Abalance 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Abalance 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。太陽光パネル製造事業およびグリーンエネルギー事業を展開。当期は決算期変更に伴う9ヶ月決算の影響に加え、太陽光パネルの市況軟化や米国向け販売の減少、新工場建設に係る先行投資等の要因により、減収減益となりました。


※本記事は、Abalance株式会社 の有価証券報告書(第26期、自 2024年7月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Abalanceってどんな会社?


太陽光パネル製造とグリーンエネルギー事業を主軸に、グローバルなサプライチェーン構築と再生可能エネルギーの普及に取り組む企業です。

(1) 会社概要


2000年にリアルコミュニケーションズとして設立し、2007年に東証マザーズへ上場しました。2011年にWWBを完全子会社化し、2017年に現商号へ変更しました。2020年にVSUNを子会社化して太陽光パネル製造へ本格参入し、2024年には子会社のTOYOが米国ナスダックへ上場を果たしています。

連結従業員数は1,713名、単体従業員数は36名です。筆頭株主は代表取締役会長兼CEOの龍潤生氏で、第2位は有限会社飯塚フューチャーデザイン、第3位は個人株主の日野豊氏となっています。

氏名 持株比率
龍 潤生 24.43%
有限会社飯塚フューチャーデザイン 3.61%
日野 豊 2.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長兼COOは国本亮一氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
龍 潤生 代表取締役会長兼CEO WWB設立代表取締役就任等を経て現職。TOYO等の会長も兼任。
国本 亮一 代表取締役社長兼COO 豊田通商、ヤーマン執行役員等を経て、2025年6月より現職。
藤澤 元晴 取締役副会長 東京相和銀行、シティグループ等を経て、2025年9月より現職。
柴田 一泰 取締役 公認会計士。レノバ経営管理本部長等を経て2025年6月より現職。
橋本 公一 取締役 足利銀行、ユニゾホールディングス等を経て2025年6月より現職。


社外取締役は、本間 勝(元欧州復興開発銀行東京事務所長)、柳瀬 重人(元みずほコーポレート銀行執行役員)、中谷 百合子(弁護士・元国会議員秘書)です。

2. 事業内容


同社グループは、「太陽光パネル製造事業」、「グリーンエネルギー事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 太陽光パネル製造事業


ベトナムの連結子会社VSUNおよびTOYOグループを中心に、太陽光パネルの製造販売を行っています。また、上流工程となるセル、インゴット、ウエハの内製化に取り組み、グローバルなサプライチェーン強化を推進しています。

収益は、主に海外市場を含む顧客への太陽光パネル等の製品販売から得ています。運営は主にVietnam Sunergy Joint Stock CompanyおよびTOYO Company Limitedグループが行っており、TOYOは米国ナスダック市場に上場しています。

(2) グリーンエネルギー事業


太陽光発電所および関連設備の販売(フロー型ビジネス)と、太陽光発電所の自社保有による売電(ストック型ビジネス)を展開しています。また、Non-FIT発電所の開発やM&A、系統蓄電池事業にも取り組んでいます。

収益は、顧客への発電所・設備販売代金および電力会社への売電収入等から得ています。運営は主にWWBおよびバローズなどの連結子会社が行っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、IT事業、光触媒事業、および建機販売事業等を行っています。建機販売事業では、国内外で建設機械の販売およびレンタルを展開しています。

収益は、ITサービスの提供、光触媒製品の販売、建設機械の販売・レンタル料等から得ています。運営はWWBなどが担当していましたが、デジサイン等は連結から除外されています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年6月期から2024年6月期にかけて売上高と利益は大幅に拡大しましたが、2025年3月期は決算期変更による9ヶ月決算や市場環境の変化により、売上・利益ともに縮小しています。特に直近期は利益率が低下傾向にあります。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 269億円 921億円 2,153億円 2,090億円 724億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 13億円 14億円 140億円 249億円 37億円
利益率(%) 4.7% 1.5% 6.5% 11.9% 5.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.0億円 0.7億円 50億円 95億円 10億円

