データホライゾン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

データホライゾン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場の同社は、医療ビッグデータを用いたデータヘルス関連サービスとデータ利活用サービスを展開しています。直近決算は決算期変更(9ヶ月決算)や減損損失の計上により減収および大幅な最終赤字となりましたが、データ利活用サービス等の成長による黒字化を目指しています。


※本記事は、株式会社データホライゾン の有価証券報告書(第45期、自 2024年7月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. データホライゾンってどんな会社?


同社は、医療関連データベースを核とした自治体・健保向けヘルスケアサービスや、製薬企業向けデータ利活用支援を行う企業です。

(1) 会社概要


1982年に設立され、1989年に医療情報システム分野へ進出しました。2008年に東証マザーズ(現グロース)へ上場し、ジェネリック医薬品通知サービスなどのデータヘルス事業を展開しています。2022年にはディー・エヌ・エー(DeNA)との資本業務提携を強化し、同社の連結子会社となりました。現在はDeNAグループとして事業拡大を進めています。

連結従業員数は367名、単体では253名が在籍しています。筆頭株主は親会社のディー・エヌ・エーで過半数を保有しており、第2位は同社創業者の内海良夫氏、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
ディー・エヌ・エー 51.49%
内海 良夫 9.04%
岩佐 実次 4.38%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長兼執行役員最高経営責任者(CEO)は瀬川翔氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
瀬川 翔 代表取締役社長兼執行役員最高経営責任者(CEO) ディー・エヌ・エー入社後、ヘルスケア事業本部長等を歴任。2022年より同社代表取締役、2024年より現職。
内海 良夫 代表取締役会長 1982年に同社を設立し代表取締役社長に就任。長年にわたり経営を牽引し、2024年より現職。
砥綿 義幸 取締役兼常務執行役員 ディー・エヌ・エー入社後、DeSCヘルスケア取締役副社長等を経て、2024年より同社常務執行役員兼データヘルス事業本部長。
大井 潤 取締役 総務省出身。ディー・エヌ・エーCFO等を経て、アルム代表取締役会長等を務める。2022年より現職。
倉岡 なぎさ 取締役(監査等委員) ENEOS、デロイトトーマツコンサルティング等を経てディー・エヌ・エー入社。経営企画本部副本部長等を務める。


社外取締役は、岡本保(元総務事務次官)、野間寬(元もみじ銀行監査役)、竹島哲郎(竹島哲郎税理士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ヘルスケア事業」の単一セグメントですが、提供サービスにより「データヘルス関連サービス」および「データ利活用サービス」等を展開しています。

(1) データヘルス関連サービス


国民健康保険や健康保険組合などの保険者を顧客とし、レセプトや健診データの分析に基づく「データヘルス計画」の作成支援や、加入者への通知書送付、保健指導などを提供しています。また、健康管理アプリ「kencom」を通じた加入者の健康増進支援も行っています。

自治体等から委託を受けて行う分析・通知業務等の対価や、アプリの利用料等が主な収益源です。運営は同社および連結子会社のDeSCヘルスケアが行っています。

(2) データ利活用サービス


製薬会社やアカデミア(大学・研究機関)を顧客とし、保険者から許諾を得た匿名加工情報を活用した分析データやソリューションを提供しています。エビデンス創出やマーケティング支援などに活用されています。

顧客である製薬会社等から受け取る分析・解析費用やツール提供の対価が収益となります。運営は同社およびDeSCヘルスケアが連携して行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第45期は決算期変更により9ヶ月間の変則決算となっています。売上高は会計期間短縮の影響に加え、データヘルス計画策定需要の反動減等により減少しました。利益面では、のれん等の減損損失や事業構造改善費用の計上により、大幅な赤字となっています。

項目 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年3月期
売上高 30億円 44億円 50億円 39億円
経常利益 -4億円 -6億円 -8億円 -5億円
利益率(%) -12.7% -13.6% -15.4% -13.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -5億円 -1億円 1億円 -30億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高は9ヶ月決算の影響で減少しています。コスト構造の見直しを進めていますが、依然として営業損失が続いています。特に当期は特別損失の計上が大きく、最終赤字が拡大しました。

