パス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

パス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の企業です。コスメ・ビューティ&ウエルネス事業を主力としつつ、再生医療関連事業やサスティナブル事業を新たな成長領域として展開しています。当連結会計年度は、再生医療関連事業の本格化などにより増収となりましたが、利益面では各段階で損失を計上しており、赤字幅は縮小傾向にあります。


※本記事は、パス株式会社 の有価証券報告書(第34期、自 2023年4月1日 至 2024年3月31日、2024年6月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. パスってどんな会社?


コスメや健康食品の企画販売を行うほか、再生医療や微細藻類を活用した環境事業などを展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1990年に旅行代理店「アイロンジャパン」として創業しました。2000年に商号を「イー・キャッシュ」に変更し電子認証・決済事業へ転換した後、2014年に現在の「パス」へ商号変更しました。2015年にマードゥレクスおよびジヴァスタジオを子会社化してコスメ事業に参入し、2023年にはRMDCを完全子会社化して再生医療関連事業へ本格参入するなど、M&Aを通じて事業ポートフォリオを変化させてきました。

連結従業員数は46名、単体従業員数は3名です。大株主構成については、筆頭株主は事業会社のサスティナで、第2位は事業会社のサンテック、第3位は事業会社のきずなです。

氏名 持株比率
サスティナ 29.60%
サンテック 8.70%
きずな 3.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役は高橋勇造氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
高橋 勇造 取締役(代表取締役) 丸広百貨店等を経て、2021年より現職。グループ各社の取締役も兼任。
星 淳行 取締役 芳賀会計事務所等を経て、2022年より現職。アルヌール代表取締役を兼任。
中谷 文明 取締役 ジークス代表取締役等を歴任。2016年同社取締役就任。


社外取締役は、甲斐賢一(公認会計士・税理士)、沼井英明(弁護士)、森井じゅん(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コスメ・ビューティ&ウエルネス事業」、「再生医療関連事業」、「サスティナブル事業」を展開しています。

(1) コスメ・ビューティ&ウエルネス事業


「エクスボーテ Ex:BEAUTE」ブランドを中心とした化粧品や、「美と健康」をテーマにした商品の企画開発を行っています。主な販路はEC、ダイレクトマーケティング、TVショッピング、カタログ、店頭販売など多岐にわたります。

収益は、消費者や卸売業者等からの商品販売代金です。運営は主に株式会社マードゥレクスおよび株式会社ジヴァスタジオが行っています。

(2) 再生医療関連事業


ヒト由来化粧品原料の製造販売や研究開発、再生医療支援などを行っています。また、自動細胞培養ロボットの開発も進めています。

収益は、化粧品原料の販売や受託開発等による対価です。運営は主に株式会社RMDCが行っています。

(3) サスティナブル事業


微細藻類の培養・研究開発、その抽出物の販売、および培養設備の販売を行っています。「Kaginowa」プロジェクトとして、環境に配慮した養殖技術の開発などにも取り組んでいます。

収益は、培養装置や抽出物の販売、コンサルティング等の対価です。運営は主に株式会社アルヌールが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は概ね20億円前後で推移しており、当期は前期比で増加し23億円を超えました。利益面では、営業損失および経常損失が継続していますが、当期の損失額は前期よりも縮小しています。親会社株主に帰属する当期純損失も計上が続いていますが、赤字幅は改善傾向にあります。

項目 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
売上高 25億円 22億円 21億円 20億円 23億円
経常利益 -8.7億円 -5.4億円 -7.4億円 -2.2億円 -1.7億円
利益率(%) -35.1% -24.4% -34.9% -11.3% -7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -7.8億円 -5.4億円 -7.5億円 -2.6億円 -1.8億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の20億円から23億円へと増加しました。売上総利益も増加しましたが、営業損失は1.7億円となり、前期の2.2億円の損失から赤字幅が縮小しました。売上原価率は上昇していますが、販売費及び一般管理費の伸びを一定程度抑制したことが損失改善に寄与しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期
売上高 20億円 23億円
売上総利益 10億円 11億円
売上総利益率(%) 48.8% 47.5%
営業利益 -2.2億円 -1.7億円
営業利益率(%) -11.1% -7.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が2.3億円(構成比18%)、販売促進費が2.3億円(同18%)、荷造運搬費が1.3億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


