※本記事は、株式会社データホライゾンの有価証券報告書(第46期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. データホライゾンってどんな会社?
データホライゾンは、医療関連データベースを活用し、保険者向けの保健事業支援やデータ利活用ソリューションを提供するヘルスケア企業です。
■(1) 会社概要
同社は1982年に設立され、ソフトウエアの受託開発からスタートしました。1989年に医療関連情報システムに進出し、2000年にデータホライゾンへ商号を変更しました。2003年より保険者向け情報サービスを開始し、2008年に株式上場を果たしました。2022年にはディー・エヌ・エーの連結子会社となっています。
同社グループの従業員数は連結で365名、単体で239名です。筆頭株主は親会社である事業会社のディー・エヌ・エーで、第2位は創業者であり代表取締役会長を務める内海良夫氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ディー・エヌ・エー | 51.49% |
| 内海良夫 | 9.04% |
| 岩佐実次 | 4.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長兼執行役員最高経営責任者(CEO)は瀬川翔氏、代表取締役会長は内海良夫氏が務めています。取締役8名のうち、社外取締役は3名(比率37.5%)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 瀬川翔 | 代表取締役社長兼執行役員最高経営責任者(CEO) | 2010年ディー・エヌ・エー入社。ヘルスケア事業本部本部長等を経て、2021年同社取締役就任。2024年7月より現職。 |
| 内海良夫 | 代表取締役会長 | 1982年ワイエス企画(現データホライゾン)設立、代表取締役社長就任。2022年同社CEO等を経て、2024年7月より現職。 |
| 砥綿義幸 | 取締役兼執行役員 | 2006年ディー・エヌ・エー入社。DeSCヘルスケア取締役副社長等を経て、2024年同社常務執行役員。2026年4月より現職。 |
| 大井潤 | 取締役 | 1995年自治省(現総務省)入省。2013年ディー・エヌ・エー入社、同社常務執行役員CFO等を歴任。2022年9月より現職。 |
| 倉岡なぎさ | 取締役(監査等委員) | 2008年JXTGエネルギー入社。2019年ディー・エヌ・エー入社、同社経営企画本部副本部長等を歴任。2022年9月より現職。 |
社外取締役は、岡本保(元総務省事務次官)、野間寬(元もみじ銀行監査役)、竹島哲郎(竹島哲郎税理士事務所開業)です。
2. 事業内容
同社グループは、ヘルスケア事業の単一セグメントで事業を展開しています。
■データヘルス関連サービス
保険者(市町村国保など)を顧客とし、預かったレセプトや特定健診データを分析して医療費適正化を支援するサービスです。データヘルス計画の作成支援のほか、加入者への各種通知書の送付、保健指導、健康管理アプリの運営などを行っています。
保険者からデータ分析や通知、保健指導などの業務委託費を受け取る収益モデルです。また、健康管理アプリの提供による利用料収益もあります。本事業の運営はデータホライゾン、および連結子会社であるDeSCヘルスケア、DPPヘルスパートナーズが行っています。
■データ利活用サービス
製薬会社や大学などを顧客とし、適法に利用許諾を得た匿名加工情報などを公益目的に沿った形で各種ソリューションとして提供するサービスです。慢性疾患や医薬品に関する分析、エビデンス創出を支援しています。
顧客に対して分析や解析、各種ツールの提供を通じたエビデンス創出支援による対価を収益源としています。本事業の運営は、データホライゾンと連結子会社であるDeSCヘルスケアがレベニューシェア契約に基づき共同で推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高はデータ利活用サービスの拡大により堅調に推移し、直近では51億円に達しました。利益面では先行投資や一時的な費用の計上により赤字が続いていましたが、償却費負担の軽減や業務効率化によるコスト削減が進んだことで、直近期には経常利益が黒字転換を果たしています。
| 項目 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 30億円 | 44億円 | 50億円 | 39億円 | 51億円 |
| 経常利益 | -3.8億円 | -6.0億円 | -7.7億円 | -5.0億円 | 0.1億円 |
| 利益率(%) | -12.7% | -13.6% | -15.4% | -13.1% | 0.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -4.7億円 | -1.4億円 | 1.0億円 | -34.3億円 | 0.9億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間において、売上高は増加傾向にあり、売上総利益率も改善しています。これは増収効果に加え、固定費の削減や業務効率化が伸長したことによるものです。営業利益は赤字から黒字へと転換し、収益構造の改善が明確に表れています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 39億円 | 51億円 |
| 売上総利益 | 12億円 | 19億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.5% | 36.5% |
| 営業利益 | -5.2億円 | 0.2億円 |
