※本記事は、株式会社クオルテック の有価証券報告書(第33期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. クオルテックってどんな会社?
電子部品の信頼性評価や微細加工受託を行う独立系検査会社です。自動車業界の電動化支援に強みを持ちます。
■(1) 会社概要
同社は1993年に株式会社太洋テクノサービスとして設立され、コンサルティングや基板の品質改善指導を開始しました。2004年に現社名へ変更し、信頼性評価事業を本格化させると、2015年にはパワーサイクル試験機の開発・販売を開始しました。その後も事業拡大を続け、2023年7月に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。2024年には次世代半導体の研究拠点として滋賀半導体研究開発センターを開設しています。
2025年6月30日現在、同社(単体)の従業員数は257名です。株主構成については、筆頭株主は創業者の志方廣一氏で発行済株式の40.01%を保有しています。第2位は商社機能と製造機能を併せ持つ事業会社のCBC(7.66%)、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 志方 廣一 | 40.01% |
| CBC | 7.66% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 1.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は山口友宏氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山口 友宏 | 代表取締役社長 | 1997年大雅工業入社。2005年同社入社。取締役、専務取締役を経て、2020年4月より現職。 |
| 志方 哲明 | 取締役 | 2002年エスエスケイ入社。2013年同社入社。取締役副社長等を経て、2025年4月より執行役員バイオ事業部部長等を兼務し現職。 |
| 池田 康稔 | 取締役 | 1987年松下電器産業(現パナソニックHD)入社。同社インダストリー社経理部車載デバイス総括等を経て、2023年9月より現職。 |
| 志方 廣一 | 取締役 | 1971年太洋工作所入社。1993年同社設立と共に代表取締役に就任。取締役会長、相談役を経て、2024年9月より現職。 |
| 大江 準三 | 取締役 | 1981年トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)入社。同社電子技術統括部担当部長等を経て、2022年4月より現職。 |
社外取締役は、石田智也(元愛三工業代表取締役副社長)、冨田和之(元パナソニックエコテクノロジーセンター代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「信頼性評価事業」、「微細加工事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 信頼性評価事業
自動車の電動化に不可欠なパワー半導体等の電子部品に対し、環境試験や電気試験、故障解析、断面研磨などの評価試験を提供しています。また、これらのノウハウを活かした試験装置の設計・製造・販売も行っています。自動車メーカーや部品メーカーが主な顧客です。
収益は、顧客に対する試験、検査、分析、解析、加工および機器販売といった役務提供や製品販売の対価として得ています。運営は主にクオルテックが行っています。
■(2) 微細加工事業
ビルドアップ基板やフレキシブルプリント基板等に対するレーザ加工の試作および量産受託を行っています。また、新素材や難加工材への表面処理技術の開発や加工条件出しなども手掛け、スマートフォンから医療機器まで幅広い分野に対応しています。
収益は、顧客に対する加工の役務提供の対価として得ています。運営は主にクオルテックが行っています。
■(3) その他事業
バイオ医薬品製造工程で使用される包装材料等の受託試験を行うバイオ事業や、品質コンサルティング、技術指導を行うゼロ・イノベーション事業を展開しています。
収益は、顧客に対する検査や指導といった役務提供の対価として得ています。運営は主にクオルテックが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上高は着実な右肩上がりを続けています。2021年6月期の15億円規模から、2025年6月期には40億円を突破し、事業規模が拡大しています。経常利益に関しても、2021年6月期を除き3億円前後から3.8億円の水準で安定的に推移しており、売上高の伸長とともに利益額も増加傾向にあります。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 15億円 | 32億円 | 33億円 | 36億円 | 40億円 |
| 経常利益 | 0.6億円 | 3.4億円 | 3.0億円 | 3.7億円 | 3.8億円 |
| 利益率(%) | 3.7% | 10.8% | 9.0% | 10.1% | 9.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.6億円 | 3.3億円 | 2.1億円 | 2.7億円 | 2.2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。売上高は前期比で約4億円増加し、それに伴い売上総利益も増加しました。一方で、販売費及び一般管理費も増加傾向にあり、営業利益は微増にとどまっています。積極的な事業拡大に伴うコスト増を吸収しつつ、利益を確保している状況がうかがえます。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 36億円 | 40億円 |