項目 2024年6月期 2025年3月期
売上高 50億円 39億円
売上総利益 15億円 12億円
売上総利益率(%) 29.7% 31.5%
営業利益 -8億円 -5億円
営業利益率(%) -15.8% -13.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が4.4億円(構成比26%)、のれん償却額が1.9億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


サービス別の売上状況を見ると、主力であるデータヘルス関連サービスは減少しましたが、データ利活用サービスは成長を続けています。なお、同社は単一セグメントのため利益情報は開示されていません。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年3月期)
データヘルス関連サービス 36億円 23億円
データ利活用サービス 10億円 13億円
その他 4億円 2億円
連結(合計) 50億円 39億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

データホライゾンは、金融機関および親会社からの借入により運転資金を調達し、財務活動による資金獲得を積極的に行っています。営業活動では、主にヘルスケア事業への投資に伴う無形固定資産の取得により資金を使用しました。一方、営業活動によるキャッシュ・フローは、一時的な売掛金残高の増加や特別損失の計上によりマイナスとなりましたが、今後の回収により改善が見込まれます。

項目 2024年6月期 2025年3月期
営業CF 1億円 -19億円
投資CF -8億円 -7億円
財務CF 10億円 23億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「感謝・感恩・感動の三感を源にして、縁ある方々の期待を超える感動の流れを生み出し、社会の進化と未来の環境に貢献し続ける」ことを経営理念として掲げています。この理念のもと、医療関連データベースを核としたサービスで、医療費適正化と国民のQOL向上に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


社会保障制度の持続可能性向上を課題とし、データヘルスとデータ利活用の両輪で健康・医療の課題解決に取り組む姿勢を重視しています。また、親会社のディー・エヌ・エーとの連携を深め、エンターテインメント要素を取り入れたアプリなどを通じて、生活者の行動変容を促すアプローチも特徴的です。

(3) 経営計画・目標


成長局面における投資拡大のため、EBITDA(経常利益+金融費用+減価償却費+のれん償却費+一時費用)を重要な経営指標と位置づけています。2025年3月期のEBITDAはプラス1.0億円となりました。今後は売上の拡大と収益化を実現し、持続的な成長を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「データヘルス関連サービス」の再成長・効率化と、「データ利活用サービス」の成長による収益化を掲げています。具体的には、自治体ニーズへのきめ細かい対応やAI活用による生産性向上、および製薬企業等へのソリューション拡充を進めています。また、既存アセットを活用した海外展開や地域社会向けサービスの検討など、新規投資も実施していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的成長のために「人的資本と多様性」を重要課題とし、多様な人材が活躍できる環境づくりを推進しています。男性育休の取得推進やフレックスタイム制、在宅勤務の導入などを進めるとともに、長時間労働の抑制にも取り組んでいます。また、インターンシップ受け入れによる人材確保や、教育体制の見直しによるスキルアップ支援も強化しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.6歳 7.7年 5,638,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 25.0%
男性労働者の育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) -
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) -
労働者の男女の賃金の差異(非正規) -


※同社は公表義務の対象ではないため、労働者の男女の賃金の差異の記載を省略しています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 継続企業の前提に関する事象


減損損失の計上により純資産が大幅に減少し、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる状況が存在しています。同社は事業構造の改善や親会社等からの資金枠確保により、収益改善と資金繰りの安定化を図っていますが、財務基盤の立て直しが急務となっています。

(2) 親会社との関係


親会社であるディー・エヌ・エーが議決権の過半数を保有しており、同社の経営方針の変更等が同社グループの事業運営に影響を与える可能性があります。両社は協業を進めていますが、親会社の意向が経営判断に強く反映される構造にあります。

(3) 個人情報の管理


多くの機微な個人情報を取り扱っているため、情報漏洩や不正アクセス等の事故が発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社はプライムバシーマークやISMS認証を取得し、管理体制を強化しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。