※本記事は、株式会社成学社の有価証券報告書(第40期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 成学社ってどんな会社?
同社は、近畿圏や関東圏を中心に「個別指導学院フリーステップ」などの学習塾を展開する教育企業です。
■(1) 会社概要
同社は1982年に開成教育セミナーとして創業し、1987年に設立されました。1990年に「個別指導学院フリーステップ」を開始し、個別指導とクラス指導の双方向から事業を拡大しました。2008年にジャスダックに株式上場を果たし、その後、保育事業や外国人留学生向けの日本語学校運営など、幅広い教育分野へ進出しています。
現在、同社は連結で841名、単体で766名の従業員を抱える規模に成長しています。大株主については、筆頭株主が創業者の太田明弘氏であり、第2位は事業上の取引関係があるオーシャス、第3位には学校法人の高宮学園が名を連ねています。これら上位3名で発行済株式の半数以上を保有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 太田明弘 | 26.51% |
| オーシャス | 21.19% |
| 学校法人高宮学園 | 4.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は永井博氏が務めています。また、取締役における社外取締役比率は約14.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 太田明弘 | 代表取締役会長 | 関西教育学院などを経て開成教育セミナーを創業。同社設立時に代表取締役社長に就任。成学社コリア代表取締役など関係会社の役員を歴任し、2018年より現職。 |
| 永井博 | 代表取締役社長 | 関西大倉高校の非常勤講師を経て同社に入社。教務次長、第二事業部長、常務取締役、専務取締役などを歴任し、2018年より現職。かいせいチャイルドケア代表取締役社長も兼務。 |
| 藤田正人 | 常務取締役 | 太陽神戸銀行(現三井住友銀行)に入行後、同社へ出向し株式公開準備室長に就任。その後転籍し、管理部長や経営企画部長、人事部長を歴任。2018年より現職。 |
| 檜浦達也 | 取締役 | 日本給食を経て同社に入社。個別指導部長、企画開発部長などを経て2018年より現職。アプリスの代表取締役社長も兼務。 |
| 礒野智行 | 取締役 | 同社に入社後、個別指導部長や個別指導統括本部長、運営支援部長などを歴任。一会塾の取締役なども務め、2026年より現職。 |
| 山本一之 | 取締役 | 東海銀行(現三菱UFJ銀行)に入行後、同社に出向し経営企画部長兼人事部長に就任。2019年に転籍し、2023年より現職。 |
社外取締役は、平井周(元学校法人此花学院常務理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「教育関連事業」「不動産賃貸事業」「飲食事業」および「その他」事業を展開しています。
■教育関連事業
学習塾部門を中心に、乳幼児向けの保育部門、外国人向けの日本語学校や韓国語学校などを運営するその他の指導部門で構成されています。「個別指導学院フリーステップ」などの個別指導塾や、「開成教育セミナー」などのクラス指導塾を近畿圏・関東圏で展開しています。
主な収益源は、塾生や児童の保護者から受け取る授業料や講習会費、保育の公定価格に基づく給付金などです。学習塾事業は主に同社が運営し、保育施設は同社および子会社のかいせいチャイルドケアが、難関大学受験塾は子会社の一会塾が運営を担っています。
■不動産賃貸事業
同社グループが所有している不動産のうち、自社で利用していない余剰スペースを外部のテナントに対して賃貸する事業です。保有資産の有効活用を図っています。
テナント等から定期的に受け取る不動産賃貸料が主な収益源となっています。この事業の運営は、主に同社および子会社のアプリスが行っており、安定した収益確保を目指して事業展開を行っています。
■飲食事業
同社グループが展開する飲食事業では、大阪市内で飲食店1店舗を運営し、一般の顧客に対して飲食サービスを提供しています。
来店した顧客に対して提供する飲食代金が主な収益源となります。この事業は、同社の子会社であるアプリスが運営を担っており、SNSを活用した集客力の強化や店舗運営の見直しなどを通じて、収益性の改善に取り組んでいます。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に拡大を続けており、123億円から152億円へと順調に成長しています。経常利益についても堅調に推移しており、直近の期では10億円へと大きく伸び、利益率も6.4%まで向上しました。事業拡大に伴い、増収増益のトレンドを形成しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 123億円 | 127億円 | 131億円 | 143億円 | 152億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 7億円 | 7億円 | 8億円 | 10億円 |
| 利益率(%) | 5.3% | 5.7% | 5.4% | 5.3% | 6.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 4億円 | 4億円 | 5億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で約6%増加して152億円となり、これに伴い売上総利益も35億円へと増加しました。営業利益は前期の8億円から10億円へと大きく成長し、営業利益率も向上しています。収益性の改善が進んでいることが確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 143億円 | 152億円 |
| 売上総利益 | 31億円 | 35億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.9% | 23.2% |
| 営業利益 | 8億円 | 10億円 |
