住石ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

住石ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、石炭の仕入・販売を主力事業とする持株会社です。工業用人工ダイヤモンドの製造や採石事業も展開しています。2025年3月期は、主力の石炭事業における市況の影響等により、売上高・利益ともに前期を下回る減収減益となりました。


※本記事は、住石ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第17期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 住石ホールディングスってどんな会社?


石炭の安定供給を軸に、人工ダイヤモンドなどの新素材や採石事業も展開する資源・素材関連企業です。

(1) 会社概要


2008年に住友石炭鉱業(現住石マテリアルズ)の単独株式移転により持株会社として設立され、東京証券取引所に上場しました。その後、住石貿易の設立や、新素材・採石事業の分社化(ダイヤマテリアル等の設立)を経てグループ体制を再編しています。2022年には東証の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。

現在のグループ連結従業員数は39名(単体10名)です。筆頭株主は、同社と資本業務提携を結んでいる親会社の麻生で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には事業会社の三井住友カードが名を連ねています。

氏名 持株比率
麻生 56.94%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.14%
三井住友カード 2.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は森 省輔氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
森 省輔 代表取締役社長 三井住友銀行専務執行役員、三井住友フィナンシャルグループ専務執行役員、明電舎代表取締役副社長などを経て、2024年より現職。
磯渕 一成 取締役 住友銀行(現三井住友銀行)入行後、トレードファイナンス営業部(NY)部長などを歴任。2024年より現職。
宮澤 義典 取締役 近鉄エクスプレス、監査法人トーマツパートナーを経て、同社執行役員財務部長に就任。2024年より現職。
麻生 巌 取締役 日本長期信用銀行(現SBI新生銀行)を経て、麻生代表取締役社長に就任。ドワンゴ社外取締役などを歴任し、2024年より現職。
大濵 理 取締役 麻生セメント(現麻生)に入社し、同社上席執行役員経理財務本部長などを歴任。2024年より現職。
野口 寛司 取締役監査等委員(常勤) 住友石炭鉱業(現住石マテリアルズ)入社。住石貿易常務執行役員などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、中村幸雄(元損害保険ジャパン代表取締役専務執行役員)、神谷宗之介(弁護士・神谷法律事務所代表)、千田浩一(公認会計士・元リノべる取締役管理本部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「石炭事業部門」「新素材事業部門」「採石事業部門」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 石炭事業部門


一般炭を中心に、日本経済や産業活動に不可欠な石炭の仕入および販売を行っています。また、自社コールセンターやコールヤードを活用した石炭取扱量の拡大や、脱炭素化に向けた顧客のバイオ燃料への転換対応なども進めています。

収益は、主に顧客への石炭販売代金から得ています。運営は主に連結子会社の住石貿易が行っています。

(2) 新素材事業部門


工業用人工ダイヤモンドの製造、仕入および販売を行っています。多結晶ダイヤモンドなどの製品を取り扱い、協業による事業規模拡大や固定砥粒市場への参入強化に取り組んでいます。

収益は、顧客への製品販売代金から得ています。運営は主に連結子会社のダイヤマテリアルが行っています。

(3) 採石事業部門


岩石の採取、加工および販売を行っています。供給エリアにおける市場ニーズの開拓による砕石供給の拡大や、新規顧客獲得に向けた新たな販路エリアの開拓を進めています。

収益は、顧客への砕石製品の販売代金から得ています。運営は主に連結子会社の泉山興業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は2023年3月期に大きく伸長しましたが、その後は減少傾向にあります。経常利益も2024年3月期に高い水準を記録しましたが、直近の2025年3月期は減益となりました。利益率は比較的高い水準を維持していますが、資源市況の影響を受け変動が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 98億円 103億円 363億円 144億円 103億円
経常利益 -0.3億円 24億円 37億円 81億円 47億円
利益率(%) -0.3% 22.9% 10.2% 56.2% 45.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 26億円 4億円 21億円 32億円 80億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高は前期比で減少しました。利益面では、売上総利益は微増し利益率も向上しましたが、営業利益は黒字転換したものの低水準にとどまっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 144億円 103億円
売上総利益 13億円 13億円
売上総利益率(%) 8.7% 12.6%
営業利益 -2億円 0.5億円
営業利益率(%) -1.1% 0.5%


