アルピコホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アルピコホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。長野県を基盤に流通、運輸、観光、不動産事業を展開。当連結会計年度の業績は、売上高1,038億円(前期比4.2%増)、経常利益31億円(同44.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益23億円(同153.5%増)と増収増益でした。


※本記事は、アルピコホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第17期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アルピコホールディングスってどんな会社?


流通、運輸、観光、不動産事業等を長野県中心に展開する企業グループです。地域社会の発展に貢献する生活関連サービスを提供しています。

(1) 会社概要


1920年に筑摩鉄道として設立され、2008年に松本電気鉄道が株式移転によりアルピコホールディングスを設立しました。2011年にはグループバス会社が合併しアルピコ交通へ商号変更するなど再編を進め、2016年にデリシアとマツヤが合併しました。2024年12月に東京証券取引所スタンダード市場へ上場しました。

同グループの連結従業員数は1,953人、単体では41人です。筆頭株主は燃料販売などを手掛けるサンリンで、第2位は建設資材や商社機能を持つ高沢産業、第3位は医薬品メーカーのキッセイ薬品工業です。これら上位株主は、同社の地盤である長野県の有力企業や事業会社です。

氏名 持株比率
サンリン 8.96%
高沢産業 7.17%
キッセイ薬品工業 5.62%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は佐藤裕一氏です。取締役9名のうち2名が社外取締役であり、社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
佐藤 裕一 代表取締役社長 八十二銀行出身。常務取締役などを経て、2022年より現職。
伊藤 篤 常務取締役 八十二銀行出身。アルピコタクシー代表取締役社長、同社執行役員などを経て、2025年より現職。
今村 正平 取締役 アルピコ交通入社。同社取締役、同社執行役員営業本部長などを経て、2024年より現職。
萩原 清 取締役 デリシア代表取締役社長などを経て、2018年より現職。
小林 史成 取締役 アルピコ交通代表取締役社長。2015年より現職。
三輪 裕彦 取締役 アルピコリゾート&ライフ代表取締役社長などを経て、2018年より現職。
野村 幸一郎 取締役 損害保険ジャパン出身。アルピコ保険リース代表取締役社長。2024年より現職。


社外取締役は、赤廣三郎(元松本商工会議所専務理事)、堀越倫世(アスター税理士法人代表社員税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「流通事業」「運輸事業」「観光事業」「不動産事業」および「その他のサービス」事業を展開しています。

(1) 流通事業


長野県内で食品スーパー「デリシア」と「業務スーパー・ユーパレット」を展開しています。また、移動スーパー「とくし丸」や宅配サービス、モスバーガーやタリーズコーヒーのフランチャイズ事業、医薬品販売も行っています。

収益は、一般顧客への商品販売による代金等が主な柱です。運営は主に株式会社デリシアと株式会社マックドラッグが行っています。

(2) 運輸事業


バス事業(高速・観光・一般路線)、鉄道事業(上高地線)、タクシー事業、自動車整備事業を行っています。上高地や白馬などの観光地への輸送が強みです。

収益は、利用者からの運賃・料金や、整備サービスの対価等から得ています。運営は主にアルピコ交通株式会社とアルピコタクシー株式会社が行っています。

(3) 観光事業


松本市を中心にホテル・旅館の運営、高速道路サービスエリアの運営、旅行事業、ゴルフ場等のレジャー施設運営を行っています。インバウンド需要の取り込みも進めています。

収益は、宿泊料、施設利用料、商品販売収入、旅行代金等から得ています。運営はアルピコホテルズ株式会社、アルピコ長野トラベル株式会社などが行っています。

(4) 不動産事業


自社保有の土地・建物の賃貸や、蓼科高原などでの別荘分譲地の販売・管理、建築・リフォーム事業を行っています。

収益は、賃貸料、物件販売代金、管理料等から得ています。運営はアルピコリゾート&ライフ株式会社、アルピコ蓼科高原リゾート株式会社などが行っています。

(5) その他のサービス事業


長野県内を中心に保険代理店事業などを行っています。

収益は、保険契約に基づく手数料収入等が中心です。運営はアルピコ保険リース株式会社などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益(営業収益)は増加傾向にあり、特に直近2期は1,000億円規模に達しています。利益面でも、経常利益および当期純利益ともに回復・拡大基調にあり、直近では過去最高水準の利益を計上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 883億円 878億円 926億円 996億円 1,038億円
経常利益 -26億円 -6億円 5億円 21億円 31億円
利益率(%) -2.9% -0.7% 0.6% 2.1% 2.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -26億円 -6億円 0.7億円 9億円 23億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、増収効果により売上総利益(営業収益から運輸業等営業費及び売上原価を控除したもの)が増加しています。営業利益も大幅に伸長しており、利益率の改善が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 996億円 1,038億円
売上総利益 294億円 314億円
売上総利益率(%) 29.5% 30.3%
営業利益 24億円 34億円
営業利益率(%) 2.5% 3.3%


