幼児活動研究会 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

幼児活動研究会 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

幼児活動研究会は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、幼稚園や保育園等向けの幼児体育指導及びコンサルティングを主要事業として展開しています。直近の業績では、月謝値上げや療育事業の伸長により売上高が増加し、増収増益のトレンドを維持しています。安定した顧客基盤を活かし持続的な成長を続ける企業です。


※本記事は、幼児活動研究会株式会社の有価証券報告書(第54期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 幼児活動研究会ってどんな会社?


幼児体育指導と幼稚園・保育園向けコンサルティングを主力とし、子供の健やかな成長を支援する企業です。

(1) 会社概要


1972年に子供の人間形成を目的として設立され、1978年以降全国へ業務エリアを拡大しました。1997年にコンサルティング部門を法人化し、2007年に上場を果たしました。近年は2022年より療育施設を開設するなど、発達障がい児向けの支援事業も新たに展開しています。

現在の従業員数は単体で569名です。筆頭株主は事業会社である山善で36.68%を保有し、第2位はUH Partners2投資事業有限責任組合、第3位は創業家関係者である山下明子氏となっています。

氏名 持株比率
山善 36.68%
UH Partners2投資事業有限責任組合 10.05%
山下明子 9.44%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は山下孝一氏が務めています。社外取締役比率は14.3%です。

氏名 役職 主な経歴
山下孝一 代表取締役社長 1972年同社設立、代表取締役社長に就任。大和学園理事長、山善取締役などを歴任し現在に至る。
広田照彰 専務取締役 1978年同社入社。本部部長、取締役本部長、日本経営教育研究所取締役を経て、2013年より現職。
川田伸 取締役管理本部長 1984年同社入社。関西地区支社長、西日本事業部長などを経て、2022年より現職。
久賀満雄 取締役事業本部長 1984年同社入社。北関東支社長、東日本事業部長などを経て、2016年より現職。
山下明子 取締役管理本部副本部長兼事業管理部長 1972年同社取締役副社長。大和学園理事長などを経て、2015年山善代表取締役社長。2016年より現職。
八田哲夫 取締役コスモ・コンサルティング事業部部長 1989年同社入社。日本経営教育研究所代表取締役社長などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、大野俊一(リンクアンドモチベーション取締役等)です。

2. 事業内容


同社グループは、「幼児体育指導関連事業」および「コンサルティング関連事業」を展開しています。

(1) 幼児体育指導関連事業


幼稚園や保育園等の保育時間内に行う正課体育指導、幼児・児童向けの課外体育指導クラブの運営、各種イベント企画、および障がい児向け療育事業などを展開しています。全国の園児や卒園児を対象に質の高い指導サービスを提供しています。

収益源は、契約する幼稚園・保育園からの指導料や、課外クラブに通う会員からの月謝、イベント参加費などです。本事業の運営は同社(幼児活動研究会)が直接行っており、独自のカリキュラムと専門の指導員によるサービスを提供しています。

(2) コンサルティング関連事業


全国の幼稚園や保育園、こども園を対象に、経営および教育面からの総合的なサポートを提供しています。園の特色づくりや園児数確保に向けた経営・運営指導、教職員向けの階層別研修、印刷物の企画制作などを行っています。

収益は、情報提供会員制度の会員費や、個別に行う研修・コンサルティングの委託料から得ています。運営は同社が行っており、長年蓄積した幼児教育・体育指導のノウハウを活かした伴走型の経営支援を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は安定して成長を続けており、66億円から75億円へと順調に拡大しています。経常利益は一時的に減少した時期もありましたが、直近では価格改定などの効果もあり回復傾向にあります。利益率も19%前後と高い水準を維持しており、着実な収益力を備えています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 66億円 69億円 70億円 71億円 75億円
経常利益 14億円 15億円 14億円 12億円 14億円
利益率(%) 21.2% 21.6% 20.0% 17.5% 19.0%
当期純利益 10億円 11億円 10億円 9億円 11億円

