※本記事は、株式会社ユビキタスAIの有価証券報告書(第25期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ユビキタスAIってどんな会社?
IoT機器向けの各種ソフトウェア開発や海外製品の輸入販売、エンジニアリングサービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
2001年にユビキタスとして設立され、2007年に新興市場へ上場しました。2018年にエーアイコーポレーションと合併し、2022年に現在のユビキタスAIへと商号変更しました。2023年にはライトストーンやグレープシステムを完全子会社化するなど、グループ規模拡大や事業基盤の強化を積極的に推進しています。
従業員数は連結で199名、単体で106名体制で事業を運営しています。大株主の状況は、筆頭株主が個人の鈴木仁志氏、第2位も個人の鈴木雅人氏となっており、第3位には資本・業務提携を通じて近距離無線関連製品などを共同展開する事業会社の村田製作所が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 鈴木仁志 | 2.39% |
| 鈴木雅人 | 1.99% |
| 村田製作所 | 1.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長 CEOを務めるのは大吉裕太氏です。取締役会における社外取締役比率は50.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大吉裕太 | 代表取締役社長(CEO) | JPモルガン証券、スパークス・アセット・マネジメント、toBeマーケティング取締役等を経て2024年同社執行役員。2025年9月より現職。 |
| 古江勝利 | 取締役副社長(COO) | 日本モトローラ、サイプレスセミコンダクタジャパン、IARシステムズ等を経て2021年同社入社。事業部長等を歴任し2025年9月より現職。 |
社外取締役は、阿部海輔(明治通り税理士法人代表社員)、爲廣曉雄(Noah International Taiwan Corp.董事長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ソフトウェア事業」および「アナリシスソフトウェア事業」を展開しています。
■(1) ソフトウェア事業
組込み機器向けの各種ソフトウェア製品(高速起動、セキュリティ、データベース、通信など)の自社開発や、海外製ソフトウェアの輸入販売、受託開発などを提供しています。主な顧客は、電子・電気機器を製造・開発する大手企業の企画・開発・設計部門などです。
収益は主に、ソフトウェア製品のソースコード等を提供する契約時一時金や、顧客製品への複製に応じたランニングロイヤルティ、ライセンス利用料、受託開発費用、技術サポートの対価などから得ています。事業運営は、同社およびグループ会社のグレープシステムなどが行っています。
■(2) アナリシスソフトウェア事業
全国の大学・高専などの教育機関、政府系の研究機関、企業の研究開発・調査部門等に向けて、統計・数値データ解析などの科学技術系ソフトウェアを提供しています。専門的な研究開発で使用される海外ソフトウェアの輸入販売やテクニカルサポートが主な領域です。
収益は主に、取扱製品であるソフトウェアのライセンス販売や、導入後の技術サポート対価などから得ています。この事業の運営は、同社グループの完全子会社であるライトストーンが主に担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績を見ると、売上高はM&Aの実施などにより拡大基調にあり、2025年3月期には40億円を突破しました。しかし、2026年3月期は主力製品のロイヤルティ売上の減少などにより減収となっています。利益面では、のれんの減損損失や関係会社株式評価損などの特別損失計上が影響し、直近2期は最終赤字となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 21億円 | 19億円 | 35億円 | 41億円 | 39億円 |
| 経常利益 | 0.9億円 | -0.8億円 | 0.9億円 | 0.9億円 | -2億円 |
| 利益率(%) | 4.4% | -3.9% | 2.5% | 2.2% | -5.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.4億円 | -0.7億円 | 1億円 | -5億円 | -6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少しており、これに伴って売上総利益も減少しました。一方で、販売費及び一般管理費等のコストが売上総利益を上回って推移した結果、営業利益は赤字に転落しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 41億円 | 39億円 |
| 売上総利益 | 17億円 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.6% | 38.4% |
| 営業利益 | 1億円 | -2億円 |
| 営業利益率(%) | 2.3% | -5.1% |
■(3) セグメント収益
主力となるソフトウェア事業は、既存顧客向けのロイヤルティ売上や受託開発が減少したことなどにより、減収となりました。一方、アナリシスソフトウェア事業は、一般企業向けの化学系データベースや画像解析ソフトの販売が好調に推移し、増収を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ソフトウェア事業 | 32億円 | 30億円 |
| アナリシスソフトウェア事業 | 9億円 | 9億円 |
| 連結(合計) | 41億円 | 39億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業は赤字ですが、将来の成長を見据えて借入等による資金調達を行い、投資を継続している勝負型の局面と言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1億円 | -1億円 |
| 投資CF | 0.2億円 | -0.6億円 |
| 財務CF | -2億円 | 9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-24.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「All for wonderful life」というスローガンを掲げています。収益の源泉となる革新的なアイデアや未来を照らす技術シーズ、有形無形の製品、そしてそれらを生み出すタレントなど、テクノロジーに関わる全てを探し続けることで、社会の進歩に貢献することを経営基本方針として定めています。
■(2) 企業文化
同社は組織の行動様式として5つのValues(価値観)を重視しています。具体的には、「かかわるすべての人たちの利益を考えて行動する」「テクノロジーへの好奇心をもちつづける」「挑戦を楽しみ、拍手をおくる」「専門性をもった者同士が互いを尊重し高めあう」「仕事や技術に対して誠実に向きあう」ことを定めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「中期経営計画(2026-2028年度)」において、オーガニック成長とM&Aを組み合わせた戦略を描いています。安定的な成長キャッシュフローを創出しつつ、CAGR(年平均成長率)10%程度の成長を目指しています。また、重要な収益指標として売上高およびEBITDA(調整後営業利益)を設定しています。
* オーガニック領域(既存事業)で毎年5%の売上成長
* グループ全体でCAGR10%程度の成長
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は既存事業の収益力強化と成長領域への投資を両立する戦略を掲げています。オーガニック領域では生産性向上や営業力強化、グループシナジーの創出による高収益化を進め、創出した資金でIoTやAI分野などへの連続的なM&Aを実施します。特にIoTセキュリティ領域を今後の重点成長分野と位置づけています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を事業成長と革新の原動力と位置づけ、戦略的な育成と配置を進めています。組込みソフトウェアからIT開発まで対応可能な人材ポートフォリオの拡充に加え、IoTセキュリティやAI分野などの専門人材の育成・確保に注力しています。また、グループ全体での人事制度統一や人的資本サーベイの共通実施も進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 48.0歳 | 10.3年 | 7,229,000円 |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 63.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 56.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ワークエンゲージメント平均(3.63)、組織エンゲージメント平均(3.31)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ソフトウェア技術の陳腐化と競争激化
同社が展開する組込みソフトウェア市場は技術革新のスピードが速く、無償のソフトウェアプラットフォームとの競争も激化しています。想定外の新技術台頭により同社の技術が陳腐化した場合や、競争力維持のための研究開発費が増大した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) ライセンス契約や商権への依存リスク
同社は海外ソフトウェアベンダーとの販売代理店契約や、米国企業との音楽データベースに関するライセンス契約などを締結しています。仕入先の買収や代理店政策の見直しによって商権が変更されたり、相手先の事情で契約が更新されなかったりした場合、収益機会の減少につながる恐れがあります。
■(3) 高度機密情報の漏洩による巨額制裁金リスク
同社はデジタルコンテンツ保護に関する規格団体(DTLAやDCP)に加盟し、根幹となる高度機密情報の提供を受けています。万が一、同社の責任によりこれらの機密情報が漏洩した場合、最大8百万米ドルの制裁金を請求される規約となっており、発生時には財政状態に深刻な影響を及ぼす可能性があります。



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