※本記事は、株式会社JVCケンウッド の有価証券報告書(第17期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. JVCケンウッドってどんな会社?
映像・音響・無線技術を核に、カーナビやドラレコ、業務用無線、エンタメ事業等をグローバルに展開しています。
■(1) 会社概要
2008年に日本ビクターとケンウッドが経営統合し設立されました。2011年に3社合併を行い現在の体制となり、2014年には米国の無線システム会社EF Johnson Technologies, Inc.を完全子会社化しました。2018年に欧州の無線関連企業を買収するなどグローバル展開を加速し、2024年には横浜本社地区へ機能を集約しています。
同グループは連結従業員数15,151名、単体3,061名を擁する組織です。筆頭株主は信託銀行の信託口で、第2位も同様に資産管理を行う信託銀行が名を連ねており、機関投資家による保有比率が高い構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 16.36% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 7.66% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 | 4.04% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長執行役員最高経営責任者(CEO)は江口 祥一郎氏です。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 江口 祥一郎 | 代表取締役社長執行役員最高経営責任者(CEO)指名・報酬諮問委員会委員 | 1979年トリオ(現同社)入社。ケンウッド執行役員常務などを経て、2012年社長就任。2019年より現職。 |
| 野村 昌雄 | 代表取締役専務執行役員モビリティ&テレマティクスサービス分野責任者 | 1984年日商岩井(現双日)入社。ITXイー・グローバレッジ社長等を経て2014年同社入社。2024年より現職。 |
| 宮本 昌俊 | 代表取締役専務執行役員最高財務責任者(CFO) | 1986年トリオ(現同社)入社。音響事業部長、カーエレクトロニクスセグメント長等を経て2017年CFO就任。 |
| 鈴木 昭 | 取締役専務執行役員セーフティ&セキュリティ分野責任者SCM改革担当 | 1981年トリオ(現同社)入社。無線システム事業部長、経営基盤改革室長等を経て2023年より現職。 |
| 林 和喜 | 取締役常務執行役員コーポレート部門担当 | 1985年日本ビクター(現同社)入社。メディアサービス分野責任者等を経て、2024年より現職。 |
| 園田 剛男 | 取締役常務執行役員最高技術責任者(CTO)最高情報セキュリティ責任者(CISO) | 1987年ケンウッド(現同社)入社。技術戦略部長等を経て、2019年CTO就任。2022年よりCISO兼務。 |
社外取締役は、浜崎祐司(元株式会社明電舎代表取締役会長)、鬼塚ひろみ(元東芝メディカルシステムズ株式会社常務執行役員)、平子裕志(元全日本空輸株式会社代表取締役社長)、平野聡(株式会社トプコン代表取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「モビリティ&テレマティクスサービス分野」、「セーフティ&セキュリティ分野」、「エンタテインメント ソリューションズ分野」および「その他」事業を展開しています。
■(1) モビリティ&テレマティクスサービス分野
カーナビゲーションシステム、カーAVシステム、ドライブレコーダー、車載用デバイス、テレマティクスソリューションなどを提供しています。主な顧客は、一般消費者、自動車メーカー、自動車販売店、損害保険会社などです。
製品・サービスの販売対価やソリューション提供による対価を収益としています。運営は、同社および株式会社JVCケンウッド長野、株式会社JVCケンウッド長岡、PT JVCKENWOOD Electronics Indonesiaなどの生産・販売子会社が行っています。
■(2) セーフティ&セキュリティ分野
業務用無線機器、アマチュア無線機器、業務用映像監視機器、業務用オーディオ機器、医用画像表示モニターなどを提供しています。主な顧客は、公共安全機関(警察・消防等)、民間企業、医療機関などです。
機器の販売対価やシステム構築・保守サービス等の対価を収益としています。運営は、同社、EF Johnson Technologies, Inc.、株式会社JVCケンウッド・公共産業システムなどが担当しています。
■(3) エンタテインメント ソリューションズ分野
プロジェクター、ヘッドホン、ホームオーディオ、ポータブル電源、業務用ビデオカメラ等の機器や、CD/DVD等のパッケージソフト、配信コンテンツなどを提供しています。主な顧客は一般消費者や映像制作会社などです。
機器やコンテンツの販売、受託製造などによる対価を収益としています。運営は、同社、ビクターエンタテインメント株式会社、株式会社JVCケンウッド・クリエイティブメディアなどが行っています。
■(4) その他
サービスパーツの提供などを主に行っています。
アフターサービスや部品販売による対価を収益としています。運営は主に株式会社JVCケンウッド・サービスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は右肩上がりで推移しており、3,700億円規模に達しています。利益面でも、税引前利益および当期利益ともに増加傾向にあり、特に直近の当期利益は200億円を超え、高い利益率を確保しています。全体として増収増益の好調なトレンドが続いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2,736億円 | 2,821億円 | 3,369億円 | 3,595億円 | 3,703億円 |
| 税引前利益 | 45億円 | 85億円 | 212億円 | 182億円 | 235億円 |
| 利益率(%) | 1.7% | 3.0% | 6.3% | 5.1% | 6.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 22億円 | 59億円 | 162億円 | 130億円 | 203億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は前期比で増加し、売上総利益および営業利益もそれぞれ伸長しています。利益率も改善傾向にあり、効率的な事業運営が進んでいることがうかがえます。特に営業利益率は6%台に達しており、収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 3,595億円 | 3,703億円 |
