成学社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

成学社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、「個別指導学院フリーステップ」や「開成教育セミナー」などの学習塾運営を主力とする教育企業です。保育園運営や日本語学校などの周辺事業も展開しています。直近の業績は、学習塾での生徒数増加や保育部門の堅調な推移により、増収増益となっています。


※本記事は、株式会社成学社の有価証券報告書(第39期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 成学社ってどんな会社?


近畿圏を中心に、乳幼児から社会人までを対象とした学習塾や保育園等を展開する総合教育企業です。

(1) 会社概要


同社は1987年1月、1982年創業の開成教育セミナーを法人化して設立されました。1990年に「個別指導学院フリーステップ」を開始し、2008年8月にジャスダック証券取引所へ上場しました。2015年4月には「かいせい保育園」を開園し保育事業へ参入しています。直近では2024年6月に医学部・難関大学受験に特化した予備校を運営する株式会社一会塾を連結子会社化しました。

連結従業員数は804名、単体では730名です。筆頭株主は同社代表取締役会長の太田明弘氏であり、第2位は関連会社の株式会社オーシャス、第3位は予備校運営などを行う学校法人高宮学園となっています。

氏名 持株比率
太田 明弘 26.51%
オーシャス 21.19%
学校法人高宮学園 4.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は永井博氏です。社外取締役比率は10.0%です。

氏名 役職 主な経歴
太田 明弘 代表取締役会長 1982年開成教育セミナー創業。1987年同社代表取締役社長。2018年6月より現職。成学社コリア代表取締役を兼任。
永井 博 代表取締役社長 1988年同社入社。取締役教務次長、専務取締役などを経て2018年6月より現職。かいせいチャイルドケア代表取締役社長を兼任。
藤田 正人 常務取締役 1983年太陽神戸銀行(現三井住友銀行)入行。2005年同社入社。経営企画部長等を経て2018年6月より現職。
檜浦 達也 取締役 1997年同社入社。個別指導部長、企画開発部長を経て2018年4月より現職。アプリス代表取締役社長を兼任。
礒野 智行 取締役 2004年同社入社。個別指導統括本部長を経て2021年6月より現職。
山本 一之 取締役 1989年東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2018年同社入社。経営企画部長を経て2023年6月より現職。


社外取締役は、平井周(学校法人此花学院(現学校法人偕星学園)学院長室室長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「教育関連事業」「不動産賃貸事業」「飲食事業」を展開しています。

教育関連事業


乳幼児から社会人までを対象に、学習塾や保育園などを運営しています。主力は学習塾で、個別指導の「個別指導学院フリーステップ」やクラス指導の「開成教育セミナー」などを展開しています。その他、認可保育所「かいせい保育園」の運営、日本語学校や英会話スクール、海外での幼稚園運営なども行っています。

主な収益源は、学習塾の生徒や保護者から受け取る授業料、講習費、および保育園運営に伴う公定価格に基づく給付金や保育料です。運営は同社のほか、株式会社アプリス、株式会社かいせいチャイルドケア、株式会社ナスピア、株式会社一会塾などのグループ会社が行っています。

