エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。企業の業務効率化を支援するローコード開発基盤「intra-mart」の開発・販売を主力とします。2024年3月期は、主力製品の販売やサービス事業が伸長し売上高は過去最高を更新して増収となりましたが、先行投資等の影響で利益面は減益となりました。


※本記事は、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマート の有価証券報告書(第25期、自 2023年4月1日 至 2024年3月31日、2024年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマートってどんな会社?


国内シェアNo.1のワークフロー市場実績を持つローコード開発プラットフォームを提供する企業です。

(1) 会社概要


1998年にNTTデータの社内ベンチャーとしてプロジェクトが発足し、2000年に設立されました。2007年に東証マザーズへ上場し、2012年には主力の「intra-mart Accel Platform」の販売を開始しています。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。

従業員数は連結で474名、単体で295名です。大株主については、筆頭株主は親会社のNTTデータで、第2位は同社代表取締役社長の中山義人氏です。第3位はシステムインテグレーターのDTSであり、同社とはビジネス上の提携関係にあります。

氏名 持株比率
NTTデータ 47.79%
中山 義人 11.88%
DTS 2.62%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長 執行役員開発本部長は中山義人氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
中山 義人 代表取締役社長 執行役員開発本部長 1992年NTTデータ通信(現NTTデータグループ)入社。2000年同社代表取締役常務、2001年より現職。NTTデータイントラマートソフトウェア系統(上海)有限公司董事長等を兼任。
鈴木 誠 取締役 執行役員管理本部長 1993年NTTデータ通信(現NTTデータグループ)入社。2000年同社出向、2005年取締役就任。2013年より執行役員管理本部長。
重 彰記 取締役 1998年NTTデータ通信(現NTTデータグループ)入社。同社ビジネスソリューション事業本部等を経て、2023年よりNTTデータソリューション事業本部シニア・スペシャリスト。


社外取締役は、中村靖(メタウォーター元代表取締役会長)、伊藤卓(伊藤法律特許事務所所長・弁護士・弁理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ソフトウェア事業」および「サービス事業」の2つの報告セグメントと「その他」事業を展開しています。

(1) ソフトウェア事業


エンタープライズ・ローコードプラットフォーム「intra-mart Accel Platform(iAP)」およびその上で動作する業務アプリケーションの開発・販売を行っています。また、iAPをクラウド型で提供する「Accel-Mart」も展開しており、企業のDX推進や業務効率化を支援しています。

収益は、製品のライセンス販売、保守サービス料、およびクラウドサービスの利用料(サブスクリプション)から構成されています。販売は特約店パートナーを通じた間接販売と、同社グループによる直接販売があります。運営は主に同社および海外子会社が行っています。

(2) サービス事業


「intra-mart」製品の導入に関連するコンサルティング、システム構築(SI)、および教育支援サービスを提供しています。DX業務改革の推進サポートや、技術者向けの研修プログラム、認定資格制度などを通じて、顧客のシステム活用や内製化を支援しています。

収益は、システム開発やコンサルティングの対価、研修受講料などから得ています。顧客ごとの課題に応じたトータルサポートを行うことで、製品販売とのシナジーを生み出しています。運営は同社および連結子会社のNTTデータ・イントラマートCSI等が担っています。

(3) その他


上記セグメントに含まれない事業として、他社のハードウェアやソフトウェア等の仕入販売を行っています。

収益は、他社製品の販売代金から得ています。顧客のシステム構築において必要となる周辺機器やソフトウェアを合わせて提供することで、ワンストップでのサービス提供を補完しています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実に増加傾向にあり、直近の2024年3月期には93億円に達しています。一方で、利益面では変動が見られ、2024年3月期は経常利益、当期純利益ともに前期から減少しました。売上拡大に向けた投資が進む中で、利益率の確保が課題となっています。

項目 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
売上高 69億円 59億円 77億円 80億円 93億円
経常利益 7.2億円 1.7億円 8.1億円 7.7億円 4.0億円
利益率(%) 10.5% 2.9% 10.6% 9.6% 4.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 5.3億円 1.3億円 5.4億円 3.6億円 2.0億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業利益は減少しました。特に売上原価の増加率が高く、利益率を圧迫しています。事業拡大に伴うコスト増を売上増で吸収しきれていない状況が見て取れます。