| 営業利益率(%) | -13.4% | 0.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が5.1億円(構成比28%)、役員報酬が0.7億円(同4%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
直近のキャッシュ・フローは、営業CFと投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなる「勝負型」です。本業での資金創出がマイナスとなっていますが、借入などの資金調達を通じて、将来の成長に向けたプログラム開発などへの投資を積極的に継続している状態を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -18.8億円 | -2.2億円 |
| 投資CF | -6.7億円 | -8.0億円 |
| 財務CF | 23.5億円 | 8.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は93.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は6.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「感謝・感恩・感動の三感を源にして、縁ある方々の期待を超える感動の流れを生み出し、社会の進化と未来の環境に貢献し続ける」ことを経営理念に掲げています。医療関連データベースをコアコンピタンスとしたヘルスケア事業を通じ、日本の医療費の適正化と国民のQOL向上に持続的に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念にもある「感謝・感恩・感動の三感を源にして」という価値観を重んじています。すべてのステークホルダーの要望や期待に誠実に応えながら、自社の強みを活かしたサービスから社会に還元するサイクルを創出し、社会課題の解決に向けて持続可能な発展に貢献する文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、各事業拡大のための投資を行う成長局面を迎えており、経営の効率性を高め、持続的な成長と企業価値の増大を図るため、「EBITDA」を重要な経営指標と位置づけています。EBITDAの増大を目標に掲げ、既存事業の安定成長と新規事業への規律ある投資を推進しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、AI活用による事業構造の転換を成長戦略の中核に据えています。主力であるデータヘルス関連サービスでは、AIプロダクトによる商品強化と生産性の大幅な効率化により自治体でのトップシェア拡大を図ります。また、データ利活用サービスでは、独自データとAIを組み合わせたソリューションの提供により、売上規模のさらなる拡大を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「労働集約型からAI/Techカンパニーへの進化」を掲げ、全社的なAI活用とスキル転換を推進しています。各事業の成長を支えるため、ヘルスケア領域のドメイン専門人材やデータサイエンティストなどのIT・データ人材の育成・採用に注力しています。また、多様な人材が活躍できる環境づくりとして、柔軟な働き方の整備とエンゲージメント向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.6歳 | 8.0年 | 5,711,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(パート・有期) | - |
※労働者の男女の賃金の額の差異については、公表義務の対象ではないため有報に記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、時間外・休日労働の削減実績(前期比59%削減)、AI CoEの任命数(20名以上)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合他社の参入と価格競争
ヘルスケア事業市場は拡大が見込まれるものの、類似のビジネスモデルを掲げる競合他社が存在しています。他社により同社の優位性が失われた場合、価格競争の激化を招き、業績や今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。同社は新規サービスの創出等により差別化を図っています。
■(2) 国や自治体の方針・関連法令の変更
主力サービスは国や自治体の医療費適正化の方針や補助金制度に依存しています。支援制度の変更や補助金の減額・廃止が行われた場合、業績に影響する可能性があります。また、データ利活用における個人情報保護法等の法令が変更された場合も、事業運営に支障をきたす恐れがあります。
■(3) 個人情報漏洩のリスク
同社はサービス提供を通じて多くの個人情報を取り扱っています。不正アクセスや事故などにより個人情報が漏洩した場合、損害賠償の発生や信用力の失墜を招き、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は「プライバシーマーク」やISMSの認証を取得し、厳格な管理体制を構築しています。
■(4) 親会社の経営方針変更による影響
同社はディー・エヌ・エーを親会社としており、事業運営の独立性を尊重しつつ協業を進めています。しかし、親会社が同社株式の過半数を保有しているため、今後親会社の経営方針に変更が生じた場合、議決権の行使を通じて同社の事業運営や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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