| 売上総利益 | 1,088億円 | 1,189億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.3% | 32.1% |
| 営業利益 | 182億円 | 218億円 |
| 営業利益率(%) | 5.1% | 5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が476億円(構成比51%)、宣伝販促費が65億円(同7%)を占めています。売上原価については、商品及び製品の仕入や製造コストが主な構成要素となります。
■(3) セグメント収益
全セグメントで売上収益が増加しました。特にセーフティ&セキュリティ分野は無線システム事業の好調により増収増益となりました。モビリティ&テレマティクスサービス分野も海外OEM事業の伸長等により増益を達成しています。エンタテインメントソリューションズ分野は構造改革効果もあり黒字転換を果たしました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| モビリティ&テレマティクスサービス分野 | 1,994億円 | 2,032億円 | 39億円 | 49億円 | 2.4% |
| セーフティ&セキュリティ分野 | 938億円 | 1,000億円 | 165億円 | 186億円 | 18.6% |
| エンタテインメントソリューションズ分野 | 560億円 | 579億円 | -3億円 | 18億円 | 3.2% |
| その他 | 103億円 | 91億円 | -4億円 | -0.0億円 | -0.0% |
| 調整額 | - | - | - | - | - |
| 連結(合計) | 3,595億円 | 3,703億円 | 197億円 | 253億円 | 6.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、銀行借入金の返済を進めつつ、自己株式の取得による支出を抑制することで財務活動による資金流出を減少させています。メディア事業やエンタテインメント事業の堅調な販売が、営業活動による資金増加に寄与しましたが、運転資金の増加により前年同期比では収入が減少しました。投資活動では、有形固定資産の売却収入が増加したものの、設備投資の増加により支出が増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 332億円 | 315億円 |
| 投資CF | -161億円 | -215億円 |
| 財務CF | -194億円 | -188億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、企業理念として「感動と安心を世界の人々へ」提供することを掲げています。この理念に基づき、事業を通じてあらゆるステークホルダーの期待に応え、社会から信頼され貢献する企業であり続けることで、持続的な成長を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、企業理念の実現に向けて、「たくましさ」と「したたかさ」を併せ持つエクセレント・カンパニーへの飛躍を目指しています。変革と成長を基本戦略とし、事業ポートフォリオの最適化を通じて成長モメンタムを加速させることを重視する文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
2023年度を開始年度とする中期経営計画「VISION2025」を策定しています。2025年度(最終年度)の目標達成に向け、各施策を推進しています。2024年度実績は以下の通り、計画を前倒しで達成しています。
* 売上収益:3,703億円
* 事業利益:253億円
* ROE:16.9%
* ROIC:11.6%
■(4) 成長戦略と重点施策
「変革と成長」を基本戦略とし、事業ポートフォリオとキャピタル・アロケーションの最適化を図ります。無線システム事業では北米公共安全市場での事業拡大に向けた人員増強等の先行投資を継続します。また、サステナビリティ経営を推進し、「利益ある成長」と「グローバルでの社会課題解決」の両立を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「イノベーションを実現する人材の育成と組織能力の強化」を掲げ、経営戦略と連動した人材要件の策定や育成計画を実行しています。「JVCKENWOOD Career Design」を通じて社員の自律的なキャリア形成を支援するとともに、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、多様な人材が活躍できる組織風土づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 51.0歳 | 24.8年 | 8,537,869円 |
※平均年間給与は、正社員のものを記載しています。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 74.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 109.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、休職者率(1.8%)、WLQ-J(94.1%)、エンゲージメント指数(68%)、自己都合退職率(2.2%)、採用数(111名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料等の調達の外部依存について
部品や原材料の多くを外部業者に依存しており、供給遅延や停止が発生した場合、生産活動に支障をきたす可能性があります。特に半導体等の特定品目の調達難や価格高騰、地政学リスクによるサプライチェーンへの影響が懸念されます。同社は取引先の複数化や在庫確保等の対策を講じていますが、想定を超える環境悪化が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 物流リスクについて
製品の多くを海外で生産・販売しているため、国際的な物流網の混乱や輸送コストの上昇がリスクとなります。紛争による輸送ルート変更や港湾混雑、燃料費高騰などが影響する可能性があります。また、国内においても「2024年問題」等による物流コスト上昇や輸送能力低下が懸念されています。同社は在庫水準や輸送手段の見直しを進めていますが、これらが業績に影響する可能性があります。
■(3) サプライチェーンリスクについて
サプライチェーン上の取引先における社会的責任の不履行が、同社グループの信用や業績に影響を与える可能性があります。人権や環境への配慮不足などが問題となるリスクがあります。同社はサプライヤーへの調査やCSR調達ガイドラインの周知等を通じて健全なサプライチェーン構築に努めていますが、取引先で生じた問題が波及する可能性があります。



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