パス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

パス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

パスはスタンダード市場に上場し、化粧品や美容健康商材の通販を展開するコスメ事業およびビューティ&ウェルネス事業を主力としています。再生医療やサステナブル事業等も手掛けています。直近の業績トレンドは売上高が増加したものの、先行投資や新商品販売の遅れにより各段階利益で損失が拡大し、増収減益となりました。


※本記事は、パス株式会社の有価証券報告書(第36期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. パスってどんな会社?


同社はコスメや美容健康商材の通信販売を中心に、再生医療や環境ソリューションなどの事業を展開しています。

(1) 会社概要


1990年5月に旅行代理店として創業し、その後電子認証・決済代行サービスへ転換しました。2007年3月に東証マザーズへ上場し、2014年7月に現在のパスへ商号変更しています。その後2015年にマードゥレクスやジヴァスタジオを子会社化してコスメ・美容事業に参入し、現在は再生医療関連事業なども展開しています。

従業員数は連結50名、単体9名です。筆頭株主は事業用地の賃貸・管理を行うサスティナで、第2位はサンテック、第3位は個人の久保川議道氏となっています。

氏名 持株比率
サスティナ 36.90%
サンテック 5.20%
久保川 議道 3.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役CEOは松尾孝之氏、代表取締役COOは高橋勇造氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
松尾 孝之 取締役(代表取締役CEO) 1981年善喜商事入社。ラ・イシスジャポン代表取締役、Dr.リボーン設立等を経て、2025年6月より現職。
高橋 勇造 取締役(代表取締役COO) 1988年丸広百貨店入社。前田農園、Dr.リボーン等を経て2021年6月に同社代表取締役就任。マードゥレクス代表取締役等を兼任。
星 淳行 取締役 2000年芳賀会計事務所入所。アイビーティジェイ等を経て2022年6月に同社取締役就任。アルヌール代表取締役等を兼任。
川端 暢宏 取締役 1993年ボストン・サイエンティフィックジャパン入社。リバーサイド代表取締役を経て、2025年6月より現職。RMDC代表取締役等を兼任。


社外取締役は、甲斐賢一氏(元東日本監査法人入所)、市橋卓氏(元小出剛司法律事務所入所)、森井じゅん氏(元Bonanza Casino入社)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コスメ事業」「ビューティ&ウェルネス事業」「再生医療関連事業」「サステナブル事業」「インベストメント事業」「その他」事業を展開しています。

コスメ事業

化粧品のECおよびダイレクトマーケティングを展開し、「エクスボーテ EX:BEAUTE」ブランドなどの化粧品を中心とした商品を消費者に提供しています。
主に消費者(BtoC)向けの通信販売により収益を得ています。事業の運営は、連結子会社のマードゥレクスが行っています。

ビューティ&ウェルネス事業

「美と健康」をキーワードとした商品の企画開発を行い、テレビショッピングを中心にカタログやWeb、店頭など幅広いチャネルで販売しています。
主に卸売業者および小売業者(BtoB)への販売を通じて収益を得ており、ジョグフット等の自社ブランド商品を展開しています。運営は連結子会社のジヴァスタジオが行っています。

再生医療関連事業

ヒト由来化粧品原料の製造販売や、細胞培養加工施設の運営、再生医療支援および研究開発などの事業を展開しています。
主に化粧品メーカーや原料メーカー等の法人顧客に対するOEM売上や原料売上から収益を得ています。事業の運営は、連結子会社のRMDCが行っています。

サステナブル事業

微細藻類の培養や研究開発、微細藻類およびその抽出物の販売、さらには微細藻類の培養設備や環境機器の販売等を行っています。
販売顧客からの売上により収益を得ており、環境ソリューション事業として展開しています。事業の運営は、連結子会社のアルヌールが行っています。

インベストメント事業

再生可能エネルギーの事業用地を中心とした不動産の取得・賃貸・仲介や、再生可能エネルギー事業への出資、暗号資産の投資運用等を行っています。
主に顧客からの不動産賃貸料や、暗号資産の運用に伴う収益などを得ています。事業の運営は同社(親会社)が行っています。

その他事業

マーケット・エクスパンション事業(RIDO Stock運営)およびAI画像処理技術を活用した製造装置開発を行うAI・テクノロジー事業(三和製作所運営)を展開していましたが、業績低迷等の理由により両事業からの撤退と廃止を決定しました。現在は清算や株式譲渡の手続きが完了しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の連結業績を見ると、売上高は概ね20億円台前半で推移していますが、利益面では先行投資負担や新事業の立ち上げ遅れなどにより、毎期経常損失を計上しています。とくに直近の2026年3月期は不採算事業の減損損失等もあり、親会社株主に帰属する当期純損失が大幅に拡大し、厳しい業績推移となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 21億円 20億円 23億円 23億円 24億円
経常利益 -7億円 -2億円 -2億円 -2億円 -10億円
利益率(%) -34.9% -11.3% -7.3% -10.2% -40.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -11億円 -3億円 -1億円 -2億円 -15億円

