※本記事は、株式会社ユビキタスAI の有価証券報告書(第24期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ユビキタスAIってどんな会社?
IoT機器向けネットワーク製品やセキュリティ製品等の開発・販売、海外製品の輸入販売を行う企業です。
■(1) 会社概要
2001年に設立され、2007年にジャスダック証券取引所NEOに上場しました。2018年にエーアイコーポレーションと合併し商号を変更、2022年に現在の「ユビキタスAI」へ商号変更しました。直近では2024年8月にエイムを吸収合併するなど、M&Aによる事業拡大を進めています。
連結従業員数は191名、単体では101名です。筆頭株主は創業者の関係者と見られる個人で、第2位は電子部品大手の事業会社、第3位は金融関連の事業会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 鈴木仁志 | 2.86% |
| 村田製作所 | 1.93% |
| 東京短資 | 1.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は長谷川 聡氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 長谷川 聡 | 代表取締役社長(CEO兼COO) | ジャストシステム、オプティム等を経て同社入社。事業本部長等を歴任し、2019年より現職。 |
| 大吉 裕太 | 取締役(CSO兼CFO) | JPモルガン証券、toBeマーケティング取締役CFO等を経て2024年入社。2025年より現職。 |
| 古江 勝利 | 取締役 | フリースケールセミコンダクタジャパン、IARシステムズ等を経て同社入社。2023年より現職。 |
社外取締役は、阿部 海輔(監査法人ハイビスカス代表社員)、爲廣 曉雄(Noah International Taiwan Corp.董事長兼総経理)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ソフトウェアプロダクト事業」「ソフトウェアディストリビューション事業」「ソフトウェアサービス事業」「データアナリティクス事業」を展開しています。
■(1) ソフトウェアプロダクト事業
IoT機器向けのネットワーク製品、セキュリティ製品、高速起動製品などの自社開発による組込みソフトウェア製品を提供しています。顧客は主に製造業の企業です。
収益は、製品の使用許諾に伴う契約時一時金や、顧客製品への組込み数に応じたランニングロイヤルティ等から得ています。運営は主に同社が行っています。
■(2) ソフトウェアディストリビューション事業
海外製のBluetoothプロトコルスタック、BIOS、ソフトウェア解析ツール、セキュリティ検証ツールなどの輸入販売を行っています。
収益は、海外製品のライセンス販売やロイヤルティ、関連するサポートサービス等から得ています。運営は主に同社が行っています。
■(3) ソフトウェアサービス事業
組込みソフトウェア等の受託開発などのエンジニアリングサービスを提供しています。また、Gracenote社と協業し音楽関連データのライセンス提供も行っています。
収益は、受託開発の対価やデータコンテンツのライセンス料から得ています。運営は同社およびグレープシステムが行っています。
■(4) データアナリティクス事業
研究開発で使用される統計・数値データ解析ソフトウェア「Origin」「Stata」等の輸入販売を行っています。主な顧客は大学・官公庁・企業の研究所などです。
収益は、パッケージソフトウェアの販売代金等から得ています。運営はライトストーンが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近期間において、売上高は増加傾向にあり事業規模は拡大しています。一方で、利益面では経常利益は安定して推移しているものの、当期純利益は変動が見られ、当期はマイナスとなっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 20.6億円 | 19.4億円 | 34.8億円 | 41.4億円 |
| 経常利益 | 0.9億円 | -0.8億円 | 0.9億円 | 0.9億円 |
| 利益率(%) | 4.4% | -3.9% | 2.5% | 2.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.4億円 | -0.7億円 | 1.2億円 | -4.6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。営業利益についても増加しており、本業の収益性は向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 34.8億円 | 41.4億円 |
| 売上総利益 | 14.4億円 | 17.2億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.3% | 41.6% |
| 営業利益 | 0.7億円 | 1.0億円 |
| 営業利益率(%) | 2.1% | 2.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6.8億円(構成比42%)、支払手数料が2.4億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントともに売上高は前期比で増加しています。特にソフトウェアプロダクト事業とソフトウェアサービス事業の伸びが大きく、M&Aや既存顧客からのロイヤルティ売上などが寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| ソフトウェアプロダクト | 6.9億円 | 9.0億円 |
| ソフトウェアディストリビューション | 12.4億円 | 13.2億円 |
| ソフトウェアサービス | 6.6億円 | 10.1億円 |
| データアナリティクス | 8.8億円 | 9.1億円 |
| 連結(合計) | 34.8億円 | 41.4億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**パターン:改善型**
営業活動で得たキャッシュと資産売却等によるキャッシュを借入金の返済に充てている状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.9億円 | 1.4億円 |
| 投資CF | 0.1億円 | 0.2億円 |
| 財務CF | -3.2億円 | -2.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「All for wonderful life」というスローガンの下、収益の源泉となる革新的なアイデア、未来を照らす技術シーズ、製品、そしてこれらを見つけ生み出すタレントなどテクノロジーに関わる全てを探し続けることで、社会の進歩に貢献することを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
自社だけでなく関わるすべての人たちの利益を考えて行動する「Principles」、広い視野で世界を見つめテクノロジーへの好奇心を持ち続ける「Grow Together」、挑戦を楽しみ専門性を持った者同士が互いを尊重し助け合う「Embrace challenge」などの価値観を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画(2026-2028年度)」において、2028年3月期にオーガニック成長とM&Aによる成長を合わせて以下の目標を掲げています。
* 売上高50億円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
オーガニック領域では生産性向上や営業力強化、グループシナジーによるアップセル/クロスセルを推進し、高収益化を目指しています。インオーガニック領域では、IoT関連やBig Data/AI関連事業などにおいて、シナジーを考慮しながら積極的に連続的M&Aを実行する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
グループ全体での人事制度統一を進め、柔軟かつ最適な人材配置を行うことで人的資本の最適化を図っています。また、サーベイによって組織の状態を定量化し、人材の成長度や施策の有効性を検証するとともに、ワークエンゲージメントや組織エンゲージメントの向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 47.0歳 | 11.0年 | 7,929,000円 |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 57.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 59.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 46.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ワークエンゲージメント(3.61)、組織エンゲージメント(3.35)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 技術の陳腐化
電子・電気機器開発に必要なソフトウェア製品を展開していますが、技術革新のスピードは速く、想定外の新技術台頭により事業環境が急変する可能性があります。競合他社が上回る技術を開発した場合、技術が陳腐化し、対応のための研究開発費用が発生することで業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競争の激化
LinuxやAndroid等の無償ソフトウェアプラットフォームの拡大や、半導体メーカーによるソフトウェアの包括提供により、特にミドルウェア製品群での競争が激化しています。品質保証や技術サポート等で差別化を図りますが、十分なシェアを獲得できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 自動車業界の動向
事業収益の大部分を自動車業界関連が占めています。自動車販売台数の減少や、自動車関連企業が開発投資リソースを削減した場合、製造ロイヤルティ収益やソフトウェア開発支援ツール等の売上に影響を及ぼす可能性があります。



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