営業費全体(運輸業等営業費及び売上原価、販売費及び一般管理費の合計)のうち、従業員給料手当が141億円(構成比14%)、減価償却費が30億円(同3%)を占めています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで増収となっています。特に運輸事業と観光事業は、インバウンド需要の回復や人流の活発化により大幅な増益を達成しました。流通事業は増収ながらもコスト増により微減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
流通事業 749億円 767億円 16億円 16億円 2.1%
運輸事業 122億円 133億円 9億円 16億円 12.0%
観光事業 112億円 121億円 4億円 5億円 4.1%
不動産事業 13億円 14億円 0.9億円 2億円 11.5%
その他のサービス事業 4億円 6億円 0.7億円 0.7億円 11.3%
調整額 -3億円 -3億円 -5億円 -5億円 -
連結(合計) 996億円 1,038億円 24億円 34億円 3.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ現金を投資に回しつつ、株式発行等による財務活動でも資金を調達している「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 103億円 25億円
投資CF -31億円 -20億円
財務CF -45億円 2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は24.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、信州に暮らす人々とその自然環境を愛し、「安全・安心」「便利」「快適」「楽しさ・ときめき」「知識」の提供を通じて豊かな地域社会の実現に貢献することを経営理念として掲げています。

(2) 企業文化


同社グループは、「アルピコグループ行動指針」を定めており、地域のお客様からの信頼を宝とし、お客様の満足でNo.1を目指し、誠実に行動することを重視しています。また、グループ名称の「ALPICO」には、信州の山々をイメージしたデザインや色が採用されており、地域に密着したグループであることを強調しています。

(3) 経営計画・目標


長期経営方針として「ALPICO VISION 2035」を掲げ、2035年のありたい姿を「『楽しさ・ときめき』を創出し、付加価値を高めることで、持続的な地域の発展に貢献している企業グループ」としています。この実現に向け、「中期経営計画 2024-2026」を策定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、M&Aの推進や事業エリアの拡大、新規事業の創出による成長加速を戦略としています。また、組織の柔軟性を高める取り組みや人材への投資強化、持続可能な社会実現への貢献を掲げています。

具体的には、流通事業での価格戦略見直しやDX推進、運輸・観光事業でのインバウンド需要の取り込みと高付加価値化、不動産事業での維持更新投資や新たなニーズ開拓などに取り組む方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、企業価値創造の源泉を人材と捉え、個々の従業員が能力を最大限に発揮できる環境構築を目指しています。人事基本理念として、誇りと責任を持ち、やりがいを感じられる企業風土を目指し、貢献や挑戦を評価する人事制度を実現する方針です。また、柔軟な働き方の導入、雇用条件改善、教育・研修の実施などを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.5歳 11.0年 5,457,488円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の規定に基づく公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気候変動・自然災害のリスク


豪雨や地震、気候変動による自然災害、感染症の流行などが発生した場合、交通網の寸断や施設の被災、旅行需要の減少などにより、グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特に長野県内に拠点が集中しているため、同地域での災害リスクを注視しています。

(2) 燃料費・原材料等の高騰リスク


原油価格や原材料価格の高騰、為替変動によるエネルギーコストの上昇は、運輸事業の燃料費や流通・観光事業の仕入価格、光熱費の上昇を招き、業績を圧迫する要因となります。

(3) 人的資源の確保リスク


労働人口の減少に伴い、人材の確保・育成が想定通りに進まない場合や、人材流出、人件費の急激な上昇が生じた場合、事業運営や成長戦略に支障をきたす可能性があります。特に運輸事業や観光事業における労働力不足は課題となっています。

(4) 法的規制に関するリスク


流通、運輸、観光、不動産などの各事業は、大規模小売店舗立地法、鉄道事業法、道路運送法、旅館業法などの法的規制を受けています。規制の強化や法改正が行われた場合、設備投資や人員配置などへの対応コストが発生し、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。