| 売上総利益 | 11億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.4% | 30.8% |
| 営業利益 | 3.8億円 | 3.8億円 |
| 営業利益率(%) | 10.5% | 9.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が2.4億円(構成比28%)、研究開発費が1.8億円(同21%)を占めています。売上原価においては、経費が15億円(構成比55%)、労務費が12億円(同44%)を占めています。
■(3) セグメント収益
信頼性評価事業は、パワーサイクル試験の改造案件や試験メニュー拡大により受注が好調で増収となりました。微細加工事業も試作品加工や開発案件が堅調に推移し増収です。その他事業はバイオ関連の試験受注が伸び、大幅な増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) |
|---|---|---|
| 信頼性評価事業 | 32億円 | 36億円 |
| 微細加工事業 | 4億円 | 4億円 |
| その他 | 0.5億円 | 0.6億円 |
| 連結(合計) | 36億円 | 40億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業活動で得た資金を、設備投資や借入金の返済に充てている健全な状態です。財務基盤を維持しながら、必要な投資を行っています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6.4億円 | 5.1億円 |
| 投資CF | -4.3億円 | -7.4億円 |
| 財務CF | 4.3億円 | -1.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「未来品質の創造」をスローガンに掲げ、分析・評価・加工技術の研鑽と表面処理・実装開発の推進を通じて、パワー半導体・医療機器・二次電池分野での確固たる地位を築くことを目指しています。環境性能と安全性能の評価技術を確立し、安心・快適な未来社会の実現に貢献することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、単なる解析業務にとどまらず、故障や不良の真因を見つけ出すための再現実験を行い、顧客の技術課題を根本から解決することを志向しています。顧客の多種多様なニーズに実直に応える姿勢を重視し、企画提案力と技術力を融合した体制で「Total Quality Solution」を提供することを強みとしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、継続的な事業拡大と成長の観点から、売上高および売上高営業利益率を重要な経営指標として位置付けています。市場での競争優位性を確保しながら売上高を向上させるとともに、高付加価値の提供と効率的な販売活動により収益性を高めることを目指しています。具体的な数値目標は明示されていませんが、業界動向等を勘案し適切な目標設定を行うとしています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、特定顧客への依存度低減のため、自動車業界以外の柱としてヘルスケア等の新規業界開拓を進めています。また、高度化する試験ニーズに対応するための設備増強や、部門間連携による技術力向上、次世代半導体基板開発やユニバーサルめっき法(MAPプロジェクト)といった新規事業の醸成にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は高度化する顧客ニーズに応えるため、優秀な技術者の採用と育成を重視しています。積極的な採用活動で従業員数を増加させるとともに、OJTだけでなく社外講習や階層別研修を実施し、人材育成に注力しています。また、待遇改善や多様な働き方の推進により、高いモチベーションを維持できる労働環境づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 43.4歳 | 6.4年 | 5,063,974円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.8% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 77.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 61.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(7.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車業界の構造変化と特定顧客依存
主力の信頼性評価事業は自動車業界、特にトヨタグループ関連企業への売上割合が高く、特定顧客(デンソー等)への依存度が高い状況です。自動車業界の研究開発動向や生産動向の変動、他業種参入による競争激化、主要顧客グループの業績変動などが、同社の経営成績に影響を与える可能性があります。
■(2) 技術革新への対応
事業分野における技術革新は急速で、同社も研究開発に資源を投入しています。しかし、研究開発成果が顧客の要求水準を満たさず、サービスとして適用されなかった場合や、競合他社が上回る技術力を持ち市場競争力を維持できない場合には、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 設備投資と陳腐化リスク
試験設備等は重要な差別化要因であり、同社は積極的な設備投資を行っています。しかし、市場環境の変化等により設備が陳腐化し、投資回収が見込めなくなった場合や、将来キャッシュ・フローの減少により固定資産の減損処理が必要となった場合には、財政状態に影響を与える可能性があります。



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