスト」と呼称して育成しています。「プロフェッショナルであること」「チャレンジャーであること」「正直であること」をジェイテックグループバリューとして掲げ、常に公正で誠実に行動し、仲間とともに切磋琢磨して挑戦する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、株主資本の充実と利益還元のため、一層の経営基盤強化を目指す具体的な経営指標を設定しています。

* 連結売上総利益率:30%以上
* 連結売上高経常利益率:10%以上
* テクノロジスト700人体制の構築

(4) 成長戦略と重点施策


同社は中長期的な成長に向けて、技術力と創造力を兼ね備えた人材の確保・育成に注力しています。具体的には、独自開発の技術教育プラットフォームや「リスキリング」「リカレント教育」を活用し、最新技術への適応力を備えた人材を育成します。また、AI等の先進技術分野での新規顧客開拓に向けたWeb営業活動も強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を最大の経営資源と位置づけ、テクノロジストの採用・育成・定着を一体的に強化する戦略を推進しています。新卒・中途を問わず多様な人材を確保し、独自の教育プラットフォームを通じたリスキリングや配属ローテーションにより、市場価値と技術力の高いプロフェッショナルな人材を育成・配置する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 36.6歳 10.8年 5,067,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.1%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 69.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 82.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 27.4%


※男性労働者の育児休業取得率については、配偶者が出産した男性社員がいなかったため記載されていません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技術系新卒採用実績(43名)、テクノロジスト実績期初人数(420名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 優秀な技術系人材の確保


同社の事業は技術力のあるテクノロジストに支えられており、人材の確保が極めて重要です。採用競争の激化などにより計画通りにテクノロジストが確保できない場合や、人材流出によって大幅な人員減少が生じた場合には、事業遂行が困難となり、同社グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 顧客企業の業績と景気動向


技術職知財リース事業などの事業環境は、主要顧客である製造業の業績動向に大きく影響されます。景気低迷の長期化により製造業各社の業績が悪化し、設備投資の抑制や研究開発費の削減などが継続して行われた場合、技術者派遣の需要が減少し、同社グループの事業環境に著しい悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 労働者派遣法等の法的規制


同社は労働者派遣法等の関連法令に基づいて事業を運営しています。これらの法令は情勢変化に伴い継続的に見直されています。同社は法改正の都度適切に対応していますが、今後新たな規制強化や法改正が実施され、それが事業運営に不利な内容であった場合、同社の経営成績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 特定業界への受注依存


同社の売上高は、産業用機器関連(25.0%)や自動車関連(21.8%)など、特定の業界に対する割合が高くなっています。これらの売上比率の高い業界において業況が悪化し、契約の途中解約が相次いだ際に、迅速に代替の取引先を確保できない場合は、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。