不動産賃貸事業


同社グループが所有する不動産のうち、自社で利用しない余剰スペースを有効活用するために賃貸を行っています。オフィスビルや店舗などの賃貸物件が含まれます。

収益源は、テナントから受け取る賃貸料です。運営は主に成学社および株式会社アプリスが行っています。

飲食事業


大阪市において飲食店1店舗を運営しています。ランチやディナーの提供を行っています。

収益源は、来店客への飲食提供による代金です。運営は株式会社アプリスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間において増加傾向にあり、事業規模は拡大を続けています。利益面では、経常利益が安定的に推移しており、当期は増益となりました。当期純利益も毎期計上されており、黒字経営を継続しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 116億円 123億円 127億円 131億円 143億円
経常利益 0.5億円 7億円 7億円 7億円 8億円
利益率(%) 0.4% 5.3% 5.7% 5.4% 5.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.9億円 3億円 4億円 4億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益および営業利益も増加しました。売上高の伸長が利益の増加に寄与しており、収益性は維持・向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 131億円 143億円
売上総利益 28億円 31億円
売上総利益率(%) 21.4% 21.9%
営業利益 7億円 8億円
営業利益率(%) 5.4% 5.4%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が9億円(構成比39%)、給与手当が4億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の教育関連事業が増収増益となり、全社の業績を牽引しました。不動産賃貸事業は安定的に推移し、飲食事業は赤字幅が縮小しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
教育関連事業 130億円 142億円 7億円 8億円 5.7%
不動産賃貸事業 0.4億円 0.4億円 0.2億円 0.2億円 58.7%
飲食事業 0.6億円 0.7億円 -0.1億円 -0.0億円 -5.8%
調整額 -0.2億円 -0.3億円 -0.5億円 -0.5億円 -
連結(合計) 131億円 143億円 7億円 8億円 5.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローの状況は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)を使って借入金の返済や設備投資を行っている「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 10億円 10億円
投資CF -5億円 -3億円
財務CF -2億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「乳幼児から社会人までの教育および保育を基本とする教育企業」を事業ドメインとしています。「人は教育によってのみ人となる」という考えのもと、創造的で質の高い教育、保育、文化事業を通じて次世代の健全な成長と学びの支援を行い、世界で活躍できる人材の育成と豊かで平和な社会づくりに貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


学習塾事業においては、個別指導部門では「キミだけに全力指導」、クラス指導部門では「もっと伸びる、信頼の指導」をモットーに掲げています。質の高い教育サービスを提供するために教員・講師の成長を不可欠と考え、独自の研修制度や認定制度を設けて人材育成に力を入れる文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は「乳幼児から社会人までの教育および保育を基本とする教育企業」として事業を展開し、日本を代表する企業を目指しています。具体的な数値目標としては、各セグメントにおける収益性の向上や、外国人留学生の受入れ数増加に対応した事業拡大などを図っています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、少子化などの環境変化に対応するため、学習塾に限らない幅広い教育分野での事業展開を強化しています。具体的には、ドミナント戦略に基づく教室展開によるブランド力向上、関東圏での積極的な開校による知名度・集客力の向上を図っています。また、認可保育所や日本語学校の運営、海外展開に加え、ICT教育の活用やM&Aを通じた事業領域の拡大を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人の成長」に関わる企業として、人材の確保と育成を重要なテーマと位置付けています。性別・国籍等を問わず能力重視で採用・登用を行い、残業時間の抑制や多様な勤務形態の導入など働きやすい環境を整備しています。育成面では、講師研修やフォーラムの開催、独自の検定制度などを通じて、教員・講師の指導力向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.4歳 7.5年 4,847,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 22.2%
男性育児休業取得率 8.3%
男女賃金差異(全労働者) 84.0%
男女賃金差異(正規雇用) 85.6%
男女賃金差異(非正規) 94.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の年間採用率(53.7%)、全社員に占める女性社員の割合(42.6%)、全正社員の残業時間(17.8時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 少子化及び待機児童の減少


出生率の低下による少子化は、塾生となる児童数の減少や入塾動機の希薄化につながる可能性があります。また、保育業界における待機児童の減少も影響します。これらが想定以上に進行した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合環境の激化


学習塾業界や保育業界には多数の競合が存在し、オンラインサービスの充実や保育の受け皿拡大により競争が激化しています。競合他社の優位性が高まり、同社サービスの需要が相対的に低下した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 人材の確保と育成


教育・保育サービスにおいて人材は重要な経営資源であり、教員・講師や保育士の安定的確保と育成はサービスの質に直結します。計画通りに人材確保や育成が進まない場合、教室展開への支障やサービスの質低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。