コスメ・ビューティ&ウエルネス事業は新商品の市場認知が浸透せず減収となり、営業損失が継続しました。一方、再生医療関連事業は事業基盤の確立により大幅な増収増益を達成しました。サスティナブル事業も売上を伸ばしましたが、先行投資により営業損失となっています。

区分 売上(2023年3月期) 売上(2024年3月期) 利益(2023年3月期) 利益(2024年3月期) 利益率
コスメ・ビューティ&ウエルネス事業 19億円 19億円 -0.6億円 -0.7億円 -3.9%
再生医療関連事業 0.5億円 4.1億円 0.1億円 0.4億円 8.7%
サスティナブル事業 0.1億円 0.4億円 -0.6億円 -0.6億円 -137.5%
調整額 -0.0億円 -0.0億円 -1.0億円 -0.8億円 -
連結(合計) 20億円 23億円 -2.2億円 -1.7億円 -7.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のCFパターンは「勝負型」です。本業の営業キャッシュ・フローがマイナスとなる中、将来の成長に向けた投資を継続しており、その資金を財務活動(新株予約権の行使等)によって調達しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期
営業CF -3.5億円 -0.8億円
投資CF -1.1億円 -0.9億円
財務CF 2.8億円 2.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「企業は社会の公器である」という基本理念を掲げています。これは、企業は社会に役立ってこそ存在価値があり、利潤を上げ存続できるという信念を表しています。社会に対して有益な価値を提供し、社会の期待に応えることで、信頼され共存できる良き企業となることを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、企業として収益を上げ社会に貢献することを目標とし、「本来の姿に」をテーマに掲げています。競争優位性のあるプロダクト開発や事業・人材の創造を通じて安定的収益を確保し、売上至上主義から利益至上主義への経営転換を目指す文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2022年に中期経営計画を策定しましたが、2024年3月期の定量的目標は未達となりました。現在、低収益事業の抜本的な構造改革や事業ポートフォリオの再編を含めた見直しを行っており、新たな中期経営計画を2025年3月期上半期に発表する予定です。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、コスメ事業の抜本的改革を行うとともに、再生医療関連事業およびサスティナブル事業を成長の中核と位置付けています。特に再生医療分野では、自動細胞培養ロボットの開発や細胞培養加工施設の建設などハード・ソフト両面への投資を行い、市場拡大への迅速な対応と技術的優位性の確保を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、人的資本経営を中長期的価値創造の源泉と捉えています。個々の従業員が挑戦できる環境の整備、研修プログラムによる人材育成の強化、およびDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に基づいた積極的な外国人雇用や女性登用などを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2024年3月期 51.3歳 1.6年 466.7万円

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職(6名)、女性役員(2名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 価格競争の激化


コスメ・ビューティ&ウエルネス事業において、IT技術の進歩により価格比較が容易となり、競争環境が厳しさを増しています。付加価値の高いサービス提供に努めていますが、市場環境の変化や価格下落圧力が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 外注先・仕入先の確保


比較的小規模な事業者が多い外注先・仕入先との取引継続が困難になった場合、代替先の確保や内製化への移行に時間を要したり、費用が先行したりするリスクがあります。これにより、安定的な事業運営や業績に悪影響が生じる可能性があります。

(3) 人材確保の課題


既存事業や新規事業の展開には人材が必要ですが、予想を上回る退職や計画通りの採用が困難な場合、必要な人員を確保できず業績に影響する可能性があります。また、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しており、これに対する構造改革等を推進中です。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。