販売費及び一般管理費のうち、運送費・港頭諸掛等が4億円(構成比35%)、報酬・給料・賞与が4億円(同32%)を占めています。売上原価については、商品仕入等のコストが中心となっています。

(3) セグメント収益


石炭事業部門は石炭価格の低迷や需要減退により減収減益となりました。新素材事業部門は一部製品の販売が落ち込んだものの増益を確保しました。採石事業部門は出荷低迷で減収となりましたが、生産効率向上等により増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
石炭事業部門 136億円 96億円 5.2億円 4.7億円 4.9%
新素材事業部門 3億円 3億円 0.4億円 0.7億円 25.2%
採石事業部門 5億円 4億円 0.9億円 1.1億円 24.9%
連結(合計) 144億円 103億円 81億円 47億円 45.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

住石ホールディングスは、豪州ワンボ社からの利益分配金が減少したものの、税金等調整前当期純利益の計上により、営業活動によるキャッシュ・フローは収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得等による支出がありました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等による支出がありました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 188億円 0.3億円
投資CF -0.1億円 -2.2億円
財務CF -40億円 -32億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人と技術と資源と向き合い、その先へ」というコーポレート・スローガンを掲げています。日本経済に不可欠な石炭を安定的に供給することを主たる事業目的としつつ、カーボンニュートラルの進展など国際的な環境変化に適合した新たなビジネスモデルの構築を目指しています。

(2) 企業文化


全てのステークホルダーとの協働による価値創造を重視しています。サステナビリティ基本方針において、職場環境整備、地球環境保護への配慮、人材の多様性確保を推進し、社会の持続的成長に貢献することを掲げています。また、製造加工現場における安全を最優先事項とし、共存共栄できる企業風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


市場変化に柔軟に対応し、持続的な成長と中長期的な株主価値の向上を目指しています。具体的には、2027年度において以下の数値目標を掲げています。なお、経常利益には豪州ワンボ社からの利益分配金が含まれています。

* 営業利益:5億円
* 経常利益:24億円
* ROE:8%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画達成のため、各事業セグメントにおいて施策を推進しています。石炭事業では自社設備の機能強化による取扱量拡大やバイオ燃料への対応、新素材事業では提携先との協業による規模拡大、採石事業では新規販路の開拓に注力します。また、新規事業の立ち上げ準備や遊休地の活用にも取り組みます。

* 成長投資額(3カ年):30億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様性と自主性を備えた個人がグループ成長の源であると考え、社員の成長が会社の成長につながる施策を推進しています。人材の多様性確保のため、異なる経験・技能・属性を尊重し、強みを発揮できる人材育成や環境整備を行う方針です。健康支援や働き方改革、適切な評価・育成制度の実践にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.1歳 19.1年 5888272円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 金利変動リスク


資金調達を主に銀行借入により行っています。借入金残高は減少傾向にありますが、金利が上昇し、コストの増加を事業活動において吸収できない場合には、グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 海外投資リスク


連結子会社である住石マテリアルズは、豪州の炭鉱運営会社であるWambo Coal Pty Ltd(豪州ワンボ社)のBクラス株式を保有しています。同社を運営している米国ピーボディ社等の業務状況等は、グループの財政状態および経営成績等に影響を与える可能性があります。

(3) 海外情勢リスク


連結子会社である住石貿易の石炭事業部門は、原油や天然ガス等の国際的な資源市況の動向、および主たる仕入先である豪州、インドネシア等の政治経済環境の大幅な変化や法律改正等の予期せぬ事象により、業績に影響を受ける可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。