(2) 損益計算書


直近2期の損益状況を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益・営業利益ともに拡大しています。サービス水準の向上に伴う価格改定の増収効果が人件費等のコスト増を吸収し、売上総利益率は33.1%から34.0%へ、営業利益率は16.5%から17.5%へとそれぞれ改善しており、収益性の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 71億円 75億円
売上総利益 23億円 25億円
売上総利益率(%) 33.1% 34.0%
営業利益 12億円 13億円
営業利益率(%) 16.5% 17.5%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が2.0億円(構成比16%)、従業員給料が1.7億円(同13%)、不動産関係費が1.6億円(同13%)を占めています。また、売上原価の内訳としては、人件費が35.8億円(構成比73%)、経費が13.6億円(同27%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の幼児体育指導関連事業は、正課および課外クラブの月謝値上げや療育事業の堅調な推移により増収を牽引しました。コンサルティング関連事業も、園の総合的なサポートや個別研修への注力が実を結び、小幅ながら売上を伸ばしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
幼児体育指導関連事業 68億円 72億円
コンサルティング関連事業 3億円 3億円
連結(合計) 71億円 75億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 9億円 12億円
投資CF -4億円 -3億円
財務CF -2億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.0%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「お客さまを喜ばし、社員を喜ばす」を経営理念として掲げています。また、「未来を背負う子供たちの為、日本社会、人類世界に貢献する」というミッションのもと、幼稚園や保育園を経営と教育の両面からサポートすることを本業とし、幼児体育・幼児教育において日本一となることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「人を喜ばす」という社風を根幹に据え、「経営計画書」や「コスモフィロソフィー」を通じて従業員への理念浸透を図っています。「人間として正しいか正しくないかを経営判断とする」「損得でなく善悪で判断する」など、高い倫理道徳観を持って行動することを基本方針とし、社会に貢献する組織文化を育んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は「高成長・高収益企業」の実現を中長期の経営目標に掲げています。持続的な売上成長を図りながら、高い収益性を確保することを目指しています。

* 売上高経常利益率15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


既存の幼児体育指導においてサービスの「高付加価値・高品位・高品質」を追求し、契約園数とクラブ会員数の倍増を目指しています。また、児童発達支援(療育事業)の拡充により、すべての子供の能力を最大限に伸ばすサポートを強化します。コンサルティング事業では、特別個別研修に注力し会員数の倍増を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


最大の経営資源を「人財」と位置づけ、指導員の育成に注力しています。独自の研修プログラムや「指導等級制度」により、質の高い指導技術と豊かな人間性を養います。また、次世代の経営リーダー育成や、多様な人財が活躍できる社内環境の整備、ITツール活用による働き方改革を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 34.5歳 12.1年 5,494,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.6%
男性育児休業取得率 58.3%
男女賃金差異(全労働者) 49.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 24.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(3.0%)、労働災害率(12.6%)、有給休暇取得率(70.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 少子化の進行による市場縮小リスク


同社の主要顧客は幼稚園・保育園の園児や卒園児であるため、少子化による対象人口の減少が課題となります。高品質なサービスの展開で差別化を図っていますが、これらの施策が奏功しない場合、契約園数や会員数の伸び悩みが生じ、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 天候不順・災害等によるイベント中止リスク


幼児体育指導関連事業におけるイベント企画業務では、春・夏・冬休みの限られた期間に遠足や合宿等を集中的に実施しています。そのため、天候不順や自然災害等の影響によりイベントを中止せざるを得ない事態が発生した場合、当期の業績に直接的な悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 寄附金の拠出に伴う経営成績への影響


同社は経営戦略の一環として学校法人や社会福祉法人を設立する方針を有しています。これらの法人を設立するための資金拠出や既存法人への資金供与を行う場合、営業上の投資ではなく寄附金として一括費用計上されるため、同社の業績に重要な影響を与える可能性があります。

(4) 業務中の事故等に伴う損害賠償リスク


実技を通じた体育指導や課外活動、合宿などの旅行中に、指導を受ける児童が転倒等の事故にあうリスクがあります。同社の指導員に過失が認められる場合や、業務中の事故に対する責任が生じた場合、損害賠償等の金銭的負担が発生し、企業への信用低下を含め業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。