(2) 損益計算書


売上高は前年比で微増となりましたが、主力事業であるコスメ事業およびビューティ&ウェルネス事業での広告宣伝費や販売促進費など戦略的な先行投資の負担が重く、売上総利益は減少しました。これにより営業赤字幅が大幅に拡大し、収益性の改善が急務となる損益構造になっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 23億円 24億円
売上総利益 12億円 12億円
売上総利益率(%) 52.1% 48.8%
営業利益 -2億円 -8億円
営業利益率(%) -9.2% -32.7%


販売費及び一般管理費のうち、販売促進費が3.3億円(構成比17%)、広告宣伝費が2.4億円(同12%)、給与手当が2.4億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるコスメ事業は新ブランド投入等により売上が伸長した一方、ビューティ&ウェルネス事業は新商品販売の遅れが響き減収となりました。再生医療関連事業はOEM売上の寄与により増収を果たしましたが、サステナブル事業やAI・テクノロジー事業などの新規領域は計画未達となるなど、明暗が分かれる結果となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
コスメ事業 8億円 9億円
ビューティ&ウェルネス事業 10億円 9億円
再生医療関連事業 4億円 5億円
サステナブル事業 0.2億円 0.1億円
マーケット・エクスパンション事業 0.1億円 200万円
インベストメント事業 0.1億円 0.4億円
AI・テクノロジー事業 0.1億円 0.5億円
連結(合計) 23億円 24億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業は赤字ですが将来成長のために借入等で資金調達を行い投資を継続する「勝負型」の局面です。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -5億円 -4億円
投資CF -5億円 -3億円
財務CF 9億円 10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は有価証券報告書にデータがありませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.4%でスタンダード市場の平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「企業は社会の公器である」という基本理念を掲げています。これは、企業は社会に役立ってこそ存在価値があり、利潤を上げ、存続していけるという信念を表しています。社会に対して有益な価値を提供し、その期待に十分応えることで社会から信頼され共存できる企業となることをミッションとして経営を行っています。

(2) 企業文化

同社は中長期ビジョンとして「100年先もヒトと地球に美と健康を」と掲げており、持続可能な社会の実現を重視する文化があります。個人のウェルネスの追求だけでなく、地球生態系の許容範囲内で社会経済活動を営み、生態系が自律的に再生・回復可能な「リジェネラティブ・エコノミー」社会モデルの実現を志向しています。

(3) 経営計画・目標

同社は従来の「2028年3月期を最終年度とする中期経営計画」を取り下げ、収益性の早期回復と根本的な経営体質の強化を最優先課題としています。現在は反転攻勢に向けた新たな成長シナリオと具体的な財務目標を盛り込んだ「新・中期経営計画」の策定を進めており、サステナブル事業における以下の目標を設定しています。

* サステナブル事業の2027年3月期売上高:1.8億円

(4) 成長戦略と重点施策

同社は事業構造改革案を柱とした新中期経営計画の策定を進めており、収益構造の根本からの再構築を目指しています。市場優位性の維持が困難な事業からの撤退や縮小など事業ポートフォリオの大胆な最適化を行い、コア事業であるコスメおよびビューティ&ウェルネス領域での低収益体質からの脱却を推進します。あわせて資本効率の最大化や、機動的な資本政策の展開により成長のための原資確保に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社は、従業員の成長がグループの成長に直結するという考えのもと、個々の従業員が自立性を持ち積極的に挑戦できる環境整備を人的資本経営の要としています。意欲のある人材に向けたキャリアプランや研修プログラムの導入など人材育成の強化を図るとともに、ダイバーシティ(DE&I)に基づいた女性や外国人の採用・登用を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.1歳 2.2年 4,882,000円

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(25.5%)、女性役員比率(16.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外注先・仕入先への依存によるオペレーションリスク

外注先や仕入先に比較的小規模な事業者が多く、取引継続が困難になった場合には代替先の確保や内製化に向けた人員確保に時間を要するリスクがあります。費用が先行発生するなどの事態が想定され、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 事業拡大に必要な人材の確保と定着の課題

既存事業や今後展開する新たな事業において人材の投入が不可欠です。大幅な増員計画はないものの、予想を上回る退職の発生や必要な採用が計画通りに進まなかった場合、十分な人員体制が構築できず、事業運営および業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 顧客データの漏洩等による情報セキュリティリスク

コスメ事業およびビューティ&ウェルネス事業において、顧客の機密情報や個人情報を取り扱っています。システム面・制度面での対策や従業員への秘密保持義務を徹底していますが、情報漏洩等のトラブルが発生した場合、損害賠償請求や信用の低下により業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。