※本記事は、株式会社JVCケンウッドの有価証券報告書(第18期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. JVCケンウッドってどんな会社?
モビリティ、セーフティ、エンタテインメントの3分野で機器の製造・販売を展開する企業です。
■(1) 会社概要
2008年に日本ビクターとケンウッドが経営統合し、共同持株会社として設立されました。その後2011年に両社などを吸収合併し、現在の社名へ変更しています。近年では、北米や欧州の車載機器・業務用無線システム企業を複数子会社化し、グローバルでの事業基盤を強化しています。
連結で15,229名、単体で3,125名の従業員を抱えています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位および第3位も同様に資産管理やカストディ業務を行う信託銀行などの金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.31% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.39% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 | 6.37% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役会長執行役員最高経営責任者(CEO)は江口祥一郎氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 江口祥一郎 | 代表取締役会長執行役員最高経営責任者(CEO)指名・報酬諮問委員会委員 | 1979年トリオ(現JVCケンウッド)入社。カーエレクトロニクス市販事業部長、欧州法人社長等を経て、2019年より現職。 |
| 鈴木昭 | 代表取締役社長執行役員最高執行責任者(COO) | 1981年トリオ(現JVCケンウッド)入社。無線システム事業部長やパブリックサービス分野責任者、SCM改革担当を歴任し、2026年より現職。 |
| 宮本昌俊 | 代表取締役副社長執行役員最高財務責任者(CFO) | 1986年トリオ(現JVCケンウッド)入社。上海法人社長やカーエレクトロニクスセグメント長を経て、2017年より最高財務責任者(CFO)を務める。 |
| 野村昌雄 | 取締役専務執行役員最高情報責任者(CIO) | 1984年日商岩井入社。イーグローバレッジ代表取締役社長等を経て、2014年入社。オートモーティブ分野責任者等を歴任し、2026年より現職。 |
| 林和喜 | 取締役専務執行役員モビリティ&テレマティクスサービス分野責任者 | 1985年日本ビクター入社。マレーシア法人社長やメディアサービス分野責任者、経営企画部長等を経て、2026年より現職。 |
| 園田剛男 | 取締役常務執行役員最高情報セキュリティ責任者(CISO)最高リスク責任者(CRO) | 1987年ケンウッド入社。オートモーティブ分野技術本部長や最高技術責任者(CTO)等を経て、2026年より現職。 |
| 栗原直一 | 取締役監査等委員 | 1981年日本ビクター入社。米国法人社長やイメージング事業部長、米州総支配人、常勤監査役等を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、浜崎祐司氏(元明電舎代表取締役会長)、鬼塚ひろみ氏(元キヤノンメディカルシステムズ検体検査システム事業部長・指名委員長)、平子裕志氏(元全日本空輸代表取締役社長)、平野聡氏(元トプコン代表取締役会長)、藤岡哲哉氏(元日本電気財務部長)、海老沼隆一氏(元キヤノン常務執行役員企画本部長)、小橋川保子氏(元みかさ監査法人設立・公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「モビリティ&テレマティクスサービス分野」「セーフティ&セキュリティ分野」「エンタテインメント ソリューションズ分野」および「その他」事業を展開しています。
■モビリティ&テレマティクスサービス分野
カーAVシステム、カーナビゲーション、ドライブレコーダーなどの車載用機器を製造・販売しています。OEM事業やアフターマーケット事業、損害保険会社向けのテレマティクスサービス事業を展開し、自動車メーカーや量販店などを主な顧客としています。
収益源は、製品の販売代金や有償サポートサービス料です。運営は主にJVCケンウッドをはじめ、国内のJVCケンウッド長野やJVCケンウッド長岡、および海外の生産・販売子会社が担っています。
■セーフティ&セキュリティ分野
業務用・アマチュア無線機器や業務用映像監視機器、医用画像表示モニターなどの製造・販売、および据付サービスを提供しています。民間市場や公共安全市場(警察・消防・救急など)に向けたシステム構築を幅広く行っています。
収益源は、法人顧客からの製品販売代金やシステムの据付サービス料、保守サポートサービス料です。運営は主にJVCケンウッドのほか、JVCケンウッド山形やJVCケンウッド・公共産業システムなどが担当しています。
■エンタテインメント ソリューションズ分野
プロジェクター、ヘッドホン、ホームオーディオ、ポータブル電源などのメディア事業と、CD/DVDの受託製造やオーディオ・ビデオソフトなどのエンタテインメント事業を展開しています。
収益源は、消費者や量販店からの製品販売代金やコンテンツ・権利ビジネスによる収益です。運営は主にJVCケンウッドのほか、ビクターエンタテインメント、JVCケンウッド・クリエイティブメディアなどが担っています。
■その他
サービスパーツなどの提供やアフターサービス等を中心に行っています。
収益源は、機器の保守・修理に伴うアフターサービス代金などです。運営は主にJVCケンウッド・サービスが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間において、売上収益は3,000億円台で堅調に推移していますが、当期は部品供給不足や関税措置の影響を受けて減収となりました。利益面でも、過去最高水準だった前期から一転し、当期は減益を記録しており、事業構造改革が急がれる局面となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2,821億円 | 3,369億円 | 3,595億円 | 3,703億円 | 3,569億円 |
| 税引前利益 | 85億円 | 212億円 | 182億円 | 235億円 | 217億円 |