| 営業利益率(%) | 5.4% | 6.5% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が11億円(構成比42.1%)、給与手当が4億円(同14.8%)を占めています。売上原価の多くは、教員や講師の処遇改善などによる人件費(79億円、構成比67.5%)が占めています。
■(3) セグメント収益
主力である教育関連事業が売上の99%以上を占めており、塾生数の増加や授業料改定効果などにより増収増益を達成しました。一方、不動産賃貸事業はテナント減少で減収減益、飲食事業は店舗周辺の流入客数減少や採用費増などにより赤字となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 教育関連事業 | 142億円 | 151億円 | 8億円 | 10億円 | 6.7% |
| 不動産賃貸事業 | 0.4億円 | 0.4億円 | 0.2億円 | 0.2億円 | 56.5% |
| 飲食事業 | 0.7億円 | 0.7億円 | -0.0億円 | -0.0億円 | -7.0% |
| 調整額 | -0.3億円 | -0.2億円 | -0.5億円 | -0.4億円 | - |
| 連結(合計) | 143億円 | 152億円 | 8億円 | 10億円 | 6.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動と財務活動がマイナスとなっており、本業で得た資金で設備投資と借入金の返済を賄う「健全型」の財務状態と言えます。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.7%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10億円 | 10億円 |
| 投資CF | -3億円 | -4億円 |
| 財務CF | -2億円 | -2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「乳幼児から社会人までの教育および保育を基本とする教育企業」を事業ドメインとし、「私たちは人の成長を育む事業を通じて日本を代表する企業を目指します」という基本ビジョンを掲げています。創造的で質の高い教育・保育・文化事業を通じて次世代の健全な成長を支援し、豊かで平和な社会づくりに貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
個別指導部門では「キミだけに全力指導」、クラス指導部門では「もっと伸びる、信頼の指導」をモットーに掲げています。「人の成長」にかかわる企業として、教員や講師の成長が不可欠であるという考えのもと、現場社員からの改善提案を積極的に受け入れる「イノベーションアワード」などを導入し、改革への参画意識を高める風土があります。
■(3) 経営計画・目標
具体的な数値目標についての記載は有価証券報告書にはありませんが、ドミナント戦略に基づいた教室展開によるブランド力の向上と、合格実績の積み重ねによる集客力の強化を最優先課題として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力の個別指導塾では「大学受験に強い」「点数アップに強い」という強みで差異化を図り、特に関東圏での教室開校を積極的に進めて知名度向上を図ります。また、ICTを活用したオンラインコンテンツの拡充や、認可保育所、日本語学校の運営、海外展開、教育コンテンツ制作など、学習塾に限らない幅広い教育分野への事業拡大を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人の成長を育む事業」を展開する同社にとって、人材の確保と育成は重要なテーマと位置づけられています。性別・国籍を問わず能力重視で採用や管理職への登用を行うほか、残業抑制や勤務時間の多様化、退職した正社員の再雇用推進など、多様な人材が活躍できる社内環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.5歳 | 7.8年 | 5,021,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.8% |
| 男性育児休業取得率 | 45.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 87.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 89.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 95.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社員に占める女性社員の割合(42.4%)、女性の年間採用率(45.0%)、全正社員の残業時間(月平均15.8時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 学齢人口及び待機児童の減少
国内の少子化により、塾生となりうる児童数が減少し、入塾動機が希薄化するリスクがあります。また、待機児童の減少により保育施設のニーズが低下した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、複数ブランドの運営や顧客層の拡大を図っています。
■(2) 学習塾・保育業界の競争激化
高校受験や大学受験向けの学習塾は競合が多く、オンラインコンテンツの普及で競争が激化しています。また、保育の受け皿拡大により保育施設の競合も増加傾向にあります。これに対し、独自の教育コンテンツやオンライン授業の提供、学習塾のノウハウを活かした知育の導入などで差異化を進めています。
■(3) 教員・保育士の人材確保と育成
質の高い教育や保育を提供するためには、教員・講師および保育士の安定的確保が不可欠です。人材確保や育成が計画通りに進まない場合、新規教室の開校に支障が生じ、提供サービスの質が低下するリスクがあります。採用活動の強化や研修制度の充実、公正な人事評価により人材の定着を図っています。



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