項目 2023年3月期 2024年3月期
売上高 80億円 93億円
売上総利益 36億円 37億円
売上総利益率(%) 44.7% 39.9%
営業利益 8.1億円 3.8億円
営業利益率(%) 10.2% 4.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が9.3億円(構成比28%)、業務委託費が6.7億円(同20%)を占めています。売上原価においては、労務費や外注費などが主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


ソフトウェア事業は売上が微減となりましたが、従来のライセンス販売が堅調で収益を支えています。サービス事業は子会社の連結化等により売上が大幅に増加しましたが、利益率はソフトウェア事業と比較して低い傾向にあります。

区分 売上(2023年3月期) 売上(2024年3月期) 利益(2023年3月期) 利益(2024年3月期) 利益率
ソフトウェア事業 48億円 48億円 11億円 7億円 15.6%
サービス事業 32億円 45億円 7億円 8億円 18.2%
その他 - - - - -
調整額 -0.1億円 -0.2億円 -10億円 -12億円 -
連結(合計) 80億円 93億円 8億円 4億円 4.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマートのキャッシュ・フロー状況についてご説明します。

同社は、営業活動により潤沢な資金を創出しており、これは主に売上債権の減少によるものです。投資活動では、子会社株式の取得や事業譲受に係る支出が減少したことにより、資金の使用額が縮小しました。財務活動では、借入金の返済による支出が減少しています。これらの結果、フリー・キャッシュ・フローは大幅に増加しました。

項目 2023年3月期 2024年3月期
営業CF 9.1億円 8.8億円
投資CF -13.1億円 -17.0億円
財務CF -1.7億円 -2.2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「The Digital Process Innovation」を掲げ、顧客のビジネスプロセス変革を支援することを存在意義としています。また、「顧客のビジネス変革を企画・実行・成果創出まで支援できるグローバルDXパートナーの実現」をスローガンとし、単なるツール提供にとどまらず、顧客の持続的な成長に貢献するパートナーとなることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「Professionalityの最大化」を掲げ、従業員一人ひとりが専門性を発揮することを重視しています。また、多様な人材が互いに個性を認め合い、一体感を持って働くことで相互触発が起こる活性化した組織を目指しています。社員の健康が企業活力につながるとする健康経営の考え方も浸透しており、自律的なキャリア形成と心身の健康を両立させる風土があります。

(3) 経営計画・目標


2022年度から2025年度までの中期経営計画を推進しています。具体的な数値目標の記載はありませんが、スローガンの実現に向けた各種施策の実行と成果創出を目指しています。安定的な配当を継続することも目標の一つとしています。

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、クラウドおよびサブスクリプション型ビジネスへの転換を強力に推進しています。具体的には、ローコード製品の充実による内製化支援、業務プロセス改善コンサルティングから保守までの一気通貫サポートの強化、業務アプリケーションのターゲット市場拡大に注力しています。また、SaaSビジネスを第3の柱として育成し、持続的な成長基盤の構築を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、性別・年齢・国籍等を問わず多様な人材を積極的に採用し、個性を最大限に発揮できる環境整備を進めています。自律的なキャリア形成を支援するため、公正な機会提供と継続的な育成を行い、イノベーションを創出する人材の成長を促しています。また、健康経営を推進し、ワークライフバランスの充実とコミュニケーションの活性化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2024年3月期 35.2歳 5.6年 6,816,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.4%
男女賃金差異(正規) 81.5%
男女賃金差異(非正規) 37.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定期健診受診率(100%)、年次有給休暇取得率(79%)、ストレスチェック受験率(99.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) NTTデータグループとの関係


同社はNTTデータの子会社であり、NTTデータグループに属しています。事業領域の違い等から直接的な競合は発生していませんが、親会社の経営方針や事業戦略の変更、株式保有比率の変動等があった場合、同社グループの事業運営や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、議決権行使において親会社の利益が他の株主の利益と一致しない可能性もあります。

(2) 特定事業への依存と技術革新


同社グループの事業は「intra-mart」製品を核としており、同製品への依存度が高い構造です。顧客ニーズの変化や技術革新により製品の競争力が低下した場合、あるいは新技術への対応遅れや製品の陳腐化が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。Webシステム分野の急速な技術革新に対応するための継続的な投資と開発が不可欠です。

(3) 人材の確保・育成


事業の継続的発展には優秀な技術者の確保が不可欠です。IT業界における人材獲得競争は激しく、計画通りの人材採用や育成が困難になった場合、あるいは人材流出が発生した場合には、事業運営や拡大に支障をきたす可能性があります。また、人材確保・維持のためのコスト増加も業績に影響を与える要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。