| 利益率(%) | 3.0% | 6.3% | 5.1% | 6.3% | 6.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 59億円 | 162億円 | 130億円 | 203億円 | 168億円 |
■(2) 損益計算書
売上総利益率は約30〜32%で推移しており、営業利益率も5%台後半を維持しています。しかし、当期は減収の影響が響き、各利益ともに前期を下回る結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 3,703億円 | 3,569億円 |
| 売上総利益 | 1,189億円 | 1,104億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.1% | 30.9% |
| 営業利益 | 218億円 | 205億円 |
| 営業利益率(%) | 5.9% | 5.8% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が484億円(構成比54%)と最も大きく、次いで運送費が62億円(同7%)、広告宣伝費が63億円(同7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のモビリティ分野は、OEM事業が中国経済低迷の影響を受けたもののアフターマーケットの価格改定等により増益を確保しました。一方、セーフティ分野は部品供給不足や米国政府の予算執行遅延が響き、減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| モビリティ&テレマティクスサービス分野 | 2,032億円 | 1,957億円 | 49億円 | 54億円 | 2.8% |
| セーフティ&セキュリティ分野 | 1,000億円 | 947億円 | 186億円 | 127億円 | 13.4% |
| エンタテインメント ソリューションズ分野 | 579億円 | 568億円 | 18億円 | 25億円 | 4.4% |
| その他 | 91億円 | 96億円 | △0.0億円 | 2億円 | 2.4% |
| 連結(合計) | 3,703億円 | 3,569億円 | 253億円 | 209億円 | 5.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金と外部からの資金調達を活用して、積極的な投資を行っている状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 315億円 | 338億円 |
| 投資CF | △215億円 | △223億円 |
| 財務CF | △188億円 | 18億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、企業理念として「感動と安心を世界の人々へ」提供することを掲げています。事業を通じて、あらゆるステークホルダーからの期待に応え、社会的信頼を獲得しながら中長期的な企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
長期ビジョンとして「たくましさとしたたかさを併せ持つエクセレントカンパニーへの飛躍」を掲げ、新たに「Move Forward~変わり続ける力、未来へ~」というテーマのもと、持続的な価値創造を追求する文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年度を最終年度とする新中期経営計画「VISION2030」を策定し、事業ポートフォリオ戦略を推進しています。安定的にROE11%以上、ROIC(投下資本利益率)10%以上を実現し、総還元性向は30~45%を目安としています。
* 2030年度目標:売上4,100億円以上
* 2030年度目標:事業利益率9%以上
* 2030年度目標:セーフティ&セキュリティ分野の売上構成比率35%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
全社を牽引するセーフティ分野の無線システム事業(ナローバンド領域)への積極投資を継続しつつ、ハイブリッド領域やエンタテインメント事業を期待・挑戦領域として育成します。また、OEM事業を安定収益基盤として再定義する一方、アフターマーケット事業は構造改革を進め、競争優位性と収益性の向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「中長期的な成長を支えるサステナブルな人員体制の構築」を掲げています。職種別の人材要件定義書に基づく「JVCKENWOOD Career Design」で自律的なキャリア形成を支援するほか、ダイバーシティ&インクルージョンや健康経営の推進により、従業員のエンゲージメント向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 50.8歳 | 23.4年 | 8,628,484円 |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.2% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 83.2% |
| 男女賃金差異(正規労働者) | 76.8% |
| 男女賃金差異(非正規労働者) | 108.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメント指数(68%)、休職者率(1.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料等の調達の外部依存リスク
製品開発・製造において、外部の部品やソフトウェア等への依存度が高いため、地政学的リスクの高まりや経済安全保障政策による輸出規制、世界的な半導体等の需給逼迫により、供給遅延や調達コストの増加が生じるリスクがあります。
■(2) 物流の停滞および輸送コスト上昇リスク
製品の多くを国外で生産・販売しており、紅海・スエズ運河などの重要航路の不安定化や各国の輸出入規制強化によって物流リードタイムが長期化し、輸送運賃が上昇することで事業や業績に悪影響を及ぼすリスクが存在します。
■(3) 情報セキュリティとシステム障害リスク
製品のネットワーク化に伴うサイバー攻撃の脅威増加や、顧客の個人情報の流出、基幹システムのダウンタイム発生により、損害賠償やブランド価値の毀損、事業活動の停止を招き、業績に重大な影響を与えるリスクがあります。



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