(2) 損益計算書


9ヶ月決算の影響で単純比較はできませんが、売上高の減少に伴い売上総利益、営業利益ともに大幅に減少しています。売上総利益率および営業利益率も低下しており、収益性の低下が見られます。

項目 2024年6月期 2025年3月期
売上高 2,090億円 724億円
売上総利益 446億円 122億円
売上総利益率(%) 21.3% 16.8%
営業利益 233億円 36億円
営業利益率(%) 11.2% 5.0%


販売費及び一般管理費のうち、その他が32億円(構成比37%)、給料手当及び賞与が22億円(同26%)を占めています。

(3) セグメント収益


太陽光パネル製造事業、グリーンエネルギー事業ともに、決算期の短縮や米国市場の関税問題等の影響を受け、売上高が減少しています。特に主力の太陽光パネル製造事業の減収が全体の業績に大きく影響しています。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年3月期)
太陽光パネル製造事業 1,999億円 643億円
グリーンエネルギー事業 83億円 74億円
その他 8億円 6億円
連結(合計) 2,090億円 724億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


勝負型

項目 2024年6月期 2025年3月期
営業CF 448億円 -104億円
投資CF -212億円 -26億円
財務CF -54億円 41億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.0%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も16.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


企業理念を「Best Values」とし、先進的な商品・業務・サービスの提供を通じて社会生活の改善と向上を図り、社会の持続可能な発展に貢献し続けることを掲げています。また、ビジョンとして「Excellent Creative Company」を定めています。

(2) 企業文化


価値の提供によって従業員の幸福、顧客・社会とのWin-Win関係、企業価値の向上を図り続けることを重視しています。また、価値の提供、愛と感動を原動力に成長し続ける姿勢や、常に社会変化を先取りし、広く社会貢献するグローバル企業グループを目指す風土があります。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「Abalance グループビジョン for 2030」において、「再生可能エネルギーの中核的グローバル企業」を目指しています。

* 2030年までに国内外合わせて保有発電容量1GW
* 製造目標:インゴット・ウエハ8GW、セル16GW、パネル12GW

(4) 成長戦略と重点施策


太陽光パネル製造事業では、ベトナムでの生産体制最適化やインゴット・ウエハの内製化による収益性向上、欧州・アジアへの販売先多角化を進めています。また、米国子会社TOYOを通じてエチオピアや米国テキサス州に新工場を建設し、米国市場での供給体制を確立します。

グリーンエネルギー事業では、太陽光発電所の自社保有化によるストック型ビジネスを強化するとともに、Non-FIT発電所開発やM&A、系統蓄電池事業の拡大を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人的資本を企業価値創造の源泉と位置づけ、多様な人材が能力を発揮できる職場環境や人事制度の整備を進めています。OJTや資格取得支援による人材育成、多様性を尊重した管理職登用、柔軟な働き方の整備などに取り組み、従業員のエンゲージメント向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.1歳 3.1年 7,171,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.5%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 56.4%
男女賃金差異(正規雇用) 64.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 30.5%


※男性育児休業取得率については、当事業年度における対象者がいないため、記載を省略しています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢および市場環境


主要事業を海外市場で展開しているため、各国の通商政策や再生可能エネルギー政策の影響を受ける可能性があります。海外市場における関税や投資規制の変更等により事業環境が変化した場合、経営計画に影響が及ぶ可能性があります。

(2) グローバル事業展開


アジア・米国・欧州・アフリカ等で事業を展開しており、米中対立等の経済安全保障に関するリスクがあります。不利な税制や関税の変更、予期しない政治的要因の発生により、経営計画が影響を受ける可能性があります。

(3) サプライチェーン


太陽光パネル製造事業の主要部材を海外市場で調達しているため、大規模自然災害や感染症、地政学的リスクの影響を受ける可能性があります。事業活動の縮小・停止等により、製品供給が遅延または停止するリスクがあります。

(4) 米国の関税動向


米国政府による東南アジア4カ国に対する免税措置の終了や、アンチダンピング関税および相殺関税の適用等により、同国向けの販売戦略が大きな影響を受けています。これにより、従来のグローバル事業戦略の見直しが必要となる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。